PowerPoint プレゼンテーション

原子科学と倫理 12月26,27日
社会と科学技術
両日1,2限
日本原子力研究開発機構
東京工業大学原子炉工学研究所 篠田 佳彦
[email protected]
[email protected]
0
茨大社会と科学技術001
皆さんに考えて欲しいこと!!
誰が、どうやって、科学技術の推進
の是非を決めるのか?
よくある反応
なんでそんなことを考えるの?
それを考えて、なにが良くなるの?
そんなことは、自分たちが考えることではない
1
茨大社会と科学技術001
意識差
光触媒を使って有
機物を分解しよう
5861 DBN
トイレが臭い
科学者
新しいトイレを建
設しよう
行政・産業
きれいに使って、
きちんと掃除しよう
市民
2
茨大社会と科学技術001
科学技術と社会の関係
科学技術と倫理性 五十嵐より抜粋
● 科学の目的は,自然界を理解すること
● 技術の目的は,人間の要求を満足させること
★
科学技術(technology) とは、科学(science) と技術(technique)とが
不可分に結合した高度の生産力のこと
社会の中に位置づけられた社会活動
3
茨大社会と科学技術001
科学技術と社会の関係
科学技術と倫理性 五十嵐より抜粋
『知識としての科学』
⇔
(社会問題になりにくい)
予算、 倫理など
『社会的営みとしての科学技術』
(社会問題となりうる)
なる。
科学技術と社会問題の関係を考えるうえで!
誰が「科学技術」を推進していたか?
どのような合意に基づいて推進されてきたか?
を考えることは、科学技術と社会の関係理解に!
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茨大社会と科学技術001
誰が「科学技術」を推進していたか?
方向性を決めていたか? 原子力技術
★ 科学技術が社会の動向を決める (供給側から)
科学技術を社会が使いこなしてこそ意義がでる。(開発者論理)
何が可能か? 核分裂でエネルギーが出せるそれを使って!
☆ 社会が科学技術の動向を決める (需要側から)
何が必要か?応じた科学技術を選定、開発
5
茨大社会と科学技術001
誰が「科学技術」を推進していたか?
★ 科学技術が社会の動向を決める (技術決定)
☆ 社会が科学技術の動向を決める (社会構築)
結論::科学技術の発展の駆動力と道筋の設定に向け、
科学技術と社会は互いに密接に関係しあうことが重要
★技術決定と☆社会構築のバランスが取れること
こんな“当たり前”のことが何でこれまで実行できていないのか?
これまでは、 ★技術決定が先行しすぎていた
(パターナリズム、テクノクラティック・モデル)
6
茨大社会と科学技術001
Paternalism :
ある当事者(個人、組織、政府、等々)が、相手の同意なしにあるいはその相手が表明して
いる望みを無視して、相手にとって「良きことgood」と思われることのためにおこなう行為
http://www009.upp.so-net.ne.jp/juka/glossary_japanese.htm
当人の意志に関わりなく、 当人の利益のために 、 当人に代わって
意思決定をすること。 父親的温情主義、父権主義など
http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/~kodama/ethics/wordbook/paternalism.html より
虫歯の子供を親が強引に歯医者につれていく行為。
専門家が市民に成り代わって、決めてあげる
テクノクラティック・モデル  固い科学観
専門的政策立案能力をもつ行政官僚や専門家
---科学技術の問題は科学技術の範疇で解決できる--(科学的合理性を根拠として、物事を決めることができる)
社会的決定の支援における価値的多元主義の実践的意義について
堀田 より抜粋
7
茨大社会と科学技術001
社会的合意形成の分類
● 温情主義的合意形成感 (≒パターナリズム)
(解の合理性を説得するための根拠ベースのアプローチ)
決定を信頼できる人に委ねる、合理性=科学的合理性
堀田 より抜粋
● コミュニケーション的合意形成感
(合理的な解を探るための知識ベースのアプローチ)
対話を通じて互いに知識を出し合い、
社会的に最も合理的な解を導出
● 多元主義的合意形成感
(互いに背反する理を探すための議論ベースのアプローチ)
多種意見の葛藤や対立こそ自然
最も妥当な判断/最も合理的な解を導出しそうな手続きを探る
8
茨大社会と科学技術001
現行の意思決定のほとんどは、温情主義的合意形成感で、その背景は
固い科学観を基盤とした社会的意思決定
● (市民から決定を付託された)少数の専門家
「合理性のある・全体的な」判断 ができるものと捉えている
● (自分の事なのに決定を免れ、委ねている)大多数の人々(市民)
「非合理な・部分的な」判断 をしてしまうものと捉えている
互いの対話を通じて最適な社会的解を市民に“理解いただく”
最適な社会的解少数の専門家が科学的合理性から導出
理解いただくため市民に科学技術に対する知識が必要
≒温情主義的合意形成感
社会的決定の支援における価値的多元主義の実践的意義について
堀田 より抜粋
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茨大社会と科学技術001
「科学技術をめぐる社会的意思決定」に対する見解
科学技術専門家(科学技術推進側)
 パターナリズム、テクノクラティック・モデル
温情主義的合意形成感::技術決定
社会科学者・市民活動家
 脱パターナリズム=市民参画::社会構築
10
茨大社会と科学技術001
科学技術専門家
社会科学者
(人・人間関係の問題)
(社会システムの問題)
コミュニケーション不足、理解不足
現行の政策決定過程の限界
市民の科学技術全般に対する理解
(信頼)不足に原因を求める
対策)科学啓蒙、説明方法改善
政策決定過程(=社会的意思決定
過程)に原因を求める
対策)社会システム変更
科学技術社会における
人のあり方
科学技術社会に適合する
ための心得を説く
科学技術と社会のあり方
科学技術と社会の接点か
ら浮かび上がる問題を解く
根っこは同じ?社会との関係が希薄状態
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茨大社会と科学技術001
社会との関係の希薄化の解消として、
科学技術推進側は、「理解促進」=「説明責任」を重要視
<説明責任> 原子力学会倫理規定より
5-5.会員は,専門の業務において,その目的・方法・成果等について,
要求されたならば明快に説明する責任がある。特に専門家でない周囲の
者には,相手の立場に立つ姿勢で分かりやすく説明する責任がある。
わかってもらえば、希薄化は解消できるのか?
説明責任とは、説明=理解だけではなく、深い意味を含む概念
(理解促進だけではない、評価を仰ぐことを含む)
説明責任を果たすとは、 「他者の生命、健康、快適な生活、財産などに対する負託(信じて任せられる)を受けている場合、その負託を担って
いる個人や組織が、その負託に対する事項を忠実に実施していることを示す(或いは証明する)ために披負託者に説明をすること。
その説明を受けた者(披負託者)は、その負託を受けて実施している行為の遂行状況が自身の負託に対して満足か否かを判断し、十分に遂
行されていないと判断した場合には、その考えを負託を担っている者に表明し、再度、評議しあう機会が確保されている必要があること。」
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茨大社会と科学技術001
社会との関係の希薄化の解消として、
社会学研究者は、「市民参画」を訴えている
科学技術政策への市民参画の実施例
・ Open Channels, Public dialogue in science and technology,
Parliamentary Office of Science and Technology (イギリス)
・ National Stakeholder Dialogue, BNFL (イギリス)
・ 放射性廃棄物管理に関するコンセンサス会議, NIREX (イギリス)
・ Citizens Dialogue on the Long-term Management of Used Nuclear
Fuel. NWMO (カナダ)
・遺伝子組換え農作物を考える市民会議、農林水産先端技術産業
振興センター STAFF
いっしょにやらねば、希薄化は解消できない
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茨大社会と科学技術001
科学技術専門家が決めたことを説得し,同意を取り付けて実行する
説明責任=わかりやすく説明すること
情報公開=情報をだすだけ
“否定”してみると
説明責任=是非を問うこと、判断を仰ぐこと
 監視機能の付与、増強
情報公開=説明された内容の事前・事後での評価を可能にすること
誠意の尺度
鳥井より
専門家などに活動を付託付託に答えているか否かの説明と評価
専門家などの活動で影響を受ける影響を受ける側には説明を受け、判断する権利
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茨大社会と科学技術001
社会との関係改善::希薄状態から脱却
科学技術は、社会を“対等な”パートナーと見ねばならない
科学技術の動向が社会の動向を左右するは、思い上がり
多様な価値観を反映してこそ、社会と蜜になれる
限られた人間、閉じた空間で決められても、埒が明かない
できること、求められていることを正確につかまねばならない
「望むべき」 対 「望まれる」 の比較
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茨大社会と科学技術001
「望むべき」 科学技術開発サイドの論理
「望まれる」 社会のニーズ
「望むべきもの」、か、「望まれるもの」のどちらを開発すべきか?
どちらか一方のみで開発(商品化)したものは成功しない
「望むべき」当たることもあるが、外れることも多い(思い違い)
「望まれる」やたらに機能を追加した使えないものになりやすい
 「望むべき」 と 「望まれる」 が近いとき成功する確率が高い!
 「望まれているのではないだろうか」では、方向を見誤る
 これを「望まねばならない」としてしまうと、・・・
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茨大社会と科学技術001
「望むべき」 対 「望まれる」
「望むべきもの」、か、「望まれるもの」のどちらを開発すべきか?
「望むべきもの」を「望まれる」形の中で行う
望まれる形の中で行われれば、望まれるものが生じやすい
Or
少なくとも、望むべきものと望まれるものが完全不一致はなくなる
社会と関係が希薄なままでは不可能
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茨大社会と科学技術001
科学は“誰”を対象・パートナーとしていたか
18世紀
科学ー神・教会
科学ー軍・権力
20世紀後半
科学ー産業
21世紀
科学ー市民
科学技術は、時々でパートナーの価値観を反映してきた
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茨大社会と科学技術001
21世紀COEプログラム 世界の持続的発展を支える革新的原子力
「原子力と社会の共進化」研究
車輪の両輪≒共進化
技術決定
社会構成
曲進
東工大
鳥井、山野教授より
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茨大社会と科学技術001
直進
車輪の両輪≒共進化
技術決定
社会構成
曲進
市場が介在する場合
有る程度の曲がりは、修正
曲がりすぎると海に落ちる
技術
市場が介在しない場合
Policyパワー
技術
社会
社会
大海原
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茨大社会と科学技術001
城下町(社会)
橋(接点)
科学技術城(本丸)
城も町も橋も変わる
橋を架け変える
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茨大社会と科学技術001
これからの科学技術は社会(市民)と共進化していかねばならない
科学技術と市民の共進化市民(社会)のための科学技術の実現
科学技術における意思決定の場に市民が参画する機会を確保・充実
市民と共進化するために必要となる項目
・科学技術専門家の社会意識醸成
・橋渡しの役割を担う人材(科学技術コミュニケータ)
・制度設計
・市民の科学技術リテラシーの向上
・倫理の徹底
・説明責任の完遂
・・・・・・
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茨大社会と科学技術001
一般市民の参画と専門家との協働
一方が一方的に物事を決めるのではなく、
互いに助け合い、互いに足りない部分を補い合うように!
決める
専門家
市
民
・
住
民
市民
専
門
家
説得
受け入れる
決める
23
茨大社会と科学技術001
一口に市民参加参画といっても
一筋縄ではいかない
「参加」と「参画」は別物である
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茨大社会と科学技術001
市民参加のはしご(市民参加の段階)
世論操作
不満をそらす操作
情報提供
意見聴衆
形式的参加(懐柔)
パートナーシップ
権限移譲
市民によるコントロール
5823 DBN
(参画)
住民参加のはしご(シェリー・アーンスタイン1969)
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茨大社会と科学技術001
行政・専門家は、“参加参画”の意義を
把握し損ねると手ひどいしっぺ返しが
吉川の指摘(市民参加による混迷増加も起こりえる)
リスク・コミュニケーション 相互理解とより良い意思決定を目指して
より
・行政は市民の参加を政策受容の手続きと見なしている。
 儀式、聞いた振り、決定不変
・市民は政策実施に伴う損害を抑制する手段と見なしている
 情勢が変化した結果に伴う“受容活動“ではない
 計画の初期段階では市民の関心を高めるため、
プロジェクト整備段階で市民や各種団体の意見を
計画決定前に反映させるために行政が行う行為
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茨大社会と科学技術001
市民参画とリスクコミュニケーション
NRCの定義:: An interactive process of exchange of information and opinion among
individuals, groups, and institutions; often involves multiple messages about the nature
of risk or expressing concerns, opinions, or reactions to risk messages or to legal and
institutional arrangements for risk management. 4421 DBN
個人・集団・機関間での情報や意見のやり取りの相互作用過程
・リスクの性質についてのメッセージ(リスクメッセージ)
・リスクメッセージ、或いは、リスク管理に対する法律、制度の整備
に対して表明された関心、意見や反応に関するメッセージ
interactive process  相互作用
・情報の一方通行ではない、理解しあうだけではない
・リスクに関する情報を交換し、ともに意思決定に参加すること = 双方向的やり取り
(相互を意見・意識を読み取るための行為だけとしてはならない)
リスクという用語には、“危険・損失”と“恩恵・利益”の量とその可能性がそもそも含まれており、選択(=意思決定)が内包されたものである
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茨大社会と科学技術001
リスクコミュニケーション:RC
リスク=自発的な決定の下で選択された行為による未来の損失とその可能性
RC=リスクを含む問題について広く関係者間の「合意」を調達する行為
ある決定により影響を被ると思われる関係者からのリスクに対する関心や意見
の表明を受けて、行政・企業・専門家がそうしたリスクの性質や内容について
の“情報”を供与したりすることを通じて、決定者と被害者の間での不合意の解
消を目指す行為
リスク論のルーマン P96 より DBN
非知の問題に対する対応、
合意調達による決定過程の正当化に活路を見出すこと
決定過程に対する“信頼”を獲得すること
決定過程への参加が好意的態度を生みうる
数多くの参加の呼びかけ、「発言機会の確保」が重要
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茨大社会と科学技術001
環境自治体会議での谷口の発言より
リスクコミュニケーションが本当にできる社会は、相手に興味を
持ち、互いの信頼関係を築き、思いやりのある社会でないと成
立しないもの
5785 DBN
リスク・コミュニケーション 相互理解とより良い意思決定を目指して
吉川の発言より
十分にリスクコミュニケーションを行ったうえでの結論であるなら
ば、たとえそれがリスキーな決定であっても、また専門家から見
て愚かな決定であっても、それが参加的な過程を経て行われた
決定であるのならば、それを社会の合意として受け入れること
が必要である。
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茨大社会と科学技術001
谷口の発言の意味するところ
リスクコミュニケーションを行うとは、住民を含めた利害共有者の間で、当該
リスク問題にかかわる関心事項や情報などを要求、提供、説明しあい、意見
交換を行い、関係者全体が当該問題や行為に対して理解と信頼のレベルを
相互にあげていくことである。合意形成が直接の目的ではないが。
リスク提供側は、RCをうまく行えば、当該リスクを伴う行為を実施できる
と思ってしまうと失敗。RCは、自分たちだけの目的を達成する手段ではない
「合意=自分たちのやりたいこと」ではない。
「東海村におけるリスクコミュニケーション活動に向けて」 より
リスクの存在を認め、リスクのある行為について、その是非に関する決定方
法・手続きを明確に定めたルールがあり、それ故、リスクについて対応・対策
を皆で考えることができ、そして、この過程で当該リスクを減らしていくことの
できる社会  リスクコミュニケーション は、この社会を実現する第一歩
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茨大社会と科学技術001
吉川の発言の意味するところ
どこかで決定されたことの是非を考えるものではない。
その場で決定する内容(どうするべきか)を考えること
「どうするべき」かに、あらかじめ制限を設けないこと
リスク提供側は、RCなど市民の決定によって、自分たちがしたいことができ
なくなることを恐れてしまう。そこで、制限を設けたり、自分たちの意思を伝える
場と見てしまう。住民の意見を愚かな決定(衆愚)と決め付けてしまう
たとえ、衆愚な決定になったとしても、衆愚となる可能性が否定できないから、
市民が決定に関与することには制限をつけるべきだとする意識を完全に否定
することを“過激に”表現した発言、そのくらいの意気込みをもたないと結局は
“リスク提供側・専門家決定”にもどってしまう
受容への手続きとして説明・説得だけのものではなく、手続き的公正
を遵守した決定過程への入り口としてのリスクコミュニケーション
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茨大社会と科学技術001
『行政、専門家が推進すべき(したい)と判断したものを市
民が受容する(させる)』 プロセス から
『市民、行政、専門家が共に寄与・貢献する協働をへて、
判断・選定したものを行政、専門家が市民の注視の下に
推進する』 プロセスへの“発想”の大転換
∴よい関係は同等の“権利”から!
発想を転換することによる科学技術そのものの変化
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茨大社会と科学技術001
科学技術と社会の密接な関係から導いた科学
技術の発展の駆動力と道筋の設定こそが円滑
な科学技術導入をもたらす
合意形成=利害共有者が合意できる取り引きを見出す取組
協働×「市民だけで決める」、「行政が決め、市民を説得」
◎市民、行政も“ひとり”の利害共有者として同等の立場
社会科学技術
行政
市民
vs
市民
行政
市民
説得
茨大社会と科学技術001
協議
交渉
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