精神腫瘍学の語源: Psycho-Oncology(米国)やPsychosocial Oncology(西欧)の邦訳 :Psycho =こころ、心理、精神、Psychosocial =心理社会的 :Onco=腫瘍、logy =学問 精神腫瘍学の定義: 精神医学、心理学をはじめ腫瘍学、免疫学、内分泌学、社 会学、倫理学、哲学など、あらゆる科学的手法を駆使してがんの人 間学的側面を明らかにすることを目的とする。 特に、以下の2つの目標が強調される。 1. がんが心に与える影響 :クオリティオブライフの向上(QOL、生活の質、生命の質) 2. 心や行動ががんに与える影響 :罹患を減らすこと、生存を延ばすこと 1 緩和医学 精神腫瘍学 中世 収容施設 収容施設 1900- 聖ジョセフホスピス Johns Hopkins大学に 精神医学講座 →心身医学 19401967 聖クリストファーホスピス →独立型 →在宅ケア →症状緩和チーム(1976) 1977 1982 1986 1992 2002 2006 2007 →リエゾン精神医学 スロンケタリング がんセンターに精神科 聖隷三方原病院にホスピス WHO三段階除痛法 国立がんセンターに精神科 世界初の精神科医必須の緩和ケアチーム 在宅総合支援診療所 がん対策基本法 適切な精神科コンサルテーションを阻害する要因 1. 担当医など身体の専門家 • 精神症状に対する認識の低さ (Derogatis, 1976) • 通常反応との鑑別診断の困難さ(「がんだから落ち込んでいる」 :Rodin, 1986) >>>教育・臨床・研究 2. 精神科医など心の専門家 • がんの知識不足が招く貧困な精神科コンサルテーション(McCartney, 1985) >>>教育・臨床・研究 3. がんや死を取り巻く社会環境・医療文化 • 告知のない患者医師関係に入る精神科医の曖昧さ (可哀想、見捨てられた、スティグマ) • リエゾン精神医学の医療文化がない >>>啓蒙・研究 サイコオンコロジー入門、日本評論社、1995 3 がん患者の心の評価とサポートの4段階 -英国がん患者の支持・緩和ケアマニュアル NHS-NICE 2004 第一段階:すべての医療スタッフに必須の評価とケア ・心理的ニードの評価、疑わしいと思ったときに精神保健の専門家へ 相談 ・基本コミュニケーション(適切な情報提供、理解の確認、共感、敬 意)である。 第二段階:精神保健従事者に若干の訓練を要する評価とケア ・スクリーニング;がんの診断時、再発時、治療中止時などストレス時 ・危機介入、支持的精神療法、問題解決技法を提供する ・対象:がん専門看護師、ソーシャルワーカー、英国ではGP. 4 第三段階:精神保健専門家による診断と治療 ・診断:軽度ー中等度の不安、うつ、怒りなど ・治療:怒り、否認、希死念慮、スピリチュアルな問題、認知行動療法. ・対象:臨床心理士 第四段階:精神保健専門家による診断と治療 ・診断:重度のうつ病、せん妄、不安障害、人格障害、アルコール障 害、自傷行動など ・治療:中等度以上の精神疾患の治療を行う. ・対象:精神科医(スペシャリスト過ぎる!) 5 がん医療における悪い知らせ :患者の将来への見通しを根底から否定 的に変えてしまうもの Buckman: BMJ, 1984 検査 がんの診断 サバイバー 52万人/年 男性:二人に一人 女性:三人に一人 闘病者300万人 再発・進行 抗がん治療中止 32万人/年 6 インフォームドコンセントと心の機能 説明 と 同意 知 → 情 → 意 説明→気持ち→同意 7 がんに対する心の反応 検査 日 常 生 活 へ の 適 応 がん } 衝撃 否認 集中力低下 食欲低下・不眠 絶望 不安 怒り 悲嘆・落胆・うつ 0 2週 3 ヶ月 日常生活に支障なし •現時的対応 •情報収集 •孤立感 •疎外感 •楽観的見通し 「自分のがんは 治るのでは?」 時間 8 再発の不安 山脇・内富, サイコオンコロジー,1997 ■身体機能の喪失と回復(ー1年) :職場復帰(体の労働と頭頚部のがん) >>>気持ちを打ち明ける ■再発不安(ー3年) :例)初めての水泳(プールvs.沖合い) >>>家庭や職場の受け入れ態勢作り ■病気の前と後の人生の再統合(3年ー) >>>再設計 再発・進行に伴う悩み ■ まず結果を頭(知)だけでなく、 気持ち(情)においても受け入れる ■ 遣り残した仕事、育児、家族を残すこと ■ 見捨てられるのではないかという不安、 無価値感、他者への依存の増大 自分らしく生きるために ■ 身近な人に気持ちを打ち明ける. ■ 誇りにしている過去の業績や思い出を 大事な人と振り返る. ■ 目標や希望について話し合う. 独立変数 介在変数 がん種 (肺、乳腺、頭頚部 など) 身体状態 (疼痛、倦怠感、呼吸困難、 Performance status, ADLなど) 心理・社会・行動学的要因 -基本属性 (性、年齢、教育、職業、経済状態など) -心理行動学的 治療法 (性格、コーピング、健康行動など) -既往の精神疾患 (手術、化学療法、 放射線など) (うつ病、ニコチン依存、アルコール関連障害など) -社会的 従属変数 QOL -身体機能面 -心理的 -社会的 -スピリチュアル 罹患・生存 (配偶者、友人、医療者からのソーシャルサポートなど) -環境的 (がん告知の状況、精神科・ソーシャルサービスへのアクセスなど) 症状緩和 リハビリテーション サイコオンコロジーの介入 -精神療法 -薬物療法 -行動療法など QOLと罹患・生存に関するサイコオンコロジーモデル △ △ 前向き態度、絶望態度、うつ状態と 生存期間 (578名) Watson et al, Lancet, 1999 Watson et al, EJC 2005. Overall Survival Disease-free Survival 絶望<12点(194/486) 絶望>=12点(49/91) 結論:一致した証拠はない。無理に「前向きに」などと特定の取り組 み方や態度を身につけなければならないと感じる必要はない。 ただし、絶望、うつ状態、今後の課題. 13 進行再発乳がん患者のグループ療法 (235名) Goodwin PJ, et al, NEJM, 2001 •精神科医Spiegelのグループ療法の追試:カナダ7州の施設 •235 名が研究に参加 •201 死亡 (86 %) •17.8 月 vs 17.6 月 結論:グループ療法 に参加しなければ ならないと感じる必 要はない. 6 14 ホスピスケアと遺族の生存期間: a retrospective cohort study Christakis NA & Iwashyna TJ, SS&M, 2003 •米国一般老人夫婦:195.553夫婦 •ホスピスケアを受けた /受けない30.838夫婦 •死別後18ヶ月死亡 •妻:4.9% v.s. 5.4% •夫:13.2% v.s. 13.7% 結論:良いケアは、遺族 にも良い効果をもたらす 可能性がある. 女性OR: 0.92 (0.84-0.99) 男性OR: 0.95 (0.84-1.06)
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