社会福祉施設等に おける 感染症対策の基本 平成24年10月 長野県佐久保健福祉事務所 1 本日お話すること Ⅰ 感染症の基本知識 Ⅱ 日頃の予防について Ⅲ 感染症が発生したら Ⅳ 事例を通して 2 Ⅰ 感染症の基礎知識 1) 感染症とは 2) 感染のしくみ ①感染源 ②感染経路 ③感染を受ける人 3 Ⅰ 感染症の基礎知識 1)感染症とは ■ 「感染」と「感染症」 感染・・・・ ウイルスや細菌などの病原微生物が、人、動 物の体に侵入し、定着、増殖する状態 感染症・・・・ 感染の結果、発熱や下痢、咳等の生体の異 常が生じてくること。発症といいます。 4 これまでにもいろいろな感染症が 施設の現場で問題となりました 結核 インフルエンザ レジオネラ症 感染性胃腸炎(ノロウイルスなど) 腸管出血性大腸菌感染症(O157など) 食中毒 MRSA どんな感染症にも対応でき 疥癬 る方法を普段からとってお くことが大切です! ・・・・・・ 5 2)感染のしくみ 一つでも欠けると、感染症は起きない! 施設では最重要 ①感染源 (病原体) ③感染を受ける人 ②感染経路 (宿主) この感染症の3要素のつながりを断ち切れば、感染 拡大防止になる。 感染症予防の徹底にもなる。 6 ①感染源(病原体) ・病原体:細菌、ウイルス、ダニ、真菌(カビ)など ・これらの病原体を持つ物や人のことで、食品、患者等 ・感染に必要な病原体の量 ・少ないと感染源にならない 対応 ・増やさないことが大切 ・発病者の早期発見と治療 ・定期的な清掃による清潔保持 ・適切な消毒など 感染源を持ち込まない・増やさない対策を! 7 ②感染経路 細菌、ウイルスなどを体内に運ぶ経路のこと ○空気感染(飛沫核感染) ・病原体が空中を浮遊し、それを吸い込む ことでうつる ○飛沫感染 ・咳、くしゃみなどを介して感染する ○接触感染 ・接触を中心にうつるのも ○その他 ・飲食物を介して感染する経路(経口感染) サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、 コレラ、腸管出血性大腸菌感染症など ・昆虫などにより媒介される感染症 疾患(媒介動物):マラリア(蚊)、ツツガム シ病(ツツガムシ)、回帰熱(ダニ、しらみ) など 対応 ・手洗いの徹底 ・患者の血液、便、おう吐物 等の排泄物には直接触れな いなどの標準予防策の徹底 ・食品を衛生的に扱う 感染症を施設で拡げ ない・持ち出さない 8 ③感染を受ける人 ■以下のような時に免疫力が低下し、感染症にかかりやすくな る。 ・かぜ、寝不足、不規則な生活 ・抗がん剤による治療 ・大きな手術をうけたばかりの人 ・糖尿病 ■特に抵抗力の弱い人(高齢者・こども) 対応 ・抵抗力をつけるために、健康の保持・増進 ・予防接種 ・手洗い等の個人の対応 9 Ⅱ 日頃の予防について (1) 1)標準予防策 ①手洗い ②使い捨て手袋 ③マスク・ゴーグル ④エプロン・ガウン 2)感染経路別予防策 ①空気感染予防策 ②飛沫感染予防策 ③接触感染予防策 10 (1)標準予防策(スタンダードプリコーション) すべての患者(利用者)に適応される方法 (2)感染経路別予防策 空気感染・飛沫感染・接触感染 全ての湿性生体物質(血液、体液、汗を除く分泌物、 排泄物)は感染の危険がある。 感染経路の遮断 (感染源を持ち込まない、拡げない、持ち出さない) 感染源を伝播させず、同時に自分をも守る! 11 ①手洗い 施設ケアでは最も基本で、最も重要な予防 手洗いが必要な場面 勤務の開始時、終了時(休憩前後も同様) ケアの開始前、終了時 手袋を外したとき 喫煙したとき 体液に触れたとき 血液、体液、排泄物、粘膜 調理、食事の前 動物に触ったとき トイレを使用した後 「一ケア行為、一手洗い」の徹底 手は 接触感染、飛沫感染の 運び屋! 12 手洗いの方法 指輪や時計をはずし、爪は短く切っておく 流水で手を濡らしてから、石けんを手にとる 手のひら、甲、指の間、親指の付け根、指先・爪の間、手首 を各5秒ずつ、合計30秒かけて丁寧に! 流水ですすぐ ペーパータオルで拭く 手首か肘で蛇口を閉める 褥瘡の処置、下痢便や血液・体液に触れた場合、手洗い後 に乾燥させてから速乾性擦り込み式手指消毒液(ウエルパ ス、ヒビスコール)を擦り込む。 手洗い後、消毒後は、無意識に鼻や口、髪の毛などに触れ 13 ないようにする ②使い捨て手袋 プラスチック製の使い捨て 手袋をする場面 血液、体液、下痢便等に触れる可能性があると き 口腔ケアのとき 自分の手指に傷があるとき 手袋をしなくてもいい場面 更衣介助 使用にあたって 利用者、ご家族に 説明、了解を 食事のケア 入浴のケア 14 ③マスク、ゴーグル(めがね) サージカルマスク 排泄物や吐物等が飛び散って、目、鼻、口を汚染 するおそれのある場合 咳、くしゃみの症状がある時は、マスクの着用 ④エプロン、ガウン 褥瘡のある人など、血液や体液が身体に触れる 可能性があるとき 使用後は、汚れた方を内側にしてたたむ できれば、防水性で使い捨てのものを用意する 15 2)感染経路別予防策 ~①空気感染予防策 ~ 結核、麻しん、水痘 空気感染 マスク 飛沫核(直径5μm未満)が空中に浮遊 病室から廊下、他の病室へと拡散する 部屋に入るときはN95マスクを着ける 患者配置 個室管理 N95マスク 陰圧、1時間に6回以上の換気、院外への排気 病室のドアは閉じておく 個室管理ができない場合には、同一病原体患者を同室にする 患者移送 制限する 必要なとき、患者さんはサージカルマスクを着用 16 感染経路別予防策 ~ ②飛沫感染予防策 ~ インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、風疹など 飛沫感染 咳、くしゃみ、話すときのつばが飛ぶ(1m以内) マスク 患者の1m以内に接近する時にはサージカルマスク 患者配置 個室隔離または集団隔離または1m以上離す 患者移送 制限する 必要なとき、サージカルマスクを着用 17 感染経路別予防策 ~ ③接触感染予防策(1) ~ MRSA、腸管出血性大腸菌(O157)、ノロウイルス、 疥癬など 手や白衣、汚染した物品を介して感染する 手袋 部屋に入るときは手袋を着用する 汚染物に触ったあとは交換する 部屋を出るときは外し、消毒薬で手洗いをする ガウン(防水性のもの) 患者または環境表面・物品に接触しそうなときは、部屋に 入る前に着用し、部屋を離れるときに脱ぐ ガウンを脱いだ後は衣類が環境表面や物品に触れない ようにする 18 感染経路別予防策 ~ 接触感染予防策(2) ~ 器具 できれば専用にする できなければ、他の患者に使用する前に消毒す る 患者配置 個室隔離あるいは集団隔離あるいは病原体の疫 学と患者集団を考えて対処する 患者移送 必要な場合のみ制限する 19 Ⅱ 日頃の予防について (2) 3)利用者・スタッフの健康管理 ① スタッフの健康管理 ② 利用者の健康状態を観察 4)吐物の処理 ① 吐物処理のための準備品 ② おう吐・下痢の時の消毒 5)環境整備・ゾーニング 6)研修・マニュアル 20 3)利用者・スタッフの健康管理 ①スタッフの健康管理 健康的な生活を送る 定期健康診断を確実に受診 就業時の健康確認 発熱 咳・痰 調理従事者は 特に重要 下痢 傷(出血) 症状がある場合には早めに受診 治療する場合には最後まで確実に! 21 ②利用者の健康状態を観察 いつもと変わったところはないか 元気がない、食欲がない、など 観察したことは 記録しておくこと! 「症状なし」も 大切な記録 熱はないか 咳や痰はないか どこか痛がったり、かゆがったりしないか 下痢をしていないか 皮膚に異常(発疹や褥瘡)が出ていないか 気がついたことがあったら、 家族に話し、 主治医や看護師にも連絡を! 22 日頃とちがう? 入所者の健康状態が簡単 にわかるように、一覧表を 作成しておくとよい 部屋や部署などの偏りがな いか、時、場所、人に共通 点がないか、注意する 集団感染を疑うときには、 嘱託医の先生に相談し、保 健所(保健福祉事務所)に もご連絡を 一覧表の例 ★略号の例 下痢:げ、嘔吐:お、発熱:ね 発疹:ほ、咳:せ、痰:た、入院:入 氏 名 4日 (月) 5日 (火) A棟 ○ ○ げ、 お、 ね、 入 げ A棟 △ △ A棟 ▽ ▽ B棟 □ □ B棟 ◇ ◇ 部署 ね 6日 (水) 7日 (木) ね ね 8日 (金) 9日 (土) 10日 (日) お お、 ね ほ ほ げ、 ね 23 4)吐物の処理 ●すぐに人を遠ざけ、換気をする ●乾燥する前にすばやく処理 吐物及びそれに汚染された床、カーペットなどには注意! 汚れる可能性があるときは、防水性のエプロンを着用する 使い捨ての手袋、使い捨てのマスクを使用する 汚物は使い捨ての布やペーパータオルできれいに拭き取り、 すぐにビニール袋に密封する 汚染された場所は、次亜塩素酸ナトリウム(ハイターなど)を 含ませた布で拭く 手袋、マスク、エプロンをはずす 手洗いの上、速乾性擦り込み式手指消毒液で消毒する うがいをする すべて標準予防策です 24 ① 吐物処理のための準備品 使い捨てマスク 使い捨て手袋 ペーパータオル、古タオル、新聞紙等 使い捨てエプロン ビニール袋(大・中・小) 消毒薬希釈用容器(バケツ等) 汚物入れ(バケツ等:あらかじめビニール袋をセッ トしておくとよい) 消毒薬 (次亜塩素酸ナトリウム原液) 計量用カップ等(事前に必要量を印しておくとよ い) 25 ①汚染場所に関係者以外 の人が近づかないように する。 ②処理をする人は使い捨 て手袋とマスク、エプロン を着用。 ③おう吐物は使い捨ての 布やペーパータオル等で 外側から内側に向けて、 拭き取り面を折り込みな がら静かに拭い取る。 同一面でこすると汚染 を拡げるので注意 26 ④使用した使い捨ての布や ペーパータオル等はすぐに ビニール袋に入れ処分する。 ビニール袋に0.1%次亜塩素酸ナト リウムを染み込む程度入れる。 ⑤吐物が付着していた床とそ の周囲を0.1%次亜塩素酸 ナトリウムを染み込ませた 布やペーパータオル等で覆 うか、浸すように拭く。 金属は腐食するので、10分後に水拭きする。 ⑥処理後は手袋をはずして手洗いをする。手袋は、使っ た布やペーパータオル等と同じように処分する。 27 ★注意! おう吐物は想像以上に遠 くまで飛び散っています。 実験の結果、床から1m の高さから吐くと、カーペットでは吐いた場所か ら最大1.8m、フローリングでは最大2.3m 飛び散ることを確認しました。 カーペットの場合は、毛足の長さに左右されますが、広い範囲を消毒 しましょう。 28 資料:防ごうノロウウイルス感染(東京都福祉保健局) ② おう吐・下痢の時の消毒 ・ウイルスの消毒は、消毒用 アルコールは効きにくいた め、塩素系漂白剤(塩素剤) で行います。 ・使用用途によって、塩素濃 度が0.02-0.1%になる ようにして使用します。 【消毒薬の濃度と使用用途】 塩素濃度 0.02% 0.1% 使用用途 日常の清掃時 調理台や調理器具・床・ドアノブ・便座・おもちゃな どの消毒 おう吐物や排泄物で高濃度に汚染された場所や物 29 ・市販の塩素剤の多くは、塩素濃度 が約5%ですので、50-100倍に 希釈して使用します。 ・希釈をする際には空のペットボトル を使用すると便利です ・調製する際は、直接塩素剤が手に 付かないように手袋をしてください。 【使用上の注意】 ◆ペットボトルを利用するときは、誤って飲まないようにラベルを貼 るなどしてください。 ◆希釈した塩素剤は時間が経つにつれて効果が減っていきます ので、作り置きはせず、使用する都度調整をしてください。 ◆金属に対しては腐食性があります。拭いた後10分ぐらい経過し たら、必ず水拭きをしましょう。 ◆使用する際は換気を十分に行ってください。 ◆手指の消毒には使用しないでください。手が荒れてしまいます。 手指は石けんをつかった手洗いを行ってください。 30 【消毒液の作り方】 市販の塩素系漂白剤を、以下のように薄めて使用します。 ペットボトル(2リットルや500mL)の空き容器を使うと簡単に 作れます。 あ → → 市販の 塩素系漂白剤 (原液) ペットボトルの キャップ(1杯約 5mL)で量り取 る 空のペットボトル(2 リットル、500mLな ど)に量り取った塩素 剤を入れ、水を加え る 資料:ノロウイルス感染症の二次感染を防止するために(長野県健康福祉部) 31 ①塩素濃度0.02%の消毒薬を作る場合 塩素剤の濃度 (商品名の例) 消毒薬の量 1% (ミルトンなど) 5~6% (ハイター、ブリーチ、 ピューラックスなど) 全量2リットルの 場合 40mL (キャップ8杯) 8mL (キャップ約1.5杯) 全量500mLの 場合 10mL (キャップ2杯) 2mL (キャップ約半分) 水をペットボトル一 杯になるまで入れる ②塩素濃度0.1%の消毒液を作る場合 塩素剤の濃度 (商品名の例) 消毒液の量 1% (ミルトンなど) 5~6% (ハイター、ブリーチ、 ピューラックスなど) 全量2リットルの 場合 200mL 40mL (キャップ8杯) 全量500mLの 場合 50mL (キャップ10杯) 10mL (キャップ2杯) 水をペットボトル一杯 になるまで入れる 32 5)環境整備・ゾーニング (清潔区域と不潔区域の区分け) 施設内の定期的な清掃 【ドアノブ・手すり・ベット柵等利用者が触れる可能性がある場所の清拭、 床清掃、水周り(手洗い場、流し台、汚物処理室、浴室等)の清掃】 汚物を触れた手で触れたところは消毒液を含ませ た布で消毒する。 清潔区域(調理室、調乳室、給湯室等)と、汚染区 域(トイレ、手洗い場、汚物処理室等)を分ける 排泄物の処理は汚染処理専用の場所で行う 汚染されたものは、清潔な区域(食堂、プレールー ム等)と交わらない 33 6)研修・マニュアル 職員に対する感染症の研修等を実施し、情報共有 を図る 感染症対策マニュアル等対応の手引きなどを整備 して、職員が共有しておく。 感染症の流行状況の把握をする。 長野県公式ホームページ http://www.pref.nagano.lg.jp/ →分野でさがす→暮らしの情報→【健康】感染症→感染症情報→週報/ 月報 34 Ⅲ 感染症が発生したら 施設において、感染症が疑われる事例が発 生した時には、感染の拡大を防止する対策を とる。 1)発生状況の把握 2)感染拡大の防止 3)関係機関等への連絡 35 1) 発生状況の把握 ①症状の確認:下痢・おう吐・発熱、その他の 症状について確認する ②施設全体の状況の把握 ・日時別、棟・フロア・部屋別の発生状況(担 当職員を含む)を把握する ・受診状況、診断名、検査結果及び治療内 容の確認をする ・普段の有症者数(下痢・おう吐等の胃腸炎 症状、発熱等)と比較する。 36 2)感染拡大の防止 ①職員への周知 施設管理者は感染症等の発生状況を関係職 員に周知し、対応の徹底を図る。 ②感染拡大防止策 ・手洗い、排泄物・おう吐物の処理方法を徹底 して実行する ・消毒の頻度を増やすなど、発生状況に対応 した施設内消毒を実施する 37 3) 関係機関等への連絡 ①施設医(嘱託医)への連絡 重症化、感染拡大を防ぐため、適切な医療 及び指示を受ける ②利用者家族への連絡 発生状況を説明し、健康調査や二次感染予 防について協力を依頼する ③保健所や市町村等の社会福祉施設等担当 部署に連絡し、対応についての指示を受ける 38 Ⅳ 事例を通して 事例 1 保育園で発生した腸管出血性大腸菌感染症 事例 2 結核集団感染 39 事例 1保育所で発生した腸管出血性大腸菌感 染症(O26) (概要) ○初発患者 8月3日に発症 10日に届出 ○保育所の環境調査から、園児がプールに入る前に足を洗うたらいに残って いた水から、患者さんと同じ感染源の腸管出血性大腸菌(O26)が検出され る。 ○感染者数 50名(8月21日現在) 区 分 感染者 左記のうち 無症状病原体保有者 ①保育所内での感染が疑われる人 (園児) 39名 20名 ①保育所内での感染が疑われる人 (職員等) 1名 1名 ② ①の接触者(家族等) 10名 7名 *無症状病原体保有者: 感染者のうち、下痢等の症状はないが菌を保有している者 平成24年8月21日 長野県健康福祉部プレスリリースより 40 結果1 和式トイレでの水様下痢便に よる身体の汚染状況 ●擬似便装置取り付け位置 41 結果1 和式トイレでの水様下痢便に よる被服の汚染状況 42 結果1 和式トイレでの水様下痢便に よる周囲への汚染状況 43 結果2 洋式トイレでの水様下痢便に よる被服及び周囲への汚染状況 ●擬似便装置取り付け位置 44 結果3 排便後肛門拭き取り時の手 の汚染 拇指球及び袖口に汚染が認められる 45 事例2 結核集団感染 (概要) 東京都の精神科病院の認知症病棟で、入院患者、職員が結核に集団感染する。 平成24年2月1日に入院患者(A)が肺結核と判明 平成24年2月3日に入院患者(B)が肺結核と判明 その後、6月28日までに入院患者と職員の合計10名が肺結核(1名は肺門リンパ節結核)と判明する。 ○発症者・感染者発生状況(平成24年7月9日) 入院患者(62名) 職員(53名) 計(115名) 発症者 (うち、死亡者) 7 (3) 3 (0) 10 (3) 感染者 46 22 68 *発症者10人のうち1人は肺結核で死亡、2人は誤嚥性肺炎で死亡、7人は治療 *感染者68人のうち48人は発病予防のため服薬治療、20人は経過観察 ○感染拡大の主な要因 ・初発患者に病棟内の徘徊行為があり、痰や唾液を他人にあびせる行為が散見された。入院患 者の多くが日中を病棟ホールで過ごし、初発患者と長時間にわたり接触があった。 ・入院患者は認知症で訴えが少なく、周囲が発病に気づきにくかった ・入院患者さんの多くは糖尿病、呼吸器障害、嚥下障害などの基礎疾患があり免疫力が低下して いる状態だった 平成24年7月9日東京都福祉保健局 報道発表資料より 46 結核の現状 平成23年 新登録者 佐久地域 15人(7.0) 長野県 217人(10.1) 全国 22,681人(17.7) 24年9月まで 23人 ( )内:り患率=人口10万人あたりの患者数 ※ 結核は今でも一日66人の新しい患者が発生し、6人が命を 落としている日本の重大な感染症です。(2009年) ※ 長野県は、全国的にも、結核患者が少ない県のひとつです。 47 日本の結核、6つの「問題点」 現在でも日本は世界の中では「中まん延国」で、問題はより複雑になっています。 ①若者の結核も要注意 ②働き盛りの人の発見が遅れる ③外国人の割合が拡大している ④感染者がますます高齢化 ⑤地域格差がある ⑥HIV/AIDSとの合併の危険 資料:結核の常識2012(公益財団法人結核予防会) 48 結核の感染と発病のちがい 感 染 吸い込まれた結核菌が肺の奥(肺胞)に到達し、定着する こと 症状はなく、他の人にうつす恐れは全くありません 1950年頃までの日本は、結核がまん延していたので、現 在高齢者の多くが、結核菌に感染し、体内に結核菌をもっ ています。 発 病 結核菌に感染している方の、体の抵抗力が弱ったときや、 体力が衰えたときに、結核菌が活動を始めて、発病します 49 こんなときは病院へ 結核の初期症状は、かぜとよく似ています。 せきやタンが2週間以上続いたら、結核を疑って早めに医療機関で受診 しましょう。 ・咳が2週間以上続く ・タンが出る ・からだがだるい ・急に体重が減る ※高齢者の方は、自分で症状を訴えることのできない方もいます 咳や痰をだす体力のない方もいます 50 早期発見のために 施設でチェック 1 受け入れ時 胸部レントゲン検査結果の確認 結核の発病リスクの把握 2 結核定期健診 入所者(特養等): 65歳以上の方については、施設が1回/年健診を行うこと になっています。 利用者: 老健入所者、ディサービス・グループホーム等利用の方に ついては、市町村長が行う健診を受けることになっています 従事者の健康管理: 定期健康診断(年1回、胸部X線写真)の確実な実施 3 毎日の健康観察と記録 呼吸器症状(2週間以上の咳)、発熱などをチェック 4 日頃からの意識づけ ※ 結核の早期発見を行うためにも、定期健診は必ず受診してください。 高齢者施設における結核対策パンフレットより 51 患者が発見されたら・・・ 保健所が患者や施設にいろいろお聞きし、そ の後の対応を検討する 感染している可能性のある入所者、職員を対 象に接触者健診を実施する 接触者健診は、保健所の業務となります 保健所との 十分な連携を お願いします! 患者が発生したことではなく、 発生した後の 対応が問われます! 52 ご清聴 ありがとうございました 53
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