造船産業構造の変化に対応 した共同研究のあり方

造船産業構造の変化に対応
した共同研究のあり方(提言)
「影本委員会」報告書の概要
平成16年5月28日:造研理事会報告
研究委員長 嶋田 武夫
1
第一章 はじめに
1978‘危機の「黒川懇談会」の結論
 大変貌の海運産業と共同研究の拡大
 1995‘「SRビジョン21」提言の策定
 韓国の躍進と急成長を始めた中国
 次の需給バランス崩壊時の防波堤は?
 最近の造船産業構造の変化(5項目)

2
造船産業構造の変化(5項目)
(1)大手造船部門の分離独立、他社統合
 (2)中手・強手の躍進
 (3)韓国造船業プライスリーダーでトップに
 (4)中国造船業の急速な立ち上がり
 (5)日本造船産業の研究開発資源枯渇化

3
世界の新造船竣工量の推移と予測
日本(Japan)
西欧(W.Europe)
その他(Others)
中国(China)
(100万GT)
50
韓国(S.Korea)
実績
見込
現実的最大建造能力
45
世界合計
40
〈37.0〉
〈37.5〉
〈33.0~36.0〉
34.2
35
30
Drewry Annual Rev.
(2001年3月)
世界合計
31.3
31.7
その他
〈26.0〉
〈27.0〉
〈25.0〉
25
12.4
〈20.0〉
22.7
西欧
20
韓国
海産研・長塚氏の予測
18.2
15.9
13.1
15
中国
その他
日本造工予測
(2001年12月)
西欧
10
日本
日本
11.4
5
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
注 : 1. 対象は100GT以上の商船
2. ()内は世界計に対するシェア(%)。ただし、1979年までの第3造船国には韓国を含む。
3. 2001年以降の現実的最大建造能力には、各国の設備能力の増減と従業員の増減、
生産性向上などを考慮した値。
資料 : 竣工量はロイズ船級協会資料。〈 〉は現実的最大建造能力
2005
2010
2015
2020
2025
(年)
4
表1-2 各国竣工量の船種別シェア
100%
90%
日
台
中
他
デ
独
独
80%
イ
70%
ポ
独
60%
韓
50%
日
他
他
中
日
台
日
ポ
中
40%
日
韓
日
イ
30%
韓
20%
韓
独
10%
0%
オ イル タンカー
ハ ゙ル クキ ャリアー
一般貨物船
コンテナ 船
LN G ・LPG ・ケ ミカル
漁船
その他
5
表1-2-Ⅱ 7千TEU 以上の大型コンテナ船建造計画 (2004~2007年竣工分 韓国が世界の約90%のシェアを確保 )
千TEU
100%
オデンセ
90%
IH IM U
隻数
100.0
50
90.0
45
80.0
40
大宇造船海洋
80%
韓進重工
千TEU
隻数
70.0
70%
35
60.0
30
50.0
25
40.0
20
30.0
15
20.0
10
20%
10.0
5
10%
0.0
0
60%
三星重工
50%
オ
デ
ン
セ
IH
IM
U
大
宇
造
船
海
洋
0%
韓
進
重
工
現代重工
三
星
重
工
30%
現
代
重
工
40%
表2-2 日本の造船業(1万トン以上)のハーフィンダール指数の推移
3,500
第2章:
日本造船業の現状と技術開発
(Ⅰ)
韓国の造
船業
3,000
2,500
3,171
ハーフィンダール数 ( O rris C lem ense H erfindahl/H .I.)
は同種企業の集中度を表す指数で、各企業のシェアの2
乗の総和に10,000を掛けた数値である。
[造船環境の変化と活路]
2,000  (1)主役交代
H.I
. 3,000超・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高位寡占型(Ⅰ)
H.I
. 1,800超~3,000以下・・・・・・・・・高位寡占型(Ⅱ)
H.I
. 1,400超~1,800以下・・・・・・・・・低位寡占型(Ⅰ)
 (2)韓国の積極的攻勢
H.I
. 1,000超~1,400以下・・・・・・・・・低位寡占型(Ⅱ)
1,500
H.I
. 500超~1,000以下・・・・・・・・・・・競争型(Ⅰ)
H
.
I
 (3)需給ギャップ . 500以下・・・・・・・・・・・・・・・・・・・競争型(Ⅱ)
1,000  (4)日本造船業の活路
769
756
743
704
680
701
686
696
694
714
665
 (5)舶用工業の活性化
500
1.国土交通省海事局調べ
2.1万総トン以上の船舶の建造能力を有する事業者(30社)を対象
3.上記30社で我が国建造量の約90%を占める。
794
692
736
692
ユニバーサル造船の統合
を含めない場合
0
90年
91年
92年
93年
94年
95年
96年
97年
98年
99年
00年
01年
02年
7
表2-3
80年を100としたときの日本の受注船価(単価)の推移 ($,W on,円での比較)
第2章:
日本造船業の現状と技術開発
(Ⅰ)
256%
250%
W on/C G Tで表示した
日本の船価の指数
208%
200%
200%
204%
196%
195%
分
析:(社)日本造船研究協会
原データ:(社)日本造船工業会
192%
176%
[造船環境の変化と活路]
150% (1)主役交代
 (2)韓国の積極的攻勢
 (3)需給ギャップ
100%
 (4)日本造船業の活路
 (5)舶用工業の活性化
161%
132%
125%
158%
162%
138%
137%
123%
135%
124%
円/C G Tで表示した日本
の船価の指数
112%
113%
113%
100%
$/C G Tで表示した日本の
船価の指数≒国際船価
157%
118%
110%
94%
99%
94%
87%
79%
78%
82%
90%
115%
112%
88%
105%
104%
97%
105%
96%
91%
90%
186%
178%
174%
158%
96%
88%
84%
72%
71%
68%
67%
50%
219%
78%
69%
65%
61%
61%
54%
56%
57%
60%
62%
56%
54%
53%
50%
49%
日本の契約船価(万円/C G T)は年々下がっているが、これを W on 換算して比較すると年々上昇している。すなわち、もし、両国が
国際市場で競い合って同じ船価で受注($で受注) し、資材と労働力を国内で調達するのであれば、韓国はW on の下落で国内船
価は上昇し、日本は円高で低下しているため、(輸入物価の値上り、賃金アップはあるにしても)、韓国は日本との競争上非常に有
利になっていることが判る。
0%
8
80年 81年 82年 83年 84年 85年 86年 87年 88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年
表2-9 船舶関係研究者数の推移(
大手7社)
人
1,400
1,200
1,099
1,067
1,041
1,076
1,000
800
758
633 631
600
550
536
532
559
525
472
400
396
366
306
371
276
354
295
200
279
(
原テ ゙ー ター :
国土交通省)
2年
01年
00年
99年
98年
97年
96年
95年
94年
93年
92年
91年
90年
89年
88年
87年
86年
85年
84年
83年
82年
0
9
表2-10 研究費の推移(
大手7社)
百万円
20,000
19,217
18,162
18,000
17,200
17,313
17,437
16,621
17,118
16,000
15,653
14,300
14,000
造船・
造機
海洋開発
小 計
15,400
14,175
13,361
12,593
13,558
12,000
16,584
13,376
12,066
11,792
12,672
11,240
12,125
11,722
10,183
8,914
10,000
11,241
9,906
9,474
9,684
10,227
9,919
8,318
8,000
7,945
7,480
7,227
7,753
7,097
7,049
6,000
6,031
6,130
6,126
4528
3,931
4,000
3,138
3,560
3,208
2,762
3,137
2,000
2,318
3,442
1,898
1,687
2,160
2,922
3,134
2,596
2,204
1,623
1,914
1,352
971
(
原デー ター :
国土交通省)
01年
00年
99年
98年
97年
96年
95年
94年
93年
92年
91年
90年
89年
88年
87年
86年
85年
84年
83年
82年
0
10
表2-11 産業別のR&D比(
研究費/売上高)
の推移
%
10
①全 産 業
②製 造 業
③造 船 業(大手7社)
④鉄 鋼 業
⑤鉱 業
⑥医 薬 品 工 業
⑦通信・
電気・
電子・
計測器工業
⑧精密機械工業
9
8
8.66
8.7
8.6
8.23
7
8.03
5.25
3.97
2.15
2
1
1.78
1.5
1.35
2.31
2.34
1.97 1.99
2.31
1.94
1.6 1.52
1.51
1.47
0.59
3.15
2.59
2.6
2.4
2.54
2.01
3.29
2.72
2.13 2.21
1.93
1.27
1.01
3.36
2.78
3.47
2.81
2.84
1.62
1.16
5.81
6.34
6.01
5.51
6.58
6.33
5.74
5.65
5.69
4.85
2.29
1.68
1.03
0.64
2.57
3.14
5.9
6.43
5.16
4.85
2.69
5.87
5.16
4.08
3
6.28
5.66
4.59
3.03
5.79
5.94
4.91
4.49
4.02
6.16
5.66
5.63
4.6
4.72
6.42
6.1 6.12
4.85
5
4
6.63
5.78
5.56
7.09
6.83
6.89
6.49
6
8.07
8.06
6.96
6.94
6.59
8.07
7.79
7.5
7.04
8.11
8.02
8.52
0.94
2.33
1.77
1.52
1.13
1.41
3.52
2.83
3.67
3.47
2.76
1.88
0.63
3.43
4.03
3.68
2.72
2.19
1.94
0.98
1.17
2.77
2.73
3.29
1.96
1.92
1.63 1.84
1.21 1.15
0.87
1.06
3.01
3.06
2.85
0.98
3.7
3.43
3.14
2.58 2.72
1.94
1.38
3.39
3.89
2.01
1.88
1.58
1.2
0.96
0.93
1.64
1.05
0.99
1.67
1.24
0.83
0
82年 83年 84年 85年 86年 87年 88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年
西暦年
11
第2章:
日本造船業の現状と技術開発
(Ⅰ)
[造船環境の変化と活路]
 (1)主役交代
 (2)韓国の積極的攻勢
 (3)需給ギャップ動向
 (4)日本造船業の活路は?
 (5)舶用工業の活性化による支援
12
日本造船業の現状と技術開発
(Ⅱ)
[技術開発環境の変化と日本の強み・弱み]
 (1)20世紀のレビユー
 (2)薄れる日本の強み(成功しなかった
「SR21ビジョン提言」と研究資源の枯渇)
 (3)更に深刻な少子化問題
13
日本造船業の現状と技術開発
(Ⅲ)(H7年「SR21ビジョン」)
[「SR21ビジョン」の5問題と5課題(方向)]
 ①価格、技術両面での競争激化②安全・環境へ
の対応③先端技術への対応④物流改革ニーズ、
新規需要創出⑤技術開発効率向上
 ①品質・性能高度化②造船基盤技術の高度化
③IT技術の高度化④革新的技術への挑戦⑤
ニューコンセプト(新規需要)の創出
 SR500/800シリーズへの展開
14
第3章:
今後の造船業の技術開発課題
[今後必要とされる技術開発]
(1)国際競争力の強化
(2)「LCV」向上船の開発と「技術伝承」
(3)新ビジネスモデルの創出
(4)時代の要請:安全と環境
(5)技術マネージメントの重要性
15
第4章:海運業から見た
技術開発の必要性
国際物流の動向変化(日/米・韓・中)
 海上貨物と航空貨物の国際輸送
 内航海運の現状と技術的課題
 技術開発と海運の対応
 海運関係課題の現状と課題
 海運の参画と貢献

16
第5章:社会変化に対応した
開発課題
地球環境問題(大気・海洋・リサイクル)
 安全運航への要求(操船性能向上、構造・
強度の信頼性回復(老齢船対策)、機関の
信頼性向上、衝突・座礁・火災事故回避)
 物流スピードと利便性の向上(推進効率、
荷役システム、係留システムなど)

17
第6章:今後の共同研究開発の
仕組み

SRが果たしてきた役割の高い評価。(但し
最近、近視眼的との批判あり)
 欧米SAFEDORと中国近代化の狭間が鍵
 産業構造の変化に伴う共同研究のあり方
と新しい仕組み(「まとめ」で提言)
 中・長期戦略に基きテーマの公募と実施を
する新フォーラム/プラットホームの設置
18
まとめ:Ⅰ黒川懇話会の結論
[共同研究が必要で有効な3条件]
(1)広範なデーター収集を行うなど1社
のみでは実施が困難な研究
(2)共同の場で実施することによりその
成果が説得力を強める研究
(3)多額の経費を必要とし、或いは
解明に長期間を要する研究
19
百万円(年度別研究費総額)
表6-1 SR研究 35年間の研究対象別推移
800
700
600
まとめ:Ⅰ黒川懇話会の結論
その他
運航技術
工作・材料
舶用機械
船体設計
500
400
300
200
100
0
20
71年 72年 73年 74年 75年 76年 77年 78年 79年 80年 81年 82年 83年 84年 85年 86年 87年 88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年
まとめ:Ⅱ提言
提言Ⅰ:「黒川懇談会」の結論に下記追加
(4)我が国造船業の中長期戦略に基づいた挑戦
的試みで、1社のみで実施するにはリスクが大き
すぎる研究
提言Ⅱ:民間主導の新プラットホーム設置
(5)我が国海事産業全体を俯瞰的に分析し、不断
に中長期戦略の策定と見直しを行うと共に、中
長期戦略に基づいた研究マネージメントを行うプ
ラットホームの設置
21
まとめ:Ⅲ 実施体制
(6)提言Ⅰ,Ⅱによるテーマの公募と実施する機
構。(事前の支援協力機関との基本合意が前
提)
既存枠にとらわれない新プラットホーム主導の研
究開発実施
 外部若手技術者(ポスドク)を含め大学の有効活
用
 一部アウトソースも活用
 独立行政法人との連携強化実現への方策

22
事前・中間・事後評価
評価の透明性と評価軸の確立は緊急課題
 新評価基準の策定と数値評価の挑戦
 新フォーラム・新プラットフォーム・新評価
システムの三位一体の改革を提言
 民の志の矮小化・官と学の浮世離れの進
行を止めて虚心に海事産業の未来を語っ
て欲しい。

23