フレア、ジェット、ガンマ線バースト

2004年1月20日 新潟大学理学部物理 談話会
フレア、ジェット、ガンマ線バースト
柴田一成
京大理花山天文台
本講演の内容
• 太陽フレアはどこまで解明されたか?
– 太陽フレアとは?
– 「ようこう」観測と統一モデル
• 太陽から宇宙へ
– 原始星フレア/恒星フレア
– 宇宙ジェット
– ガンマ線バースト
太陽フレアはどこまで
解明されたか?
Hα
太陽フレアとは
彩層
1万度
19世紀中頃発見
黒点近傍で発生=>
磁気エネルギーが源
サイズ~(1-10)万km
全エネルギー
1029 - 1032erg
(水爆10万ー1億個)
京大飛騨天文台
太陽フレ
アから放
出される
電磁波
「ようこう」衛星の見たコロナ
コロナは爆発だらけ!
X線望遠鏡
による
(1keV)
200万度ー
1000万度の
ガスが見え
ている
「ようこう」が見たフレア
軟X線(~1keV)
磁気リコネク
ション
長寿命フレア
(SXT, ~1keV、 Tsuneta et al. 1992 )
electron temperature ~10^7 K、
electron density~10^(10)cm^(-3)
Plasmoid ejection
associated with LDE
flare (Yohkoh/SXT)
Plasmoid speed is about
300km/s
Coronal mass ejections (CME)
(SOHO/LASCO)
Velocity ~10-1000km/s、mass ~10^(15)-10^(16)g
長寿命フレア vs インパルシブ・
フレア
寿命
1時間以上
サイズ
大
発生頻度
少ない
軟X線像 カスプあり
磁気リコネクション説でOK
1時間以下
小
多い
カスプなし
磁気リコネクション説では
説明できない!?
インパルシブ・フレアにおける
ループトップ硬X線源の発見
(Masuda et al. 1994 Nature)
カラー:
軟X線像
(1keV)
等高線:硬X線
(30keV)
=>高エネル
ギー電子
ループトップ~1億度
統一モデル
• ループトッ
プ硬X線源
は、fast
shock か?
T  m VA /(6k )
2
 10 K
8
X線プラズ
モイド噴出
を予言
Vjet  VA  1000km / s
インパルシブ・フレアの
上空にプラズモイド発見
プラズモイド速度
~130-200km/s
• Ohyama and Shibata
(1997,1998): プラズモ
イド噴出とリコネクショ
ンは密接に関係
太陽コロナにもジェット発見
(ようこう軟X線)
• 足元でマイク
ロ・フレア
• 長さ=数万ー
数10万km
• 速度=10-
1000km/s
太陽コロナ・ジェットのコンピュータ・
シミュレーション(横山・柴田1995)
• 温度分布
フレア観測のまとめ
現象
大フレア
長さ
(L)
寿命
(T)
Alfven
Time
(TA)
1時間
ー数日
30ー
~100
1000秒
プラズモイ
ド
千kmー 数分ー
数万km 1時間
1ー30秒 ~100
ジェット
数万ー
(長寿命フレア) 数10万
(インパルシブ・ km
T/TA
Mass
ejection
フレア)
小フレア
フレアの発生頻度
• べき関数(N=フレア発生数(>W)、
W=フレアのエネルギー)
dN

W
dW
  1 .6  1 .8
• マイクロフレアも
同じ頻度分布
フレア・ジェット
の統一モデル
(a,b): 大フレアと
プロミネンス噴出
コロナ質量放出
(c,d) :小フレアと
ジェット
2
dE B 2
2
2 B
エネルギー解放率=

Vin L  10
VA L2
dt 4
4
回転Hαジェット
(京大飛騨天文台:黒河ら1988)
ブルーシフト レッドシフト
合成
残された謎
• リコネクション・レイト(またはエネルギー解放
率)を決める物理
-速いリコネクションはなぜ起きるか?
• エネルギー蓄積機構
• トリガー機構
• 粒子加速
1. Plasmoid starts to be
ejected long before the
impulsive phase.
2. The largest plasmoid
acceleration occurs
during impulsve phase.
(Ohyama and Shibata
1997)
Ohyama & Shibata (1997)
Laboratory experiment
(Ono et al. )
恒星フレア/原始星フレア
恒星フレア(proxima Cen)
• 太陽フレアに
そっくりのX線
強度度時間変
化を示す
原始星フレア
(X線/あすか衛星:小山ら1995)
温度~
1億度
太陽フレアの
エネル
ギーの1
万倍以上
原始星フレアは、磁気リコネクショ
ン説で説明できるか?
• Yes
• 間接的な証拠が、
2 3
Emission Measure ( EM  n L )
vs Temperature の関係に見つかった
(Shibata and Yokoyama 1999、2002)
太陽・恒星フレアの Emission Measure
(EM=n2V) は温度(T)とともに増大
(n:電子密度、V:体積)(Feldman et al. 1995)
太陽・恒星フレアのEM-T関係
Feldman
et al. (1995)
の図の
Log-log plot
太陽・恒星フレアのEM-T関係
マイクロフレア
(Shimizu 1995)
太陽・恒星フレアのEM-T関係
原始星フレア
あすか
(Koyama et al.
1996, Tsuboi
et al. 1997)
フレアの温度は何で決まっている
か?
• 磁気リコネクション加熱=熱伝導冷却
のバランスで決まる(Yokoyama and
Shibata 1998、2001)
B VA / 4  T
2
TB
6/7
7/ 2
/ 2L
2/7
L
フレアの Emission Measure
(Shibata and Yokoyama 1999)
• Emission Measure
EM  n L
2 3
• フレアループの力学平衡
2nkT  B / 8
2
• 以上に温度の関係式を代入すると
5
EM  B T
17 / 2
磁場強度(B)=一定
EM  B 5T 17 / 2
太陽フレアも原始星フレアも、平均磁場強度は同じくらい
50-100G程度
フレアループの長さ=一定
原始星フレアが1億度であるのは、
フレアループのサイズが大きいため
原始星フレ
アとジェット
のモデル
(林、松元、
柴田 1996)
フレアのEM-T図はHR図
に似ている!(Shibata and Yokoyama 2002)
主系列フレア
EM-T図=フレアのHR図
1.
2.
3.
4.
コロナ系列
ナノフレア系列
フレアの進化
禁止領域
(~原始星)
(~褐色矮星)
(~星の進化)
(~林の禁止領域)
コロナ系列
加熱フラックス
F=一定
フレアの進化
フレア
コロナ
圧力バランスで決まる禁止領域
ガス圧>磁気圧
恒星・原始星フレアの
まとめ
• フレアEM-T図は,星のHR図と良く似た特徴を
示す
– 主系列(フレア)、コロナ系列、ナノフレア系列
– フレア進化径路、禁止領域
• EM-T図を活用することにより、分解して観測で
きない恒星/原始星のフレア・コロナの物理量
(サイズ、加熱率、磁場強度、エネルギーなど)を
推定することができる。
• 太陽フレア、コロナの理論を、恒星/原始星観測
によってテストできる
宇宙ジェット
what is astrophysical jets ?
Protostellar jet (HH 1/2)
AGN jet (Cyg A)
Close binary system (SS433)
Characteristics of Astrophysical Jets
AGN
Central
object
Close binary protostar
system
Supermassive Black hole or protostar
black hole
neutron star
Jet length
1 Mpc
3 pc
0.3 pc
Jet velocity
c
0.3c - c
100km/s
Escape
velocity
c
0.3c - c
100km/s
MHD model of astrophysical jets
Accelerate jets by magnetic field and rotation
Magnetic field line
jet
Accretion disk
Protostar, black hole
Centrifugal
force
Magnetic
pressure
Blandford-Payne 1982, Lovelace et al 1986,
Pudritz-Norman 1986, Uchida-Shibata 1985, Shu et al. 1994, …
First 2.5D simulation of MHD jets
from accretion disk (Shibata and Uchida 1986)
Magnetic
field line
accretion
disk
Time
Jet velocity ~ Kepler velocity
MHD jet with bow shock
(Kudoh et al. 2004, in prep)
Main findings
(from many MHD simulations in 1985-2002,
especially by Kudoh, Shibata et al.)
• Velocity of jets ~ Keplerian speed, but
slowly increases with magnetic field
1/3
strength
V B
jet
p
• Mass ejection rate is about 0.01 – 0.1 of
mass accretion rate
• Jets and disks never reach steady state,
but become very dynamic
Why can jets and disks never be
in steady state ?
Because Magnetorotational Instability is so
powerful (Blabus and Hawley 1991)
Kudoh et al
2002
Mass Accretion Rate vs Mass Ejection Rate
Mass Ejection Rate
Mass Accretion Rate
time
General
relativistic
MHD
simulation
(Koide,
Shibata,
Kudoh 1998,
1999,2000)
Maximum Lorentz factor
~2=>real limit ?
MHD jets from Kerr hole
magnetosphere
Koide, Meier, Kudoh,
Shibata (2000)
Koide et al. 2002 Science
ガンマ線バースト
イントロ:観測
• ガンマ線バーストの発見
– Klebesadel et al. (1973) by Vela satellites
– duration : ~10sec (1msec - 1000sec)
ガンマ線バーストの特徴
• 放出するエネルギーの大半が100keV-数MeV
のガンマ線
• 太陽フレアの硬X線に良く似た時間変動
• 1日に数回発生
• 発生場所の空間分布が等方的
(宇宙論的距離.z=1.6,z=3.4,…)
• (もし等方的にエネルギーを放出しているならば)全
エネルギー=10^(53)-10^(54)erg
=>宇宙最大の爆発!
最近の観測によれば、ガンマ線バーストはジェットらしい。
そうすると全エネルギーは10^(51)-10^{52)erg。
超新星程度。 宇宙ジェットのMHDモデルが応用可能?
Central engine of gamma ray
bursts ?
Binary neutron
star merger model
Collapsar model
magnetar model
ガンマ線バースト
時間変動~太陽フレアの硬X線、ガンマ線の
時間変動に酷似
– duration : ~10sec (1msec - 1000sec)
ガンマ線バースト
太陽フレア
重大な相違点
バースト/フレアのduration
– ガンマ線バースト: log-normal 分布
特徴的な時間がある
duration = 10 ~ 100 sec
(long burst)
–
太陽フレア: power-law 分布
特徴的な時間がない
ただし、上限(大フレア)はある
(小フレアは限りない)
Log x
Log x
フレア・コロナ質量放出ー惑星間衝撃波は、
GRBサブジェットーinternal shock か?
コロナ質量放出には特徴的な時間ス
ケール、特徴的な物理量がある!
Aoki et al. 2004
空間的サイズ or energyが大きな
フレアだけが惑星間空間に質量を
噴出することができる=>
特徴的な物理量が存在する原因
Flare/CME model of
GRBs driven by magnetic
reconnection
(Aoki, Yashiro, Shibata 2004)
Only large flares can
produce large plasmoids
that have enough energy to
escape from
magnetosphere of the
central engine of a GRB
(cf. Negoro and Mineshige
2002)
全体のまとめ
• 太陽フレアの磁気リコネクション説が確立
=>統一モデル
• 磁気リコネクションの物理は未解決
• 恒星フレア・原始星フレアにも磁気リコネクション説
が適用できる=>EM-T図
• 宇宙ジェットのMHDモデルが発展。MHDジェット・
disk は本質的に非定常。磁気リコネクションが重要。
• ガンマ線バースト(サブバースト)のフレア・コロナ質
量放出モデルを提唱
• 相対論的ジェットの大きなローレンツ因子の原因は
未解決 =>磁気リコネクション?