OECDにおけるPEの帰属 所得に 関する議論について

OECDにおけるPEの帰属
所得に関する議論について
国税庁長官官房審議官
井阪 喜浩
平成20年5月19日(月)
1
1
背景


モデル条約7条に関し、PEを通じて事業を行い
稼得した利益に対して、PE所在地国において行
使できる課税権をどのようにして決定するか?
OECDは1998年に、PEへの帰属所得の算定
についてのプロジェクトを立ち上げ、モデル条約
7条の見直しに着手。
2
問題意識

第一の理由 7条の解釈の統一と整合的な適用
のため

例えば、「関連事業アプローチ」(relevant business
approach)「機能的分離企業アプローチ(functionally
separate entity approach)といった解釈の相違が認め
られる
3
問題意識

第二の理由 現在の7条に係る指針をアップデー
トする必要性



現在の7条コメンタリーの大部分は、1979年に発表
された「移転価格レポート」に基づく
独立企業原則の適用に関する考え方が進化し、それ
を反映して1995年OECD移転価格ガイドラインが形成
された
更にそれ以降、多くの経験が蓄積されてきた
4
問題意識

現実的な理由 現代のビジネスモデルにおける
PEの重要性の増大


支店形態での活動が、進出当初の時期のみではなく、
大規模な事業展開においても用いられるようになって
きた(例えばグローバルなビジネスモデルとして)
主として業法規制上の理由から、金融法人(銀行・保
険会社)において広く用いられる
5
プロジェクトの構成

PEの帰属所得に関する報告書





Part I (一般原則)
Part II (伝統的銀行業務への適用)
Part III (金融商品のグローバル・トレーディングへの
適用)
Part IV (保険業への適用)
モデル条約・コメンタリーの改正


現7条コメンタリーの改正
新7条及びコメンタリーの改正
6
経緯










2001年 6月
2002年 4月
2003年 3月
2004年 3月
2005年 6月
2006年 3月
2006年12月
2007年 4月
2007年 8月
2007年11月
Part Ⅰ・Ⅱ公表
Part Ⅰ・Ⅱパブリックコンサルテーション
Part Ⅱ改訂版とパートⅢ公表
Part Ⅰ~Ⅲパブリックコンサルテーション
Part Ⅳ公表
Part Ⅳパブリックコンサルテーション
Part Ⅰ~Ⅲ最終版公表
現7条コメンタリー改正案公表
Part Ⅳ改訂版公表
Part Ⅳパブリックコンサルテーション
7
Part I
一般原則
8
Part I (一般原則)




Part I は、モデル条約7条におけるAOA
(Authorized OECD Approach)の適用について
の一般原則となる指針を提供。
機能的分離企業アプローチの採用
2ステップアプローチの採用
重要な人的機能(Significant People Function)
9
「企業の利得」の決定
関連事業アプローチ
企業が販売活動を行うPEを有している場合:
製品の購入
販売
等に係る支
PE
本店
出
80
100
•企業の関連事業から生じた全体としての利益が 20であったと仮定
•PEに帰属する所得は、そのうちPEの活動に帰せられる部分であるが
企業全体としての関連事業の利益(20)を超過することはない。
※ 関連事業の範囲のとり方(例:プロダクト・ライン毎か、製造・販売などの機能毎か)
により、PEへの帰属所得の上限が変わりうる。また、企業全体として赤字であっても、
関連事業は黒字で、そのためPEに利益が帰属することはありうる。
10
「企業の利得」の決定
機能的分離企業アプローチ
製品の購入
等に係る支
出
80
企業が販売活動を行うPEを有している場合:
本店
PE
ALP=90?
販売
100
70? 110?
•PEに帰属する利益は、そのPEが「分離・独立した」法人であった
としたら稼得していたであろう利益であり、企業全体の利益には
制限されない(20以上の場合、0以下の場合もあり得る)。
11
PE帰属所得の決定

AOAの適用のためには、二段階の分析が必要
第一ステップ:
PEを分離・独立した法的主体と擬制し、
PEの活動と状況を決定(PEの特徴を分析)
第二ステップ:
ALP原則(比較可能性分析)に基づき、
PEの帰属所得を決定
12
PE帰属所得の決定
7条
PEの課税:
9条
国外関連取引の課税:
AOAによる
機能・事実分析
+
TPガイドラインの準用
による比較可能性分析
TPガイドラインによる
比較可能性分析
13
第一ステップ:
PEを分離・独立した法的主体と
擬制し、PEの活動と状況を決定
PEの特徴の分析
14
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
PEの「特徴分析」:

機能とリスク: PEはどのような活動を行っているか?

(有形・無形)資産の経済的所有権の帰属: AOAに
従い、PEの税務上のバランスシートを作成

「内部取引」の認識

資本: 有利子負債及び「無償」資本の帰属
15
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
機能
リスク
資産
資本
16
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
リスクは機能に従う:

リスクは、その引受や管理に関連して、PEが遂行する
重要な人的機能(Significant People Function)に応じ
て帰属する

ただし、PEにより引き受けられたリスクが内部的に移転
される場合もある
17
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
資産は機能に従う:

資産の経済的所有権は、その資産に関し、PEが遂行す
る重要な人的機能(Significant People Function)に応
じて帰属することが原則

ただし、有形資産は、それを使用するところに経済的所
有権を帰属させる
18
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
内部取引の認識:

機能分析・事実分析によって、現実の認識可能な事象
(a real and identifiable event)が生じているか、及び、
内部取引が経済的な重要性(economically significant
transfer of risks, responsibilities and benefits)を有し
ているかが決定される。現実の認識可能な事象とは、
例えば:






販売用資産の物理的移転
役務の提供
無形資産の使用
資本・資産の使用者の変更
金融資産の移転
etc.
19
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
PEの信用力は企業全体で同一:

AOAの下では、一般にPEは企業全体と同一の信用力
を有するものとされる

その結果、PEの信用力を他の拠点が保証する、PEが
他の拠点の信用保証をする、といった内部保証取引は
認識されない

例外 = 規制上の理由により、特定の拠点に帰属する
資本が他の拠点で生じた負債の支払いに用いることが
できない場合
20
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
資本はリスク・資産に従う:
• AOAの下では、PEは自らの機能を果たすために十分
な資本を有していなければならない
•
この際、機能・事実分析に基づき、 PEに「無償資本」
(そこから生じたリターンが支払利子控除の対象となら
ない資本)が配賦される
21
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
「無償資本」の配賦:
•AOAに適合した2つのアプローチ
 資本配賦(Capital Allocation)アプローチ
 過少資本(Thin Capitalisation)アプローチ
•セーフハーバー
 セーフ・ハーバーアプローチ – 準過少資本/規制上の
最低資本金アプローチ
 それがAOAに適合した他のアプローチ以上の利益を
PEに帰属させない限り、認められる
22
資本配賦アプローチ:
企業全体の資本を、機能分析に基づく各拠点の資産・リス
クに応じて配分
企業全体
PE
企業全体
資産額
(100)
企業全体
資本の額
(40)
PEの資産額
(50)
PEの資本
(20)
23
過少資本アプローチ
PE には、その所在地国において同一・類似の活動を同一・
類似の状況で行う独立した企業が有するのと同額の資本
を配賦
企業全体
PE
企業全体
資産額
企業全体
資本の額
PE所在地国
比較対象企業
PEの
資産額
資産額
PE の
資本(40)
資本の額
(40)
24
セーフ・ハーバーアプローチ
PEには、少なくともその所在地国において 同様の状況
において独立した企業が営業するために規制上要求され
る額の資本が帰属
企業全体
PE
企業全体
資産額
企業全体
資本の額
PE所在地国
比較対象企業
PEの
資産額
資産額
PE の
資本(30)
規制上
必要な資本
(30)
25
第一ステップ: PEを分離・独立した法的主
体と擬制し、PEの活動と状況を決定
資金コストの帰属:
•PEの資本に関し、「無償資本」以外の部分(=有利子負
債)に係る支払利子の額を決定しなければならない
•これに関し、ALP原則に沿った額を超える利子を帰属させ
ない限り、次の3つのアプローチともAOAに適合する
 Tracingアプローチ
 Fungibleアプローチ
 内部利子取引(internal interest dealings)アプローチ
26
第二ステップ:
PEに帰属する所得の算定
比較可能性分析
27
第二ステップ: PEに帰属する所得の
算定
PEの比較可能性分析

機能的に分離・独立した企業と擬制された後に、 PE
には、同一又は類似の活動を同一又は類似の状況下
で、法的に分離・独立した企業として行ったとしたら帰
属したであろう利益が帰属しなければならない

これに関し、AOAは、ALP原則を適用してどのように
「内部取引」の価格を決定するかにつき指針を提供
28
第二ステップ: PEに帰属する所得の
算定
「内部取引」に係る独立企業間価格の決定:



比較対象取引(第三者間取引)との比較
TPガイドライン上の比較可能性に関するガイダンス
をPEに準用
「内部取引」に、TPガイドライン上で定められた移転
価格算定手法を準用
29
Part II
銀行業
30
銀行業におけるKERT機能
金融資産の帰属




金融資産の創造及びその後の管理が、「重要な起業家的リスク
引受機能(Key Entrepreneurial Risk Taking Function: KERT)」
となる
金融資産の経済的所有権は、KERT機能が遂行されるところに
帰属する
ただし、実際にどの機能がKERTであり、その機能がどの程度重
要であるかは、その金融商品の種類・事業形態、事業戦略等の
事実・状況に基づいて個別に決定される必要あり
KERT機能を果たす拠点から、それ以外の機能を果たす拠点に
はALP原則に従いサービスに応じた報酬を支払う
31
銀行業における資本

規制上の最低資本金



バーゼル委員会は国際的に承認された最低資本金
を設定
Tier1 Capital+ Tier2 Capitalがリスクウエイト付
けされた資産の8%以上
Tier1 Capitalがリスクウエイト付けされた資産の
4%以上
32
銀行業における資本の配賦
資本の配賦
 独立企業原則に従った利益をPEに帰属させるために
は、そのPEの営む機能、使用する資産、特に引受リス
クに見合う無償資本を税務上配賦しなければならない
 第一段階:リスクの測定
 第二段階:PEに帰属する無償資本の決定
33
銀行業における資本の配賦
資本の配賦

リスクの測定方法


バーゼル合意に基づく標準的手法によるリスク測定は、独立企
業原則を「合理的に代替するもの(reasonable proxy)」として
認容できる
銀行内部の測定モデルは、銀行規制上で容認されていること、
継続的に適用され、モデルの測定方法が明らかにされること等
が条件となる
34
銀行業における資本の配賦
資本の配賦(1)
 資本配賦アプローチ


法人全体の資本を各拠点に配賦する方法
銀行業においては、PEに帰属するリスクウエイト資産の総リス
クウエイト資産に対する割合を用いて、PEに帰属する無償資
本の額を決定
 Pure BIS ratioアプローチ

Cleansed BIS ratioアプローチ
35
PURE BIS Ratioアプローチ
銀行全体の資本
劣後債
[30]
Tire 2 Capital
永久劣後債
[10]
Tire 1 Capital
PEは法人全体の50%
のリスクウエイト資産を
所有
剰余金
[20]
劣後債
[15]
永久劣後債
[5]
払込資本
[40]
剰余金
[10]
払込資本
PEには銀行全体のうち
50%の資本が配賦
PEの無償資本は、配賦さ
れた資本構成のうち、その
PEの所在地国で税務上資
本と見なされる部分
PEの税務上の無償資本
[20]
* 上記の例は、劣後債が税務上の無償資本として認められない場合の事例
36
CLEANSED BIS Ratioアプローチ
銀行全体の資本
劣後債
[30]
PEは法人全体の50%
のリスクウエイト資産を
所有
Tire 2 Capital
その抽出された銀行全体の
資本の50%をPEに配賦
永久劣後債
[10]
剰余金
[20]
Tire 1 Capital
払込資本
[40]
銀行全体のうちPEの所在地
国で税務上資本と見なされる
部分を抽出(“cleanse”)
内部借入
PEが必要とする資本が無償
資本を超える部分は本店か
らの内部借入れとされる
永久劣後債
[5]
剰余金
[10]
払込資本
PEの税務上の無償資本
[20]
* 上記の例は劣後債が税務上の無償資本として認められない場合の事例
37
銀行業における資本の配賦
資本の配賦(2)
 過少資本アプローチ


PE には、その所在地国において同一・類似の活動を
同一・類似の状況で行う独立した銀行が有するのと
同額の資本を配賦
比較を行う上では、銀行全体の資本構成、所在地国
における規制上の最低資本金も考慮


Pure BIS ratioアプローチ
Cleansed BIS ratioアプローチ
38
過少資本アプローチ
銀行全体
PE
銀行全体
リスク
ウエイト
資産額
銀行全体
資本の額
PEの
リスク
ウエイト
資産額
PE所在地国
比較対象銀行
リスク
ウエイト
資産額
PE の
資本(40)
資本の額
(40)
* 「資本の額」決定後、Pure Bis/Cleansed BIS ratioアプローチにより「無償資本」の額を
決定
39
銀行業における資本の配賦
資本の配賦(3)
 セーフ・ハーバー(準過少資本/規制上の最低資本金)
アプローチ



PEには、少なくともその所在地国において 同様の状況におい
て独立した企業が営業するために規制上要求される額の資本
が帰属
原則としてAOAには合致しない
それがAOAに適合した他のアプローチ以上の利益をPEに帰属
させない限りにおいて、条約に適合した課税であると認められ
うる
40
セーフ・ハーバーアプローチ
銀行全体
PE所在地国
PE
銀行全体
リスク
ウエイト
資産額
銀行全体
資本の額
比較対象銀行
PEの
リスク
ウエイト
資産額
リスク
ウエイト
資産額
PE の
資本(30)
規制上
必要な資本
(30)
* 「資本の額」決定後、Pure Bis/Cleansed BIS ratioアプローチにより「無償資本」の額を
決定
41
Part III
グローバル・トレーディング
42
背景

グローバル・トレーディングの定義:



全世界ベース又は24時間ベースでマーケットメイキング
を行う活動
複数の国にまたがり、顧客のために金融商品の売買又
はブロカレッジを行う活動
議論の出発点は、OECDが1998年に発表したレポー
ト「金融商品のグローバル・トレーディングの課税問
題(The Taxation of Global Trading of Financial
Instruments)」(いわゆる「グローバル・トレーディング
レポート」)
43
グローバル・トレーディングのモデル

Integrated Trading Model(統合モデル):
 各トレーディング拠点のトレーダーが、それぞれの
所在する市場が開いている時間帯に取引を行い、
ポジションのポートフォリオ(“ブック”)を管理。市場
が閉じたときにはポートフォリオを次の拠点に引き
継ぐ
 通貨オプションに典型的に利用されるモデル
44
グローバル・トレーディングのモデル

Centralized Product Management Model(中央管
理モデル)
 特定の金融商品の市場リスクを特定のトレーディン
グ拠点で管理。
 ブックはトレーディング拠点にとどまる。
 一般的には、その商品がもっとも大量に取引される
場所(「ナチュラル・ホーム」)が拠点となる(日本国
債なら、日本市場など)。
 現物取引に多く利用されるモデル
45
グローバル・トレーディングのモデル

Separate Enterprise Trading Model(分離企業モデ
ル)
 それぞれの拠点が独立したプロフィット・センターと
して活動
 取引数量が多い為替スポット、フォワード取引等に
用いられる。
46
グローバル・トレーディングのモデル

モデルによる分類の限界
 モデル分類は、グローバル・トレーディングの一般
的な理解には有益であるが、現実には上記類型に
当てはまらない場合もある。
 帰属所得を算定するにあたっては、上記モデルを
あてはめるよりも、個々の納税者の状況に応じた機
能分析を行う必要がある。
47
グローバル・トレーディングに対するALP原則適用




多くの機能が複数の拠点で行われていることから、トレーディン
グ・リスク管理機能、販売・企画機能、サポート機能などについ
て機能分析を注意深く行う必要
高度に統合されたグローバル・トレーディングの中核的機能の
評価には利益分割法が適する
分離企業モデル、中央管理モデルでは、基本三法の適用が可
能か
統合モデルでは、比較対象取引があることは通常なく、利益分
割法が適切
48
グローバル・トレーディングにおけるKERT機能
PEへの金融資産・リスクの帰属
 グローバル・トレーディングにおける「重要な起業家的
リスク引受機能(KERT)」は、基本的には、銀行業の
場合と同様。
 ただし、グローバル・トレーディングにおいて取り扱わ
れる金融商品の性質・リスクプロファイルは、銀行業
の貸出しとは異なることを考慮する必要。
 いずれにせよ、実際にどの機能がKERTであるかは、
徹底した機能分析が必要となる。
49
グローバル・トレーディングにおける資本の配賦
PEへの資本の配賦
 資本の配賦についても、銀行業の場合と同様に考え
ることができる。
 なお、 AOAの下での資本配賦について、ヘッジ・ファ
ンド・モデルの使用は不適切
 同モデルは、トレーダーに一定の報酬を支払った
残余を資本家が取る方式
50
代理人PE


外国法人が代理人を通じてグローバル・トレーディン
グを行う場合、これがモデル条約5条5項における従
属代理人(代理人PE)を構成するか否かは、このレ
ポートの検討範囲外
従属代理人PEが存在する場合、そのPEにより果たさ
れる機能を正確に決定し、そのPEに帰属する所得を
適切に決定する必要がある
51
Part IV
保険業
52
保険業における収入

保険業における重要な収入源
 保険(引受)収益(underwriting income)


保険事業におけるネット収益
投資収益(investment income)
投資資産から生じた収益。投資資産は、株主から払込ま
れた資本金や剰余金によるもの( 「サープラス」 )及び保
険契約者から払込まれた保険料によるもの(「リザーブ」)
から構成される。
※ このレポートでは、資本及び剰余金を「サープラス」、準
備金を「リザーブ」と呼ぶ

53
保険業におけるKERT機能
保険業におけるKERT機能




保険業における「重要な起業家的リスク引受機能(KERT機能)」は、
保険リスクの引受けである。
保険リスクの引受けとは、通常、保険契約の引受けである。
ただし、機能・事実分析により、その他の機能(商品開発、販売・
マーケティング、リスク管理等)も保険リスクの引受けに関連してお
りKERT機能と認められることもありうる。
保険リスクの引受けは負債サイドの問題である点が、KERT機能
につき資産サイドに着目する銀行業・グローバル・トレーディングと
は異なる。
54
投資資産の帰属
投資資産の帰属=「リザーブ」及び「サープラス」の配賦




KERT機能を遂行する拠点は、そのリスクに見合う「リザーブ」及び
「サープラス」(=投資資産)を有していなければならない
この際、投資資産全体の帰属を確定することが重要であり、「リ
ザーブ」及び「サープラス」の区分の問題は重要ではない
その配賦方法としてて、AOA上承認された2つのアプローチ
 資本配賦アプローチ
 過少資本アプローチ
準過少資本アプローチはセーフハーバーとしてのみ適用可
55
投資収益の帰属
投資収益の帰属



投資資産から生じる投資収益は、その「リザーブ」及び「サープラ
ス」が帰属する拠点に帰属
その投資収益を算定するためには、擬制上帰属させた投資資産
の投資利回りを算定する必要。
この際の手法としては次の2つ。
 トップダウンアプローチ:保険会社全体が保有する資産の利回
りを帰属資産の利回りとする。
 ボトムアップアプローチ:その拠点の所在地国において保有す
る資産の利回りを帰属資産の利回りとする
※ その拠点が実際に保有する投資資産は実際の投資利回りを
用いる
56
内部再保険の取扱い
内部再保険の取扱い
 内部再保険は、新規の保険リスクの引受とは見られず、
それがKERT機能を果たしていることが明確に立証され
ない限り、保険契約資産及びこれに伴うリスクの移転が
行われたとは認識されない。
57
代理人PE


保険会社はブローカーやエージェントを通じて事業を行
うが、これらがモデル条約第5条5項における従属代理
人(代理人PE)を構成するか否かはこのレポートの検討
の範囲外
代理人PEが存在する場合、そのPEにより果たされる
機能を正確に決定し、そのPEに帰属する所得を適切に
決定する必要がある
58
モデル条約の改正
現7条コメンタリーの改正
59
モデル条約の改正スケジュール

次回改定(2008年):現モデル条約に矛盾しない範囲で
AOAをできる限り盛り込んだ現7条のコメンタリー改正を
先行させて盛り込む。


現7条のコメンタリー改正案については、07年4月に公表され、
パブリックコメントが既に募集された。
次々回改定(2010年):AOAを完全実施するため新7条
及びそのコメンタリーを盛り込む。
60
現7条コメンタリー改正の概要
7条1項と2項の関係(機能的分離企業アプローチ)
 2ステップアプローチ
 PEの資金調達コストと無償資本
 本支店間の内部利子に関する金融機関の例外
 Symmetryアプローチ
 ドキュメンテーション
等

61