エネルギ変換工学 第6回 各種サイクルと熱機関 2005S10 棚橋 義夫 監修 木下祥次 2015/9/30 各種サイクルとその効率 1 熱機関 外燃機関 →動作媒体を加熱し、その熱エネルギーでモー ターをまわす。 内燃機関 →燃料を燃料させて得る熱エネルギーでモー ターをまわす。 自動車のエンジン:内燃機関 ジェットエンジン:内燃機関 エアコン:外燃機関 発電所:外燃機関 2015/9/30 各種サイクルとその効率 2 サイクル Ex.4サイクルエンジン 吸気→圧縮→燃焼(膨張)→排気 断熱圧縮→等積加熱→断熱膨張→等積冷却 オットーサイクル 2015/9/30 各種サイクルとその効率 3 サイクル(P-V線図) シリンダ内の圧力と体積の関係をあらわしたもの オレンジ部分:A~Bまでの圧縮工 程の際に行った外部から気体への 仕事。 黄色部分:気体から外部への仕事 2015/9/30 各種サイクルとその効率 P-V線図の図形の面積はサイクルの仕事を表す。 4 熱力学第0法則 二つの物体温度が変化しない→熱平衡にある。 AとC、BとCが熱平衡ならAとBも熱平衡。 熱平衡 高温 A 2015/9/30 C 低温 + B C 各種サイクルとその効率 A B 5 熱力学第一法則 エネルギー保存の法則 (熱エネルギー)=(仕事)+(内部エネルギー) 熱エネルギーdQ ピストンを押す ピストンの中の 温度上昇dU 仕事dW 2015/9/30 dQ=dW+dU 各種サイクルとその効率 6 可逆変化と不可逆変化 1から出発した振り子は、損失 が全く無ければ、3と同じ高さ まで上昇し、また1に戻ること ができる。 →可逆変化 1 3 2 水中へインクを拡散させること は容易。水に溶けたインクを 再び取り出すのは不可能。 →不可逆変化 熱力学第二法則:エントロピー増大の法則 2015/9/30 各種サイクルとその効率 7 熱力学第二法則 仕事から熱を高効率で取り出すこと は容易→ジュールの実験 熱から仕事を取り出すことは理論的 な熱機関でも30%程度 熱機関は高温部と低温部があって、高温部から 低温部への熱の移動の一部からはじめて仕事が 取り出せる。 熱の移動方向性を決めるもの:熱力学第二法則 2015/9/30 各種サイクルとその効率 8 エントロピー ある物体にdQを与え、その温度がTとなったとき、 その物体のエントロピーの増加量をdSとすると、 dS≧dQ/T dS dQ T エネルギーの取り出しにくさのこと。 エントロピーが低いものほどエネルギー が取り出しやすい。 損失ゼロの熱機関は熱力学第二法則 に反するので、永久機関は存在しない。 2015/9/30 各種サイクルとその効率 9 理想気体の状態方程式 水蒸気、空気を理想気体として考える。状態量である 圧力、体積、温度の状態変化に対応した式。 pV=nRT 2015/9/30 p:圧力[Pa] v:体積[m3] n:モル数[mol] R:ガス定数[J/molK] =8.314 T:温度[K] 各種サイクルとその効率 10 理論サイクル(カルノーサイクル) 断熱変化と等温変化で構成された理論可逆サイクル 等温圧縮 Qout 1~2 2~3 等温膨張 3~4 2015/9/30 断熱圧縮 断熱膨張 Qin 4~1 各種サイクルとその効率 11 カルノーサイクルのP-V線図 1~2:等温圧縮 3 2~3:断熱圧縮 4 3~4:等温膨張 2 4~1:断熱膨張 1 断熱変化→シリンダ内へ熱の出入りがない変化。 等エントロピー変化 Pvκ=constant 2015/9/30 κ:比熱比 各種サイクルとその効率 と表される。 12 T-S線図 サイクル中の温度とエントロピーの関係を表し たもの。 1~2:等温圧縮 2~3:断熱圧縮 3~4:等温膨張 4~1:断熱膨張 エントロピーの定義より、図形の面積は、サイクルの総 熱量を表す。 2015/9/30 各種サイクルとその効率 13 熱効率 加えた熱量が仕事に変換される効率 サイクルに加えた熱量がQ、サイクルの外 部仕事がWだったとすると、 熱効率ηは、 η=(W/Q)×100 [%] となる。 2015/9/30 各種サイクルとその効率 14 カルノーサイクルの熱効率 加熱量をQout,ポンプによる圧縮仕事を Qinとするとηは、 η=(Qout-Qin)/Qout 3 4 2 1 =1-(Qin/Qout) ポンプ仕事と加熱量はT-S 線図より Qin=TL(s1-s2) Qout=TH(s4-s3) (s1-s2)= (s4-s3)なので、 η=1-( TL / TH ) 2015/9/30 各種サイクルとその効率 15 熱機関の例 外燃機関 蒸気機関・・・水をボイラーで過熱水蒸気にし、その 膨張エネルギーでピストンを動かす。 蒸気タービン・・・過熱水蒸気をタービン(羽根 車)に吹き付けて、モータを回し、動力を得る。 →ランキンサイクル スターリングエンジン・・・2つのシリンダ内の作動流 体を交互に加熱、冷却することで、差動的にピストン を動かす。 →スターリングサイクル 2015/9/30 各種サイクルとその効率 16 内燃機関の例 ガソリンエンジン→オットーサイクル 低速ディーゼルエンジン→ディーゼルサイクル 高速ディーゼルエンジン→サバテサイクル ガスタービンエンジン→ブレイトンサイクル 2015/9/30 各種サイクルとその効率 17 比熱 一般に気体の温度1K上昇させるために必要な熱量 ガスにdqの熱量が与えられたときに温度がdT上昇したとき、 比熱Cは C=dq/dT で与えられる。 気体の熱し方が体積一定、圧力一定であるかで値が異なる。 等積比熱:Cv 2015/9/30 等圧比熱:Cp 各種サイクルとその効率 18 いろいろな実用的サイクル オットーサイクル 1~2:断熱圧縮 2~3:等積加熱(火花点火) 3~4:断熱膨張 4~1:等積放熱 ガソリンエンジンの理論サイクルである。 加熱時に等積変化をする。 理論熱効率=1-(v2/v1)κ-1 2015/9/30 各種サイクルとその効率 v1、v2:各工程での体積 19 ディーゼルサイクル 1~2:断熱圧縮 2~3:等圧加熱 3~4:断熱膨張 4~1:等積放熱 不可逆サイクルの一種。 高温高圧の空気に燃料を噴射し、 自然着火させて点火させる。 ガソリンエンジンのノッキングと同じ 2015/9/30 各種サイクルとその効率 20 サバテサイクル 1~2:断熱圧縮 2~3’ :等積加熱(初期燃焼) 3’~3:等圧加熱 3~4:断熱膨張 4~1:等積放熱 不可逆サイクルの一種。 実際のディーゼル機関は点火 の瞬間の燃料噴射のみ一瞬等 積変化が起きる。 2015/9/30 各種サイクルとその効率 21 ガスタービンサイクル 過熱器 燃焼器 圧縮 機 吸気 タービ ン 圧縮 機 タービ ン 排気大気放出 開放サイクル 冷却器 密閉サイクル 2015/9/30 各種サイクルとその効率 22 ガスタービンサイクル ガスタービンにおいて、動作流体が行うサイク ル。 高温高圧の燃焼ガスを、タービン(羽根車)に 吹き付けて、回転動力を得るシステム。 圧縮機で高圧にした後、燃焼器または過熱器 でさらに等圧加熱して高温にする。航空機エン ジンに用いられる。 →ブレイトンサイクル 2015/9/30 各種サイクルとその効率 23 ブレイトンサイクル 1~2:断熱圧縮(圧縮機) 2~3:等圧加熱(過熱器) 3~4:断熱膨張(タービン) 4~1:等圧放熱(排気) 2015/9/30 各種サイクルとその効率 24 外燃機関のサイクル ランキンサイクル 蒸気タービンサイクル・・・動作流体は水蒸気(水)である。 S モータ T B P:圧縮機 B:ボイラ S:過熱器 T:タービン P 2015/9/30 C C:復水器 各種サイクルとその効率 25 ランキンサイクル 1~2:断熱圧縮(圧縮水) 2~2’:等積加熱(飽和水) 2’~3’:等積加熱(乾き飽和蒸 気) 3’~3:等積加熱(過熱蒸気) 3~4:断熱膨張(しめり飽和蒸 気) 4~1:等圧冷却(飽和水) 2015/9/30 各種サイクルとその効率 26 改良版ランキンサイクル 2015/9/30 再生サイクル タービンへ断熱膨張する際、少し熱をもらい、 ポンプとボイラの間の圧縮水を熱し、過熱気の 負担を減らす方法。 再生サイクル タービンへ断熱膨張中の蒸気を4’まで膨張さ せずに、中段階の蒸気を再び過熱器で熱し、 低圧タービンを回す方法。 各種サイクルとその効率 27 冷凍サイクル 冷蔵庫、エアコンに使われているサイクル 冷却器 圧縮機 放熱器 外気温 膨張弁 2015/9/30 冷蔵庫or室内 各種サイクルとその効率 28 冷凍サイクル 1)圧縮機で、動作流体を加圧。温度が上昇する。 (>外気温) 2)冷却器で、圧縮気体を外気温まで冷却。 3)膨張弁を外し、冷やしたい容器内で断熱膨張。 4)外気温になった動作流体を再び圧縮機へ。 2015/9/30 各種サイクルとその効率 29 課題 オットーサイクルの理論熱効率を導出せよ。 ヒント:断熱変化の式pvκ=const pv=nRT を変形していけばそのうち解けます。 理論熱効率=1-(v2/v1)κ-1 2015/9/30 各種サイクルとその効率 30
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