トランスナショナル.モデル

11-MC005
センコウセイ
トランスナショナル.モデル
バートレット&ゴシャール
バートレットとゴシャール
 バートレットとゴシャール1989年に「地
球市場時代の企業戦略」とその後1990年
代後半には「個を活かす企業」を発表した。
 「地球市場時代の企業戦略」の貢献は:①グ
ローバリゼーションというビジネスの新しい
現実とボーダーレス世界が求める組織の姿を
精密を描いて見せていることに加え、②国際
社会で成功するために必要な組織形態につい
て考える上で重要な示唆を与えている点を称
えている。
 二人はトランスナショナル・モデルを提唱す
るに至る。
二律背反モデル
 グローバル統合とローカル適応に関する
議論は、現地化すべきか標準化すべきか
もこの議論の系譜にある。
 ボーダーは現地適応とグローバル統合は
トレードオフの関係である。
I-R(グローバル統合・ローカル適応)
 二律背反の議論へ対抗する形で登場してきた
のが、I-Rグリッドの議論である。グローバル
統合とローカル適応の同時達成を主張してい
る。多国籍企業のマネジメントには常に、集
権と分権へのプレッシャーが同時に動いてい
るこの矛盾する二つの要求に対して、同時達
成する戦略が必要である。
現
地
対
応
同時
達成
グローバル統合
I-Rグリッド
多国籍企業のグローバル・ローカル度を見る際、産業、企業、ファンクション、さらにはタス
クといったように細分化して考えることにより、より精緻な分析が可能になる。
産業
世
界
規
模
の
統
合
各国対応の差別化
企業
機能
タスク
世界規模学習
 グローバルに事業を統合
性
世界規模の効率
 ローカル適応
柔軟に各国対応
 これ以外第3の要請は世界規模の学習
原因:多国籍企業は多様な環境から刺激を受け
て、新しいイノベーションが生まれる可能性
がある、その成果を世界中で学習することが
グローバルな競争優位につながる。
マルチナショナル・アプローチ戦略
権力分散型連合体、人的管理、
マルチナショナル経営精神
 各国市場の違いに敏感に対
応することを目指した戦略
である。現地子会社に経営
資源や組織能力が分散され、
各子会社に戦略の自由裁量
権を与えられる。
 業界で見ると日用品や食品
産業
 地域で見るとヨーロッパ企
業 例:ユニリーバ、フィ
リップス、ITT
グローバル・アプローチ戦略
集中中枢、業務コントロール、
グローバル経営精神
 世界を単一市場とみなし世
界規模での効率性を追求す
る戦略である。親会社に経
営資源と組織能力は集中し、
現地子会社の自由裁量度は
低い、親会社の戦略を忠実
に実行することになる。
 業種ごとに見ると家電産業
や自動車産業
 地域別でみると日本企業、
例:花王、松下電器、NEC
インターナショナル・アプローチ戦略
管理的組織体制、調整型連合
体、インターナショナル
 親会社の持つ知識と能力を
世界的に広めて適応させる
ことを目的とする戦略
 能力の中核部は親会社が持
ち、他は現地子会社に移転
される。
 親会社の技術やノウハウを
海外市場へ移転することか
ら優位性を獲得しようとし
た米国企業に特徴的である。
例:GE、P&E、エリクソン
トランスナショナル戦略
 世界規模での効率性、柔
軟性、学習という3つの
相矛盾する要請をすべて
満たすような戦略はトラ
ンスナショナル戦略
 イノベーションと学習を
より促進できる構造
 例:ABB
専門化して分配された資源と能
力、総合依存する組織、意思決
定を分担する状況での調整と協
力の複合的プロセス
トランスナショナル戦略2
 トランスナショナル・アプローチでは、効率
性、現地環境、イノベーションという三つの
目標の同時達成が目指される。
 マルチナショナルの面で経営資源と組織能力
の分散が必要
 グローバル統合の面では、本社と海外子会社、
海外子会社間の相互依存を前提にして双方向
的なグローバル調整を行われる。
 イノベーションと学習をより促進できる構造、
本社と海外子会社が共同で研究開発を行う
トランスナショナル戦略の問題点
 1、境界線が曖昧である、トランスナショナ
ル戦略の特徴がI-Rグリットに学習という
新しい軸を加えた点にあるとしたら、イン
ターナショナル戦略ではその点が強調されて
もよい
 2、類型額に留まってしまっている点がある、
いかにして、トランスナショナル戦略という
理想モデルへ移行するのかが不明確である。
 3、あくまでも理想モデルである点を挙げる
ことができる。例としてのABB社の業績を
見ると、十分に成功とは言い難い
ケース:ABBのマトリックス経
営
 トランスナショナルに最も近い会社として
ABBを取り上げた当時の最高経営責任者バー
ネビック氏であった。
 彼は世界中の企業を回収すると同時に、社内
で大規模な改革を行った:
 ①マトリックス組織 組織は事業別と地域
別の組織を掛け合わせた構造をとっている。
 ②ABACUS情報システムは、市場ニーズに対
応できるような経営システムである。
 ③「小さな本社」「持たざる経営」という
強いビジョンを社内に浸透させる。
総括
 しかし、1988年以後次々と企業買収を進
め、部門間重複か目立ち、景気後退を重なり
業績悪化に至ったと見られる。選択の集中と
組織の簡素化、合理化を進め、最近グローバ
ル・マトリックス構造を断念するに至った。
 ABB は トランスナショナル企業に最も近
い企業とされてきたが、トランスナショナル
企業から程遠いのが現状である。
 トランスナショナルはあくまで理念型であり、
他の三つのモデルの合成としての理念型であ
る。