メンタルヘルス - 情報科学研究科 | NAIST

メンタルヘルスケアについて
保健管理センター
寳學英隆
Hidetaka Hougaku, MD
国内における自殺者数の推移
先進国で最も高いレベル!
約半分はうつ病での自殺
現代社会と心の健康
ーよりストレスフルな時代へー
現代社会において心の健康が問題となってくる背景
ⅰ)社会の変動
技術革新、情報化の進展、価値観の多様化や生活様式の変化など社会
の変動がみられ、日常的に緊張状態におかれていると言える状況にある。
ⅱ)ライフサイクルや家庭環境の変化
平均寿命の伸長に伴い定年後の期間が延長するなど、個人のライフサ
イクルに変化がみられ、また、核家族化の進展により家族構成や家族の
機能も変化してきている。
ⅲ)職場や仕事の変化
産業構造の変化や機械化・OA化などにより、仕事の中身や労働環境が
変化し、その変化への対応が求められている。また、職場の人間関係に
ついても変化がもたらされている。
精神的に健康な状態
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•
•
人格に調和があり、一貫性と安定性がある。
自分を取りまく現実をありのままに受け止めることができる。
欲求不満があっても、それをある程度コントロールできている。
自己の主体性を保ちながら、他人との間によい人間関係を持
つことができる。
• 新しい課題に直面したとき、回避せず、現実的、合理的な解決
をはかれる。
• 日常生活の中に楽しみを見いだし、社会的役割と活動をするこ
とができる。
• 精神病、人格障害、精神遅滞、アルコール依存や薬物依存な
どの精神障害にかかっていない。
わが国の精神保健に関する調査結果
• 近年、神経症、うつ病、心身症のほか、睡眠障害、摂食(せっしょく)障害、
不登校が増加している
• 現代社会における過大なストレスが、様々な「心の病気」の原因の1つと
なっていることから、ストレス対策が重要である。また、アルコール依存と
薬物依存についての予防対策を一層推進する必要がある
• 子供の心に大きな傷を残す「児童虐待」が増加している。これを防ぐため、
地域の支援体制づくりを進め、身体の保護と心のケア体制を充実するこ
とが必要である
• 精神疾患による入院は多数かつ長期となっている。ノーマライゼーション
の考え方を一層普及するためにも、精神疾患に対する「心の障壁の除去
-心のバリアフリー化-」を進め、「地域ケア体制」を構築していくことが
重要である
厚生労働白書 から
本学での悩みの内容
• 対人関係: 他人とのコミュニケーション、周囲の人間関係、異
性問題、教官とのトラブル
• 修学上の問題: 不登校、休退学、学業/研究上の問題、大学
生活への不適応
• 社会性の未熟: 集団生活不適応、道徳(一般的なモラル)の低
下、自分勝手、自立心の不足、幼稚化
• 無気力・意欲減退: 無関心、消極的、自主性/主体性の欠如、
スチューデントアパシー、バーンアウト症候群
• 進路・適性: 進路問題、就職問題、本人の適性と大学との関
係
• 抑うつ気分
• 不眠、摂食障害
こころの病気の種類1
•
うつ病
–
•
躁うつ病
–
•
ストレスがかかることにより 身体のさまざまな部分に障害が現れる。
アルコール症
–
•
自分の健康状態が気にかかり、病気でもないのに重い病気にかかっていると心配し続ける。
心身症
–
•
頭の中では無意味、不合理だとわかっているのに、あることが気にかかり、同じ行為をくり返す。
心気症
–
•
人前で極度に緊張し、赤面、手が震える、どもる、多量の発汗など。
強迫性障害
–
•
犯罪、事故、テロ、災害、離婚、大けが、レイプなど、苛酷な体験の後に現れる精神的障害。
対人恐怖(高所恐怖・不潔恐怖)
–
•
幻覚、妄想、行動の異常などが現れ、自分が病気だという認識はない。
外傷後ストレス障害(PTSD)
–
•
突然頭が真っ白になり、動悸、息苦しさ、死を感じるほどの恐怖に突然襲われる。
統合失調症
–
•
落ち込みや憂うつといったうつ状態と、気分が八イになる操状態とが交互に現れる
パニック障害
–
•
落ち込み、憂うつ、といった感情低下、睡眠障害、食欲不振、集中力の低下など
慢性的な飲酒から、精神的・身体的に障害が現れる。
摂食障害(拒食、過食)
–
拒食と過食をくり返し、体や心にさまざまな障害が現れる。
こころの病気の種類2
•
離人症
–
•
解離性障害・ヒステリー
–
•
日に何度も眠気が起こり、社会生活に支障をきたす。
燃え尽き症候群
アパシー症候群
–
•
自分の意思とは無関係に顔の筋肉が動いたり声が出たりする原因不明の行動異常。
ナルコレプシー
–
•
•
物事の考え方や行動が極端にずれていて周囲を困らす。
チック症
–
•
特定の薬物・化学物質の使用を安くり返し、人格崩壊や死に至る。
人格障害(境界性、妄想性、分裂気質、自己愛性、強迫性、反社会性)
–
•
病続で診察や検査を受けても診断がつかない原因不明の痛みが続き、不安、苦痛だ。
薬物依存症(仕事、買物)
–
•
特に原因のない漠然とした不安感が続き、ふらつき、動悸などの身体症状が現れる。
持続性疼痛障害
–
•
つらい出来事などをきっかけに、記憶、意識、行動がバラバラになって現れる。
全般性不安障害
–
•
周囲の情景がピンとこない 妙な感覚にとらわれる。
中心的な症状は、意欲が減退して無気力になることで、極端な場合は学校や会社から引きこもってし
まい、自室や自宅から一歩も出なくなる
非定型精神病
–
躁うつ病と統合失調症のどちらにも決めれない病像
青年期の引きこもり
•
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•
“引きこもり”とは、ほとんどの時間を自室あるいは自宅にこもって過ごし、
社会的な活動を避けている状態のこと。一説では、その数は数十万人
にものぼり、さらに増加傾向にあるといわれている。
多くは不登校から始まる。引きこもりの期間が長引くにつれ、用件は筆
談で済ませるなどして親とも極力会話を避け、TVゲームやパソコンなど
を相手に昼夜逆転したような生活を送るようになる。
きっかけは、例えば学校での失敗、いじめ、成績低下、うまくいかない友
人関係、不本意な学校への入学、自分が希望する進路への親の反対、
失恋など。
いったん引きこもり状態になると、他者とのコンタクトによる気晴らしや喜
び、なぐさめや勇気づけなどの体験が断たれることから、回復への困難
が増し、一連の障害が悪循環となって症状の深刻化と長期化がもたらさ
れる
一般に自然な回復、また家族だけによる問題の解決は困難で、精神科
での治療が必要とされている。引きこもり状態にあるものをいきなり精神
科に連れて行こうと思っても、拒否されることが多い。まず両親が受診し、
家族の対応や心構え、どうやって病院へ足を運ばせるかなどを相談す
る。世間の目を恐れて隠したりすることなく、必要な援助をできるだけ得
て、忍耐強く対応していくことが重要
アパシー シンドローム
•
中心的な症状は、意欲が減退して無気力になることで、極端な場合は学校や会
社から引きこもってしまい、自室や自宅から一歩も出なくなる。しかし、ほとんど
の場合、無気力になるのは自分が本当にしなければならないこと、例えば本業
である勉強や仕事に対してのみで、学生であれば大学に行かずにアルバイトや
趣味に熱中するという、いわば“選択的無気力”が特徴である(うつ病の場合は
全てに無気力)。
•
普通の人でも無気力状態に陥ることはあるが、通常は長くても2~3ヶ月もすれば
自然に回復する。退却神経症の人は自分の力で回復することは難しく、放置して
おくと1年以上にわたって無気力な生活を続けてしまう場合があるので、普通の
人が陥る無気力状態とは区別される。
•
退却神経症になる人の性格は、おとなしく真面目な一方、強情で頑固。また、受
動的で、自分から何かを働きかけていくことが苦手で、人と対立することを避ける
傾向にある。
•
治療として、自分の将来について率直に話し合うことから始める。一般に、退却
神経症の人は怠けているという自覚はあるものの、無気力な状態でいることを自
分の中で黙認しているところがあり、深刻な悩みとしては受け取っていない。だ
から、患者が自発的に受診することは少なく、学生であれば、試験が差し迫って
いるなどよほど困窮した時だけである。スポーツや趣味、自分が何か夢中になれ
るものがみつかると、無気力状態から脱することも多い。
うつ病
• 気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動
の低下、食欲低下、不眠症などを特徴とする精神疾患。特に
はっきりした身体の病気もないのに、身体も心も調子が悪く、
日常生活に支障をきたす。
• 生きるための(活動するための)エネルギーが枯渇している
状態。
• うつ病は、ストレスにさらされれば、誰でもなる可能性がある。
• 女性では4~5人に1人、男性ではその半分程度の人が、一
生のうちで一度はうつ病になると言われている。
• ほぼ必ず治る病気なので、なっても心配はいらないが、自殺
だけは注意が必要。
• 休養、服薬、カウンセリングなどで治療する。
うつ病の誘発
• 性格
– 執着性格
仕事熱心、凝り性、何事においても徹底する、正義感や
責任感、義務感、手抜きができない
– メランコリー型性格
真面目で几帳面、協調性があり、人への配慮ができる、
つまり社会的適応が非常に良い
• 環境
– 引越し、定年、転職、長期出張、結婚、離婚、子供の独立
等、種々の生活の変化が、その人の性格や生活状況と関
連して、うつ病を誘発することがある
• 身体的ストレス
– 感染症、外科手術、出産 など
神経症(ノイローゼ)とは?
「神経症性、ストレス関連性及び身体表現性障害」
• 神経症的障害は明らかな器質的基盤をもたない精神障害で、
患者はかなりの洞察力と十分な現実検討能力をもち、普通
自分の病的な主観的体験と外界の現実を混同することはな
い。
• 行為にかなり問題がある時も、社会に受け入れられる範囲
にとどまり、人格の崩れはみられない。主な症状には、過度
の不安、抑うつ状態、恐怖症、強迫症状、ヒステリー症状が
含まれる。
• かって、不安神経症、強迫神経症などと呼ばれていた。
• 症状は複雑で、治療にも様々な方式がある。また、内科・外
科の身体疾患にしばしば種々の程度に合併する。また類似
の症状は、うつ病、統合失調症(精神分裂病)などの前駆な
いし随伴症状として現われることがある。
抑うつ神経症とうつ病の比較
うつ病(内因性)
中年期・初老期に多い
年齢
最近では若年者にも増加
抑うつ神経症(心因性)
青年期に多い
日内変動
しばしばみられる
みられない
睡眠障害
必ずみられる
必ずしもみられない
自責性
しばしばみられる
稀にしかみられない
他責性
稀である
しばしばみられる
依存性
稀である
しばしばみられる
状況依存性
稀である
しばしばみられる
メランコリー型
執着気質
はっきりした特徴はないが、未熟な
タイプが目立つ
きっかけとなる喪失体験
稀である
しばしばみられる
発病前の社会適応度
非常によい
あまりよくない
抗うつ薬への反応
よい
必ずしもよくない
症
状
性格
抑うつ神経症は、うつ病より抑うつ状態が軽く、個々の抑うつ状態の持続期間も短いが、
全体の経過をみると年単位で長引くことが多い。
うつ病への対応
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「必ず治る」病気であることを説明する
身体的な病気であり、「なまけ病」や「気の病」とは違うことを説明する
患者の訴える身体症状にも十分耳を傾け、適切な説明と対応を行う
病気を治すのは医師に任せ、頑張ろうとしないで休養するように指導す
る
病気が治るまで、生活・仕事における重大な決断を避けさせる
病気が治るまで、自分の性格などの内面的な問題を深く考えないように
指導する
受容的、支持的、共感的態度で接する:家族、友人は患者の精神的なつ
らさを理解する
過度の激励は避ける
抗うつ薬は有効であるが、効果が出るまでに数日の猶予がほしいこと、
効果よりも副作用の方が早く出る場合があるが、服薬を止めないように
指導する
治る過程は一直線ではなく、一進一退を繰り返しながらよくなっていくこと
を説明する
自殺しないことを約束させる
うつ病の症状の変化
・ 良くなったり悪くなったりしながら症状が徐々に改善する
・ 一時的に良くなっても無理は禁物
・ 治療をきちんと続けていれば悪くなっても悲観する必要はない
精神科専門医へ是非に、また早く
依頼したほうがよい場合
• 妄想、幻覚、昏迷(極度の意識低下によってほとん
ど動きがなくなること)などの重い精神症状がある。
• 自殺念慮が強い、自殺企図があった。
• うつ状態が重症である。
• 2ヶ月以上、治療を続けても精神症状に軽快がみら
れない
• 環境の調整に困難が大きい。
• うつ病以外の精神疾患との鑑別が問題となる、また
は必要である。
• 過去に躁病相、あるいは重症のうつ病相を疑わせ
る時期がある。
抑うつ神経症への対応
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悩みを打ち明けるように指導する
カウンセリングを受けるように指導する
要因、背景となる要件の除去に努める
状況、場面を変えることもよい方向につなが
ることがある
• 抗不安薬、マイナートランキライザー、新しい
抗うつ薬も有効である
心身症の存在
メンタルヘルス
セルフケアが重要
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いつもと違う自分に気付く
自らがストレスをコントロールする
自分の健康は自分で守る
自己問診表の活用
Zungのうつ評価尺度(SDS)
抑うつ性の検査表
質問には、肯定的なものと否定的な
ものの両方がある
- 各質問に対し、 症状の程度 とし
て下記の 1~4 の点数をつけます。:
合計点はパーセントに換算すること
もあります。(SDS インデックス)
SDS インデックス = (点数 / 最大可
能値 80) x 100、
または SDS インデックス = 点数 x
1.25
SDS 素点の合計点数
SDS インデックス (点数 x 1.25)
SDS 素点
<50:普通
50-59:軽度のうつ病
60-69:中~高度の大うつ病
>70:極度の大うつ病
心の病、医療施設選びのポイント
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総合病院、大学病院の精神科: 内科的、脳外科的
な検査が必要なときに円滑に受診できて、入院が可
能。精神科クリニックで対応できない際の受診(紹介
を受けて)が一般的。
単科の精神科病院: 長期の治療や入院が必要な際
に利用される。統合失調症や統合失調症類縁疾患
を持つ患者を多く治療対象にしていることが多い
精神科クリニック: 夕方や夜まで開いており、比較
的受診しやすいので、初めての場合に利用するのが
よい。通常、外来診療が中心で、薬物療法から精神
(心理)療法からなり、ごく軽い症状から長期化した精
神障害まで幅広く診療する。精神科医のほかにカウ
ンセラー(臨床心理士)がいるところがベター。
心療内科: 主に心身症が対象だが、うつ病や神経
症、摂食障害やパニック障害なども治療する。
臨床心理士の開業施設: 薬物療法はできないが、
じっくりと話を聞いてほしい、相談にのってほしいよう
な、面接を主とした精神(心理)療法を望む場合には
好適。
保健管理センターでの対応
• 担当教官や学生課からメンタル面での相談
があれば、常勤医師や看護士が初期対応。
• 確定診断には近くの精神科医を紹介すること
も多い。
• マイルドな薬剤なら保健管理センターで投薬
することもある。
• 臨床心理士がカウンセリングを行う。
カウンセリングマインドを持ちましょう
カウンセリングは、医療・福祉・教育関係の専門家にとどまらず、友人、隣人など一般の
人々も、誰でも行うことができる。
普通の会話や交渉のような自分の感情や考えを言わず、相手の感情、考え、主張を、十
分な時間をとって、ひたすら熱心に聞くことが、(ⅰ)無条件の積極的関心である。ただし、い
くら一生懸命聞いてくれても、まるきり感情が分かってもらえないのでは、話す方も気抜けす
る。つまり、(ⅱ)感情を含めた理解が必要になる。このように、無条件の積極的関心をもち、
感情を含めて理解しようとする聞き方は、一言でいうと“傾聴”という言葉に当たる。傾聴し
てもらえると、話し手はいつの間にか思いのたけを存分に話し、それだけでも心が軽くなる
のを感じる。 このカウンセリングは、程度の差こそあれ、各種の悩みや心の病気への対応、
治療に役立つ。その理由は、何よりもまず、話し手が良い聞き手と語るうちに、自分のかか
える問題のありかや性質を、はじめてはっきりととらえることができる。聞き手が話を聞いて
問題のありかを理解するとともに、話し手も自分が語るうちに、それを自ら理解できる。それ
とともに、感情的なしがらみからも抜け出して、客観的なとらえ方ができるようになる。それ
につれて、その問題とどのように取り組んでいくとよいか自分で考え、自分で解決する手だ
てに気づく。その際に聞き手も、話し手の役に立つと思われる社会的あるいは医学的な知
識を、一般論として説明して、本人の判断の助けにすることは、非指示的なカウンセリング
の原則に反するものではない。また、不安や不眠などが強い時、専門医を受診して適切な
薬物を処方してもらうことも原則に反しない。
こころを疲れさせないために
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仕事に熱中しすぎないようにしよう
完全主義にならないようにしよう(八分程度の力で“よい加減"をめざそう)
失敗やミスをおそれないようにしよう
仕事についても「NO」を言おう
不満や腹が立つことは表現しよう
私的な時間を大切にしよう
時間にこだわらないようにしよう
今日だけの仕事を優先しよう(明日の仕事まで思い煩わない)
疲れたときには十分に休もう
家族や友人とよく話をしよう
周囲の人の言うことに耳を傾けよう
趣味や運動を大切にしよう
一度にはひとつのことだけをしよう
自分自身を大切にしよう
ときにはひとりっきりになろう
「負けるが勝ち」を心がけよう
自分のからだの健康に留意しよう