国際コミュニケーション概論

e-Learningの最新動向と今後の展望
- Web2.0時代の次世代e-Learning -
平成18年8月2日
神戸情報大学院大学
田村 武志
はじめに
新しいe-Learning出現の背景
オープンソースソフトウエア・オーバビュー
フィロソフィ
オープンソースコミュニティ
国内および海外の動向
 Web2.0の潮流
オープンソースe-Learning
 今までのe-Learning
 OSS型LMSの種類と特徴
 新しいe-Learningの研究開発
 C-Learning
まとめ
C-Learning
オープンソース
e-learning
学習コミュニティ
第4世代 eラーニング
Web2.0 & OSS
Blended Learning
第3世代 eラーニング
同期・非同期統合型+VOD
Broadband Network
人事管理システムとの統合
キャンパスネットワーク、授業蓄積・配信
WBT
学習管理システム(LMS)
個別学習ツール
CAI/CBT
第2世代 eラーニング
Internet
第1世代 eラーニング
Computer
新しいe-Learning出現の背景
新しいソフトウエア開発
手法
Open Source Softwareとは
プログラムのソースコードをインターネットで世界中に公開
プログラムのソースコードは誰でも自由に入手でき、利用することができる
誰でも改修・改変が可能
開発者の許可なく自由に再配布することができる
改良者は元のソフトウエアと同じ条件で再配布すること
改良したソースコードはGPLに基づき公開すること
GPL:GNU General Public License
GNU一般公衆利用許諾ライセンス、当該ソフトウェアがフリー
であることを保証すること
GPLはMITのリチャード・ストールマンが提案
ソフトはもっと
自由であるべき!
個人や団体、利用分野、関連製品などで差別してはいけない
基本的には無償
LinuxはOSSの象徴的なソフトウエア
Linuxカーネルは Linus Torvaldsが1991年に開発
GPLの提唱者
Richard Matthew Stallman
新しいe-Learning出現の背景
ソースコードとは
人間が理解できるように書いたプログラム記述形式のこと
ソースコードの例:
「Hello Worldという文字を画面に表示せよ」
これが
ソースコード
#include <stdio.h>
main()
{
printf(“Hello World!\n”); <-文字を表示
}
C言語で書かれたソースコード
http://oooug.jp/start/open/open01.html
Linux カーネルの
開発者
Linus Torvalds
新しいe-Learning出現の背景
Proprietary
商用ソフトウエアの特徴
プロプラエタリーソフト
商用ソフトは開発者が権利を有する
「ソフトウエアライセンス」により保護
「バイナリーコード」だけをユーザに販売する
ユーザは、この 「バイナリーコード」の利用権を買う
「使用許諾」に「同意(Yes)」すれば、利用の権利が与えられる
使用許諾の範囲を超えて使用すればライセンス違反
ソフトウェアライセンスの要件
利用できるPCの指定、台数指定、指定されたPCでのみ利用可能
台数ごとにライセンス契約が必要
コピーは違法/不正コピー
ユーザは一切改修できない
ソフトにバグや不具合があっても、勝手に直したり、改修することはできない
開発者のバージョンアップを待つしかない
商用ソフトは
ソースコードを非公開(独占)にして
ライセンスによりビジネスを成立
新しいe-Learning出現の背景
Open Source Softwareのメリット
 「オープン」そして「情報共有」ということの意義は大きい
 OSSのメリット
ソースコードを広く公開することにより、ソフトが常にバージョンアップされる
開発コミュニティで検証
バグに対してすばやい対応
フィードバックにより良質のソフトが流通
バグを速く、効率よく取ることができる
開発コストは大幅に減少
台数ごとのライセンス料は不要
ユーザの環境に合わせて自由に改修できる
ユーザがプログラムをコントロールできる
機能追加、改修などカスタマイズできる
 ソフトウェアは、特定の企業の所有物ではない!
 世界中の皆が協力して開発し、共有し、利用すべき
新しいe-Learning出現の背景
Open Source Community
誰が
開発するのか?
開発コミュニティの活動
情報を共有し、協調し、切磋琢磨する
世界中の優秀なエンジニアが参画、世界の英知との情報共有
共通するモジュールは世界の公共財
エンジニアは、貢献する喜びを得る
楽しみながらプログラムを作る
世界中の人々に評価してもらえる
一人でも参加できる
生き生きと生きる「生きがいの場」
強制された世界からの開放
情報を発信する事のメリットは大きい
OSS開発手法の有効性を論文「伽藍とバザー
ル」にまとめる。ソフト開発は中央集権的、トップ
ダウン(伽藍方式)ではなく、もっと自由であり自
発的(バザール方式)であるべき!
ソフトウエアの新しい
開発モデル提唱者
Eric Steven Raymond
開発者
技術力UP
貢献・生きがい
フィードバック
ソースコード
公開
検証・バグ修正
改善
開発コミュニティ
オープンソースの仕組み
流通
ソフトが多くの人に
利用される
評価
共同分散開発
ユーザは低コストなソフトと
利便性を得ることができる
良質・高機能
なソフト
新しいe-Learning出現の背景
オープンソースソフトウエアビジネスとLAMP
オープンソースソフトウエアビジネス
ディストリビュータ
ソフトウエアの配布やサポートを有償にする
新しいビジネス領域
Red Hat、IBM、ミラクル、ターボ、Novell、Red Flag・・・・・・
LAMPとは
OS:Linux
Linuxサーバは安定性や拡張性が高く、企業等で圧倒的に使われている
Webサーバ:Apache
DB:MySQL (PostgreSQLも有名)
開発言語:PHP
UNIX/LinuxのほかWindows環境でも動作する
オープンソースの開発言語、Webシステムの開発が可能
新しいe-Learning出現の背景
OSSの推進施策と各国の動向
我が国の現状
ソフトウエア開発を外国に大きく依存
対外依存度は1:30~100 ⇒ 輸出1に対して、輸入が30~100
特定の商用ソフトウェアに依存
ITおよびOSS人材不足
政府・民間が協力してOSSを普及拡大
経済産業省・総務省の取り組み・施策
ユーザが安心して使える技術的・制度的課題の解決
オープンソースソフトウェア開発基盤整備事業
学校現場におけるOSS活用実証実験
日本OSS推進フォーラム
日中韓・世界のコミュニティとの協調
OSSの国際協調を強力にバックアップ
アジアOSSシンポジウム
北東アジアOSS推進フォーラム
日中韓OSS連携の強化
各国の動き
中国、韓国およびヨーロッパ諸国(ドイツ、英国、フランスなど)で活発
新しいe-Learning出現の背景
Web2.0
Web進化論
(梅田氏)
 「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を受動的なサービス享受者ではなく、能動
的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発体制(梅本)」
誰でも情報が発信できる時代
権威ある、力のある「メディア」からの一方的な情報発信の時代ではない
主導権は、情報発信企業にあるのではなく、ユーザ側に移りつつある
ユーザがコントロールするユーザオリエンテドな時代
自分一人でも情報発信できる
10億人の人が「自らを表現する道具を持った!」
次の10年への3大潮流
インターネット
チープ革命
オープンソース
梅田望夫著:「ウェブ進化論」、ちくま新書」
新しいe-Learning出現の背景
情報発信・情報共有の道具の例
Wikipedia:ウィキペディア
インターネット上のフリー百科事典
不特定多数の人が自発的に執筆
約24万項目、1ヶ月の利用者700万人
共同作業の成功例
Webサイトを「見るもの」から「参加するもの」に変えた
Blog:ブログ
Web上での個人の日記帳(Weblog)
誰でも「情報発信」
約900万人が利用
Mixi:ミクシィ(SNS)
同好の士(友達)のコミュニティ
利用者が500万人を突破
60万以上のコミュニティ
自らを表現する
道具
今までのe-Learning
教育・学習のスタイル
はこれしかないの
か?
学習者は:
「個人でコツコツ(悶々)と自宅で 学習・・・・・・・」
CAIから未だ完全に脱していない?
解説、問題を解く、回答、提出・・・・
「教授法、教材」は、かならずしも学習者個人
に合ったものではない
講師・教材作成者の意図で作られる
トップダウン
「教える・・・・・・」が強調される
学習者同士の情報交換・共有の場がない
「教えてもらう」、「教わるもの・・・・・・・」
解説
Webサーバ
回答
Y/N
提出
Internet
仕組みは:
サーバクライアントモデル
サーバ中心
ベンダーは:
商用ソフトでビジネス
ライセンスビジネス、ASPなど
学習者
e-Learningの発展経緯
目標は?
個と集団
C-Learning
学習者主体
学習コミュニティ
第4世代 eラーニング
OSS e-Learning
M-Learning+E-Learning
=U-Learning
Web2.0 & OSS
Blended Learning
発展経緯
同期・非同期統合型+VOD
マネジメント
人事管理システムとの統合
キャンパスネットワーク、授業蓄積・配信
WBT
学習管理システム(LMS)
個別教育
個別学習ツール
CAI/CBT
インターネット+Web技術
オープン
情報発信・共有
コラボレーション
ユーザ指向
Now?
第3世代 eラーニング
Broadband Network
第2世代 eラーニング
Internet
第1世代 eラーニング
Computer
商用e-Learningとオープンソースe-Learningの比較
商用e-Learningツール
受講者数、端末数に応じてライセンス
料が必要
高価
ソフトウエアの改変・改修は自由にでき
ない
カスタマイズは開発元が行う
オープンソースe-Learningツール
誰でも自由に使える
ライセンス料は基本的には不要
無償で利用できる
ソフトウエアの改変・改修は自由
ユーザが自由にカスタマイズできる
ユーザニーズにあったものを自分で
作れる
ニーズ:
大学・企業によってe-Learningのスタイルは多様
カスタマイズは必須
低コストのLMSをうまく改修しながら、ユーザ環境に合ったシステムを開発
システムの運用管理、ASPなど、オープンソースムーブメントの中で
新しいビジネスモデルを創成すべき
オープンソースe-Learning
主なオープンソースe-Learningの種類と特徴
機能
 exCampus
履修管理、掲示板、FAQ、レ
ポート管理、コース・教材管
小規模サイト
理、テスト・成績、出席管理
授業ストリ-ミングが得意
機能など
メディア教育開発センターと東大大学院(iiion-Line)が開発
Apache+PostgreSQL+PHP
 Moodle
多機能、多言語対応LMS
Apache+MySQL+PHP
授業、コミュニティ
すでにたくさんの事例がある
オープンソースe-Learning
主なオープンソースe-Learningの種類と特徴
 Xoops
小~大規模サイト
PHPを用いたコミュニティサイト構築用LMS
Apache+MySQL+PHP
JAPRICO
中~大規模サイト
Xoops公式サイト
早稲田大学・FOLCが開発したLMS
オンデマンド授業流通フォーラム
Apache+PostgreSQL+PHP+Smarty
日本の大学の機構にあった設計思想
早稲田大学(OSS研究所)での実践を
踏まえている
http://jp.xoops.org/
オープンソースe-Learning
主なオープンソースe-Learningの種類と特徴
 CFIVE
東大情報基盤センターと日本ユニシスソリューションが共同開発
PHPを用いたコミュニティサイト構築用LMS
OpenLDAP(Apache+PostgreSQL+PHP)
CEAS
関西大学が開発したLMS
授業支援型e-Learningシステム
Apache+PostgreSQL+PHP
Sakai Project
北米の5大学連携により開発推進
ミシガン大学、MIT、インディアナ大学、スタンフォード大学
ウイスコンシン大学
それぞれの大学の既存システムのいいところを集約
オープンソースe-Learning
主なオープンソースe-Learningの種類と特徴
 ILIAS
 Boddinton
 Site@School
 ATutor
 DodeboLMS
 Dokeos
 Segue
 WordCircle
 Claroline
 SATTAtain2
 LON-CAPA
PHP/MySQLベースのオープンソースe-Learning
66カ国、486機関が参加
GPLライセンスに基づき運用
これからのeLearning
 次世代e-Learning
Web2.0の進化に対応
OSSのフィロソフィを生かす
学習はもっとダイナミックであるべき
学習者を「型」にはめ込むのがいいのか?
学習者主体
情報発信・共有・・
 OSSコミュニティー(OSC)に注目
すべてオープンにして、情報を共有し、協調する、そして切磋琢磨する
OSCは 「次世代e-Learningのモデル」である
Web2.0=誰でも情報発信の時代
 OSSとe-Learningは親和性が高い
学習は人と人とのかかわりが大事
オープンソース・ムーブメントの中で、
e-Learningも大きく変化し、進展する!
研究事例
プロジェクトマネジメントをモデルにした
OSS e-Learning
- プロジェクトマネジメント(PM)とは プロジェクトは目的達成型の臨時的な活動
明確な目的があり,達成すべき目標がある
プロジェクトには「始め」と「終わり」が存在する
PMの4つのプロセス
目標の明確化,計画,実行とコントロール,まとめ
密なコミュニケーション
メンバー間の情報共有
厳密なプロジェクト管理
作業の階層化、WBS
進捗管理
ガントチャート
プロジェクト開始時には「プロジェクト宣言」をする
プロジェクト終了時には「成果」が求められる
成果物
振り返り
研究事例
プロジェクトマネジメントをモデルにした
OSS e-Learning
- C-Learningの特徴 学習を一つのプロジェクトとみる
明確な学習目的と達成すべき学習目標を設定
学習の開始時には「プロジェクト宣言」をする
学習の「始め」と「終わり」を明確にする
学習の4つのプロセス
目標の明確化,計画,実行とコントロール,まとめ
学習コミュニティを形成
メンバーで情報を共有
学習スケジュールの立案・管理
学習ステップの階層化、WBS
ガントチャートに展開
学習終了時には「成果」を出す
学習のプロセスを記録し、次回の学習に生かす
従来型e-Learning
C-Learning
b
server
c
d
学習者
a
b
n
サーバ・クライアントモデル





トップダウン
受動的
サーバにトラフィックが集中
協調学習の環境でない
コミュニケーションが希薄
C-Learning
の
インフラ
学習者
a
n
P2Pモデル
 対等型通信・グループ通信の環境
 通信にボトルネックがない
 負荷分散
 誰でも情報発信ができる環境
 自分のコミュニティも作れる
 活発なコミュニケーション環境
学習コミュニティが形成しやすい
従来のe-LearningとOSCをモデルにしたC-Learningの比較
従来からのe-Learning
C-Learning
学習者の学習に対する
構え
受動的、すべて与えられる
主体的、自らが主体になってコミュニティに参
加し知識を求める
学習形態
個別学習
個別・グループ学習
教材・コンテンツ
教材作成者があらかじめ作る
皆で協力して作り上げ、バージョンアップしてい
く
学習目標設定
進捗管理
目標は講師側が設定。個人でスケ
ジュール管理し、非公開。
他人には見えない。
自分で目標を立て、コミュニティに宣言する
スケジューリングし、自己管理する。
学習の進捗状況を公開し、共有する。それに
より他者が支援する機会となる。
ネットワークインフラ
サーバ・クライアントモデル
P2Pモデル
講師と受講者との関係
講師が教え、学習者がその指示に従っ
て学習する。トップダウン的
講師役が教えるが、あくまでも対等の立場、協
調する
セキュリティ
クローズドであるためほぼ完全
オープンのため完全とはいえない
学習参加のモチベー
ション
自己啓発的
相互啓発的、教える楽しさ、学ぶ楽しさを共有
協調性
講師と受講者との関係だけで、受講者
間の連携はない。クローズドである。
オープンにすることによりお互いに協調する
共有性
ノウハウを共有するという概念はない
知恵、アイデアをオープンにして、学習に必要
ないろいろな知識・経験、教授法を共有
経験の蓄積
学習経験を共有するという概念はない
学習経験を蓄積、共有する
まとめ
学習者主体
情報発信・共有・・
新しいe-Learning出現の背景
オープンソースソフトウエア・オーバビュー
Web2.0の進化
主導権が情報発信企業にあるのではなく、ユーザ側にある
ユーザがコントロールするユーザオリエンテドな環境
今までのe-LearningとOSS e-Learning をレビュー
次世代e-Learningの開発事例-C-Learning主導権が教材開発者や教師にあるのではなく、学習者側にある
学習コミュニティの形成
学習者同士の連携、コミュニケーション、切磋琢磨
あるときは「教え」、あるときは「教わる」
「教える喜び」と「学ぶ喜び」!
そのための最適なネットワークはP2P
OSSの潮流、Web2.0の進化の中で、新しいe-Learningを考える
我々の
チャレンジ