恋愛の社会学 筆者:山田昌弘 (中央大学文学部教授。専門=家族社会学) 恋愛および性的欲望の見なし方は人によって異なっている。 が、 「時代、地域、性別などによって共通性が見えている。」 (p117) • 先ず、時代による、 地域による、 性別による 「恋愛」のあり方・恋愛の存在さえはどう認められてきたか? 1 恋愛の社会学 近代化はどのように人間関係・家庭内関係を変えたか? 前近代、近代初期、そして現代の3つの時代 近代に入ってからの恋愛の変化 1. 恋愛の歴史をひもとくと、 恋愛と結婚が強く結びついてきたのは、「つい最近」。 近代になってからである。 p117 2 恋愛の社会学 近代に入ってからの恋愛の変化 2 2. 近代社会に2つの変化が生じた: ①一つ目の変化は、「体験」としての恋愛が人性の なかで高く評価づけられて来たこと。 これの前提は、 (1)恋愛とは一つの現象、出来事、行動だけでもないし、 (2)純粋の感情、感覚だけでもない。 むしろ、双方を混合する「体験」となったことである。 3 恋愛の社会学 近代に入ってからの恋愛の変化 3 ② 二つ目の変化は、恋愛 と 結婚 と 性 (性=生殖 +快楽)の3つが強く結びついて 来たこと。 その経済的、物質的な背景を見てみよう。 4 恋愛の社会学 近代に入ってからの恋愛の変化 4 • 時代の変化 = ・経済状態の変化 から⇒ ・社会制度の変化 へ。 先ずは、近代の結婚には、一緒に住む意味をもつ • 二人のみで子供をつくる、子育ての責任を担う • 二人のみで家計をたてる。経済的な単位としての核家族 • 二人のみで共同体の中の一単位となる(社会的な単位) 5 恋愛の歴史 これらの変化に伴う結婚の「意味」と「機能」: 1. 経済的な単位としての、結婚で作られる世帯(「我が家」): ①生産労働で収入生成する世帯・単位である。 ②消費活動に従事する世帯・単位である。 2. 子育ての制度:教育から労働力になるまで、子を養う。 3. 消費対象となる「我が家」(「家庭」=消費単位という論説) 6 家事の世界・仕事の世界 市場労働 1. 代価・報酬が付いている 2. 計算された労働に代価が 当る (*) 3. 労働は競争される 上記の三つによって、自分 の「労働」は売れる商品で ある *計算されるのは、時間(時数)、 生産するものの量 家事労働 1. 代価がついていない 2. 量や質は計算されない 3. 競争がない 上記の三つによって、 家事は「愛情のあかし」、 「贈与」であるはず 7 家事の世界・仕事の世界: 家族と市場の領域区分 人生の価値(生きがい) 近代社会における 市場・職場での賃労働 家族労働 • 功利であるはず • 労働~賃金の交換 • 自分、妻、そして子供の ための購入消費を可能 にする • 情緒的であるはず • 贈与として行う • 夫と子供の「市場」へ 出られることの支え 8 家事の世界・仕事の世界 近代社会と「愛」: 愛、恋愛、そして家族の愛 • 愛する体験が高く評価される • 愛される体験が高く評価される • 家族内母性愛、親子の愛、夫婦の「きずな」が 「必要」とされてきた 9 恋愛の社会学 ~ 近代、経済、世帯 経済的な単位としての、結婚で作られる近代世帯: 1. 生産労働:現金又はそれに相当するものを得るための労 働 ーー 生産労働で収入生成する単位でもある 2.「再生産労働」:労働に従事して行く人を生産する、維持する --家事、子育て、仕事または学校に行く人のための準備・ 支援 10 恋愛の社会学 ~ 近代、経済、世帯 • 1. 2. 3. 近代化に伴う新たな個人や世帯への経済的、 社会的な要求: 高等教育を受けた・資格がある労働力が求められる そのための子育てに関わる教育費が高まる 世帯の将来のための資産の蓄積が必要となる 上記の要因がもたらして来た一つの結果: 結婚年齢が上がってくる 11 日本の平均結婚年齢の年次推移 (歳) 30 29 28 27 26 25 24 23 22 昭和 5 16 (1930年) 人口問題研究所 (1950年) 122004年 厚生労働省「人口動態統計」 近代化に伴う結婚年齢の変化1(外国) 最初結婚の平均年齢(米国) 年 齢 男性 女性 米国国税調査 より 年代 13 戦後・50年代の結婚年齢が低い。戦前や現代の結婚年齢が高い。
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