ユーザインタフェース 第10回 プロトタイプ ユーザビリティ調査における プロトタイプの役割 • プロトタイプ: ひな形 – ユーザーに試しに使ってもらう ために作る • ソフトウェア工学でのプロトタイプとの違い – ソフトウェア工学 • 試作品 • 製品を完成させる過程の中間成果物 – ユーザビリティ調査 • 試用品 • 設計者が試行錯誤するためのテスト材料 • 携帯電話であってもWebサイトであっても、本格的に開発が 始まってから根本的な問題が見つかったのでは、手遅れ なんのためのプロトタイプ? • 実際のUIを使った際の問題点の明確化手法 • UIを介したインタラクションのなかで生じるユーザ の 戸惑いや理解できない点 を明らかに – 画面上で迷った – 操作後のフィードバックの意味がわから なかった • 動くUIを正直につくると時間とコストがかかる。 – できるだけ早い段階 でプロトタイプを使った検証を行う という方針と相反 – 時間をかけて動くプロトタイプをつくったのでは、仮説検 証の 反復回数も減ってしまう • では、どうする? ローファイとハイファイ • 忠実度 (fidelity) – どれだけ実物そっくりに作られているか – ローファイ(low fidelity) 大雑把に作られている – ハイファイ(high fidelity) 本物そっくり • すべての部分をハイファイに作るのは 愚か • どこをどれだけ忠実につくるか – ハイファイにするべきは • テストの目的に直接関係する 部分 • テストする機能を完全に シミュレート できること – あとはローファイでよい • プロトタイプの作成 – 目的のため、必要最小限のインタフェースに絞る Tプロトタイプ • 通常、製品の機能は階層的に表現される • 水平プロトタイプ(浅いプロトタイプ) – すべての機能を、特定の階層だけ作る。 • 垂直プロトタイプ(深いプロトタイプ) – 特定の機能だけを、すべての階層で作る。 • Tプロトタイプ – 双方を融合 オズの魔法使い法 • Jeff Kelleyが命名した手法 • UIにおけるインタラクションを、プログラミング で実現するとコストが高い • 裏に隠れた人間が操作して、いかにもコン ピュータが行っているように見せる方法 – 映画『オズの魔法使』のクライマックスでオズの 大王が登場して、人々が恐れおののく – 主人公ドロシー・ゲイツが部屋の隅にあるカーテ ンを開けると、実は、貧相な老人が装置を操って いた プロトタイプの作成の例 ー Webサイトの場合 ー • オーサリングツール(Authoring Tool) – プログラムを書かないでソフトウェアや作品を作るた めのアプリケーションソフトウェア – Webの場合は以下が3大メジャー製品 • Adobe Dreamweaver • Microsoft Expression Web • ホームページビルダ(IBM→2011年よりジャストシステムへ) • もっと手軽な方法: 紙を使う paper prototype – ソフトウェアに習熟していないメンバでも参加可能 – Photoshopで作った見た目が立派なものより、一見大 雑把なプロトタイプの方が、ユーザが気軽に 問題点 を指摘する傾向がある オズの魔法使い法に基づく paper prototype • ユーザがボタンを押すと、新しい画面が現れる 最近はpaper prototypeでなく、MS PowerPoint を使う プロトタイプの作るうえでのポイント ー Webサイトを例に - • ダミーページ をつける – すべてのリンクやボタンがクリックできるようにユー ザが失敗できるようにする • ユーザの判断に影響する部分は ハイファイ に – 画面遷移 – 画面要素の 相対的位置関係 – リンクやボタンのラベルやテキスト – エラーメッセージ の内容 – アイコンのデザイン 手を抜いてよいところ • コンテンツ はダミーでよい • ユーザを うまく騙す – ダイヤログボックスの表示 • ダイヤログボックスを重ねて表示した画面に切り替え る – 確認用メールの送信 • そのタイミングで人間がメールを送信する – オズの魔法使い法 の活用 • プロジェクト参加者全員で作ることが重要 – ひとりで作ると、テストで悪い結果が出た時に、作 成者の力量のせいにされることがある カードソート法 • ほとんどの製品は 階層型メニュー を採用 – コピー機、携帯電話、DVDレコーダ • 製品を使用する際の 階層 を設計する手法 • 超ローテク手法 – 情報を書き込んだ紙のカードを ユーザに分類して もらう – 設計チームの果てしない議論に終止符を打つ • 『クローズド』 と 『オープン』 の2種類の方法 クローズド・カードソート • 見出しのある カードソート • カテゴリ名がある程度決まっている ときに実施 • カテゴリ名の有効性を検証し、コンテンツをどのカテ ゴリに割り振ればよいか検討するために実施 – カードをユーザに渡してカテゴリ名の下に置いても らう。 – ユーザが そのカテゴリに分類した理由 を話しな がら作業をしてもらう • 効用 – 意味不明のカテゴリ名をユーザは指摘してくれる – 想定と異なる配置が起こ れば、ユーザがカテゴリ 名の意味を誤解していることがあきらかになる カードの動き、ユーザの違い • カテゴリ名の完成度が高ければ、大半のカードはす ぐに行き先が決まる • 最後まで決まらない – 現在のカテゴリはすべての階層構造を表していない • いったん配置されたカテゴリから他のカテゴリに移動 させたりするカードもある – カテゴリが互いに独立でない • 複数のユーザにカードを分類してもらってその結果を 集計 – 同じカテゴリに配置される カード – 複数のカテゴリに分散する カード があきらかになる オープン・カードソート • 見出しのないカードソート • カテゴリ名が決まっていないまったく白紙の状態 で、ユーザにカードを自由に分類してもらう • 適切な情報構造に関する ヒント を見つけ出すこ とが目的 – ユーザによってグループ分けとそのラベリングの結果 はまちまち • 定量的方法 • 定性的方法 クラスター分析(次スライドで説明) 名寄せ分析 – ユーザが付けたラベルで同じような意味を持つラベル を1つにまとめる – 分析者の主観に依存してしまう クラスタ分析 • 距離が近い サンプルを順番に結合して、クラ スタ(房)を形成する多変量解析手法 クラスタ内の重心を とってクラスタリング – 距離にはいろいろな表現法 花子 太郎 一郎 次郎 卵 苺 茸 花子 1 0 0 太郎 0 1 1 一郎 0 1 0 一郎 1.41 1 - 1.41 次郎 1 0 0 次郎 0 1.41 1.41 - 花子 - 1.73 1.41 0 太郎 1.73 - 1 1.73 花 次 太 一 子 郎 郎 郎 2点間の距離が最小の ものを同じクラスタへ • データの階層構造を示す 樹形図 が作成される • 統計解析ソフトが必要 デルファイ・カードソート • カードソートと デルファイ法 の組み合わせ – オープンカードソートの欠点を補う – デルファイ法 • 専門家に対して意見の収集とフィードバックを繰り返すことで、将来 予測を行う調査手法 手順 1. まず 原型(シード) を作る 2. ユーザーに順番に任意の変更を加えてもらう 3. 結果がおおよそ収束するまで続ける • シードのためソートにかかる時間はオープンより短い – オープンでは個々のユーザの結果は多様 – デルファイでは極端な変更ではなく 調整 にとどまる
© Copyright 2024 ExpyDoc