デルコンピュータ社の戦略分析 リソース・ベースト・ビュー(RBV)と VRIOフレームワーク 13-mc009 李花 デル社の歴史 デル社は、1984年に始まる。この年の5月、 マイケル・デルがコンピュータの通信販売会社 を設立したのが始まりである。1987年に企業名 をデル・コンピュータとした。デル社の躍進ぶり はめざましく、1999年の全世界売上高でコン パックとNo.1を争う地位を確保している。純利 益率も約8%(99年1月期)という高い水準にあ る。米国デルの売上は、1992年に約20億ドル だったものが、99年1月期には182億ドルと、わ ずか7年間で9倍に拡大している。純利益では 実に14倍に成長した。 出所:http://www.f.waseda.jp/negoro/SupplyChain/Dell_model.html 2 デル社の成長 デル社は、世界30カ国以上に現地法人を持ち、 170カ国以上で販売活動を行っている。日本市場には、 1993年に本格的に参入した。 このようなデル社の高業績・高成長を支えているの が、デルモデルといわれる経営方式である。 出所:http://www.f.waseda.jp/negoro/SupplyChain/Dell_model.html 3 デルの最新工場ー中国のアモイ(厦門) 出所:www.eco.nihon-u.ac.jp/~ohba/SeikanPDF/10Sprnt07022.pdf 出所:DELL INSIGHT_JULY 2006 19 4 リソース・ベースト・ビューとは RBV(Resource-Based view)は、企業の競争 優位を経営資源の観点から分析する考え方。 企業ごとに異質で、複製に多額の費用がかか る経営資源(Resource)を活用することで、企業 は競争優位を獲得できると考え方。経営資源の 重要性は抽象度が高いので、経営資源が強み なのか、弱みなのかを分析するフレームワーク としてVRIO分析を用いる。 5 VRIO分析のフレームワーク 6 V:value(価値): 顧客は、ハードディスクの容量から、マイクロプロ セッサの性能、モニタの大きさにいたるまでさまざまな 選択が可能で、予算と希望に応じて、自分用にカスタ ム化されたパソコンを持つことができる。また、コン ピュータ本体だけでなく、モデム、コンピュータ・ソフトも 注文することができる。したがって、一回の注文で必要 なものが揃えられる。受注生産ではリードタイムが必 要になるが、デル社では以下のような方策でそれを短 縮させている。顧客から注文を受けると、マレーシア工 場と同時に部品サプライヤーへも納品指示を出す。顧 客から直接注文を取るため、製品在庫がいらない。他 社新製品との競争によって製品価格の低下も激しい。 在庫を持たないことが、価格競争上たいへん有利なの 7 である。 R:rareness(稀少性): 販売規模以上にデルの競争優位性に大切 なのは、同社がその購買機能を管理する手法 である。デルはその製造活動にちょうど必要な 分だけを購入し、大小を問わずそのサプライ ヤーには、工場まで1日に何度も配送をさせて いる。このようにして、部品の在庫コストを自社 からサプライヤー側へシフトさせているのだ。こ の購買方法はパソコン業界では珍しい(だから 稀少である)。 8 I:imitability(模倣可能度): デル自身による製品組立である。同社は、おび ただしい数のオプションの組み合わせを持つ、顧 客ごとにカスタマイズされたパソコンを大量に組み 立てているにもかかわらず、細部へのこだわり、速 いスピードと高効率、そして高品質が製品組立機 能に備わっている。たとえば、デルのエンジニアは、 ある機能のパソコンを組み立てるプロセスにおい て、パソコンに触れなければならない回数を130 回から60回に減らすことに成功した。こうした細部 へのこだわりにより、同社は組立活動に関すて特 許を獲得している。組立プロセスに関するこうした 特許は統合された生産システムの一部に組み込 まれているため、しばしば模倣コストが大きい。 9 O:organization(組織): デルは、部品配送、製品輸送、在庫保持、 アプリケーションに関しては外部調達している。 デルはこれらの機能をアウトソースすることより、 バリューチェーン全体の中で、自社が少なくとも 一時的か、もしくは持続的な競争優位を持って いる部分に自社の経営活動を特化することでき ている。つまり、デルは、能率的・機能的に組織 編成されていると考えられる。 10 VRIOフレームワークの弱点 この戦略を考慮すれば、非常に競争の激し いパソコン業界にあるにも関わらず、同社が素 晴らしい業務をあげ続けているのも不思議では ない。しかし、このVRIOフレームワークにも限界 がある。たとえ企業の持続的競争優位が価値 があり、稀少で模倣コストが大きい経営資源や ケイパビリティに基づくのであっても、それが永 遠に持続することはない。つまり、企業の外部 環境における脅威や機会が予測できないので ある。 11 デルのSWOT分析 市場優勢 (Strengths) 1、価格優勢。2、在庫なし。3、顧客サービス。 競争劣勢 (Weakness) 1、PC業界の劣勢。2、直販の限界。3、新 興市場の無力を脱出 市場機会 (Opportunity) 市場脅威 (Threats) 1、小売市場進出。 1、競争相手。2、流通チャネル。 12 新たな戦略 デルの弱みを分析するとデルの直接販売モデルはほとんど の成長がアメリカ市場である。しかし、現在パソコン市場成長潜 在力の最大は、中国、インドなどの新興市場である。デルの直 販の優位はこれらの新興市場では発揮にくい。これをいかに改 善するのがデルの課題である。 まず、ターゲットを変えるところで注目しべきであると思う。新興 国の潜在力は無視できない。中国の場合はレノボが圧倒的な シェア率を確保している。レノボの競争優位には中国の販売 チャネルも大きいポイントである。このようにデルも既存モデル の直販だけではなく、ビジネスモデルを改善して新興市場に対 する代理販売も必要だと思われる。 13 参考文献: 企業戦略論(上)基本編ジェイ・B バーニー 岡田正大(訳)2003年 ダイヤモンド社 14
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