化 学 災 害 の 医療情報統制 NBC連携モデルについて 九州厚生年金病院救急部 (災害医療) 部長 郡山一明 化学災害の種類と日常性 私たちは正しく視点を定めているか 化学災害の種類 ○ 化学テロ ○ ○ ○ ○ 地下鉄サリン 非日常的な危険 環境災害 ナホトカ号原油流出 産業災害・化学工場災害 危険物輸送中の事故 食品災害 和歌山カレー事件 水面下の対応こそ重要課題 日常的な危険 氷山 化学災害の特徴 ○ 災害の本質が分かりにくい ・ 化学物質の反応性 化学反応 無害物質 + 熱 ・ 社会に馴染が薄い ・ 曝露物質が眼に見えない ○ 災害初期対応の重要性 有害物質 大災害(事故)対応の特徴 「それぞれが自己の最善を尽くす」 「当事者は驚くほどの 情報不足の中にある」 キングスクロス地下鉄火災、日航機墜落、セベソ、 ボパール、スリーマイル、チェルノブイリ・・・・・・ 地下鉄サリン事件 • • • • • • 被災者 5500 名以上 1995 年 3月20日 午前 8時ごろ 重 体 53 名 死 者 12 名 搬送医療機関 267 災害発生時の問題点 ○ 集団災害 ・ 多数の被災者 5千数百名 ・ 多数の搬送医療機関 250あまり ○ 未知の劇毒物 ○ 化学災害の認識は誰が? 症状からの原因物質推察の有効性 聖ルカ国際病院(Dr.奥村)の経験から ・ 8 時 30分頃 咽頭痛、目の痛みの患者 ・ 8 時 40分最初の救急車搬送 結膜の充血 ⇒ 刺激性ガスの曝露 縮 瞳 ⇒ 有機リン系中毒 ・ 9 時15分 硫酸アトロピン投与開始 ・ 10 時 50分 検査結果 Ch-E低下 化学剤の認識 = 臨床現場 情 報 統 制 (1) 混乱した情報依頼 1 病院内の情報統制 ・ 大量の患者が自力受診 ⇒ 処理能力の限界 ⇒ パニック ⇔ 情報統制の破綻 2 日本中毒情報センターへの問い合わせ ・ 複数の医療機関から問い合わせ集中 ⇒ 情報伝達機能の障害 情報依頼の問題点 ○ 複数の医療機関からの問い合わせ ・ 電話回線の限界 ・ マンパワーの限界 ○ 問合せ先を知らない医療機関 情 報 統 制 (2) 統一されなかった医療機関への情報提供 ○ 東京消防庁 ・ 9 時08分 毒物より アセトニトリル検出 ・ 9 時12分 主な医療機関へ連絡 ○ 警視庁 ・ 9 時35分 サリン検出 ・ 11時00分 定例記者会見で公表 情報提供の問題点 ○ ○ ○ ・ ・ ・ ○ ・ 分析を行う機関はどこ? 分析結果と臨床症状はあうのか? 提供すべき情報 原因化学物質 ⇒ 除染方法 毒性情報 ⇒ 防護方法 治療方法(解毒剤、拮抗剤) 情報提供システム 関係機関の連携 和歌山毒劇物カレー事件 ヒ素による非特定殺人事件 • • • • • 地域祭りの食品への毒物混入 被災者 67 名(入院38名) 搬送医療機関 13 死 亡 4名 1998年 7月 25日 事件の時間経過(1) ・ 1998年 7月25日 夕方 ・ 18時30分頃 カレー配布 ・ 19時08分 救急要請第1報(事件発生) 嘔吐、下痢の患者多数 ・ 19時45分 消防司令から保健所 担当者に情報提供 事件の時間経過(2) 伝わらなかった患者死亡、 伝えられなかった分析結果 7月26日 ・ 3時 患者 A 死亡(保健所無人) ・ 5 時30分 警 察(科学捜査研究所) 青酸検出 ⇒ 保健所は10時のテレビ報道で知る ・ 7時35分 他の医療機関で患者 B 死亡 その後 2名死亡 原因物質の同定 「原因物質同定には時間がかかる」 ・ ・ ・ ・ 事件発生 7月 25日 青酸検出 7月 26日 セレウス菌、黄色ブドウ球菌が否定 27日 ヒ素検出 8月 2日 ⇒ 症状とあうのはどれであったのか? 嘔吐、下痢、不整脈、血圧低下、死亡 ヒ素中毒の疑い サリン事件の問題点の復習 ○ 集団災害 ○ 化学災害の認識 ○ 未知の毒劇物 ター ○ 情報依頼 ○ 情報提供体制 ○ 関係機関の連携 複数の搬送医療機関 症状からの推定 日本中毒情報セン 個別依頼 輻 輳 まだらな提供 分析結果と症状 和歌山毒劇物カレー事件の問題点 ○ 事件発生時刻 ○ 集団災害 ○ 化学災害の認識 ・ 初期症状の一般性 ・ 症状の推移 ○ 未知の毒劇物 ター ○ 情報依頼 ○ 情報提供体制 ○ 関係機関の連携 夕方から深夜 67名(入院38名) 症状集約 下痢、嘔吐、腹痛 不整脈、血圧低下 日本中毒情報セン 個別依頼 まだらな提供 分析結果と症状 どのようなシステムが必要か(1) 化学災害発生時に危機管理に関係する機関 ○ 消 防 災害発生時から運用 搬送先医療機関を把握 ○ 医療機関 被災者の診療 症状から化学災害の認識 ○ 警 察 極めて優れた分析能力 ○ 日本中毒情報センター 化学(中毒)災害の専門組織 ○ 保健所 地域健康危機管理全般 どのようなシステムが必要か(2) 最初のスイッチを入れる ○ 絶対必要! ・ 症 状 ・ 分 析 熊本は偉い! 同時進行! 医療機関 うまくやればはやい 分析機関の特徴毎に 細菌? 細菌分析 化学物質? 化学分析 嘔吐・下痢 どのようなシステムが必要か(3) 化学災害の勝負は最初の1~2時間! 症状から化学災害の認識を最速で行う条件 ○ ○ ○ ・ ・ どのような時間帯にも対応、 搬送された複数の医療機関を把握でき 事件発生時から稼動する 患者症状を経時的に集約し、 一括して専門家に相談できる どのようなシステムが必要か(4) 化学災害対応には絶え間ない連携が重要 危機管理機関が相互に連携を持つシステム ○ 分析結果、臨床症状等の情報を 専門的に判断 ○ 関係情報を互いに提供 ・ 搬送医療機関 ( 医療機関同士も ) ・ 警 察 ・ 自衛隊 ・ 消 防 ・ 自治体 ・ 保健所 ・ 分析機関 NBC連携システム 2001 11・22 NBCテロ対策会議幹事会 ○ ・ ・ ・ ○ ○ ・ ・ 現地消防を中心とした情報統制システム 24時間対応 搬送医療機関を全て把握 患者症状を集約 日本中毒情報センターの関与 危機管理機関との相互連携 医療情報 分析結果 保健所 警 察 日本中毒情報センター 分析機関 専門家・情報ファイル 毒物の想定 集約された 患者情報 発災地消防本部 毒性情報 治療情報 HP公開 患者症状 下痢・嘔吐 医療機関 下痢 不整脈 医療機関 災害現場 嘔 吐 ・ 異常陰影 医療機関 現在の状況と今後の課題 ○ 化学災害危機管理組織への普及 ・ 全国保健所長危機管理研修 ・ 全国災害拠点病院研修 ・ 毒劇物テロ対策セミナー研修 ○ 地域危機管理機関の調整 ○ 地域医師会との協力体性構築 ○ 地域防災計画と医療のすり合わせ 平成12年 A市 ポリウレタン工場の「よくある例」を振り返る ホスゲン流出事故 作業員 200人 51人が受診 のどの痛み 息苦しさ 7人入院 A 市民病院 B 中央病院 「工場、消防に連絡怠る」 「県消防防災課は 工場へ厳重指導の方針」 その後、事故を振り返り、問題点を 同様の事故が起きても、もう大丈夫ですか? 会議、訓練をしたら「紙」にフィードバックを 抽出する作業は行われたのでしょう か? ○ ○ ○ ○ 医療機関と行政機関の連携は? 保健担当部局の役割は? 行政機関どうしの連携は? 事件対応の記録はどこに残りますか? 「あの頃の未来」に私たちは立っているでしょうか? ○ 地域の危機管理機関の連携はできて NBC連携システムは医療、消防、警察に いますか? 通知され、同じ土俵で話ができるように してあります。皆で集まって下さい。 ○ NBC連携システムの概念はあります か? これがなされない限り災害医療は ○ 地域防災計画と地域医療計画(救急)の 進みません 整合性や如何 地域の災害拠点病院長に正しく役割の ○ 災害拠点病院はその使命を果たして 認識を! 行政しかできません いますか?
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