経済企業情報特殊講義Ⅱ(経済学特講)」 「資産運用と

中央学院大学 商学部
野村證券提供講座
証券投資のリスク・リターンについて
平成17年5月11日
投資情報部
木村哲也
目次
1.投資とは、投資のリスクとは
投資の意味
投資価値 ~ 確実な場合
投資価値 ~不確実な場合(確率で考える)
投資価値 ~確実な場合と不確実な場合の比較
投資価値 ~収益率の差は何を意味するのか?
2.リスクとリターンの関係
リスク・プレミアム
リスクとは、リターンとは
リスク・リターンの計算~株価リターンの年次分布
リスク・リターンの計算~株価リターンの月次分布
リスク・リターンの計算 ~統計学を利用する
3.長期投資について考える
複利の考え方
長期複利運用の効果
短期投資は長期投資よりリターンの
振れが大きい
4.ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法による試算
ドルコスト平均法の実証例
1
投資とは、投資のリスクとは
投資の意味
将来を信じて、不確かな時間を受け入れること
2
投資とは、投資のリスクとは
投資価値 ~ 確実な場合
■ 年利 2% の利率で1年間運用
100万円×(1 + 2 %)=102万円
102万円
現在価値 → 100万円=
1 + (2 %)
← 将来価値
← (割引率)
3
投資とは、投資のリスクとは
投資価値 ~現在価値と将来価値の関係
t年後の将来価値と現在価値の関係を一般的な形にまとめると
将来価値=現在価値×(1+ r)t
現在価値=将来価値÷ (1+ r)t
割引率 r : 将来価値÷現在価値= (1+ r)t
r=(将来価値÷現在価値)1/t-1
現在価値とは、将来のある時点で受け取る金額(価値)を現在の価値に置き換えたらい
くらの金額に相当するか?という考え方をした場合の値のこと。
(例題)
ある懸賞金の受取り方に次の2通りがある。 どちらを選ぶ?
ただし、市場金利はすべて10%とする。
問1)
①今すぐ100万円
②1年後に100万円
問2)
①1年後に110万円
②年間25万円ずつ5年間
4
投資とは、投資のリスクとは
投資価値 ~不確実な場合(確率で考える)
■不確実な場合は、幾つかのシナリオを想定し、
各シナリオが起こるであろう確率を考える
予想価値 A
(シナリオA)
現在価値
期待値
(将来価値)
(シナリオB)
予想価値 B
5
投資とは、投資のリスクとは
投資価値 ~確実な場合と不確実な場合の比較①
■証券Xと証券Yの場合
1年後の価値
現在の価値
証券 X
1,000,000円
証券 Y
1,000,000円
シナリオA
(生起確率0.5)
シナリオB
(生起確率0.5)
1年後の
期待値
期待
収益率
102万円
92万円
112万円
6
投資とは、投資のリスクとは
投資価値 ~確実な場合と不確実な場合の比較②
■証券Xと証券Y’の場合
1年後の価値
現在の価値
証券 X
1,000,000円
証券 Y’
944,444円
シナリオA
(生起確率0.5)
シナリオB
(生起確率0.5)
1年後の
期待値
期待
収益率
102万円
92万円
112万円
7
投資とは、投資のリスクとは
投資価値 ~収益率の差は何を意味するのか?
確実な場合の収益率(証券Xの収益率2%)と、
不確実な場合の収益率(証券Y´の収益率8%)の
差(この場合は6%)を「リスク・プレミアム」と言う
これは「リスクを負担することに対する報酬」
8
リスクとリターンの関係
リスクとリターンの関係~リスク・プレミアム
■証券X、証券Yと証券Y’のリスク・リターン(イメージ図)
(高)
リ
タ
ー
ン
証券Y’
●
●
リスク・プレミアム
証券X ●
(低)
●
証券Y
(低)
リスク
(高)
9
リスクとリターンの関係
リスクとリターン
リスクとは、リターンとは
リスクとは
リターンとは
収益のブレ、
予想される収益に対する
不確実性のこと
有価証券投資のリスクの種類
①価格変動リスク
- 市場リスク
- 金利リスク
- 為替リスク
②信用リスク
③インフレリスク
投資の結果得られる
収益のこと
有価証券投資のリターンの源泉
①お金を一定期間使わないことで得ら
れる収益(時間価値)
②結果が保証されない投資を、リスク
を取って行ったことに対する収益
等
リターンは、取ったリスクの度合
いに応じて異なる。
10
リスクとリターンの関係
証券Xと証券Yのリターンの分布図
証券X
証券Y
100%
生
起
確
率
生
起
確
率
50%
2%
リターン
‐8%
12%
リターン
11
15/20
(注)データは 1971年~2000年の日経平均株価の年間の変化率を利用。
(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成
1
65/70
60/65
1
55/60
50/55
45/50
40/45
2 2
35/40
1
30/35
1
25/30
3 3
20/25
6
10/15
5/10
2
0/5
(-)5/0
3
(-)10/(-)5
1
(-)15/(-)10
3
(-)20/(-)15
(-)25/(-)20
1
(-)30/(-)25
(-)35/(-)30
(-)40/(-)35
(-)45/(-)40
年
数
(-)50/(-)45
リスクとリターンの関係
リスク・リターンの計算~株価リターンの年次分布
日本株のリターンの年次分布
7
6
21
5
30
0
= 70%
4
3
2
1
収益率
%
12
リスクとリターンの関係
リスク・リターンの計算~株価リターンの月次分布
日本株のリターンの月次分布
50
43
40
29
27
24
20
8
4
6
6
5
2 2
1
1
1
1
18/19
112 2 1
1
8
16/17
7
14/15
10
10
16
13
14 14
12
12/13
26
28
10/11
30
(注) データは1971年~2000年の日経平均株価の月間の変化率を利用。
(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成
8/9
6/7
4/5
2/3
0/1
(-1)/(-2)
(-3)/(-4)
(-5)/(-6)
(-7)/(-8)
(-9)/(-10)
(-11)/(-12)
(-13)/(-14)
(-15)/(-16)
(-17)/(-18)
0
(-19)/(-20)
月
数
34
33
収益率
%
13
リスクとリターンの関係
個別銘柄のリスク・リターンの例
個別銘柄のリスク・リターンとヒストグラム
日経平均株価
ソニー
(度数:月)
80
(度数:月)
80
標準偏差
60
: 3.12%
リターン平均 : -0.2%
最大値 : 10.9%
40
標準偏差
60
リターン平均 : 0.4%
最大値 : 22.2%
40
最低値 : -10.7%
最低値 : -21.8%
20
20
0
: 5.9%
0
-20
-16
-12
-8
-4
0
4
8
12
16
-20
20(%)
-16
-12
-8
-4
0
4
8
16
20(%)
花王
(度数:月)
80
標準偏差
60
: 4.0%
リターン平均 : 0.3%
(注)横軸のリターンは1997年1月から2001年12月まで
5年間の週次の株価対前週比変化率
12
最大値 : 16.2%
40
最低値 : -16.5%
20
0
-20
-16
-12
-8
-4
0
4
8
12
16
20(%)
14
リスクとリターンの関係
リスク・リターンの計算 ~統計学を利用する
正規分布
確率
投資収益率(リターン)の分布
は、「正規分布」によって近似
できると言われている。
・正規分布とは
リ
タ
ー
ン
の
発
生
確
率
平均を中央にした左右対称な
68%
釣鐘形に広がる分布図のこと。
・標準偏差(リスク)とは
平均からのバラツキ度合いを
標準偏差
(リスク:σ)
(σ)
(σ)
95%
示す数値。
(σ)
収益率
平均値
(期待リターン)
15
長期投資について考える
■長期投資
運用対象の資産を長期に亘って保有する
■ドルコスト平均法
長期間に亘って、
一定の期間毎に一定の金額を買い付ける
16
長期投資について考える
複利と単利の考え方
■ 複利運用の 計算過程
期初の
元利合計金額
元利合計に
対する利息
期末の
元利合計金額
1年後
10,000
+
500
=
10,500
2年後
10,500
+
525
=
11,025
3年後
11,025
+
551
=
11,576
一般的な形にまとめると
将来価値=現在価値×(1+ r)t
将来価値 11,576円
現在価値=将来価値÷ (1+ r)t
現在価値 10,000円
割引率 r : 将来価値÷現在価値= (1+ r)t
について
割引率
5%
r をもとめる
17
長期投資について考える
(円)
80,000
70,000
長期複利運用の効果
■ 1万円を運用した場合
6万7,275円
10%複利
60,000
50,000
40,000
30,000
7%複利
3万8,697円
5%複利
2万6,533円
20,000
5%単利
2万円
10,000
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20(年後)
18
短期投資は長期投資よりリターンの振れが大きい
長期投資について考える
日経平均の累積投資収益率
2000 1881%
1600
累
積
投 1200
資
収
益
率 800
(
%
)
400
【検証条件】
●期間:1965年初~1998年末
●累積投資収益率は月末ベースを累積して算出
●手数料、税金等は考慮せず
1558%
1281%
1015%
829%
699%
588%
0
除ワースト3
除ワースト1
除ベスト1
除ベスト3
除ワースト2
リターン
除ベスト2
19
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法:
一定の金額を、定期的に、一定の証券に長期にわたって投資する方法
ドルコスト平均法の利点(累積投資制度を利用した場合):
① 継続投資
② タイミングを気にしない
③ 少額から可能
④ 平均コスト低減の可能性
( ⑤ 複利運用 )
20
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法による試算
買付け株数、リターン表
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
株価 買付け株数 平均コスト
(円)
(株)
(円)
500
20
500
500
20
500
450
22
482
400
25
459
450
22
457
500
20
464
550
18
474
500
20
477
400
25
467
350
29
452
400
25
447
350
29
437
300
33
422
300
33
410
350
29
405
400
25
405
450
22
407
400
25
407
450
22
409
500
20
413
評価損益
(%)
0.0
0.0
▲ 6.7
▲ 12.8
▲ 1.5
7.9
16.0
4.8
▲ 14.4
▲ 22.6
▲ 10.5
▲ 19.9
▲ 28.9
▲ 26.8
▲ 13.7
▲ 1.2
10.4
▲ 1.7
10.0
21.1
評価損益
(円)
0
0
▲ 2,000
▲ 5,111
▲ 750
4,722
11,194
3,813
▲ 12,949
▲ 22,581
▲ 11,521
▲ 23,831
▲ 37,569
▲ 37,569
▲ 20,497
▲ 1,997
17,753
▲ 3,108
19,003
42,226
株価、評価損益推移
株価
(円)
評価損益
(円)
600
50000
550
40000
株価:左軸
30000
利益
500
20000
450
10000
400
0
-10000
350
-20000
300
損失
250
評価損益:右軸
-30000
-40000
200
-50000
1
3
5
7
9
【検証条件】
1.毎月1万円ずつドルコスト平均法で20ヶ月続けて購入
2.株価は,当初500円から始まり,550円まで上昇した後に300円まで下落,最後は当初の500円に戻ったとする
3.評価損益:時価評価額-積立ての合計金額 (時価評価額=購入株数×各時点での株価)
4.手数料、税金等は考慮せず
11
13
15
17
19
経過月数
21
ドルコスト平均法
250
ド
ル
コ
ス
ト
平
均
法
で
の
リ
タ
ー
ン
(
%
)
ドルコスト平均法の実証例
%
200
150
100
50
0
-50
-100
-100
-50
0
50
100
150
200
%
250
一括して購入したリターン(%)
(注) 1.母集団は2001年末時点での日経平均構成銘柄で89年末から公開している214銘柄
2.ドルコスト平均法:89年12月から01年12月まで毎月末一定金額で株式を購入
3.リターンの定義:一括して購入したリターンは89年12月から01年12月末までのリターン、
ドルコスト平均法でのリターンは(01年12月末での評価額/投資金額合計-1)×100
4.手数料、税金等は考慮せず
(出所)野村證券投資情報部
22