経営のヒント - 福岡県中小企業振興センター

経営の
ISO9001: 2015及びISO14001: 2015の
規格改訂動向と“リスクに基づく考え方”
(公財)福岡県中小企業振興センター 窓口相談員
中小企業診断士
2012年5月にMSS共通テキストが定められ、今後制定・
えばマイナスの側面を「リスク:risk」
、プラスの側面を「機
MSS)は、その構造(1~10 章の内容と順序)
、分野共通の
「プラス/マイナスに変動する要因、きっかけ、分岐点」な
これに沿ってISO 9001、ISO14001も現在、2015 年3
ク及び機会を「不確実性と変動要因/可能性」としておき
改正されるすべてのISOマネジメントシステム規格(ISO
要求事項及び用語・定義が共通化されることになる。
月~5月頃の各々最終原案(FDIS)に向けて規格改訂作業
が進められているところである。
会:opportunity」など)が、機会(opportunity)については
どと解釈した方が納得し易いように思われ、本稿ではリス
たい。
図-1 リスク及び機会のイメージ
【リスクに基づく考え方】
これらの改訂のポイントの1つが“リスクに基づく考え
リスク
① 4 .1項で規定している「当該MSの意図した成果を達
成する組織の能力に影響を与えうる内外の課題」
② 4 .2 項で規定している「当該MSに関連する利害関係
者及びそれらの要求事項」
に加え、
「当該MSがその意図した成果を達成できるという
意図した
成果
プラス影響
方”
(risk based thinking)の導入であり、MSS共通テキス
ト6章「6 .1項リスク及び機会への取り組み」では
機会
マイナス影響
現 在
期 待
【リスクへの対応】
リスクへの対応は一般に以下が挙げられる。
1)リスク回避
確信を与える」
、
「望ましくない影響を防止又は低減する」
、
リスクの発生に関わる一切の活動を行わない/活動停
を決定することを求めており、かつ、それらの取り組みを
2)リスク防止・低減
「継続的改善を達成する」ために必要な“リスク及び機会”
止する。
当該MSに統合して実施し、その取り組みの有効性を評価
リスクの発生頻度を減少させる(リスク防止)
、損害の程
つまり、組織の品質管理能力や環境管理能力に影響を与
3)リスク移転・分散
することまでを求めている。
える内外の課題や利害関係者の期待・ニーズに加え、品質
リスクや環境リスクと機会を決定し、各MSに統合して取
り組み、かつ、取り組みの有効性を評価することを求めて
いるのである。
従来規格では「予防処置」の要求事項において、これら
品質リスク、環境リスク等について(潜在的不適合として)
取り扱っていたものが、各MS全体を通して取り組むべき
戦略テーマに格上げされたといえる。
ただしリスクアセスメントまでを求めているものではな
いことに留意しておく必要がある。
【リスクの定義】
ISO 9001:2015 では、リスクを“期待される結果に対
度を減少させる(リスク低減)
。
回避又は除去できないリスクを保険等により財務的に
移転する(リスク移転)
、工場を分散させるなど(リスク
分散)
4)リスク保有
適切な情報に基づいた意思決定による保有(積極的リス
ク保有)と認識できていない/認識しているが対応方法
がない(消極的リスク保有)
これらを踏まえて、改訂後の各MSでは
1)決定したリスク及び機会を分析し、優先順位付けする
2)優先したリスクに取り組むための処置を計画する
3)計画を実施する
4)処置の有効性を評価する
する,不確かさの影響”と定義し、影響とは、期待されてい
5)継続的改善(次なる取り組み)
ることとしている。
ISO 9001:2015 及 び / 又 はISO14001:2015改 訂 に
ることから、好ましい方向又は好ましくない方向に乖離す
分かり易く言うとリスクとは「不確実性」であり、本来プ
のPDCAサイクルを回していく必要がある。
基づくMS再構築と運用により、
“リスクに基づく考え方”
ラス側にもマイナス側にもブレるものであるが、一般的に
が組織に定着し、リスクの見える化と共通認識形成、改善
いということである。
や地域利害関係者の信頼維持が実現されることになる。
では用語の解釈において微妙な違いも見受けられる(例
必要な考え方といえよう。
はマイナスの側面(損害の発生など)を意味する場合が多
ISO 9001(DIS)とISO14001(DIS)において、現時点
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藤原 順一
BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2015.3
文化の醸成、製品・サービスの品質の一貫性の保証、顧客
ISOの認証を取得していない組織においても事業存続に