SRID研究会 2010年7月27日(火) 開発と移住 滝澤三郎 東洋英和女学院大学国際社会学部 [email protected] 2015/9/30 1 人の移動と日本のODA政策 • 難民受け入れ:再定住事業を核に強化する – 国内での初期定住費用はODAから出す – 地方の活性化にもつながる • 移民受け入れ政策を確立し、ODAと連結する – 「人の受け入れ」は国際協力であることを認識する – アジアを中心とした人間開発に日本OのODAと移民の (社会的)送金を加えて考える • 日本からの流出(移民送金?)は年間40億ドル • これをODA(80億ドル?)と組み合わせる – 日本の人口・経済危機も遅らせ、緩和できる • 国際協力と日本の国内問題の「一石2鳥」 • 問い:このような政策は可能か? – そうであるとして、どのような条件のもとに? 人間開発を促進する6つの政策提言 • 人間開発を促進するには、移住者の「出入国管理 (admission)」と「処遇(treatment)」が2つが重要 • 6つの政策提言 1. もっと大勢の労働者が移住できるようにする 2. 移住者の基本的な権利を保障する 3. 移住にかかる費用を軽減する 4. 移住者と移住先の社会に効果をもたらせるよう 支援する 5. 国内移動による利益を保障する 6. 移民政策を開発戦略に取り入れる 基本的な権利の保障 • 移住労働者のディーセント・ワークの確保 – 移動労働者を保護することは、彼らの労働の生産性を向 上させるだけでなく、現地の労働環境を守ることにもつな がる • 国際的枠組み・イニシアティブを推進する • 移民差別・排斥の動きに対処する • 基礎的社会サービスの提供 移住者の基本的権利の保障は受入国政府の責任 だが、雇用者、労働組合、NGO、移民団体による積 極的な関与も重要 日本の外国人(移民) 2500000 総数 2000000 1500000 1000000 韓国 朝鮮 500000 中国 ブラジル フィリピン 0 1 4 7 10 13 16 19 22 25 28 31 34 37 40 43 46 49 52 55 58 日本の難民受け入れの推移 人数 条約難民申 請者 インドシナ難民 人道的滞在許可 78 92 96 08 条約難民認 定者 インドシナ難民の今日 • 30年の間に日本に来たインドシナ難民の多くが「日本に救われ た」と感謝している • 定住センター近くの町で集住し、民族料理店や単純労働に従事 • 非正規で不安定な職業につき、年金未加入や医療費支払いの ため、老後に不安を抱く者が多い • 特に、最近の大不況の影響で職を失う者が多い • 住居の移転が多く安定した「定住」とは言い難い • 欧米に再定住した難民の生活を知り、不満を募らせる – 世代間の価値観の違いとコミュニケーションの難しさ – 祖国に帰りたくも家族の分裂を恐れできないディレンマ – 特に第1次世代には自立が難しく、将来への強い不安を持つ =>インドシナ難民の日本での定住は厳しく、彼らは「長期 化した難民状況」の中にいる 安定した定住が難しい原因 • 難民の側 – 初期の定住意欲の低さ – 生きるのに必死で日本語・技術を学ぶ余裕もない – 最近の祖国の復興などを見て揺れ動く心 • 日本政府の定住支援策 – 難しい日本語の教育期間(3-4か月)が短すぎるうえ、就職のため の訓練はなし=>未熟練労働に従事 – 4か月の定住訓練の後は自治体やNGOに丸投げ(=責任放棄) – 帰化は言葉や収入などの条件で難しく、実現したものは少数 • 自治体の関与も弱かった – 「地方散政策」はあったが、「地方からの誘致」はなかった • インドシナ難民は、一部NGOの細々とした支援のもと、大都 市周辺で匿名的に生きる – 90年代に始まる「ニューカマー」の陰で忘れ去られる 難民のジャパン・パッシングの理由 1. 地理的制約 2. 周辺諸国との政治的・歴史的環境 – 日本は難民の人権を守れるか? 3. 政府の厳しい難民認定 – 厳格な証拠を求める – 難民認定期間中働いてはいけない – 難民審査の独立性が不十分 – =>難民保護についての「ただ乗り」(日経経済教室) 4. 申請者側の問題 – 長年不法就労してから難民認定申請をする場合が多い • 強制移動の原因(迫害、紛争)と自発的移動(いみん)のがんイ ンが絡み合っていて、経済移民と難民の区別は、本人にも難し い 難民のジャパン・パッシングの理由 5. 受け入れ後の自立支援が全く不十分である – – – 難民認定で、迫害の危険からは逃れられるが、それは日本 国内での安全な生活を意味しない 難民はスタート地点で大きなハンディを負い、日本で自立し ていくには大きな困難が伴う • • 就労の難しさ、日本語の難しさ 高い生活費、住宅、教育、医療、法律扶助など 長期的には老齢年金や帰化の困難さが知られている 6. 支援団体も少数で小規模 – – – 難民コミュニティが小さく、相互扶助も期待できない 市民の間の難民についての誤解・無理解 欧米やオーストラリアに逃れた家族や友人の生活… =>難民は日本での安心できる生活を期待できず、 相対的に可能性が高い欧米諸国に向かう => 日本が抱える問題を難民が足で明らかにする 日本の移民・難民開国? 1. 難民申請者数・認定者数の増加 – – – 2002年中国の瀋陽事件に続く入管法の改正 難民申請者と認定者の増加 他方で欧州では難民受け入れが厳しくなっている… 2. 「再定住」による難民の受入れ開始 – タイのミャンマー難民を90人試験的に 3. 移民受け入れ論の台頭 – 自民党:50年間で1000万人の移民受け入れを • – – 3年以内に1000人の「人道的移民(難民等)」受け入れを 経団連なども移民受け入れを考慮 難民は「人道移民」として扱われる 難民開国と社会統合を進めるために 1. 政府 – – 長期的政策を立て、自治体とNGOに資金を出した支援 活動を頼むべき そのために、自治体やNGOと協議を 2. 市民社会・NGO – – – 難民受け入れを中央政府に任せっきりにしない 「社会が受け入れれば政府も受け入れる」 「総論賛成、各論賛成」を 3. 地方中核都市 – – 「国際的責任分担」から「国内での責任分担」へ 「人道都市松本」プロジェクト
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