ビットコインをはじめとする「価値記録」への対応に関する 【中間報告】 自民党IT戦略特命委員会 資金決済小委員会 2014年6月19日 ビットコインをはじめとする「価値記録」に対する基本的な考え方 • 日本を中心として、インターネット時代における新たなビジネスが沸き起こる ためには、自己責任とチャレンジ精神を前提とした枠組み作りが必要となる • ビットコインをはじめとする「価値記録」のやり取りはビジネスにおける新たな イノベーションを起こす大きな要素となりうる • 日本が「価値記録」関連のビジネスを世界で最もやり易い国となり、投資と企 業を呼び寄せる力をつけていかなければならない • その為には、 「価値記録」の交換を利用者の自己責任に帰す一方で、既存 の規制で縛りつけることをできるだけ避けることを前提としたルールを確立す ることが大切である 2 「価値記録」の定義 これまで「仮想通貨」、「暗号通貨」と呼ばれていたものを、通貨でもなく物でもない、「価値記録」として新 たな分類に属するものと定義 「価値記録」の定義 「 価 値 記 録 」 の 定 義 「交換所」・「受付店」の定義 • 前払式支払手段(電子マネー)に該当する ものは除き、これまで「仮想通貨」、「暗号 通貨」と呼ばれていたものを「価値記録」 (価値を持つ電磁的記録の意)とし、通貨 でも物でもない、新たな分類に属するもの と定義 ※電子マネーは資金決済法の規制を受ける 上記に伴い、今後、「価値記録」においては、 以下の用語を使用 旧用語 取引、支払 送金 新用語 交換 送付 「 の 交 • これまで「価値記録」の「取引所」と 定換 呼ばれていた、通貨と「価値記録」を 義所 交換する場所を「交換所」と定義 」 「 の 受 • 「価値記録」と物・サービスを交換可 定付 能な店舗を「受付店」と定義 義店 」 交 換 所 通貨と 「価値記録」 の交換 物・サービス の交換 実店舗 3 ユ ー海 ザ外 ーの 「価値記録」と 等 「価値記録」 の送付 受付店 オンライン ショップ 「価値記録」のビジネスへの活用余地 現時点の「価値記録」関連ビジネスの伸張は元より、今後、更にその特徴を生かし、新たなビジネスが創 造される可能性大 「価値記録」 の活用余地 4 送付 • 安価かつ迅速な「価値記録」の送付 - 24時間365日、インターネットがあればどこでも利用可能 - 国内外への送付に掛かる所要時間は10分程度 - 送付の上限額がなく、送付手数料は安価 運用 • 「価値記録」自体の取引 • 「価値記録」間の取引 • 「価値記録」の先物取引 - ロシアのオンライン交換所でビットコイン先物交換が可能 • 「価値記録」関連の事業型ファンド組成 - 米国にビットコイン関連事業のファンドがあり、ヘッジファンドが出資 物・サービス の交換 • オンライン/リアル受付店拡大による物・サービスの交換 - クレジットカードを持てない新興国の顧客を狙ったサービスの提供 - クレジットカード等の決済サービスと比較すると、手数料が低い(クレジッ トカードは5%前後、ビットコインは1%以下の場合あり) 新たな ビジネス 創造・変革 • P2Pネットワーク承認の仕組みを活用し、その他のビジネスに転用 - デジタル商品の二重使用防止をP2Pネットワークで相互確認 - 契約成立・失効等をP2Pネットワークで自動認証(スマートコントラクト) - 資産の所有権移転をP2Pネットワークで自動認証(スマートプロパティ) • 「価値記録」の動向に刺激を受け、既存金融ビジネスの変革促進 • 「価値記録」自体を基盤とした、これまでにない新ビジネスの創造 「価値記録」に対する各国の対応状況と我が国の対応 アメリカ・イギリス・ドイツは容認/黙認の立場であり、日本も同様に「自己責任」の原則の下で、「価値記 録」の「採掘」、「交換」、「交換所への価値記録・金銭預託」につき、特段の規制をかけない方針 容 認 スウェー デン 2014/1 • 税法上の扱いを美術品と同じにする方針 シンガ ポール 2014/1 • 売買に対しては物品税7%を課税、ただし中 央銀行は通貨と認めずに利用に対して注意 喚起 ノルウェー 2013/12 • ビットコインを資産として扱い、資産譲渡益を 課税対象 カナダ 2013/11 • ビットコインと交換した物・サービスの価値の カナダドル相当を収入とみなして課税対象 ドイツ 2013/8 • ビットコインを「プライベートマネー」とみなし て課税対象 イギリス 黙 認 アメリカ 5 ― • (態度を明確にしていないが、課税方法を見 直す見込み) キプロス 香港 2014/1 • 金融国庫局長官:「詐欺やマネーロンダリング 等の不正行為にビットコインを利用する事は 既存法律のもと禁止」と警告 インド 2013/12 • インド中央銀行がビットコインを含むデジタル 通貨の利用リスクを警告 ロシア 2014/2 • ロシア検察総長室:「法律はルーブルを唯一 の公式通貨と定めており、ビットコインは違 法」と表明 中国 2013/12 • 中国人民銀行:国内の金融機関にビットコイ ンの取扱を禁止する通達を告示 ブラジル 2013/10 • ビットコインを含む電子マネーによるオンライ ン決済にガイドラインを設け、事実上ビットコ インを禁止 警 告 違 法 / 禁 止 2014/2 • 中央銀行による警鐘 2014/2 • FRBイエレン議長:ビットコインについて 「FRBは監督もしくは規制する権限を持たな い」と発言 2014/3 • 株や債権と同様に譲渡益に課税する方針 * 日本経済新聞、Yahoo!ニュース、MSN産経ニュース、週刊ダイヤモンド、等をもとに作成 タイ 2013/7 • タイ中央銀行:ビットコインを違法と判断 「価値記録」に対する既存法の適用関係 「価値記録」のような新しい概念に対し、既存法は適用外とする。また、現在の僅少な流通量、自己責任 の原則の徹底を考慮すると、現時点での立法は行わない 法律 出資法 (預り金規制) 銀行法(為替取引)・ 資金決済法 犯罪収益 移転防止法 6 適用可否 適用可否の理由 × • 交換所が預かる利用者の交換資金は、業務の実態として預金と同様の経 済的性質を有しない限りは、「預り金」に該当しない - 「預り金」とは、①不特定かつ多数の者が相手であること②金銭の受け入 れであること③元本の返還が約されていること④主として預け主の便宜 の為に金銭の価額を保管することを目的とするものであること、の4要件 すべてに該当するものとされる。交換所が受け取る資金は、交換目的に て預託を受けるものであって、交換所において資金滞留がない場合、「預 り金」に該当しない × • 「価値記録」の送付は為替取引ではなく、適用外 - 為替取引とは、直接現金を輸送せずに資金移動を代行すること - 為替取引に該当する「資金」の意義は、「金銭および金銭に容易に変わる もの」で「必ず一定の金額に換金されるもの」であり、「価値記録」はこれに 該当しない × • 上記の通り、「価値記録」の送付は為替取引ではなく、かつ、交換所は特定 事業者(銀行、資金移動業者、両替商等)にも該当しないため、適用外 - 「価値記録」のマネーロンダリング、違法取引の例はアメリカではあるが、 日本においては事例はないため、今後の金融活動作業部会の議論、「価 値記録」の交換実態等を踏まえ、今後の論点として留める(但し、別途本 人確認義務を課す) 「価値記録」に関する業界団体設立・ガイドライン策定 「価値記録」関連ビジネスの振興・課題解決を目的とした業界団体を設立し、当該団体による交換所ガイ ドライン策定を想定 「価値記録」に おける考慮点 「価値記録」関連ビジネスの 今後の拡大を期待し、規制 は限定的 「価値記録」の「採掘」、「交 換」、「交換所への価値記 録・金銭預託」は自己責任 但し、犯罪捜査における対 応を迅速に行うための態勢 整備は実施 7 「価値記録」に対する方針 業界団体 設立 交 換 所 ガ イ ド ラ イ ン 策 定 • ビジネス振興・課題 経済 金融庁 解決を目的とし「価 産業省 相談 値記録協会(仮称)」 相談 助言 を設立 助言 相談 価値記録協会 助言 国税庁 • 経済産業省、金融 (仮称) 庁、消費者庁、警 相談 相談 察庁、国税庁等、 助言 助言 が相談・助言を適 消費者庁 警察庁 宜実施 届出制 • 既存交換所、もしくは、新たに交換所を開設する際 は「価値記録協会(仮称)」に届出をすること 本人 確認 • 交換所が利用者口座を開設する際は本人確認を実 施すること 情報 開示 • 犯罪捜査等における法令の規定に基づき、交換所は 情報開示に協力すること セキュ リティ • 交換所のシステム・セキュリティランクは、P2Pネット ワーク内において評価を行うこと 上記方針は、現時点での方針であり、「価値記録」の使用 状況、諸外国の対応を踏まえ、必要に応じ見直す 「価値記録」に対する課税方針 通貨と「価値記録」 の交換、「価値記録」と物・サービスの交換、「価値記録」同士の交換に対しては消費 税を課税、また、「価値記録」によるキャピタルゲインに対しても課税 「価値記録」に対する課税における考慮点 消 費 税 キ ャ ピ 課タ 税ル ゲ イ ン 通貨と「価値記録」、 「価値記録」と物・ サービスの交換は、消費行為に該当 「価値記録」は匿名性が高く、交換が個人 間、国内・海外間等で転々と行われるため、 動きのモニタリングに難あり モニタリングするには、交換所に投資が掛 かり、交換所の手数料に影響 「価値記録」に対する課税方針 • 通貨と「価値記録」の交換、「価値記録」 と物・サービスの交換、「価値記録」同士 の交換に対し消費税を課税(ただし、課 税された消費税は、原則として仕入税額 控除可) • 「価値記録」によるキャピタルゲインは課 税とするが、交換所のモニタリングの為 のシステム投資を求めない 上記方針は、現時点での方針であ り、「価値記録」の使用状況、諸外国 の対応を踏まえ、必要に応じ見直す 8
© Copyright 2024 ExpyDoc