PowerPoint プレゼンテーション

2.4.5置換型欠陥
不純物 の添加により異種イオンで母格子の陽イオンが置換されると別の種類の
欠陥が生じる。
(これについては3章で詳しく述べる)
不純物の添加により陽イオンの原子価に応じて三つの可能性が存在する。
1. 置換している陽イオンの原子価が母格子の陽イオンの原子価より低い場
合
M f ¢M または M f ¢¢M という欠陥が陽イオン格子中に生 じる。 Mf は異 種イオ
ンを表す。電気的中性を保つために酸素副格子中に酸素空孔が生 じる。酸素空
孔が生じるため酸素イオン伝導体となる。
2. 置換している陽イオンが母格子の陽イオンと同じ原子価を持つ場合
点欠陥は生じないが電気的欠陥の生じる確率が変化する。
3. 置換している陽イオンが母格子の陽イオンより高い原子価を持つ場合
×
M f M という欠陥が生じる。余分な電荷を補償するために格子間酸素 O¢¢i が生 じ
る。 O¢¢i により酸素イオン伝導を示す。
2 . 5欠陥濃度の計算
点欠陥(空孔、格子間イオン、還元または酸化された陽イオン)の場合欠陥濃
度をサイト分率で表す。電子的欠陥濃度は単位体積あたりの数で表す。
欠陥のサイト分率は定比組成からのずれと直接的に関係する。
結晶中のサイトと欠陥の数を次のように表す。
t,1
n O : 格子の酸素サイトの全数
t,1
n M : 格子の金属サイトの全数
n V ,O : 酸素空孔の数
n V ,M : 金属空孔の数
i
n O : 格子間位置の酸素の数
組成 MO2 - xの酸素不足酸化物では
t,1
n O - n V ,O )
(
O
= (2 - x) =
t,1
M
nM
(20)
および
t,1
t,1
nO = 2 n M
(21)
である。したがって
(2 - x ) =
2( n Ot,1 - n V ,O)
t,1
nO
æ n
ö
V ,O
= 2ç1- t,1 ÷
è
nO ø
(22)
であり、
n V ,O = ˙˙ = x
[V O] 2
t,1
nO
(23)
となる。同様に金属不足酸化物 M1-yO では
t,1
n M - n V ,M )
(
M
= 1- y =
t,1
O
nO
(24)
および
t,1
t,1
nO = n M
(25)
であり、
n V ,M =
[V ¢¢M ] = y
t,1
nM
(26)
となる。最後に格子間位置に酸素が存在する酸素過剰化合物 MO2 + xは
t,1
i
n O + n O)
(
O
= 2+ x =
t,1
M
nM
(27)
が得られ、格子間位置については
t,1
t,1
nO = 2 n M
(28)
および
2+ x =
2( n Ot,1 + n Oi)
t,1
nO
æ n Oi ö
= 2ç1 - t,1 ÷
è nO ø
なので
i
x
nO =
=
t,1 [ O ¢¢1]
2
nO
(30)
(29)
ここで、 O¢¢i の濃度は正規の酸素格子のサイトの数に対して表されており、格子
間位置の数に対して表されていないことに注意。
電子的欠陥を含む欠陥反応では全ての欠陥を 1cm3 あたりの数で表す。今までの
3つの不定比酸化物 では、定比組成からのずれと欠陥濃度の間に次の式が成り
立つ。
となる。
ærNA ö
M O 2- x では [V O˙˙] = xç
÷
è M ø
(31)
ærNA ö
O
では =
y
[V ¢¢M ] çè M ÷ø
M 1- y
(32)
ær
ö
M O 2+ x では [ O¢¢i] = xç N A ÷
è M ø
(33)
M 1- y O については先に示したように
y = n Vt,1,M
nM
(34)
なので
t,1
t,1
n V ,M = y × n M = y × n O
(35)
となる。1cm3 あたりの M1-yO の数は r N A / M であり、M1-yO が1個の酸素を含む
ので n Ot,1 を 1cm3 の体積を持つ結晶中の酸素サイト数とすると、1cm3 あたりの空
孔の数は
ærNA ö
=
y
[V ¢¢M ] çè M ÷ø
(36)
2 . 6欠陥平衡
欠陥濃度が低いと、不定比酸化物 はヘンリーの法則に従う理想気体として振る
舞う考えられる。
欠陥の活量はその濃度に比例。活量は一定。
欠陥平衡は質量作用の法則が直接適用できる → 擬化学反応と考えられる。
仮定を必要とする
1. 欠陥は母格子中にランダムに分布している
2. 欠陥の生成エネルギーは一定で、欠陥濃度に依存しない
3. 欠陥の間の相互作用 は無視できる。活量は濃度に比例し、活量係数は一
定(ヘンリーの法則)
4. 欠陥は非常に動きやすく、平衡は速やかに成立する
5. 格子上の化学種 O´O と M ´M の濃度(活量)は基本的に一定であり、1とす
る。
これらの仮定を用いることで欠陥反応の平衡定数や欠陥濃度と酸素分圧の関係
を導くことが出来る
それぞれの酸素空孔について2個の陽イオンが還元されるので、電気的中性条
件は
[Ce¢Ce] = 2[V ××O]
(40)
これを上の式に代入すると
( )
K (V ××O ) = 4 [V ××O ] P O 2
3
12
(41)
この場合酸素空孔の濃度が酸素分圧と
[
××
VO
( )
] µ PO 2
-1 6
(42)
のように関係しており、 log[V ××O] を log PO 2 に対してプロットすると傾き- 1 / 6の直
線が得られる。組成 MO2 - xの酸化物では定比組成からのずれ x と酸素空孔濃度
が
[V ] = 2x
××
O
である。
(先に述べた)
(43)
したがって、CeO2 - x中の2価の酸素空孔の生成では
( )
x µ PO 2
-1 6
(44)
が成立する。指数は欠陥の種類特 有であり、1価あるいは中性の空孔が生じる
場合には指数が-1/4,-1/2となる。プロットすることで欠陥を区別できる。
2.6.2金属不足酸化物
金属不足酸化物の典型は Fe1-yO
(ウスタイト)である。550℃
以上で 0.03 £ y £ 0.15 と言う広い
範囲で不定比相を形成する。
(
×
O¢¢i M M
¢と
) (
×
O¢¢ i 2M M
) という欠陥の場合にはそれぞれ 1/4,1/2と言う指数になる。
´
酸素過剰酸化物 に特 有の指数は金属不足酸化物 の指数に相当する。2種類の欠
陥の区別は熱重量分析では困難であるが、格子間イオンの濃度が増加すると密
度が増加し、金属空孔の濃度が増加すると密度が減少することから精密密度測
定のより区別が可能となる。
2.電気的中性条件
式(56)、(57)より、おのおの V ××O と O¢¢i についてそれぞれ2個の電子と2個の正孔が
生じることは明らか。
××
V O と O¢¢i の濃度は電子と正孔の 1 / 2である。
全体としての中性条件は
n + 2[ O¢¢ i] = p + 2[V ××O]
(64)
3.欠陥濃度-PO 2の関係
酸素分圧に三つの領域が存在すると仮定。
領域 I: V ××O が優勢な欠陥である低酸素圧
領域 II:真性イオンあるいはフレンケル欠陥の生成が支配的な中間酸素分圧
領域 III: O¢¢i が優勢な欠陥
酸素分圧の各領域で電気的中性条件は次のようになる。
I:低 P O 2 領域
[V ××O ] >> [O¢¢i], p
n = 2[V ××O ]
(65)
(66)
II:中間の P O 2 領域
1. 真性イオン化が支配的な場合
p,n >> [V ××O ], [O¢¢i]
n= p
(67)
(68)
2. フレンケル欠陥が支配的な場合
[V ××O ],[O¢¢i] >> p,n
[O¢¢i ] = [V ××O ]
III:高 P O 2 領域
[O¢¢i ] >> [V ××O ],n
2[O¢¢i] = p
(69)
(70)
(71)
(72)
これらの電気的中性条件から欠陥濃度と P O 2 の関係が領域ごとで求められる。
2 . 7不定比酸化物の系
関係する陽イオンが幾つかの原子価状 態で存在できる場合においてのみ顕著な
不定比性が可能なことは明らかである。
したがって、主に次の系で顕著な不定比性が見られる。
1. 遷移金属酸化物
2. 希土類金属酸化物
3. アクチニド金属酸化物
これらの酸化物の性質と振る舞いは存在する欠陥の種類に大きく依存。
分類の最良の方法は支配的な欠陥の性質によるものである。
1. 酸素不足酸化物:容易に酸化される陽イオンを持つ化合物。例えば CeO2-x、
PuO2-x、UO2-x
2. 金属不足酸化物:容易に酸化される陽イオンを持つ化合物。例えば Fe1-y、
Ni1-yO、Co1-yO
3. 酸素過剰酸化物 :陽イオンが容易に酸化され、格子間位置に過剰酸素が
存在する化合物。例えば UO2+x
4. 定比組成の片 側では酸素が不足し、もう片 側では過剰酸素が存在する酸
化物:例えば(U1-yPuy)O2+x、UO2+x(高温)
5. 定比組成の両側で酸素と金属の両方が不足となる酸化物 :例えば Ti1-yO1x
(TiO1+x)
理想結晶
純粋、かつ完全なイオン結晶
規則的な格子配置
格子は正規なイオンで占められる
-
+
-
+
-
+
-
+
+
-
+
-
+
-
+
-
-
+
-
+
-
+
-
+
+
-
+
-
+
-
+
-
異なったイオン同士は
ファンデルワールス力
近距離の強い斥力を考慮したレナード・ジョーンズ・ポテンシャル
反対電荷イオン間の静電引力(クーロンポテンシャル)
の和で構成される相互作用を持つ
æd ö
æ d ö z1z2 e 2
E = 4eç ÷ - 4eç ÷ +
èdø
èd ø
d
12
6
レナード・ジョーンズ・ポテンシャル
クーロンポテンシャル
z1, z2 イオンの電荷
e 電荷素量
d イオン間距離
e, d それぞれエネルギーと長さの次元を持つ定数
エネルギー(eV)
15
L-J L-J : レナード・ジョンズ
C : クーロンポテンシャル
eq. : 平衡距離
10
5
0
-5
0.5 核間距離(nm)
I
eq
C
-10
例
K+とCl-のように共にアルゴンの電子配置をとる2つのイオン
に対して得られるポテンシャル
(1) イオン間距離が小さい場合は斥力が急激に増大
(2) イオンの平衡距離は強い斥力が及ぶ距離に比べ
てそれほど大きくはない
結論
(1) イオンはイオン間距離が小さい場合には近似的に剛体球として
振る舞う
(2) 結晶中ではイオンは限界に近い距離で存在する
個々にイオン半径を持つ
完全結晶ではイオンが格子中を押し分けて進む
には他のイオンに極限的に接近する必要がある
イオンの移動度は非常に小さい
大部分のイオン結晶ではイオン伝導率が室温で10-8Wm-1以下
実在結晶
欠陥を持つ
点欠陥
空孔、格子間イオン、置換形不純物
拡張欠陥 転移、粒界
欠陥の導入
エントロピーの増加
-
+
+
-
+
+
-
-
+
-
+
+
-
+
-
-
+
-
+
-
+
-
++
-
+
-
ショットキー欠陥
+
-
固溶置換による電荷補償
-
+
+
-
+
-
-
+
-
+
+
-
-
+
+
-
フレンケル欠陥
イオンのジャンプ
原子移動の空孔機構
原子移動の格子間機構
イオン伝導率
s = zenu
ze 移動種の電荷
n 単位体積中の移動種の数
u 移動度
移動度は駆動力として働く電場の大きさで
移動速度を割った値 m2V-1s-1
イオンの拡散係数Dはフィックの第一法則から
J = -Dgrad (n)
J : 正味の電荷の流れ(単位時間に単位面積を
通過する粒子数)
grad ( n) : 濃度勾配
移動度は
Dze
u=
k BT
のネルンスト・アインシュタインの関係式で表され、電気伝導は
nD( ze)
s=
k BT
2
となる。イオン伝導度の大きさと温度依存性は欠陥
濃度と拡散係数に分けて取り扱う必要がある