関電セミナー

耐震偽装
2006.2.4
建築の特徴
• 建築や住宅は個人の私有財産
• かつ、公共的、社会的存在(火事を出す、地震でつ
ぶれると、隣家に影響する)
– 他人に迷惑をかける
• 建築生産に時間がかかる
– 設計契約時に、建築物が出来上がっていない(時間的要
因のために、契約の履行がうまくいかないことがある)
– 多様な関係者がいる(工場で製品を作る場合には、メー
カーと消費者の関係、基本は売買契約の問題になる)
姉歯建築士
• 専門家が依頼者を保護する
– 依頼者が、プロである(ヒューザー)
• 姉歯以下の鉄筋量で耐震強度を満足する設
計が可能(朝日新聞2005.12.18)
– 姉歯は勉強不足の建築士
– 施工業者が見ただけでは、耐震強度は分からな
い(プロによるピアレヴュー)
イーホームズ
• 確認検査機関
告発
• アトラス設計の渡辺が、2004年3月に、姉歯の手が
けた港区のビルの柱や鉄筋が少ないことに気づい
た
• 日本ERIの審査担当者に不自然さを指摘⇒担当者
は重大性に気づかず、上司にも報告しなかった
• 1年半後、渡辺はグランドステージ北千住の工事担
当者から構造図の不自然さについて相談された
• イーホームズに連絡、3日後、「おかしなところはな
い」と返事
• 直接、イーホームズへ⇒4週間後、国土交通省が耐
震強度偽装を公表
監査
• 公認会計士
– 報酬は依頼主(クライアント)からもらうが、依頼主に気に
入らない監査報告をする必要がある(投資家への情報公
開)
– カネボウの粉飾決算(中央青山)
– ライブドアの粉飾決算
• 設計士
– 依頼者が法律に違反した設計を依頼してもそれに抗する
必要がある(消費者、近隣住民などのために、仕事と報
酬を与えてくれる依頼者に耳の痛いことを言う必要があ
る)
– 設計管理などでも、施工業者に指示する
木村建設
• 姉歯に「経済設計」を依頼、強要
• プレッシャーを与えた
• 違法を強要したかどうかは、係争中
支援、補償
• 保険:
– 瑕疵担保責任を事業者が果たせなくなる(例:
ヒューザーが倒産)した場合にも、マンション購入
者に補償する
– 保険会社が更に審査をする(ただ、現在の保険
会社に審査する能力はない)
– 確認検査機関に対する保険
– 建築士事務所に、設計賠償保険
• モラルハザード、免責事項(故意や重過失)の扱いが
問題
専門家
• 姉歯氏は建築士会にも日本建築家協会にも
建築構造技術者協会にも属していなかった
– 建築士法には倫理規定は書かれていない
• 日本建築学会の倫理綱領は、職能倫理とは別物
– 日本建築家協会は早くから倫理規定や行動規範
を定めていたが、会員数は極めて限られている
– JABEEの技術者倫理教育は始まったばかりで、
しかも高専、大学での教育である
– (姉歯氏は高卒で、実務を通じて一級建築士の
資格をとった)
専門家集団
• 専門家集団が技術者を守るという仕組みは
できていない
• 医師会、弁護士会は強い
• ただ、会からの離脱の制約が問題だ