第1章 電気工学の基礎

第3章 情報工学の基礎
3.1
3.2
3.3
3.4
情報量
単位と数の表現方法
論理回路
コンピュータ
3.3 論理回路
3.3.1
3.3.2
3.3.3
3.3.4
論理式
論理回路
ベン図
回路素子
3.3.1 論理式
(1)公理
[公理1]Aを論理変数とすると
A≠1ならばA=0
[公理2]0・0=0
1+1=1
[公理3]1・1=1
0+0=0
[公理4]1・0=0・1=0
0+1=1+0=1
[公理5]0=1
1=0
(2)定理(その1)
A,B,Cを論理変数とする。
[基本]
① 0・A=0, 0+A=A
②
1・A=A,
1+A=1
③
A・A=0,
A+A=1
④
(A)=A
定理(その2)
[巾等律]
⑤ A・A=A, A+A=A
[交換律]
⑥ A・B=B・A
A+B=B+A
[結合律:連結詞が同じ]
⑦ A・(B・C)=(A・B)・C
A+(B+C)=(A+B)+C
[吸収律]
⑧ A・(A+B)=A+(A・B)
⑧の根拠
A・(A+B)=(A・A)+(A・B)
=A+(A・B)
定理(その3)
[分配律:連結詞が異なる]
⑨ A・(B+C)=(A・B)+(A・C)
A+(B・C)=(A+B)・(A+C)
[ド・モルガンの補助定理]
⑩ A・(A・B)=0
A+(A・B)=1
[ド・モルガンの定理]
⑪ A+B=A・B
A・B=A+B
真理値表による定理の確認
ド・モルガンの定理を真理値表で確認
A
0
0
1
1
B
0
1
0
1
A
1
1
0
0
B
1
0
1
0
A・B
0
0
0
1
A+B A・B A+B
0
1
1
1
1
0
1
1
0
1
0
0
A・B
1
0
0
0
A+B
1
1
1
0
これらが同じであることに注意
補足
NOTとANDでORを定義することができる。
逆に
NOTとORでもANDを定義することができる。
A+B=(A・B)
A・B=(A+B)
(3)色々な表記法
表記法1
A・B
A+B
A
表記法2 表記法3 表記法4
A∩B A∧B
A And B
A∪B A∨B
A Or B
~A
~A
Not A
複合命題の記法
⊃,→,⇒, Imp
≡,=,Eqv
/,V,Exor
表記法5
A &B
A |B
¬A
:含意,Implies,ならば
:等価,同値,Equivalence,のときだけ
:排他的論理和,Exclusive Or,さもなくば
複合命題の真理値表と定義
含意(Implies)ならば(記号:⊃,→,⇒, Imp)
A→B 定義 A+B
等価,同値,Equivalence,のときだけ(記号:≡,=,Eqv)
A≡B 定義(A・B)+(A+B)
排他的論理和(Exclusive Or)さもなくば(記号:/,V,Exor)
A/B 定義(A・B)+(A+B)= (A・B)・(A+B)
A
0
0
1
1
B
0
1
0
1
A
1
1
0
0
B
1
0
1
0
A≡B
A/B
A→B
A・B A+B A・B A+B A+B (A・B)+(A+B) (A・B)・(A+B)
0
0
1
1
1
1
0
0
1
1
0
1
0
1
0
1
1
0
0
0
1
1
1
0
0
1
1
0
新たな演算を定義するときはこれら8列を最初に書いておき,
どの演算の組合せで,欲しい結果が得られるかを考えるとやりやすい。
(4)シェファー(Sheffer)の棒
P↑Q≡~(P∩Q)
~P
P∩Q
P∪Q
P→Q
P≡Q
P/Q
:P↑P
:(P↑Q)↑(P↑Q)
:(P↑P)↑(Q↑Q)
:P↑(Q↑Q)
:(P↑Q)↑{(P↑P)↑(Q↑Q)}
:{P↑(Q↑Q)}↑{Q↑(P↑P)}
P↓Q≡~(P∪Q)
~P
P∩Q
P∪Q
P→Q
P≡Q
P/Q
:P↓P
:(P↓P)↓(Q↓Q)
:(P↓Q)↓(P↓Q)
:{(P↓P)↓Q}↓{(P↓P)↓Q)}
:(P↓(Q↓Q)}↓{Q↓(P↓P)}
:(P↓Q)↓{(P↓P)↓{Q↓Q)}
これらを比較
してみよう
3.3.2 論理回路
(1)論理素子
ディジタル回路 : 入力および出力が1または0になる回路
論理素子
: ディジタル回路に使用する素子
① AND素子 : すべての入力が1のとき1,その他のとき0
② OR素子
: すべての入力が0のとき0,その他のとき1
③ NOT素子 : 入力が0のとき1,入力が1のとき0(反転)
(以下拡張)
④ NAND素子 : すべての入力が1のとき0,それ以外のとき1
Not(A And B)と同じ
⑤ NOR素子 : すべての入力が1のとき0,それ以外のとき1
Not(A Or B)と同じ
(2)論理素子のイメージ
結線による表現
イメージをつかむために,結線でAND・OR・NOTを示す。
入力はスイッチのON(1),OFF(0)で示し,
出力は豆電球がつく(1)か,つかない(0)かで示す。
AND回路
OR回路
A
C
C
B
A
NOT回路
B
A
C
論理素子をスイッチで表現
イメージをつかむために,電磁石によるスイッチで
AND・OR・NOTを示す。
入力はスイッチのON(1),OFF(0)で示し,
出力は豆電球がつく(1)か,つかない(0)かで示す。
AND回路
OR回路
A
A
X
X
B
B
NOT回路
A
X
(3)真理値表と記号
AND
すべての入力が 1 のとき出力が 1 ,それ以外は 0
真理値表 F=A・B
入力
A B
0 0
0 1
1 0
1 1
出力
F
0
0
0
1
タイムチャート
記号
1
JIS表記
A
0
A
1
B
&
F
B
0
MIL表記
1
F
0
A
時間 t
B
F
OR
すべての入力が 0 のとき出力が 0 ,それ以外は 1
真理値表 F=A+B
入力
A B
0 0
0 1
1 0
1 1
出力
F
0
1
1
1
タイムチャート
記号
1
JIS表記
A
0
A
1
B
1
F
B
0
MIL表記
1
F
0
A
B
時間 t
F
NOT
入力が 0 のとき出力が 1 , 入力が 1 のとき 0
真理値表 F=A+B
入力
A
0
0
出力
F
0
1
タイムチャート
記号
1
JIS表記
A
0
A
1
F
B
MIL表記
1
F
0
A
B
時間 t
F
NAND
すべての入力が 1 のとき出力が 0 ,それ以外は 1
真理値表 F=A・B
入力
A B
0 0
0 1
1 0
1 1
出力
F
1
1
1
0
タイムチャート
記号
1
JIS表記
A
0
A
1
B
&
F
B
0
MIL表記
1
F
0
A
時間 t
B
F
NOR
すべての入力が 0 のとき出力が 1 ,それ以外は 0
真理値表 F=A+B
入力
A B
0 0
0 1
1 0
1 1
出力
F
1
0
0
0
タイムチャート
記号
1
JIS表記
A
0
A
1
B
1
F
B
0
MIL表記
1
F
0
A
B
時間 t
F
表記のバラエティ
ORまたはNORは次のように表記されることがある。
A
B
A
B
A
F
B
A
F
F
B
F
(4)加法標準形と乗法標準形
加法標準形:論理積でまとめたいくつかの項を論理和で結合
F  A  B  A B
乗法標準形:論理和でまとめたいくつかの項を論理積で結合
F  A  B   A  B
なお,上記2式は以下により同じ値を得る
F  A  B   A  B   A  A  A  B  B  A  B  B
 0 A B  B  A0  A B  B  A
(5)真理値表の計算
1 ビット加算回路
① 次の回路の真理値表を求める
A
C
C
B
E
F
[参考]
Fは加算した桁の値,
Cは桁上がりを示す。
D
A
0
0
1
1
B
0
1
0
1
C = A・B
0
0
0
1
D = A + B
0
1
1
1
E = C
1
1
1
0
F = E・D
0
1
1
0
同値回路
② 次の回路の真理値表を求める
A
E
B
C
G
F
D
A
0
0
1
1
B
0
1
0
1
C = A
1
1
0
0
D = B
1
0
1
0
E = A・B
0
0
0
1
F = C・D
1
0
0
0
G = E+F
1
0
0
1
もうひとつの同値回路
参考(順序を変えて単純化)
A
C
B
D
A
0
0
1
1
B
0
1
0
1
C = A・B
0
0
0
1
F
E
D = A + B
0
1
1
1
E = D
1
0
0
0
F = C + E
1
0
0
1
NORはこの2段階で考えるほうが簡単
3.3.3 ベン図
(1)ベン図の表現
集合や論理式を直感的に表示する図
A
A
A: 1
A: 0
(2)演算の表現
OR
部分が1
A
B
+
A
A+B
B
A+B
AND
A+B
部分が1
A
B
・
A
A・B A・B A・B
B
A・B
NOT
A・B
部分が1
A
A
A
A
A
(3)ド・モルガンの定理の
ベン図による表現
A
A
A・B A・B A・B
A・B A・B A・B
B
A・B
A・B
A・B
A・B
B
結果は同じ
A
A
A
A
A
A+B
B
B
B
B
A・B A・B A・B
B
A・B
3.3.4 回路素子
(1)集積回路の集積度
コンピュータを構成す素子は,
ダイオードやトランジスタを組み合わせた集積回路で
作られている。ただし,集積度は時代とともに変化する。
集積度によるICの分類名称
: 集積度
・小規模集積回路(SSI : Small Scale Integration)
: 101~102
・中規模集積回路(MSI : Medium Scale Integration)
: 102~103
・大規模集積回路(LSI : Large Scale Integration)
: 103~104
・超大規模集積回路(VLSI : Very Large Scale Integration)
: 104~105
・超々大規模集積回路 (ULSI : Ultra Large Scale Integration) : 105~
(2)構成方法の分類
①モノリシックIC(monolithic IC)
シリコン素子上に一体構造としての回路をのせたもの
②ハイブリッドIC(hybrid IC)
セラミックの基板上に小型の部品をのせたもの
モノリシックICのほうが一般的である。
(3)基本的な素子による分類
①バイポーラ型IC(bipolar IC)
バイポーラ型トランジスタを基本素子とする。動作速度は,
比較的高速だが,消費電力が大きく,コストも比較的高い。
②MOS型IC(MOS IC, MOS: metal oxide semiconductor)
MOS(金属酸化物半導体)型のFET(電界効果トランジスタ)を
基本素子とする。一般に高集積化が可能なため,大容量化が
容易で,製造コストが安い。MOS の一種であるCMOS型ICは,
消費電力が少なく,動作電圧範囲が広く,雑音余裕が大きい等
の特長を持つ。このため主記憶装置のメモリとして使われる
ことが多い。
③Bi-CMOS 型IC(bipolar complementary metal oxide silicon IC)
バイポーラ型とCMOSを基本素子とする。バイポーラ型の高速性
とCMOSの高集積度,低消費電力を兼ね備える。
(4)メモリ用素子
① RAM(Random Access Memory)
電源を切ると記憶内容が消える。
② ROM(Read Only Memory)
電源を切っても記憶内容が消えない。
電源を切ると記憶内容が消える性質を揮発性と呼び,電源を切っても
記憶内容が消えない性質を不揮発性と呼ぶ。
(5)ROM
本来は,特別な方法でしかデータの書換えができない読出し専用の
不揮発性メモリ。データの書換えを可能とするEEPROMなど,
比較的新しいタイプのROMもあるが,不揮発性である点は共通している。
① マスクROM
製造時点でデータを書き込むROM。同一データROMの大量製造が可能。
② プログラマブルROM(PROM)
ユーザが自由にデータを書き込むことができるROM。
③ ワンタイムROM(One-time Programmable ROM)
特殊な装置を使って一回だけデータを書き込むことができるROM。一度書
き込んだデータを書き換えたり,消去したりすることはできない。
④ EPROM(Erasable and Programmable ROM)
特殊な装置を使ってデータを書き込むことができるROM。一度書き込んだ
データを消去して,再度書き換えることができる。
EPROMの種類
■紫外線消去EPROM(UV-EPROM : Ultra-Violet EPROM)
強い紫外線を当てて消去する。
■ EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)
電気的にデータを消去することができる。
EEPROMのうち,
全データまたはブロック単位でのみデータ書換えが可能な
フラッシュEEPROM(またはフラッシュメモリとも呼ぶ)は,
デジタルカメラの記憶装置として普及している。
(6)RAM
データの読み書きが自由にできる揮発性メモリ。
名前の由来は,どの記憶場所(アドレス)のデータも
直接アクセスできる(ランダムアクセス)が可能なメモリという意味だが,
読書き可能メモリとも呼ばれる。
① SRAM(Static RAM)
フリップフロップ回路で構成されているRAM。フリップフロップは電源を切ら
ない限り記憶内容を保持するため,DRAMにおけるリフレッシュが不要で
ある。DRAMに比べ高速である反面,集積度が低く,1ビット当たりのコスト
が高いため,高速性は要求されるが大容量を要求されないキャッシュメモ
リに使用される。
② DRAM(Dynamic RAM)
コンデンサとMOS型半導体で構成されるRAM。コンデンサの電荷は,その
ままにしておくと放電してしまうためリフレッシュが必要である。ビット当たり
単価が安く,集積度を高くできるため,メインメモリ等に使われる。