小さな介入、大きな成果 ‐より効果的で省力的な公的掲示によるサークル の環境改善及び維持‐ 武藤ゼミ 4回生 高田 千恵子 問題 • サークル活動の運営の経験を通じて、不特定 多数の人々が自由に活動する中で、環境を 一定に維持することの難しさを感じる。 • サークルの運営にはある程度の部員数が必 要であり、同じ意識を持ったより多くの部員が 定着するためには、組織的にも物質的にも良 い環境作りは必要である。 問題 • しかし、以下の様な問題点が挙げられる。 ①多種多様な業務を日常的にこなす中で、全てに(出 来るだけ)常時着手することは不可能に近い。 ②人の出入りが多いため、サークルの活動環境を一 定に保つルールなどを徹底させることは難しい。 ↓ 以下の問題点を踏まえて、出来るだけ少ない労力 で、サークル全体に広く且つ継続的に、活動環境を 良い状態に維持するにはどうしたらよいか検討する。 先行研究 • 陶芸部では、今までにポスターを掲示するなどして呼びかけ が行われていた。 • そこで、同じくポスターなどの掲示を用いて、コミュニティに介 入を施すことを考えた。 • 大学構内に設置された視覚障害者誘導ブロック付 近に置かれた迷惑駐輪を軽減させる研究(松岡・佐 藤・武藤・馬場,2000) • 点字ブロック付近への迷惑駐輪を軽減させる研究 (佐藤・武藤・松岡・馬場・若井,2001) 先行研究 • これらの研究より、罰だけでなく正の随伴性にも焦 点を当てること、介入の内容を具体化することなど の必要性が示された。 • また、事後調査をすることで介入の意義や真の効果 を考察し、コミュニティに介入する際の今後の課題も 明確にした。 ↓ • 以上を参考とし、整理整頓を促すポスター以外に効 果的で省力的な介入方法について考えることとした。 先行研究 • 整理整頓が行われず部室内が雑然としている第一 の要因として、活動への参加回数が少ない者や新 入部員を中心に、元の正常な状態を知らないことが 考えられる。従って、介入を施す場所の正常な状態 の写真を示すことで、サークルの活動の様子を容易 に理解出来るようにし、対象者に適切な行動を引き 起こさせるようにしたい。 目的 • そこで本研究では、立命館大学陶芸部部室内の環 境を改善及び維持することを目的に、注意を促す掲 示物と併せ、別の、標的行動に対してより具体的な 内容の掲示物を示したときの効果を検討する。 • また、より省力的にするために、あるエリアにのみ介 入し、その他のエリアにも効果が見られるかどうか も併せて検討する。事後調査においてアンケートを 実施し、介入の効果や意義を検証すると共に、今後 のサークル運営の仕方についても検討したい。 方法 • 対象 立命館大学陶芸部に所属する大学生 • 場面 立命館大学構内にある、陶芸部部室 (エリアⅠ:作陶机、エリアⅡ:事務作業机、エリアⅢ: 道具棚付近、エリアⅣ:電動ロクロ周辺) 方法 • 実験材料 (ポスター①) A4版のコピー用紙に「使った後は片付けよう!」と 印刷し、ラミネート加工を施した。 (ポスター②) A4版のコピー用紙に、整理整頓を促す内容の文 章と、適切な位置にある道具を写した写真を掲載し、 道具棚に掲示する。 方法 • 実験デザイン ・場面間多層ベースラインデザイン BL条件、エリアⅠにのみ整理整頓を促すポスター ①を掲示した介入①条件、エリアⅠにのみ写真付き の整理整頓を促すポスター②を掲示する介入②条 件の3条件を順次実施した。 第1期 エリアⅠ: エリアⅡ: エリアⅢ: エリアⅣ: BL BL BL BL 第2期 介入① 第3期 BL 第4期 介入② 第5期 BL 方法 • 手続き ・測定は、火曜日から土曜日(10月29日からは月曜 日も測定した)の午前10時から10時半の間に行っ た。 ・筆者が、片付けられずに出ている物の定義に沿っ て各エリアにおいて片付けられずに出ている物の 数を測定し、記録した。また、各条件において、部 員以外の第三者に測定を依頼し、データの一致率 を確認する(第2期では、エリアⅠ・Ⅱ・Ⅳで100% の、Ⅲでは75%の一致率であった)。 方法 ・第1期のBL条件において、各エリアの課題分析を 行い、行動目標を設定した。 ・第2期では、エリアⅠにのみポスター①を掲示した。 ポスターは四辺をテープで止め、作陶台の上部に貼 り付けられた。 ・第3期では全てのエリアでBL条件を実施した。 方法 ・第4期ではエリアⅠにのみポスター②を掲 示する。整理整頓を促す内容の文章と、適切 な位置にある道具を写した写真を掲載し、道 具棚に貼り付ける。 ・第5期では全てのエリアでプローブ条件を実 施するとともに、事後調査として部室の利用 者にアンケートをとり、介入の効果や意義、今 後の課題などを検討する。 方法 • 独立変数 2種類のポスター (ポスター①、②) 方法 • 行動の指標 各エリアで片付けられずに出ている物の数 片付けられずに出ている物の定義 エリアⅠ:水ボトル・乾燥中の作品を除いて作陶台に出ている物。 Ⅱ:ノート・ティッシュ・配布物・個人の忘れ物を除いて事務 作業机に出ている物。但し、箱の中に片付けられてい れば良い。 Ⅲ:不適切な位置にある道具。 Ⅳ:電動ロクロ周辺に置いてある物。 結果(11月3日現在、第3期の途中) 25 BL 介入① BL 20 エ 15 リ ア Ⅰ 10 5 0 30 25 20 エ リ 出 て い る 物 の 数 ア Ⅱ 15 10 5 0 12 10 8 エ リ 6 ア Ⅲ 4 2 0 5 4 エ 3 リ ア 2 Ⅳ 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 観察日数 図1.各エリアでの不適切に出ている物の様子
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