看護師の睡眠に関する文献検討

看護師の睡眠に関する文献検討
東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科
健康教育学
友納 理緒
1
Ⅰ.はじめに



‘92年診療報酬改定において基準看護承認用件
に「2交代も差し支えない」の一項が加えられて
から、2交代が増加傾向
’99年の病院看護基礎調査では、一般病棟では、
3交替制勤務‐63.9% 2交代制勤務‐33.9%
全体としては2交代制勤務を推進する方向へ
2
2交代制勤務の問題点

12時間、16時間という長時間勤務による
看護師への負担
休憩(仮眠)の確保が困難

事故を誘発する可能性がある!という意見

もある。
なかでも、2交代制勤務の大きな課題の一つは
睡眠(仮眠も含める)の問題である
3
Ⅱ.研究目的




勤務中の眠気・疲労による事故を減らすこと
看護師の生活の質を向上させること
仮眠の確保の問題を解決する糸口を見つけるこ
とで、2交代制勤務の導入率をさらに高めること
これらの達成が、結局は患者安全の向上につな
がっていくものである。
患者安全の向上
看護師の勤務体制の整備
4
Ⅱ.研究方法(文献検索)
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

検索期間:1996~2003年の過去8年間
検索資料:国内文献‐医中誌インターネット版
海外文献-MEDLINE
医中誌(看護;原著;ヒト)
keyword:「交代制勤務、看護師、睡眠、仮眠」
MEDLINE
keyword:「shiftwork, sleep, nurse」
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Ⅲ.研究結果

文献検索結果
医中誌による検索結果
'98~'03年のKeywords別検索文献数(医中誌)
year
96 97 98 99 00 01 02 03 98~'03
Keywords ①交代制勤務
4 3 2 6 4 13 11 3 39
②交代制勤務*睡眠
2 1 1 3 2 5 6 0 17
③交代制勤務*仮眠
1 1 0 2 2 3 3 0 10
④看護師*睡眠
2 2 2 0 2 4 6 3 17
⑤看護師*仮眠
1 1 2 0 2 2 1 0 7
⑥交代制勤務*看護師*睡眠
0 1 0 0 1 2 2 0 5
⑦交代制勤務*看護師*仮眠
0 1 0 0 1 2 0 0 3
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
⑥「交代制勤務、看護師、睡眠」で5件
⑦「交代制勤務、看護師、仮眠」で3件
6
文献検索結果

MEDLINEによる検索結果
'98~'03年のKeywords別検索文献数 (MEDLINE)
year
98~'03
Keywords ①shiftwork
121
②shiftwork*sleep
67
③shiftwork*nurse
8
③nuese*sleep
324
④shiftwork*sleep*nurse
4

④「shiftwork, nurse, sleep」で4件
7
文献検討に用いた文献
医中誌とMEDLINE
で検索した文献
その他の重要と
考えられる文献
看護職の睡眠・仮眠の実態、効果、対策
などについて扱っている
文献を選択
・国内文献 6件
・海外文献 1件
・国内文献 8件
・海外文献 6件
8
看護職の交代制勤務と睡眠の実態
睡眠の実態
勤務体制の実態
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
勤務形態: 3交替>2交代
日勤 準夜勤 深夜勤
勤務の組み方:
①毎日異なった勤務帯 71.9%
②2~3日で勤務帯が異なる 18.6%
→96.2%が一週間に3つの勤務帯
を
交代で働いている


勤務帯の交代方向:
右回り 5.8%<左回り 28.6%
右回り/左回り混在 28.8%
勤務の仕方:日勤→深夜 37.6%
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

仮眠:8時間夜勤-10%以下
12時間夜勤-40%
16時間夜勤-77.4%
平均仮眠時間は、夜勤時間の関
数で比例しない。12時間が最も多
い。
12時間、16時間夜勤では勤務の
後半に仮眠を取得
勤務前仮眠は、89%がとっており、
19時代台にとる者が多い。時間は、
163.0分±65.2分
準夜→日勤 12.9%


勤務間隔:約半数が11時間以内
夜勤: 全Nsの70%
約半数が2人以下夜勤
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睡眠に関する基礎的情報
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睡眠は、休息と活動のサーカディアンリズムを背景としている。
不足すると、大脳の情報処理能力に悪影響が出て、事故や過誤が
起こりやすくなる。
睡眠には、a. ノンレム睡眠とb. レム睡眠がある。
1セット:90分 一晩:平均5セット繰り返される
a. ノンレム睡眠-4段階 (2段階が1番長い) 深い
b. レム睡眠-入眠70~90分あたりの睡眠 浅い
*起床時、夢を覚えている場合、レム睡眠が中断された証拠!
交代制勤務などにより睡眠のサイクルが壊れた場合、回復には7~
14日間必要である。
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仮眠に関する基礎的情報
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
仮眠は、夜勤に伴う眠気や作業能力の低下、疲労、ストレスに対しては
効果的である。
仮眠なしのNsは、昼間の睡眠でも仮眠ありのNsと同じだけの睡眠時間を
取れないため、疲労が溜まる。(仮眠の必要性あり)
仮眠と疲労の関係
①勤務前の仮眠のみの場合は、その仮眠時間が3時間以上ならば、勤務終了後の
疲労感が低下する。
②勤務中の仮眠のみの場合は、仮眠時間1時間を超えれば、勤務前の仮眠よりも
勤務終了後の疲労感が低下する。
③同じ仮眠時間をとるならば、勤務前の仮眠よりも勤務中の仮眠の方が勤務終了後
の疲労感を低下させる。

→つまり、深夜勤務帯に1時間以上の仮眠を取ることが、慢性疲労を予防
するために効果的である。
しかし、仮眠直後は、事故や過誤の危険性が高い。
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サーカディアンリズムに関連する事項
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人間のサーカディアンリズムは24時間よりやや長い約25
時間周期である。
サーカディアンリズムにより、人は日中活動し、夜間眠る
ように調整されている。
そのため、日中の睡眠は軽く浅い。
交代制勤務をしている看護師や夜専の看護師は、睡眠
の質が乏しく、眠気によるミスを起こしやすい。
具体的には、3交替制勤務者は、日勤のみの勤務者に
比べて、睡眠不足による医療事故が1.83倍、通勤中の
居眠りや事故が約2倍といわれている。
2交代制勤務より3交代制勤務の方が有意に生体リズム
へ影響を与える。
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効果的な睡眠・仮眠のとり方のポイント
睡眠のポイント
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身体や筋肉を回復させるため
に、少なくとも7時間は床につく
必要がある
夜勤が続く場合、夜勤後2回
の睡眠をとるといい。
仮眠のポイント
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①夜勤後すぐ ②午後1~5時

看護師の勤務前の仮眠は、自宅
で取るより病院でとる場合の方
が有意に長い
夜勤後日常の生活に戻る場合
①夜勤後すくに2~3時間
②その日の夜



就寝前3時間は激しい運動を
避けるべき
就寝前1~2時間は飲酒を、6
時間はカフェイン摂取を避ける
睡眠環境を整備すること
2交代勤務中は午前1~4時、
3交代勤務中は午前3~6時
が適している。
長さは前述の通り
仮眠環境を整備すること:


仮眠確保のためには、3交代
より2交代が望ましい
夜勤の看護師数は、交代で仮
眠を確保できるように3人以上
が望ましい
13
看護職としてのアクションプラン
臨床現場からのアプローチ


看護ケアの質、看護師自身の生活の質向上のために、臨床側・研究側相互
の歩み寄りと協力が必要不可欠
臨床側は、異常さを主張し、変わる手間をおしまない。研究側は、利用しや
すいツールの開発、巡回・面接の実施。
睡眠・仮眠に関連する知識を提供する教育の充実



教育機関の教育プログラムの中に、交代制勤務を取り巻く、睡眠・仮眠・
サーカディアンリズムへの影響、眠気と医療ミスのリスクの関係などの問題
について考える時間を導入すべき
継続教育の中で、交代制勤務についての知識を提供すべき
「目の前の患者だけに対して最高の看護をするのではなく、すべての患者に
最高の看護を提供する!」 一時の無理によるミスを防ぐ
将来的には、セルフスケジューリングシステムが導入できるように・・・
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看護職としてのアクションプラン
夜勤あけの睡眠のとり方に関する研究の実施
政策改革への参画


臨床の場のみで解決できる問題の限界
研究者は、臨床の場に問題点を提示したり、対策を考案をしていく一方で、
政策を作成する側に対しても問題解決のため、政策の改革の必要性を訴え
ていく必要がある。
先行研究等からの“ガイドライン”の作成


仮眠のとり方(時間帯、長さ)や看護師の睡眠障害の防止方法に関する文献
はいくつかあるが、臨床の現場が参考にできるような“ガイドライン”が存在
しない
全体としての統一見解“ガイドライン”の必要性‐病棟が導入しやすいような
具体的情報を含む
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看護職としてのアクションプラン
新たな勤務体制の確立


ガイドライン作成時、このガイドラインを十分に考慮した勤務スケ
ジュールを実際の業務において実施・評価し、より事故のリスクの
低い勤務体制・スケジュールのあり方を構築していくことが重要
今回の文献検討からみえた睡眠のために理想的な勤務体制の条件
・2交代(3交代では右回り)が最適
・勤務時間帯を約3週間固定する
・次の勤務帯に移行するまで少なくても24時間あける
・仮眠スペースを確保・整備する
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