LCP日本語版 ホスピスにおける導入のプロセス

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第34回日本死の臨床研究会年次大会
ワークショップ1
看とりのケアにおけるクリティカルパスLCP
LCP日本語版
ホスピスにおける導入の実際
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻
博士前期課程
市原香織
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はじめに
 淀川キリスト教病院ホスピスは,従来から看取りの
ケアをホスピスケアにおける重要なケアと位置づけ
LCPの導入によって
て実践してきた.
・看取りの時期に必要なケアを見直し,
 そのため,LCPという看取りのパスの導入を検討し
必要なケアを見落としなく提供できる
た際,新たにパスが必要なのだろうか,今まで行っ
・より適切な看取りのケアの提供につな
てきたケアとどのように違うのだろうか、パスによっ
がる
てケアの個別性が損なわれることがないだろうか疑
問を感じた.
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LCP日本語版パイロットスタディ
 対象施設:淀川キリスト教病院ホスピス,
聖隷三方原病院ホスピス
 対象患者:各施設に入院中の患者20名、
計40名にLCP日本語版を使用した
 使用日数:平均3.3日
最短1日~最長19日
 パイロットスタディの結果を基に,現在の
LCP日本語版Ver.1が確定された
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発表内容

LCP日本語版の導入の準備と実際
LCP日本語版パイロットスタディ
後の看護師へのアンケート調査の
結果

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LCP日本語版の導入の準備
1.LCPの導入に関するコアメンバーを決定する
 LCPの導入を円滑に進めるための調整役
当院の例:ホスピス長・看護課長・係長
2.コアメンバーが数例にLCPを試用する
 通常の病棟業務の中に組み込むため,導入にあ
たっての問題点などないか検討する
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LCP日本語版の導入の準備
3.学習会を開催する
 昼のカンファレンスや日勤終了後等、学習会を数
回行い、スタッフ全員が参加できるようにする
4.LCPの使用手順書を作成する
 学習会でのスタッフの意見を参考に、コアメン
バーで病棟での使用手順書を作成する
5.LCP日本語版を開始する
最初は1事例からでも!
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LCP日本語版の導入の実際
1.LCP開始と終了の基準
 医師からでも看護師からでも開始はできる
 例:予後1週から数日の状況で使用基準を満
たしているか医師,リーダーナース,受け
持ち看護師の3者で合意のもと開始する.
 終了後は死亡時,またLCP開始後に患者の
状態が改善した場合は中止を決定する.
2.スタッフへのLCP使用患者の申し送り
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LCP日本語版の導入の実際
3.記入方法
 記入の分担:看護師のみ or 看護師と医師で分担
 記入の時間
例:継続アセスメントの時間は、看護師のラウンド
時間に合わせた.
4時間毎(6時-10時-14時-18時-22時-2時)
12時間(10時-22時)
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LCP日本語版の導入の実際
4.使用上の疑問や問題点への対応
例:スタッフが疑問に思ったこと,困ったこと等を自由に書き出せる用
紙などを作成して記入してもらう.コアメンバーで解決策を検討し手
順書に追加する.
日付
問題点
3/6
意識が低下している患者の病状認識をどのように確認したらよいか
3/10
決められたアセスメントの時間以外に起こった症状は記録しなくて
よいのか.
3/12
宗教/スピリチュアルな支援の評価が難しい.何を基準に達成と評
価したよいのか判断に迷う.
3/14
家族の昼間の様子から,患者の死に対して心の準備ができていると
いは評価できなかった.夜間に家族は不在だが,その時の評価はど
うすればよいか.
LCP使用手順書
1.予後1週間〜数日と医師との合意の上で判断し、リーダーがLCPの導入を決定して下さい。導入
したらリーダーデスクのリストに記入して下さい。
2.初期アセスメントはその時の状態を、メンバーが記入して下さい。
3.経時の記入は4間毎の記入では、ラウンドの時間と合わせて
6時-10時-14時-18時-22時-2時として下さい。
12時間毎の記入は10時-22時として下さい。時間が前後してもかまいません。
4.4時間毎、12時間後との用紙は1日1枚必要です。旧紙チャートの棚に場所を作っています。看取
り後もその棚に入れてください。
5.記入に迷ったこと、疑問点はその場所に理由を書いた付箋を貼っておいて下さい。
6.疑問点・不都合があれば“LCP使用にあたっての疑問・困った点” の用紙をリーダーデスクに置
いていますので記入ください。
【追加事項】
*かかりつけ医への連絡は“いいえ”です。バリアンスですが全例連絡は特にしないので、分析の記
入いりません。
*遺族へのリーフレットは、当院では後日すずらんの会の案内なので、“いいえ”です。バリアンス分
析は“後日発送”で結構です。
*しんどさの増強、痛み、喘鳴など事前にPRN等の使用で避けれたバリアンスはVに○をする。避け
られなかったバリアンスはVのみ。
*意識低下している患者、看取り前に認知障害がある患者などは、元々、理解していても、今が昏睡
であれば昏睡にチェックして下さい。
*決められた時間以外でも、その前後で起こった症状や問題となったことは、バリアンスとし
て時間を書いて記入をする
どうぞよろしくお願い致します、何かあれば市原まで!
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LCP日本語版の導入のポイント
 LCP開始のタイミングを見逃さない
 病棟スタッフの負担の軽減
看取りに向けてスタッフの足並みが揃う
看取りのケアが継続的に見落としなくできる
・LCPの記入方法がわからず困っていないか,LCP
の使用によって業務に支障がないか,コアメンバー
からスタッフに声掛けをする.
 LCP導入のメリットが実感できるような働き掛け
・患者・家族ケアの個別性はバリアンスとして評価で
きる
・LCPを使用した事例を振り返り,目標達成の状況
から看取りのケアの改善に向けた検討が行える.
・コアメンバー自身が実感したLCPのメリットを,
病棟スタッフにフィードバックする.
+
LCP日本語版の有用性
:看護師へのアンケート調査
 対象看護師:LCP日本語版パイロット
スタディに関わった看護師40名.
 LCP日本語版が看取りのケアにどの程
度有用と思うか、アンケート調査を
行った.
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LCP日本語版の有用性
:看護師へのアンケート調査結果
 患者・家族ケアに関する有用性
質問項目
有用だと思う
(%)
LCPの開始により患者が看取り期であることを確認できる
85
初期アセスメントで患者のケアの見直しができる
74
初期アセスメントで家族へのケアの見直しができる
66
継続アセスメントにより患者へ適切な治療やケアが行える
74
継続アセスメントにより家族へ適切なケアが行える
69
症状コントロールが改善する
67
看取り後に家族に適切なケアを行える
56
+
LCP日本語版の有用性
:看護師へのアンケート調査結果
 看取りのケア全般に関する有用性
質問項目
有用だと思う
(%)
継続したケアが提供できる
69
一貫したケアを行うことができる
69
ホスピス・緩和ケア病棟で通常行うケアが見落としなく行え
る
59
 その他の有用性
質問項目
有用だと思う
(%)
教育的効果 看取り期のケアの経験が少ない看護師への教育につながる
看取り期のケアが適切に行えている確信になる
71
53
記録時間の
看取り期の記録がLCPのみであれば記録時間が短縮する
短縮
64
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LCP日本語版の有用性
0%
【看取りのケアに関する質問項目】
LCPの開始により患者が看取り期であることを確認できる
継続アセスメントにより患者へ適切な治療やケアが行える
初期アセスメントで患者のケアの見直しができる
一貫したケアを行うことができる
継続アセスメントにより家族へ適切なケアが行える
継続したケアが提供できる
症状コントロールが改善する
初期アセスメントで家族へのケアの見直しができる
看取り期の記録がLCPのみであれば記録時間が短縮する
ホスピス・緩和ケア病棟で通常行うケアが見落としなく行える
看取り後に家族に適切なケアを行える
多職種で情報を共有することができる
多職種にケアについて相談する機会になる
.患者と家族の情報量が増加する
【看取りのケアの教育に関する質問項目】
看取り期のケアの経験が少ない看護師への教育につながる
看取り期のケアが適切に行えている確信になる
20%
40%
60%
80%
100%
+
LCP日本語版の有用性
患者の状態
予後が1週~数日
看取り
LCPの開始
医療チームでのケアの目標の達成状況を評価し、ケアの改善策の検討する
期医
で療
あチ
るー
こム
とで
を患
共者
通が
認看
識取
でり
きの
る時
初
継
に
続
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適
ア
ケア
切
セ
アセ
な
ス
ス
の
治
看取りのケアの向上のつながる
メ
見メ
療
・見落としがない、
ン
ン
直ト
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一貫したケアを継続して
し
ケ
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提供できる
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患
・症状コントロールが改
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り
後
に
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え族
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切
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ケ
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が
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今後の活用に向けて
 使用時期の見直し:ゆとりを持って開始時期を検討す
る
 院内の記録物としての取り扱い:院内記録委員会の承
認を得て、紙媒体のLCPを電子カルテに取り込む
 ケアの評価:チームカンファレンスでLCPを用いて、
ケアの目標の達成状況などの再評価する
 教育への活用:新しく配属になったスタッフへの教育、院内
での研修に組み込む
 ホスピス・緩和ケア病棟以外での使用の検討