~「脱・しがらみ」~ 日系製造企業における 製品モジュール化度と 取引方式選択の実証研究 明治大学 商学部 諸上ゼミナールA班 石黒俊平 伊藤孝 工藤怜実 笹岡伸輔 竹内將 津田安希子 宮下友誠 ~従来の企業間取引~ 「関係特殊性技能」の創出 ・開発と生産の連携 ・綿密なコミュニケーション ・一貫した工程管理 ・知識共有 だが、市場環境の変化により… モジュール化時代の到来 「しがらみ」 の露呈 閉鎖的ネットワークにより時代に対応できてない 製品アーキテクチャに適した 取引方式選択の必要性 ~製品アーキテクチャ~ クローズ 自動車 オートバイ 小型家電 汎用コンピュータ 工作機械 レゴ(おもちゃ) パソコン パッケージソフト 自転車 オープン インテグラル モジュラー (出所)藤本隆宏(2001) 『ビジネス・アーキテクチャ』 ~製品モジュール化度とは~ 製品アーキテクチャを分類する際に 用いる指標 ☆インターフェイスの標準化度 ☆相対的な標準部品の使用比率 ☆設計仕様の流用度 ~2つの取引方式~ アームズレングス取引 相互の密接度・・・低 企業間の信頼・・・低 ⇒製品モジュール化度が 高い場合に適した取引 方式 統合的取引 緊密な情報交換・・・高 取引特殊的投資・・・高 企業間の信頼・・・高 ⇒製品モジュール化度が 低い場合に適した取引 方式 ~経営成果~ アームズレングス取引 統合的取引 部品単価の低減 スイッチングコストの 低減 在庫管理 サプライヤー満足度 新製品開発力 リードタイムの短縮 ~分析フレームと仮説~ 高い アームズレングス取引度 製品モジュール化度 H2・3 部品単価の低減 スイッチングコストの低減 H1 統合的取引度 低い H4~7 在庫管理 サプライヤーの満足度 新製品開発力 リードタイムの短縮 ☆H1 「製品モジュール化度」によって,取引方式が異なる。 ☆主要構成部品の「モジュール化度が高い」場合,「アームズレングス取引度」を高めることが, H2 「部品単価の低減」に正の影響を与える。 H3 「スイッチングコストの低減」に正の影響を与える。 ☆主要構成部品の「モジュール化度が低い」場合,「統合的取引度」を高めることが, H4 「在庫管理」に正の影響を与える。 H5 「サプライヤーの満足度」に正の影響を与える。 H6 「新製品開発力」に正の影響を与える。 H7 「リードタイムの短縮」に正の影響を与える。 ~アンケート調査~ ☆母集団・・・644社 電気機器・輸送用機器・機械・精密機器・その他製造業 ☆送付・・・470社 ☆回収・・・ 198社(42.1%) (有効回答数184社) 2005年度夏季号『四季報』(東洋経済新報社)・2005年度夏号『日経会社情報』(日本経済新聞社) より抽出 ~解析~ 共分散構造分析 因子分析、回帰分析、重回帰分析、パス解析、分散分析 変数間の因果関係を探り、その影響指標を 同時に図示することができる統計的手法 H2 0.22** 0.36*** アームズレングス取引度 0.05 部品単価の低減 製品モジュール化度 統合的取引度 0.03 H3 0.22** アームズレングス取引度 0.03 0.34*** 0.31 スイッチングコストの低減 製品モジュール化度 0.03 統合的取引度 ***・・・0.1% **・・・1% *・・・3% -0.44*** H4 0.22** 0.09 アームズレングス取引度 0.08 製品モジュール化度 在庫管理 0.27*** 統合的取引度 H5 0.03 0.22** 製品モジュール化度 0.22** 0.33*** 統合的取引度 0.05 アームズレングス取引度 製品モジュール化度 0.05 新製品開発力 0.03 H7 0.11 サプライヤーの満足度 0.03 H6 -0.08 アームズレングス取引度 0.22** 0.22** 統合的取引度 アームズレングス取引度 製品モジュール化度 0.15* 0.07 リードタイムの短縮 統合的取引度 0.03 0.21** ~インプリケーション~ H2~7の実証 製品モジュール化度に合った企業間取引方式の選択が経営 成果を向上させる。 H1の部分的実証 今日の日系製造企業において「統合的取引度」に は差が見られない。 今日の日系製造企業の取引方式は 「し がらみ」を引きずっている。 ~我々の主張~ 製品に合った企業間取引方式の選択 経営成果の向上 参考文献 藤本隆宏(2001)「アーキテクチャの産業論」有斐閣 藤本隆宏・武石彰・青島矢一(2001)『ビジネス・アーキテクチャ』有斐閣 青島矢一・武石彰(2001)「アーキテクチャという考え方」有斐閣 武石彰(2000)「モジュラー化,オープン化」『一橋ビジネスレビュー』2000年 冬号 韓美京(2000)「製品アーキテクチャ特性と製品開発パターン間の関係~自動車部品のケース」社会科学 研究52 カーリス.Y.ボールドウィン・キム.B.クラーク・安藤晴彦訳(2004)『デザイン・ルール―モジュール化パワー』 東洋経済新報社 Williamson, Oliver E,(1985)「The Economic Institution of Capitalism : Firms, Markets Relational Contracting 」New York: Free Press Barney, Jay B. 著 岡田正大訳(2002)「企業戦略論~競争優位の構築と持続~」上基本編 ダイヤモンド 社 浅沼萬里(1990)「日本におけるメーカーとサプライヤーとの関係─「関係特殊的技能」の概念の抽出と定 式化─」『経済論叢(京都大学)』第145巻第1・2号 金子逸郎(2000)『工業経営のラディカル・イノベーション』中央経済社 デビット・フォード/UMPグループ著 小宮路雅博訳『リレーションシップ・マネジメント―ビジネス・マー ケットにおける関係性管理と戦略―』白桃書房 延岡健太郎(1999)「日本自動車産業における部品調達構造の変化」国民経済雑誌 Abernathy,W ,J,K ,Clark,and A,Kantrow(1983),Industrial renaissance.New York:Basic Books.(望月嘉幸監訳 『インダストリアルルネサンス』TBSブリタニカ,1984 藤本隆宏(2003)「組織能力と製品アーキテクチャー下から見上げる戦略論ー」『組織科学』Vol.36 No.4 国領二郎(1995)「オープン型経営の選択が不可避なのはなぜか」『高収益企業の情報リテラシー』ダイ ヤモンド社 参考文献2 朴秦勲(2000)「階層的分業とサプライチェーンアーキテクチャの相互メカニズム─トヨタ系の部品メーカー の事例」『大阪経大論集』第53巻第4号 Ulrich, Karl(1995)“The role of product architecture in the manufacturing firm ”Research Policy ,vol24 藤本隆弘 安本雅典編著(2000)「成功する製品開発」有斐閣 浜屋敏(2004)「組立業務の外部委託と製品・市場・企業特性」『Economic Review』2004年4月号 伊藤宗彦(2003)「システム・アーキテクチャのダイナミクス-デジタルカメラのシステム・アーキテクチャの 変遷-」『神戸大学経済経営研究所ディスカッションペーパー』 No.J49 神戸大学経済経営研究所 日経ビジネス 2003年12月8日号 井上馨(2003)「継続的取引と資産特定性」『神戸学院経済学論集』 第23巻第1号 藤本隆宏(2001)「我が国製造業の競争パフォーマンス~擦り合わせアーキテクチャとバランス型リーン方 式」『開発金融研究所報』 第6号 廣田章光(2001)「製品進化とパラダイム~モジュラー型から統合型への製品アーキテクチャ変化~」『組 織科学』Vol.35 No.2 Sako,M. Prices,Quality and Trust:Inter-Firm Relations in Britain and Japan,Cambridge University Press,1992 青木昌彦(1978)『企業と市場の模型分析』岩波書店 今井賢一(1982)『内部組織の経済学』東洋経済新報社 武石彰(2000)「モジュール化,オープン化」『一橋ビジネスレビュー』2000年 冬号 佐竹隆幸(2002)『中小企業のベンチャー・イノベーション-理論・経営・政策からのアプローチ-』ミネル ヴァ書房 孟勇(2001)「日本の企業システム・取引関係の考察-長期継続的取引関係の合理性と課題-」『専修社 会科学論集』第27号 中村秀一(1992)『系列を超えて』NTT出版 日経ベンチャー 1998年7月号 参考文献3 延岡健太郎(1996)「顧客範囲の経済:自動車部品サプライヤの顧客ネットワーク戦略と企業成果」『国民 経済雑誌』173巻6号年 井上達彦(2003)「<EDIインターフェースと企業間の取引形態>の相互依存性」『組織科学』Vol.36 No.3 今野善文(2000)「中堅・中小企業の創造型戦略的連携と組織間学習プロセス」『北星学園大学経済学部 北星論集』 第38号 近能善範(2003)「自動車部品取引のネットワーク構造とサプライヤーのパフォーマンス」『組織化学』 Vol.35 No.3 デビット・フォード/UMPグループ著 小宮路雅博訳(2001)『リレーションシップ・マネジメント―ビジネス・ マーケットにおける関係性管理と戦略―』白桃書房 藤本隆宏 西口敏宏 伊藤秀史(1998)「リーディングス サプライヤー・システム 新しい企業間関係を創 る」有斐閣 金子逸郎(2000)『工業経営のラディカル・イノベーション』中央経済社 真鍋誠司(2004)「企業間信頼の構築とサプライヤーシステム:日本自動車産業の分析」『横浜経営研究』 第25巻第2・3号 武田巧(1994)「生産系列化での長期継続的取引の合理性を巡って」『和光経済』第27巻1巻 延岡健太郎(1999)「日本自動車産業における部品調達構造の変化」『国民経済雑誌』 180巻第3号
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