スライド 1

京都大学寄付講義(2008/12/9)
日本の年金とアセットアロケーション
大阪ガス株式会社
財務部ファイナンス・チーム(企業年金資産運用担当)
インベストメント・オフィサー 石田英和
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京都大学寄付講義(2008/12/9)
1.1 日本の年金制度
確定拠出年金・個人型
0.11兆円 6.8万人
確定拠出年金・企業型
2.4兆円 172万人
厚生年金
基金
31.1兆円
525万人
国民年金
基金
2.6兆円
73万人
適格
退職年金
15.6兆円
567万人
確定給付
企業年金
29.2兆円
384万人
職域部分
代行部分
厚生年金保険
140.3兆円 3,302万人
共済年金
51.4兆円
419万人
付加年金
77万人
76万人
国民年金(基礎年金)
10.4兆円 6,585万人
自営業者等
民間会社員等
第1号被保険者
2,158万人
公務員等
第2号被保険者
3,302万人
2
第2号被保険者の
被扶養配偶者
第3号被保険者
1,092万人
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1.2 公的年金の体系
厚生年金保険
民間サラリーマン・OL
国家公務員共済組合
被用者年金
公
的
年
金
民間企業で働く人
のための制度
共済年金
地方公務員共済組合
公務員など特定の
職域で働く人のた
めの制度
私立学校教職員共済組合
第1号:自営業、農業者等
国民年金
第2号:被用者年金の本人
第3号:第2号の配偶者
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(20歳以上60歳
未満の)すべての
国民が加入する
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1.3 私的年金の体系
厚生年金基金
確定給付企業年金
企業年金
私
的
年
金
1,000人以上の企業(グループ)
基金型
規約型
平成24年3月をもって廃止
各企業が実施する確定拠出金
税法上の適格条件に未充足
税制適格退職年金
企業型確定拠出年金
非適格退職年金
国民年金基金
自営業者等の任意加入
国民年金に上乗せされる年金
国基連が実施する確定拠出年金
個人型確定拠出年金
年金保険(保険型)
個人年金
企業が従業員のための
福利厚生の一環として
自主的に設立
生命保険会社
日本郵政公社
農協、全労済、生協
損害保険会社
年金共済
年金払積立型
傷害保険(貯蓄型)
財形年金貯蓄
個人年金信託
金型預金
証券型年金
個人が自由に加入
各金融機関
信託銀行
普通銀行等
証券会社
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※厚生年金基金・国民年金基金は、厚生年金保険及び国民年金と密接な関係を有しており
一部公的年金の性格を有しています。
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1.4 確定給付型と確定拠出型
• 確定給付型企業年金




基金・企業が運用方法を決める
資産を一括して管理する
将来の年金額は確定している
基金型と規約型がある
 掛け金拠出限度がない(非課税)
 従業員が拠出できる(生命保険料控除年額5万円を適用す
るので、実質は課税である)
• 確定拠出型年金




加入者個人が運用方法を決定
個人ごとに資産を管理する
運用収益によって年金額が決まる(拠出額が確定している)
企業型と個人型がある
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1.5 企業年金制度は多様化した
2007年5月1日現在
•
厚生年金基金 649 (将来返上を除くと634) 530万人
単連153、総合519 ピーク時(1996年)1,883基金、1,225万人から減少
•
確定給付企業年金 基金型 606 規約型 1,338 合計1,944
384万人
•
代行返上基金 855 (過去返上基金791、解散54、厚年基金15)
•
2002年から代行返上が認められた。
解散基金累計 446 (2006年度18、2005年度30、2004年度81、2003年度92)
平成14年移行で235基金である。
•
企業型確定拠出 規約数1,993件 (2006年8月末) 199万人
個人型確定拠出年金は7万人で、まだ普及していない。
•
適格年金 契約件数 45,090件(2006年3月末) 567万人
2002年時点で契約件数73,582件、加入者数917万人から減少している。
2012年3月31日で廃止になるので、他制度への移行や廃止が進行している。
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1.6 ディスカッション・トピック①
• 大企業に勤めるとして、以下のような年金制
度をもつ会社をどう思いますか?
①給料の水準は高くないが、年金制度(老後の保
障)が充実している会社
②年金制度は無いが、成果主義が徹底していて報
酬もボーナス中心の会社
③年金制度は、確定拠出年金だけで、老後の資金
は自己責任で運用しなくてはいけない会社
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2.1 大阪ガスの退職給付制度
前々制度
前制度(H14年~)
現制度(H16年~)
積立年金
基本年金
基本年金
(終身年金)
(終身年金)
(終身年金)
付加年金
付加年金
(5 or 10年有期年金)
(5 or 10年有期年金)
職責年金
新付加年金
5-15年有期年金
(10年有期年金)
[60歳から支給開始]
退職一時金
退職一時金
確定拠出年金
年金資産の対象。
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2.2 当社退職給付財政の推移と状況(積立状況)


H12~14年度の運用成績の低迷により、未認識差異(積立不足)は一時447億円まで拡大。
しかしその後の退職給付制度の見直し、運用環境の好転により、積立不足は解消。
H20年3月末には、年金資産が退職給付債務を大きく上回っている。(積立比率120%)
【年金資産の積立状況の推移
単位:億円】
資産が債務を超過
(積立比率120%)
H12/3末
(退職給付会計導入時)
年金資産
1,573
引当金
1,040
6
未認識差異
(積立不足)
退職給付債務
2,619
制度見直しで
債務も減少
H15/3末
年金資産
1,583
660
退職給付債務
2,690
H20/3末
退職給付債務
年金資産
2,575
3,041
447
96
37
積立不足が一時447
億円まで拡大
(積立比率60%)
AL制度の引当金
→本体B/S表示
9
407
未認識差異は債務側へ
→将来の費用圧縮要因
前払年金費用
(マイナスの
引当金)
→本体B/S表
示
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2.3 年金資産の積立状況
•
•
「将来の給付に備え、現時点までに積み立てておくべき金額(年金債務)に対し、
どれだけの資産が積み立てられているか」を有価証券報告書の「退職給付に関
する注記」で開示することになっている。
当社の年金資産の積立状況の推移は下図のとおり。H15.3までは大幅な積立不
足。その後の運用環境の好転により、積立状況は改善。
年金資産の積立状況の推移
億円
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
H12.3 H13.3 H14.3 H15.3 H16.3 H17.3 H18.3 H19.3 H20.3
年金資産
10
年金債務
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2.4 年金運用と会社業績の関係 労務費
•
•
基本的な関係は、年金運用の実績がよければ[悪ければ]、退職給付費用(労務
費)が減る[増える]。
(有価証券報告書の営業費明細書の労務費の内訳(退職手当)として開示)
当社の退職給付費用の関係の推移は下図のとおり。一時は150億円を超えてい
たが、運用環境の好転により、直近ではマイナス費用(収益)となっている。
退職給付費用の推移
億円
年金制度変更に伴う
費用の増減額は含まず
200
150
100
50
0
-50
-100
-150
H12年度 H13年度 H14年度 H15年度 H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度
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3.1 政策資産配分の決定
バランスのとれた3つの目標
想定投資期間
目標利回り
許容リスク
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3.2 ディスカッション・トピック②
• 東芝年金のケースを読んだ上で、年金の運
用担当者として以下のような質問に対してど
のように答えますか?
何故リスクの高い資産に投資するのか?すべて
安全資産に投資するのが確実なのはないか?
企業が収益を求めている以上、最も高い収益の
見込める資産に投資するべきではないか?
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年金の公式
給付
=
掛金
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+
運用
収益
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日本版ソブリン・ウェルスファンド(?)
• 公的年金の資産運用に対する改革案(経済
財政諮問会議 グローバル化改革専門調査会)
「諸外国に見劣りする年金基金の運用改革は郵
政民営化に匹敵する大改革」
基金分割、運用専門家の採用などを提案
• 厚労相「国民は安心志向」
• 財務相「年金資産の半分は国債で運用して
おり、市場への影響を十分に注意すべき」
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4.1 運用機関の選定
• 企業年金は一般に年金資産の運用を運用受託機関(信託銀行、生
命保険会社、投資顧問会社)に委託しています(外部委託)
• 厚生年金基金と基金型企業年金においては自家運用を行うことが認
められています
企業年金
厚生年金基金
基金型企業年金
規約型企業年金
運用方法
外部委託
運用受託機関
商品(運用方法)
信託銀行
年金信託、年金指定単、年金特金
生命保険会社
一般勘定、特別勘定第一特約、同第二
特約
投資顧問会社
投資一任契約
自家運用(規約型企業年金は自家運用できない)
適格退職年金
外部委託
信託銀行
年金信託、年金指定単
生命保険会社
一般勘定、特別勘定特約
全共連
年金共済
投資顧問会社
投資一任契約
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4.2 運用機関選択の4つのP
• 運用機関選定の基本
運用哲学(Philosophy)又は方針(Policy)
プロセス(Process)
人材(People)
実績(Performance)
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4.3 ディスカッション・トピック③
①A,Bどちらの運用機関を採用しますか?その理由は?
②採用前に、一回だけ追加の質問をする権利を持っているとし
たら、どんな質問をしますか?
【状況】2002年の時点において、年金資産の一部(全体の1%程度)を国内小
型株式アクティブ運用に振り向けることが決定され、採用候補が2社に絞ら
れた。
Aアセットマネジメント
B投資顧問
資本
外資系金融グループの一員
独立系(運用者自身が株主)
預かり資産
10兆円以上(国内小型株式では約
500億円)
20億円(国内小型株式のみ運用)
トラックレコード
10年以上
18ヶ月
超過収益
ベンチマーク対比で年率10%程度
同対比で年率10%程度(運用期間
が短いため参考には出来ない)
人員
200名以上(国内小型株専任は2名)
3名
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参考図書
• 「勝者のポートフォリオ運用」 ー投資政策からオル
タナティブ運用までー
デイビッド・スエンセン著 大輪秋彦 監訳
(社)金融財政事情研究会 2003年
• 「実務家が答える 年金資産運用相談室」
山口登 編著
東洋経済新報社 2005年
• ドラッカー選書6 「新訳 見えざる革命」 -年金が
経済を支配するー
P.F.ドラッカー 著 上田惇生 訳
ダイヤモンド社 1996年
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