ヨーロッパ日本語教師会 第13 回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム

第一届漢日対比語言学研討会
公开座谈会「対照研究・誤用分析・習得研究三位一
体の研究モデルとその推進の第一歩」
中国語を母語とする日本語学習者の話し言葉コーパ
スの構築と応用
名古屋大学
杉村 泰
学習者中間言語コーパス(会話)
○ KYコーパス
鎌田修一・山内博之(1996‐1998)
90人分のOPIテープの文字化資料
中国語話者30人、英語話者30人、韓国語話者30人
(それぞれ初級5人、中級10人、上級10人、超級5人)
○ 上村コーパス
上村隆一(1998)
120人分のOPI形式のインタビュー、ロールプレイ
日本語母語話者54人、非母語話者66人(英、中、韓、他)
サンプル(http://www.env.kitakyu-u.ac.jp/corpus/)
学習者中間言語コーパス(会話)
○ 魯東大学外国語学院共同研究課題(2006‐2008)
《中国人日语学习者声音资料过渡语基础研究》
『音声資料による中国人日本語学習者の中間言語の基礎的研究』
李晨,井上幸,李明姬 著
(吉林大学出版社)
被験者:魯東大学外国語学院日本語学科の学生(のべ256人)
収録データ
・日本人教師との会話
2007年(1年生32人、2年生55人、3年生50人)
・スピーチ
2008年(1年生60人、2年生9人、3年生50人)
魯東会話コーパス
「中国語話者のための日本語教育文法の開発と学習者中間言語コーパス
の構築」
日本 科学研究費補助金(基盤研究(C))(課題番号19520451)
(代表:杉村泰、分担者:張麟声、協力者:李晨、井上幸、建石始)
魯東大学の日本人教師1人と中国人学生のべ405人との会話
収集データ
2006年6,7月(1年生59人、2年生28人、3年生20人、4年生27人)
2007年6,7月(1年生30人、2年生55人、3年生26人)
2007年12月(2年生56人、3年生50人、4年生54人)
1年生89人、2年生139人、3年生96人、4年生81人
魯東会話コーパスの特徴
①
②
③
④
⑤
中国国内の現役日本語学習者が対象
学習環境がほぼそろっている
インタビュアーが1人に固定されている
被験者数がのべ405人と多い
横断的研究にも縦断的研究にも使える
1年生89人、2年生139人、3年生96人、4年生81人
1~3年分収録:47人、2~4年分収録:25人
⑥ 日本語レベルはそろえていない
⑦ 音声データと文字化資料を公開(2010年の予定)
会話データ番号
06 84 Ⅰ 070629 (03:36)
06 入学年(2006年)
84 個人番号
Ⅰ 学年(I 1年、Ⅱ 2年、Ⅲ 3年、Ⅳ 4年)
070629 録音日(2007年6月29日)
(03:36) 録音時間(3分36秒)
会話例
Teacher: では、もうそろそろ一年生も終わりですが、あなたの学生生活はど
うですか。
Student: 面白いです。大学は暇なとき 〈はい〉 沢山あります。〈はい〉 私は
いつも図書館へ行きます。〈うん〉 図書館は本や雑誌や、雑誌など、雑誌
などがたくさんあります。〈はい〉 それで私いつも行きます。
T: そうですか。〈はい〉 はい、では、今度の夏休みはふるさとに帰るつもりで
すか。
S: はい、〈はい〉 私はふるさとは懐かしい、とても懐かしいです。〈そうです
ね〉 私のふるさとは遠いです。〈はい〉 それで、とても懐かしい。〈そうです
ね〉 この夏休みは、〈はい〉 私は、私は山、山をのぼ、登ります。〈そうで
すか〉 登るつもりです。〈はい〉 友達、友達、友達に会い、会います。
0684Ⅰ070629(03:36)
○ 学習者の自己訂正過程が見える
(1) 寮へかえ、かえ、帰る後で、帰った後で、友
達と質問をします。(2年生)
(2) えー、多くの、たくさんの友達が今、家で、家
に帰りました。(3年生)
(3) お腹がすきです、すいています。(3年生)
(4) お皿を洗いま、洗うことが、したことがありま
す。(2年生)
○ 誤用の産出過程が見える
(1) 新聞を相談します(→読みます)。冗談をし
ます(→言います)。食べるします(→食べま
す)。(1年生)
(2) 昨日の天気はどうですか。〈うーん〉忘れし
ました(→忘れました)。 (2年生)
(3) 先生は今年は夏休みはかえ、帰国しですか。
(→帰国しますか)(2年生)
○ 活用の誤り
(1) 生活の、生活の週末を服を買いて(→買っ
て)のこと(1年生)
(2) 私達は毎日勉強したり、遊び、遊びしたり、
遊びたり(→遊んだり)(1年生)
(3) しかし、私は、きき、テレビを見るときは聞き
こと(→聞くこと)が好きです。(1年生)
(4)それは、暗唱やす、易いと思います。(→暗
唱しやすい) (2年生)
○ 格助詞「が」の過剰使用1
大学に入って寮生活を始めました。それに、い
ろいろ友達が(→に)会いました。いろいろ仲よ
い友達ができました。それは、私はとてもうれし
いです。それに、それに、井上先生に会えて、と
ても幸いです。私は日本語が大好きです。高校
のとき、いろいろな科目が(→を)習います。大
学に(→で)主な科目が(→を)習いますので、
自分はとてもうれしいです。(1年生)
○ 格助詞「が」の過剰使用1
大学に入って寮生活を始めました。それに、い
ろいろ友達が(→に)会いました。いろいろ仲よ
い友達ができました。それは、私はとてもうれし
いです。それに、それに、井上先生に会えて、と
ても幸いです。私は日本語が大好きです。高校
のとき、いろいろな科目が(→を)習います。大
学に(→で)主な科目が(→を)習いますので、
自分はとてもうれしいです。(1年生)
○ 格助詞「が」の過剰使用1
大学に入って寮生活を始めました。それに、い
ろいろ友達が(→に)会いました。いろいろ仲よ
い友達ができました。それは、私はとてもうれし
いです。それに、それに、井上先生に会えて、と
ても幸いです。私は日本語が大好きです。高校
のとき、いろいろな科目が(→を)習います。大
学に(→で)主な科目が(→を)習いますので、
自分はとてもうれしいです。(1年生)
○ 格助詞「が」の過剰使用2
日本語が(→を)初め、初め、初めて勉強します、日本
語が難しいと思います。そうです。先生が、でも、先生
が親切です。生活、生活が新しいです。私は初めて一
人で寮に住んでいます。はい、でも、私のうちは近いま
す。私のふるさとは?です。でも懐かしいがありますね。
それから、私は、それから、私はがんばれ。大学生に
とって、たくさんものを勉強します。私、私は、今年は、
今年は日本語が(→を)勉強します。バスケットボール
が(→を)勉強します。コンピュータが(→を)二回、二
回、二回のテストが(→を)受けます。(1年生)
○ 格助詞「が」の過剰使用2
日本語が(→を)初め、初め、初めて勉強します、日本
語が難しいと思います。そうです。先生が、でも、先生
が親切です。生活、生活が新しいです。私は初めて一
人で寮に住んでいます。はい、でも、私のうちは近いま
す。私のふるさとは?です。でも懐かしいがありますね。
それから、私は、それから、私はがんばれ。大学生に
とって、たくさんものを勉強します。私、私は、今年は、
今年は日本語が(→を)勉強します。バスケットボール
が(→を)勉強します。コンピュータが(→を)二回、二
回、二回のテストが(→を)受けます。(1年生)
○ 格助詞「が」の過剰使用2
日本語が(→を)初め、初め、初めて勉強します、日本
語が難しいと思います。そうです。先生が、でも、先生
が親切です。生活、生活が新しいです。私は初めて一
人で寮に住んでいます。はい、でも、私のうちは近いま
す。私のふるさとは?です。でも懐かしいがありますね。
それから、私は、それから、私はがんばれ。大学生に
とって、たくさんものを勉強します。私、私は、今年は、
今年は日本語が(→を)勉強します。バスケットボール
が(→を)勉強します。コンピュータが(→を)二回、二
回、二回のテストが(→を)受けます。(1年生)
○ 「私は~が~だ」の過剰使用
(1) 私の大、大学生活楽しい、楽しくだ、楽しくだ
と思います。(1年生)
(2) 難しい、難しいじゃないと思います。(1年
生)
(3) でも、その会社はあまりよくないだと思いま
す。(4年生)
(4)毎日勉強します。〈うん〉 映画が見ます。(1
年生)
○ 格助詞の誤り(*を→に)
中国語からのマイナスの転移
(1) 黄山を(→に)登るつもりです。(“打算登黄
山”)(1年生)
(2) 船を(→に)乗ります。(“坐船”)(1年生)
(3) 私は日本の会社を、日本の会社を(→に)入
社した。(“进日本公司”)(1年生)
(4) 大学の外国語、外国語大学を(→に)行きた
いです。(“想上外国语大学”)(1年生)
○ 格助詞の誤り(*を→が)
中国語からのマイナスの転移
(1) 友達を(→が)できます(“交朋友”)(1年生)
(2) 雪を(→が)降ったとき、(“下雪”)(1年生)
(3) いろいろな問題を(→が)ありました。(“有很
多问题”)(2年生)
(4)本来私は歴史を(→が)、歴史が好きです。
(“喜欢历史”)(2年生)
○ アスペクトの誤り
(1)そして、ほかの人と一緒に住んでいる(→住
む)のは初めてです。(1年生)
(2) T:さっきの会話のテストはどうでしたか。
S:ちょっと緊張していました(→緊張しまし
た)。(1年生)
(3) T:どんなアルバイトをしたいですか。
S:今、今。決めません(→決めていません)。
(1年生)
ご清聴ありがとうございました
2009年8月29日(土)
於北京大学
汉日对比语言学研究(协作)会 第1届汉日对比语言学研讨会
公开座谈会「対照研究・誤用分析・習得研究三位一体の研究モデルとそ
の推進の第一歩」
「中国語を母語とする日本語学習者の話し言葉コーパスの構築と応用」
名古屋大学 杉村 泰