オペレーションズリサーチA 第13回(2011/01/14) • ロットサイズ決定問題 – – – – 問題紹介、定式化、最適解の特徴 凸集合,凸多面体,端点,凸関数,凹関数 凹関数の(有界)凸多面体上での最適化 動的計画解法 1 3次元3目並べ Three-dimensional Noughts and Crosses • 27個の箱が図のように3×3×3の立方体 の形に組まれている。三つの箱が,縦,横, あるいは斜めの1直線上にあるとき、「線 をなす」という。斜めの線は、縦横の断面 上のものと、立方体の反対の頂点を結ん だものがある。線は全部で49本ある。 • 13個の白い球(○)と14個の黒い球(●)が ある。これらの球を立方体を構成する 個々の箱に一つずつ入れる。このとき,同 じ色のボールのみからできている線の数 を最小にしたい。 2 3次元3目並べ 3 • 各マスに1から27まで番号をつける • 各マスj(j=1,…,27)に白なら0、黒なら1という 0-1変数xjを定義 • 49本の「線」にも番号をつける • i 番目の線に関わるマスの番号がi1,i2,i3とする • i 番目の線が同色xi1+xi2+xi3=0 or 3 →δi=1 ( 対 偶 ) δi = 0→ i 番 目 の 線 が 同 色 で な い δi=0→ xi1+xi2+xi3≧1 and xi1+xi2+xi3≦2 • 0-1変数xjの合計Σj=1,…,27 xj =14 • 目的関数はΣi=1,49δiの最小化 動的ロットサイズ決定問題 Wagner-Whitin(WW)モデル 期(月) 需要 dt 変動費 vt 1 40 10 2 35 12 3 50 12 4 20 11 5 30 11 6 35 10 • 計画期間T=6,各期の需要dt • t期に生産する場合の段取り費(製造固定費)は生産量 に関係なく at=100(万円),∀t • t期に生産する場合の製造単価(製造変動費)は製品あ たり vt(万円),∀t • t期末の在庫に対する、製品1個当たりの在庫保管費ht =2(万円),∀t • 生産は瞬時; 品切れは不許可 • 総費用を最小にする生産計画を決めたい 4 WWモデルの特徴 • 1品種のロットサイズ決定問題 • EOQ(経済発注量)モデル、EOQ公式の動的な拡張 – EOQモデルは、一定スピードの需要を想定した静的モデ ルであるのに対して、WWモデルでは時間とともに変動す る動的需要を扱う • 「期」(月、週など)という概念のある有限期間を想定 した離散時間モデル(EOQは無限期間を想定した連 続時間モデル) • WWモデルにおいて、需要量が時間とともに変化し ないものとし、1期の長さを十分短くしていくとEOQモ デルに一致する(EOQモデルの一般化・拡張) 5 6 経済発注量EOQ • • • • • • • • • • Economic order quantity 発注費K円/1回 在庫費h円/個・日 1回の発注量q 総費用K+h{q(q/θ)/2} 単位時間あたり v(q)=Kθ/q+hq/2 v(q)を最小⇒d v(q)/ dq=0 経済発注量q*=√(2Kθ/h) 発注間隔 t*= √(2K/θh) v(q*)= √(2Kθh) 単位時間(1 日)あたり需要 θ θ 発注量 q θ θ θ 発注間隔 q/θ •q*=63.25 •v(q*)=632.5 q Kθ/q 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 1000 666.6666667 500 400 333.3333333 285.7142857 250 222.2222222 200 181.8181818 166.6666667 153.8461538 142.8571429 133.3333333 hq/2 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 • K=200円 • h=10円/日・個 • θ=100個/日 総費用v(q) 1100 816.66667 700 650 633.33333 635.71429 650 672.22222 700 731.81818 766.66667 803.84615 842.85714 883.33333 1200 発注費用 在庫費用 総費用 1000 800 費用 数値例 7 600 400 200 0 0 50 100 発注量 150 200 8 WWモデルの定式化1 最小化 z=Σt=1,…,T(pt(xt)+htIt) 制約 It-1+xtーdt = It , ∀t (流量保存) It≧0(品切れ不許可), xt≧0, ∀t I0=0, IT=0 製造費pt(xt)は以下のように表される pt(xt)= at+vt xt xt>0のとき xt = 0 xt=0のとき t It-1 dt It WWモデルの定式化2 最小化 z=Σt=1,…,T( at yt+vtxt+htIt) 制約 It-1+xtーdt = It , ∀t (流量保存) xt>0 ⇒ yt=1 (yt:t期に製造を行うとき1, 製造を行わないとき0) (対偶をとりyt=0 ⇒ xt=0(or xt≦0)を表すよ うにするには) xt≦M yt ただしMは十分大きい正数 It≧0(品切れ不許可), xt≧0, ∀t I0=0, IT=0 9 線形計画問題の実行可能解の 集合は凸集合 10 • 凸集合(convex set):<幾何的> 2点x,y∈S⊆Rnを結 ぶ線分上のすべて点が集合Sに含まれる集合 • 凸結合(convex combination) 2点x , y∈Rnの凸結合とは、 z = λx + (1-λ)y,λ∈R1,0≦λ≦1 • 凸集合:<代数的> 集合S⊆Rnに対して、2点 x,y∈Sのすべての凸結合が集合Sに含まれる集合 • 例: 線形不等式の共通集合として表わされる解の 集合は凸集合を構成する 凸集合 11 定義 凸集合(convex set) 集合S⊆Rnは、2点x,y∈Sのすべての凸結 合が集合Sに含まれるとき凸集合という ABJO S1={x=(x1,x2): x2≦3,x1+x2≦4,x≧0} ODH S2= {x=(x1,x2): ーx1+x2≦0, 3x1ーx2≦8,x≧0} KFGO S3= {x=(x1,x2): x2≦1,x1≦5,x≧0} x∈ S1 ∩S2∩S3 x∈ S1 ∪S2∪S3 黒の領域 は凸集合 ではな い!! 有界凸多面体(Convex Polytope) 12 • Rnの超平面(hyperplane) は、すべてのajが0でない とし、 a1x1+a2x2+…+anxn=b を満たす点の集合である。 • 超平面により、二つの(閉)半空間が定義される a1x1+a2x2+…+anxn≧b a1x1+a2x2+…+anxn≦b • 半空間は凸集合; 凸集合の共通集合は凸集合 • 複数の半空間の共通集合が、空でなく、かつ有界で あるとき、凸多面体(convex polytope)、または、単に 多面体(polytope)と呼ぶ • 数理計画では、非負象限における凸多面体を考えることが多 い 13 凸関数 定義 凸関数(convex function) 凸集合S⊆Rnに対して、関数f :S→R1はS 上の2点x, y∈Sに対して f (λx+(1-λ)y)≦ λf (x)+(1-λ)f (y) λ∈R1,0≦λ≦1 f(x) のときS上の凸関数という 凸関数の和は 凸関数 x f (λx+(1-λ)y) ≦ λf (x)+(1-λ)f (y) 14 f (x) f (y) f (x) λf (x)+(1-λ)f (y) f (λx+(1-λ)y) 1-λ x λx+(1-λ)y λ y x 15 凹関数 定義 凹関数(concave function) 凸集合S⊆Rn上の関数f は、-f が S上の 凸関数であるとき、凹関数という f (x) 凹関数の和も 凹関数 f (λx+(1-λ)y) ≧ λf (x)+(1-λ)f (y) x 16 凸多面体と頂点(端点) • 有界な凸多面体に属するすべての点は、そ の頂点(端点)の凸結合として表現できる • 有界な凸多面体S∈Rnの頂点をx1, x2 , ... , xp ∈Rnとすると、凸多面体Sに属する任意の点 zは z = Σi =1,…,pλi x i, Σi =1,…,pλi =1, 0≦λi≦1, λi∈R1 と表わせる 凹関数の凸多面体上での最小化17 端点の中に最適解あり • WWモデルの目的関数 は凹関数 • 可能解の集合は有界な 凸多面体 定理4.1 凹関数を有界な 凸多面体上で最小化す るとき、凸多面体の端 点の中に最適解となる ものがある pt (xt) xt LPはどうか? 凹関数最小化:考え方 定理4.1 凹関数を有界な凸多面体上で最小化するとき、 凸多面体の端点の中に最適解となるものがある 証明は各自 (解答は最後のスライド、ppt29を参照のこと) 18 19 WWモデルの端点解の性質(1) 定理4.2 WWモデル の可能解集合の端 点解は、 It-1 xt =0 という性質を満足す る.すなわち、tー1 期末在庫It-1、また は、t期生産量 xtの 少なくともいずれか 一方が0. x x=(1/2)x+ + (1/2) x- よって、 xは端点解ではない 端点解の図示 20 • It-1 xt =0: 2通りの場合がある • 第t-1期末においてIt-1=0かつxt >0 • 第t-1期末においてIt-1>0かつxt =0 It-1 xt t It dt It-1=0かつxt >0 It-1 xt t It dt It-1=0かつxt >0 WWモデルの端点解の性質(2) Zero-Inventory Property 21 • 性質1 t期に生産する(xt>0)ということは、 t ー1期末在庫が0 (It-1=0)である. • 性質2 t期に生産する場合、t期の生産量 xtはt期に始まり、向こう何期分かの需要に 見合う量である. – t期の生産量xtはdt ,dt +dt+1, dt +dt+1+dt+2, ..., dt +dt+1+dt+2 +・・・ +dTのいずれか(ただ し、Tは計画期間の長さ) WWモデルの 22 動的計画法(DP)による解法 • t期の生産量xtはdt ,dt +dt+1, dt +dt+1+dt+2, ..., dt +dt+1+dt+2 +・・・ +dTのいずれか • ctk=t期からk-1期の需要に見合う量をt期の生産量 xt = dt +dt+1+dt+2 +・・・ +dk-1としたときのt期からk-1 期の総費用(ctkはあらかじめ計算可能) • ft= tー1期末在庫It-1が0のときに、 t期以降 (T期末まで)を最適に計画したときのt期以降 の最小費用 • ft=mink=t+1,…,T+1{ctk +fk } (DPの漸化式) ただし、fT+1 = 0 (境界条件) 動的計画法(DP)の漸化式 23 • ctk=t 期からk-1期の需要に見合う量を t 期の生 産量xt としたときの t 期から k-1 期の総費用 c tk at vt (d t d t 1 d k 1) ht (d t 1 d k 1) ht 1 (d t 2 d k 1) hk 2 (d k 1) k 1 k 2 j t i t at vt d t hi k 1 d j i 1 j •ft=mink=t+1,…,T+1{ctk +fk } (DPの漸化式) ただし、fT+1 = 0 (境界条件) t k T 動的計画法(DP)の漸化式 授業とは異なるバージョン 24 ft(It-1): t -1期末の在庫がIt-1のときの、t 期からT 期 末までの最小費用 ft(It-1 )= minx{100+2*(It-1 +x-dt)+ft+1( It-1 +x-dt), x>0; 2*(It-1 -dt)+ft+1( It-1 -dt), x=0} 25 最適解 26 1620 1 2 710 3 4 450 5 6 700 920 430 980 7 動的ロットサイズ決定問題 の拡張 27 • 1品種問題から多品種問題への拡張 • 多品種になった場合には、品種間の競合(ど の品種をどういう順番で生産するかの順序づ け)を考慮するか否か – 品種間のスケジューリングを考慮しないモデル 多品種ロットサイズ決定問題 – 品種間のスケジューリングを考慮するモデル ロットスケジューリング決定問題 (段取り時間を考慮しない/するモデル) 28 宿題13 13.1 スライド18の定理4.1(凹関数の凸多 面体上での最小化は、凸多面体の端点で 達成)を証明せよ。 13.2 スライド4のWagner-Whitinモデルを 動的計画法によって解け。ただし、製造費 として、製造固定費のみを考慮し、製造変 動費は考慮しないものとする。 凹関数最小化:考え方 定理4.1 凹関数を有界な凸多面体上で最小化するとき、 凸多面体の端点の中に最適解となるものがある あるn点x1,...,xn の凸結合で表される x*= ∑i=1nλi xi , ∑i=1nλi =1 を考える。このとき、f(x)が凹関数であるから、 f(x*)=f(∑i=1nλi xi )≧ ∑i=1nλi f(xi) となる。min f(xi)= f(xk) とすると、 f(x*)=f(∑i=1nλi xi )≧ ∑i=1nλi f(xi) ≧ ∑i=1nλi f(xk) = f(xk) となる。これより、 f(x*) ≧f(xk) 29
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