精神保健福祉法改正に関する 意見 増田一世 (公益社団法人やどかりの里) 須藤守夫さんー3回目の入院 13年間 • 病院の中庭には桜の木 がありました.春に桜が 咲いて,花が散ると枝に 葉がいっぱい茂って,冬 になると枯れ枝になって ……それを何回もくり返し て,俺は何年後の桜の 花の咲くころに退院でき るのかなと思うと,苦しく て泣きました.でも,俺よ りもっと長い人がいるん だから,もっと苦しかった と思います. 須藤守夫著 「退院してよかった」 やどかり出 版 2009 自宅で仲間とともに 3回目の入院が長くなった 理由は3つあります.その 理由は,俺が何回も何回も 入院しているから「もう守夫 の面倒は見られねえな.精 神病院に入ってもらうしか ねえ.」(中略) 病院も家族からお願いしま すと言われると無理には退 院させなかった.そうして病 院が日常生活,暮らしの場 になっていった…… 病院のワーカーの紹介でやどかりの里へ 13年間の入院生活で体も衰えていた. 退院後,グループホームで自由を満喫して 暮らす. 福祉の現場から見えてくる課題 • なぜ,社会的入院が解決しないのか → 地域の支援体制の脆弱さ 家族の支援に依存する態勢 → 待ち受けの支援体制の限界 (届ける支援の必要性) → 医療と福祉の連携を阻む法制度 病院と地域の風通しの悪さ 精神保健福祉法改正案への落胆 • 一歩前進(保護者制度廃止),二歩後退(家族の同意に よる入院制度,さまざまな問題) • 国で実施された検討会の議論の軽視 →障がい者制度改革推進会議第1次意見(平成22年6月) 精神障害者の強制入院を解消するための在り方の検討 →障がい者制度改革推進会議総合福祉部会骨格提言 保護者制度の問題点を解消するために,扶養義務者 等に代わる人権擁護制度の確立 →新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討 チーム(第3R)「保護者制度・入院制度の検討」作業チー ムー保護者の同意を要件としない入院制度 精神保健福祉法改正案の問題 • 障害のある人の権利擁護の視点の欠如 医療保護入院は強制入院 しかし,権利の擁護の仕組みがない • 日常(病状が悪化する前)の支援体制の脆弱 さーちょっとした変化のときに気軽に相談する ことができれば,病状悪化を防げる • 社会制度としての地域精神保健活動の不足 (精神疾患への理解不足,予防的視点の不足) 緊急的な課題 • 医療保護入院における権利擁護システム →第三者機関による監視及び個人救済の仕組みに ついて早急に検討を開始すること (公的な責任制の担保+意思決定を支援するための代弁 者ーオンブズパーソン,アドボケーターの創設) • 医療保護入院の医療費の公費負担制度 • 地域精神保健活動・地域基盤整備の実施 いつでも だれでも 相談でき,支援が受けられる 家族が支えるから社会が支えるへ
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