老人の薬物

老人の薬物
16班: 奥薗
重田
松田
突田
高野
指導:村上先生
Case history
• 79才女性
• 消化管の内視鏡検査予定
• 内視鏡検査時、精神安定のためジアゼパム
2mg投与
• 五分後症状改善せず
• さらに5mgジアゼパム投与
• 検査後呼吸困難とチアノーゼ様相表れる
• その後ICUへ
ベンゾジアゼピン系の作用機序
ベンゾジアゼピンレセプターにベンゾジアゼピンが
結合
αアミノ酪酸(=GABA)のGABAA受容体への結合
増加の亢進 (アロステリック効果)
Cl channel を介して Cl の細胞内流入増加
神経細胞に過分極が起き興奮がブロックされる
ベンゾジアゼピンの奏効機序
GABAA受容体は、大脳皮質,小脳,海馬,扁桃体,視床に多
く、これらは大脳皮質辺縁系を構成している。
そのため
GABAA受容体介した神経細胞活動の抑制
抗不安作用,催眠作用,骨格筋弛緩作用,鎮痛作用
副作用(経口や少量の場合)
•
•
•
•
•
•
•
軽度の疼痛
全身倦怠感
行動低下
運動失調精神能力低下
昏迷
言語失調
逆行性健忘
※長期間使用すると依存症になり,急に服用をや
めると禁断症状が出ることもある。
副作用(静注で多量のとき)
• 呼吸停止(case history)
• 心停止
• 低血圧
※副作用の強さ及び出現頻度は高齢者では
顕著である。
この症例のとき
内視鏡検査や麻酔前投与
の時高用量を用いる
上部気道の筋緊張の低下
肺胞換気量の軽度減少
呼吸性アシドーシス
※COPDなどを持つ患者で悪化する
代謝経路
経口,筋注,静注がある
静注
血中でベンゾジアゼピン及び活
性代謝物質はアルブミンと結合
(ジアゼパムは99%以上)
薬の代謝
• 肝臓(薬物代謝のセンター)
• 腎臓,肺(例外的)
吸収,分布を受けた後の薬は,未変化体
のまま体外に排泄される場合もあるが,肝
その他の臓器においてbiotransformationを
受けることが多い。
薬物のbiotransformation
Biotransformationは原則として不活性
化(効果の消失),薬物の親水性の増
加を伴うものである。
しかしprodrugは薬物を不活性な形で
吸収させ,生体内で代謝させたあと,
活性を持つようにした薬物である
肝臓での代謝
薬物は肝ミクロソーム分画中の薬物代謝酵素(と
くにcytocrome P450)によって変化を受ける。
薬の生体内変化には、①酸化,②還元,③加水
分解,④抱合 がある。
①~③は分解過程で第Ⅰ相反応
④は合成過程で第Ⅱ相反応 と呼ばれる
第Ⅰ相,第Ⅱ相代謝物は肝細胞から血液中、胆
汁中に排泄される.抱合された薬物は親水性が
増していて尿細管から吸収されにくくなる。
肝クリアランスClH
M = Q ( Ci - Co )
M :単位時間に肝によって除去される薬物量
Q :肝血流量
Ci :肝に流入する血液の薬物濃度
Co:肝から流出する血液の薬物濃度
このMをCiで割った値が肝クリアランス(ClH)
ClH=Q ( Ci - Co ) / Ci
薬の排泄
• 腎臓(排泄のセンター)
• 肝を介して胆汁中へ
• 肺を介して呼気中へ
腎臓への排泄
• 糸球体濾過
薬物は未変化のままか,その代謝産物の形で腎臓を経
由して尿中に排泄される.薬物とその代謝産物は、高分
子の薬物を除いて,糸球体濾過をうけ血液から原尿
(180 ㍑ / 日)にはいる。
• 尿細管分泌
糸球体での受動的濾過に加え,特定の陽イオンと陰イオ
ンはポンプや輸送体などの能動的分泌により尿細管液
の中に分泌される。(Ex.Penicillin)
• 尿細管再吸収
脂溶性で非解離型の薬物は尿細管から吸収されやすい。
薬物の腎クリアランス
一定時間に尿中に排泄される薬物の量を平均血漿中濃
度で割った値が薬物の腎クリアランスである。
C l p=UP/C p
C l p :薬物の腎クリアランス
U
:一定時間の尿量
P
:尿中薬物濃度
C p :血漿中の薬物濃度の平均
糸球体濾過量(GFR)との比はクリアランス比(clearance
ratio)と呼ばれている。この値が1以上なら一般的には糸
球体分泌のほかに,尿細管分泌が起こっていることを示
し、1以下なら尿細管再吸収が起こっていることを示す
高齢者の薬理学
1.
2.
3.
4.
5.
高齢者の薬物吸収
高齢者の薬物分散
高齢者の薬物代謝 肝機能
高齢者の薬物排泄 腎機能
薬物感受性の変化
1.高齢者の薬物吸収
①高齢者では胃の粘膜上皮の機能が低下し
て,胃の分泌が低下する。このため胃の
pHが上昇する。
胃のpH上昇によって,薬物のイオン化の割
合が変化する.これによってイオン化した
形で吸収される薬物の吸収が若干低下す
る。また薬物の溶解度が低下する。
②心機能の低下に伴い全身の血液循環量
が減少するため胃を含めた腸管の血流量
も低下する。
血流量の低下によって単位時間辺りの吸
収量が低下する。
2.高齢者の薬物分散
①Vdの変化
I. 体脂肪の増加
II. Lean body massの減少
III. 全身の水分の減少
以上の生体の構成成分の変化によってVdが変化する。具
体的には脂溶性薬物のVdが上昇し、水溶性のVdが低下
する。
脂溶性薬物の作用効果が上昇するすることが高い頻度で
見られる。
こうしたdistributionの変化を考慮せずに薬物を投与するこ
とは、過剰投与や副作用の危険を招く。
②血漿タンパク質の変化
高齢者では血漿タンパク質の総量が変化するこ
とはないが、血清アルブミンの割合が15~20%
減少する。
血清アルブミンは薬物と血漿蛋白質の結合にお
いて最も重要な蛋白といえるので、アルブミンの
減少は薬物と血漿タンパク質の結合率が低下す
ることを示唆している。
このため血中に遊離している薬物の割合が上昇
しそのために薬物の薬物動態学的な活性が上
昇することになる。
③AAG(α1 Acid Glycoprotein)の変化
AAGは脂溶性の薬物に結合してその吸収を効率
化する。
例 プロプラノロール,リドカイン,三
環系抗鬱薬,ジアゼパム など
の分子中に親油基を持つ薬物
このAAGは加齢に伴い増加することが知られて
いる。AAGの増加によってVdが上昇し,さらにこ
れらの薬物の薬物動態学的な活性は上昇する。
高齢者の薬物の分布に関しては親油基がある
かそうでないかによって 差がある。親油性薬物
は体脂肪の増加とAAGの増加によってその分布
=Vdが高まり、非親和性物質はほとんど変化し
ないか血清アルブミンの漸減によってVdも漸増
することになる.しかし、薬物の多くは分子中に
親水基と親油基を効果的に併せ持ち、アルブミ
ンの減少とAAGの増加には個人差があるので
総合的な薬物分布=Vdの変化を一般化すること
はきわめて困難である。
3.高齢者の代謝 肝機能
• 肝体積
• 肝重量
• 肝血流量
加齢とともに
減少
肝臓の加齢変化
多くの薬物のクリアランスに影響
加齢変化の肝臓に対する影響
第Ⅰ相代謝反応に顕著
第Ⅱ相代謝反応には影響少ない
結果
本来生体内利用率が低い薬物
加齢とともに
経口投与後の血中薬物濃度ー時間下面積
(AUC)が若年者より増加
4.高齢者の排泄 腎機能
• 糸球体濾過率
• 尿細管分泌能
• 尿細管再吸収
加齢とともに
減少
結果として腎排泄能は加齢とともに減少する
• 糸球体濾過率
• 尿細管分泌能
• 尿細管再吸収能
これらのうちで,糸球体濾過率を加齢によ
る変化の指標として用いる。
高齢者の腎機能評価の注意点
糸球体濾過率が必ずしも腎機能の
信頼できる指標とはなっていない。
高齢者における糸球体濾過率
(クレアチニンクリアランス)
Clcr(男性)={140 - (年齢)}×IBW(kg)
Clcr(女性)= 72×sCr(ms/dl)
Clcr(男性)×0.85
Clcr :クレアチニンクリアランス値(ml/分)
IBW :理想体重(kg)
sCr :血清クレアチニン値(mg/dl)
5.薬物感受性の変化
β遮断薬または、β刺激薬に対する反応
低下
常用量の中枢神経抑制薬に対し
しばしば過剰な鎮静効果
この症例の問題点
• 肝機能の低下には個人差はあるが、一般
に年をとると低下すること考えずに投与し
てしまった。
• さらにジアゼパムなどのように効果が年齢
に依存する薬を高齢者に若い人と同じ量
を投与してしまった。
どうすればよかったか?
• 若い人と同じ量ではいけない
• 初めの反応に振り回されず、様子を見な
がら徐々に投与するべきである。
問1.ジアゼパムの副作用で
まちがっているものは?
1. 軽度の疼痛
2. 全身倦怠感
3. 行動促進
4. 運動失調精神能力低下
問2.老化に伴う薬物の肝代謝
で正しいのは
1.
2.
3.
4.
5.
第Ⅰ相が低下する
第Ⅰ相が上昇する
第Ⅱ相が低下する
第Ⅱ相が上昇する
第Ⅲ相が低下する