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日本トランジット観測ネットワークによる
Transit Timing Variationの探索
国立天文台 光赤外研究部
太陽系外惑星探査プロジェクト室
成田 憲保
2009 ASJ Spring Meeting
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共同研究者
• 赤澤秀彦(川辺小)
• 綾仁一哉、村上紀子(美星天文台)
• 井田茂、河合誠之(東工大)
• 伊藤純平、松本直記(慶應高)
• 浦川聖太郎(日本スペースガード協会)
• 大島修(水島工高)
• 富田晃彦、藤田和也(和歌山大)
• 宮下敦(成蹊高)
• 吉田道利、渡部潤一(国立天文台)
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Transit Timing Variation (TTV) とは
摂動を起こす惑星
トランジット惑星の軌道
観測者
観測者
トランジット周期は一定
周期が一定にならない!
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TTVを起こすその他の要因
Miralda-Escude (2002) による考察
• 一般相対論(GR)の効果※
• 恒星の4重極モーメント(恒星の非球対称性)
• 惑星軌道の潮汐進化
などがあるが非常に小さく観測にはかからない
※ Pal & Kocsis (2008) と Jordan & Bakos (2008) によりGRによる
Transit Duration Variation (TDV) の検出は可能と見積られている
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別の惑星によるTTVの見積り
Agol et al. (2005) / Holman & Murray (2005)
• 近似解 (添え字:トランジット惑星が1, 摂動惑星が2)
– トランジット惑星の公転周期が長い時
– 摂動惑星の質量・離心率が大きい時
– 主星が軽い時にTTVは大きくなる
• 特に摂動惑星が1:2の共鳴軌道にある時に最大になり
M1=1木星質量、M2=1地球質量
P=3日とすると~3分
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TTVの観測可能性
• 現在の観測精度 (トランジット中心時刻)
– 宇宙望遠鏡 ~数秒、地上中口径望遠鏡 ~数十秒
– 地上小口径望遠鏡 ~数分
• 共鳴軌道に惑星があれば、地上望遠鏡で検出が可能
– 地球質量にまで感度がある
– トランジット惑星系でのみ可能な惑星探しの方法
• 現在までにトランジット惑星系は58個発見されている
– けれど複数惑星系はひとつも発見されていない
– ターゲット数は十分あり、TTVによる惑星発見も期待できる
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TTVの先行研究(1)
O-C [min]
an Earth-mass planet in 4:1 resonant orbit?
1
0
-1
-2
case of
no TTV
266
366
Transit Epoch
446
Transit timing of OGLE-TR-111b (Diaz et al. 2008)
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TTVの先行研究(2)
1分程度のTTV?
(8個中4つのトランジット中心時刻が2σ以上ずれている)
Transit timing of TrES-3b (Sozzetti et al. 2009)
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日本トランジット観測ネットワーク
• アマチュアと天文学研究者が連携した観測グループ
– 複数の数十cm~1mクラスの中小口径望遠鏡
– 多地点でのフレキシブルな観測が可能
– 長期的に継続した観測が可能
• これらの特徴はTTV探索にとって非常に有利
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TTV観測キャンペーン
• 2008年7月からTTV観測キャンペーンを開始
– TrES-3, TrES-4, WASP-2, HD17156を選択
– TrES-3とHD17156の高精度観測が実施できた
– それぞれの観測の詳細は以降の講演のポスターへ
• 特に惑星の存在が示唆される系
– 視線速度に残差がある系
– 離心率を持つ系
– 既にTTVの存在が示唆されている系
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観測結果:TrES-3
• 複数のフルトランジットを観測
– 1分以下のトランジット中心時刻決定精度を達成
– 2σ以内で Sozzetti et al. (2009) によるトランジット予報
時刻と一致している
– 今後の継続的な観測がTTVの検出/制限のために重要
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観測結果:HD17156
• 公転周期が21.2日と長いため観測する機会が少なく、今
年度観測できたフルトランジットは2回のみ
• 4分ほどのトランジット中心時刻決定精度で複数の光度
曲線を取得した
– 2σ以内で Winn et al. (2008) の予報と一致している
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今年度の観測結果のまとめ
• 現時点では明確なTTVは見えていない
• ネットワーク全体として観測レベルが向上できた
• TTV探索に必要な観測精度は達成できている
– 天候が良ければ~1%以下レベルの測光精度
– 数分以内程度のトランジット中心時刻決定精度
– 大きな質量の惑星や共鳴軌道に地球型惑星があればTTV
を発見できる可能性は十分にある
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TTVをめぐる世界の動向
• アマチュア観測チーム
– ヨーロッパ:Barbieri
– アメリカ:Laughlin, Gary, Welsh など
• プロの観測プロジェクトの一部として
– MOST:Miller-Ricci et al.
– TLC project:Holman & Winn
• 超高精度トランジットサーベイの副産物として
– Kepler, CoRoT
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来年度の戦略
プロには難しいサイエンスをアマチュアの手で!
• 長期継続的な観測
– TrES-3, WASP-2, HD17156など
– トランジット周期が一定でない系を探索する
• 機動力を活かしたフォローアップ観測
– 面白いターゲットが発見された場合
– 予報がまだ不完全なHD80606bのトランジット観測など
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ネットワークへの参加について
• メーリングリストが稼働中
• ホームページを作成中
– 観測・解析方法の詳細
– ターゲットとトランジット予報
– 解析用ツールなどを公開予定
• 興味をお持ちの方はぜひご参加ください!
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