日本トランジット観測ネットワークによる Transit Timing Variationの探索 国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田 憲保 2009 ASJ Spring Meeting 1/16 共同研究者 • 赤澤秀彦(川辺小) • 綾仁一哉、村上紀子(美星天文台) • 井田茂、河合誠之(東工大) • 伊藤純平、松本直記(慶應高) • 浦川聖太郎(日本スペースガード協会) • 大島修(水島工高) • 富田晃彦、藤田和也(和歌山大) • 宮下敦(成蹊高) • 吉田道利、渡部潤一(国立天文台) 2009 ASJ Spring Meeting 2/16 Transit Timing Variation (TTV) とは 摂動を起こす惑星 トランジット惑星の軌道 観測者 観測者 トランジット周期は一定 周期が一定にならない! 2009 ASJ Spring Meeting 3/16 TTVを起こすその他の要因 Miralda-Escude (2002) による考察 • 一般相対論(GR)の効果※ • 恒星の4重極モーメント(恒星の非球対称性) • 惑星軌道の潮汐進化 などがあるが非常に小さく観測にはかからない ※ Pal & Kocsis (2008) と Jordan & Bakos (2008) によりGRによる Transit Duration Variation (TDV) の検出は可能と見積られている 2009 ASJ Spring Meeting 4/16 別の惑星によるTTVの見積り Agol et al. (2005) / Holman & Murray (2005) • 近似解 (添え字:トランジット惑星が1, 摂動惑星が2) – トランジット惑星の公転周期が長い時 – 摂動惑星の質量・離心率が大きい時 – 主星が軽い時にTTVは大きくなる • 特に摂動惑星が1:2の共鳴軌道にある時に最大になり M1=1木星質量、M2=1地球質量 P=3日とすると~3分 2009 ASJ Spring Meeting 5/16 TTVの観測可能性 • 現在の観測精度 (トランジット中心時刻) – 宇宙望遠鏡 ~数秒、地上中口径望遠鏡 ~数十秒 – 地上小口径望遠鏡 ~数分 • 共鳴軌道に惑星があれば、地上望遠鏡で検出が可能 – 地球質量にまで感度がある – トランジット惑星系でのみ可能な惑星探しの方法 • 現在までにトランジット惑星系は58個発見されている – けれど複数惑星系はひとつも発見されていない – ターゲット数は十分あり、TTVによる惑星発見も期待できる 2009 ASJ Spring Meeting 6/16 TTVの先行研究(1) O-C [min] an Earth-mass planet in 4:1 resonant orbit? 1 0 -1 -2 case of no TTV 266 366 Transit Epoch 446 Transit timing of OGLE-TR-111b (Diaz et al. 2008) 2009 ASJ Spring Meeting 7/16 TTVの先行研究(2) 1分程度のTTV? (8個中4つのトランジット中心時刻が2σ以上ずれている) Transit timing of TrES-3b (Sozzetti et al. 2009) 2009 ASJ Spring Meeting 8/16 日本トランジット観測ネットワーク • アマチュアと天文学研究者が連携した観測グループ – 複数の数十cm~1mクラスの中小口径望遠鏡 – 多地点でのフレキシブルな観測が可能 – 長期的に継続した観測が可能 • これらの特徴はTTV探索にとって非常に有利 2009 ASJ Spring Meeting 9/16 TTV観測キャンペーン • 2008年7月からTTV観測キャンペーンを開始 – TrES-3, TrES-4, WASP-2, HD17156を選択 – TrES-3とHD17156の高精度観測が実施できた – それぞれの観測の詳細は以降の講演のポスターへ • 特に惑星の存在が示唆される系 – 視線速度に残差がある系 – 離心率を持つ系 – 既にTTVの存在が示唆されている系 2009 ASJ Spring Meeting 10/16 観測結果:TrES-3 • 複数のフルトランジットを観測 – 1分以下のトランジット中心時刻決定精度を達成 – 2σ以内で Sozzetti et al. (2009) によるトランジット予報 時刻と一致している – 今後の継続的な観測がTTVの検出/制限のために重要 2009 ASJ Spring Meeting 11/16 観測結果:HD17156 • 公転周期が21.2日と長いため観測する機会が少なく、今 年度観測できたフルトランジットは2回のみ • 4分ほどのトランジット中心時刻決定精度で複数の光度 曲線を取得した – 2σ以内で Winn et al. (2008) の予報と一致している 2009 ASJ Spring Meeting 12/16 今年度の観測結果のまとめ • 現時点では明確なTTVは見えていない • ネットワーク全体として観測レベルが向上できた • TTV探索に必要な観測精度は達成できている – 天候が良ければ~1%以下レベルの測光精度 – 数分以内程度のトランジット中心時刻決定精度 – 大きな質量の惑星や共鳴軌道に地球型惑星があればTTV を発見できる可能性は十分にある 2009 ASJ Spring Meeting 13/16 TTVをめぐる世界の動向 • アマチュア観測チーム – ヨーロッパ:Barbieri – アメリカ:Laughlin, Gary, Welsh など • プロの観測プロジェクトの一部として – MOST:Miller-Ricci et al. – TLC project:Holman & Winn • 超高精度トランジットサーベイの副産物として – Kepler, CoRoT 2009 ASJ Spring Meeting 14/16 来年度の戦略 プロには難しいサイエンスをアマチュアの手で! • 長期継続的な観測 – TrES-3, WASP-2, HD17156など – トランジット周期が一定でない系を探索する • 機動力を活かしたフォローアップ観測 – 面白いターゲットが発見された場合 – 予報がまだ不完全なHD80606bのトランジット観測など 2009 ASJ Spring Meeting 15/16 ネットワークへの参加について • メーリングリストが稼働中 • ホームページを作成中 – 観測・解析方法の詳細 – ターゲットとトランジット予報 – 解析用ツールなどを公開予定 • 興味をお持ちの方はぜひご参加ください! 2009 ASJ Spring Meeting 16/16
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