スライド 1

ベクトルの[発散・収束]と、
ガウスの定理と連続の方程式を
足下自噴のホンモノの温泉を
比喩的に用いて
直感的に理解する方法
三重大学・大学院生物資源学研究科
共生環境学専攻
地球環境気候学研究室
教授 立花義裕
ガウスの定理の直感的理解
•下記のような、たくさんの浴槽で構成される温泉があったとしよう。そのとき、
この温泉から洗い場へあふれ出て行くお湯の全ての量をQとする。
•Qは、一番外側の縁を通過して外に出て行くお湯の流量をグルッと縁を一周分、足
し算すれば簡単に求まるであろう。これを「一周積分」と名付けておこう。
•一方Qは、各浴槽の下から湧き出す温泉のお湯の量を、全ての浴槽で足し算しても、
求まるであろう。これを、「湧きだし量の合計」と名付けておこう。
•つまり、その温泉からどれだけのお湯が沸き出しているか?を計算する
には、 「一周積分」をしても見積もれるし、 「湧きだし量の合計」からも見積もれる。
「一周積分」 =「湧きだし量の合計」のことを数式で表現したものを
ガウスの定理という。
中の湯の合計=3
0
2
0
-1
-2
0
1
   vdV
V
0
4
=
0
-1
0
1
外に出る湯の合計=3
0
1
0
1
0
-2
 vdS
s
流体力学で必須の概念である
ベクトルの[発散・収束]
(湧きだし流と、吸い込み流)
•
(gradφ)とよく勘違いしがちな   v( div )について
v
足下自噴の温泉理論で直感的に理解しよう。
•  (スカラー) ⇒ ベクトル量が生成される
読み方:グラジエント○○(勾配ベクトル:例: P )
•  (ベクトル) ⇒ スカラー量が生成される
読み方:ダイバージェンス○○(ベクトルの発散)
• これは、速度を例に考えるとわかりやすい。

v  ui  vj  wk  u, v, w
  v   x i  y j  z k   ui  vj  wk   ux  yv  wz


小湯船のお湯の出入りを考える
(湯船の体積: V  xyz )
(  v) V
は、何を意味する?  (
u
u v w
  )xyz とりあえず
x
x y z
u
 u 
xyz   x yz (1)
x
 x 
ここでテーラー展開
u
u  x  x   u  x   x 
x
高次の項を無視して移項、
u x  x   u x  
これを式(1)に代入 (
u
x
x
S  yz
「なんで、これが発散なの?」
)、
 u 
 x yz  ux  x   ux S  u x  x S  ux S
 x 
の部分だけを取り出して考える。
 u 
 x yz  ux  x   ux S  u x  x S  ux S
 x 
 出る流量:②   入る流量:①

①>② →中の水は増⇒ 水が集まる:収束
①<② →中の水は減 ⇒ 水が出て行く:発散
v
y
w
z
も同様で、湯船全体の湯の増減は
x,y,z の入口・出口を全て足せばよいので、
(  v) V は結局、体積V の湯船へ「吸い込まれた」あるいは「湧きだした」湯の総量を意味する
V  1 の場合、(つまり
  v )は、単位体積当りの「吸」「湧」を表す。
  v の符号が正:発散。符号が負:収束
一つの浴槽から、どれだけのお湯が湧き出て
いるか。を表す量
実は
v
はどんなベクトル
  A  div(A)
A
は、ベクトル場
でも良い。
A の発散を表す
ガウスの定理
 A  ndS   A  dS     AdV (面積分 ⇔ 体積積分の変換の公式)
S
S
A を温泉のお湯の流速 v
V
である。と思うとこれもイメージしやすい。
 v  ndS   v  dS     vdV
V
S
S
右辺の積分の中の式は前項で十分に考察したので
発散を表すことはわかる。それを大きな体積Vで積分すると
いうことは、閉曲面内の全ての小さな浴槽(区画)での発散量を
足し算することを意味する。
⇒ 発散量の閉曲面Vの中の合計を求める
⇒ 「隣の浴槽から流れて来たお湯が素通りするもの」と
「自らその浴槽で源泉が湧いて発散するもの」の和
⇒ 結局Vの表面を通して湯船の外に出ていく源泉の量と等しくなる
ガウスの定理
湯船の土手からあふれる湯の量(表面全ての面積積分)
=温泉から湧き出す源泉の総量(内部全ての体積積分)
中を知りたくば、中を調べずとも、表面だけを調べれば、中が透けてしまう!
ガウスの定理
v

n
dS

v

d
S

V   vdV
S
S
面積積分の部分が、 v  d S
のように壁と流速との内積となっているのは、
v
と
vT
vT
S
面が必ずしも同じ方向とは限らないので、流速を、 v
壁面と平行方向、
vR
壁面と垂直方向
 vT  v R
と書けば、
は壁面と平行に水が流れる成分なのでこの成分はお湯の「湧」「吸」には作用しない。
v  dS  vT  v R dS  v R dS
v  dS  v R dS dS 方向の v の成分を知るために内積となっている。
n は、S面に直交する単位ベクトル(大きさ1)であるので、
v n
は、vのS面との直交成分と考えることも出来る。
レポート課題
• 講義ではホンモノの温泉とまがい物の温泉を見分
ける術を例にとって、ガウスの定理を説明した。自
然現象、社会現象など何でも良いので、ガウスの定
理が適用できそうな例を挙げよ。そして、それがどう
してガウスの定理が適用可能なのかを解説せよ。
(温泉論や流体力学や、電磁気学の例はダメです)。
• 論理に多少の無理があってもかまいません。誰も思
いもつかないような画期的な例を挙げたレポートに
はよい点をさし上げます。
• 締め切り:次回の講義が始まるときに集める(最初
の挨拶時が提出締め切り時刻)
連続の方程式
一般の連続の方程式


t
   v  0
密度ρがラグランジェ的に一定の流体(非圧縮性流体)の場合の
連続の方程式 、
 v  0
連続の方程式の導出

  vdS   dV
S
t V
(質量保存の法則)
右辺は、適当に囲ってみた体積Vについて、その中の流体全体の質量の変化率を表している。
左辺は、同じ囲った領域の表面から出て行く密度のフラックスを表している。
それらがお互い等しい。とこの式は謳っている。
フラックスというのは一般に、単位面積を単位時間に通過する物理量のことである。
物理量はなんでもよいが、それをq と書くと、 q v がフラックスの定義である。
v は、ベクトルなのでフラックスも3成分もったベクトルである。おなじみの運動量の式、
mv は、質量フラックスということも出来る。
v と直交した面を考えた場合、その面を通過する質量を考えよう。そうすると、
mv とは、単位面積あたり、単位時間あたりに通過する質量であることは、
簡単に想像できよう。
連続の方程式の導出

  vdS   dV
S
t V
(質量保存の法則)
v は密度ρのフラックスを表している。
密度は単位体積の質量であるので、質量フラックスとほぼ同じイメージ
v  dS
dS
v
v
→内積は射影である →質量フラックスの dS 方向の成分を表している
は、体積Vの表面の閉じた曲面から垂直方向外向きに向いているベクトル
は、質量がその面から単位時間にどれだけ出て行くか?をあらわす
のこの面に平行な成分は、質量の出入りには関わらない
この式の左辺は、表面を出て行く密度フラックスを曲面全て、「足した物」を表す。
→単位時間にこの表面から外に抜けてゆく出て行く質量
→出ていった量と同じだけ内部の流体の平均質量は変化するはずである。 ←右辺そのもの
従って、右辺と左辺が同じになることは、あたりまえである。

  vdS   dV
S
t V
上式にガウスの定理を適用しよう。
 A  ndS   A  dS  V   AdV
S
←ガウスの定理
S

    vdV  V (  )dV
V
t


   v   
t
⇒
t

  v  0 ←連続の方程式
密度フラックスの収束は、密度の時間変化と等しい
( v)   (  v)  v  ( )
D 

 v  
Dt
t
密度ρがラグランジェ的に一定の流体の場合の連続の方程式 (これを非圧縮性流体と呼ぶ)、
 v  0
これは、発散がゼロ、を表す。膨張収縮が無いのだから、発散がゼロは当然。