我らの歪んだ英雄

我らの歪んだ英雄
井元
小塩
岩瀬
田上
育
美穂
佳子
加奈子
あらすじ
• 予備校教師のビョンテは小学校の恩師チェ先
生の訃報を聞き、30年前のことに思いを馳せる。
• 五年生のビョンテは、ソウルから地方の小学校
に転校してきた。編入したクラスには級長のソク
テが君臨していた。
• 同級生たちは食べ物を差し出し、試験の答案も
代筆していた。ビョンテはあらゆる手段を講じて
ソクテへの服従に抵抗するが無駄に終わり、次
第に彼の腹心の部下になることに心地よさを感
じ始める。
• 六年生になると若い担任のキム先生が赴
任してくる。彼は子どもたちに正直・真実・
勇気ついての信念を植えつけようとする。
そんな中、キム先生はソクテの独裁ぶりに
疑問を抱くようになる。
• キム先生はソクテの代筆を見抜き、ソクテ
の独裁は終わった。
登場人物
한병태・・ソウルから父について田舎に転校し
た少年。自由と合理を信奉する。ソクテの独
裁に対立するが結局敗れる。そしてソクテの
傘のなかで地位を受ける。
엄석대・・不正な独裁で君臨する級長。徹底的
な独裁を敢行する。知的な能力と蛮性を同時
に取り揃えた能力者とされる。しかしその力
は不正に生成されたものである。
• 5 年生担任 ・・クラスが順調に運営されるだ
けでその手続きなどは何ら関係がないと思
う人物。
• 6 年生担任・・教室の不正腐敗を一蹴して
級長の権力を崩した新しい独裁者。
• 父親・・現実の価値を肯定する人物
• 子供達 ・・一番否定的に描かれた人物達。
ソクテが王国の帝王で君臨する時はおせじ
と屈従を躊躇しなかったり, ソクテが沒落す
ると悪口を浴びせる。
作品解説
• この作品は権力の形成と沒落過程を小学
校の教室という集約された空間を通じて絶
対権力が持つしかない虚構性、そしてその
虚構性の形成背景は周辺の傍助と黙認に
あるという事実を提示する。
映画と小説の差異
• 小説が映画より心理描写がもう少し纎細で事件や
状況も多様。
• 小説では刑事たちに追い回されて捕まり手錠をか
けられたまま連れられて行くソクテを見つけてから
はまるで恐ろしいものを見た人のように目をきゅ
うっと閉じるビョンテ。それは自分が思ったソクテと
はあまりにも差があり、どこかでまた権力を握って
いると思っていたからである。
• 1919(大正8)年 上海で結成された大韓民国臨時政府国
務総理、次いで大統領に推されるが派閥抗争で失脚
ハワイで朝鮮独立運動を継続
1945(昭和20)年 帰国
1948(昭和23)年 大韓民国成立 初代大統領に就任
以後、アメリカの支援を背景に右派の巨頭として大統領に
4選される
1952(昭和27)年 海洋主権宣言
李承晩ラインを設定
1960(昭和35)年3月 大統領に4選
1960(昭和35)年 四月革命
不正選挙を糾弾されハワイに亡命
1965(昭和40)年7月19日 ハワイで客死
李承晩政権
• 李承晩(イ・スンマン、1875年3月26日ー19
65年7月19日)は、大韓民国大統領(在任1
948年ー1960年)。朝鮮の独立運動に携わ
り、上海で結成された大韓民国臨時政府の初
代大統領に就任し、その後大統領になった。
• 1948年8月13日、アメリカ合衆国の後押しで
大韓民国建国。自らは初代大統領に就任した。
彼の政策の柱は反共政策にあり、「北進統一」
の名の下、資本主義国家による朝鮮半島の武
力統一を夢見た。
• 李承晩は度重なる憲法改正、選挙介
入を行い、事実上の終身大統領とし
て政権を維持しようとした。政権党で
ある自由党の不正腐敗、企業との癒
着、アメリカの援助に依存した経済体
質も問題となった。その結果、1960
年4月、大統領選挙の不正に憤慨し
た学生・市民を中心に糾弾運動が起
こり、ハワイに亡命することとなった。
(四月革命)
四月革命
•
1960年4月、韓国で李承晩独裁政権
を打倒に追いこんだ民衆蜂起のこと。12
年間にわたる独裁政治は終焉を迎えた。
• 李承晩政権の打倒は実現したが、革命の主
力は学生だったため、民主化勢力は発展拡
大
せず、5月16日、朴正熙による
軍事クーデタで、民主化の動きは逆戻りし
た。
監督:박종원 (朴鐘元)・・国際的には無名
の朴監督だったが権力と自由の葛藤を鋭く
えぐった本作は世界35ヶ国の映画祭に招
待される快挙を遂げた。
主な作品:
1992年
1992年
1995年
1996年
1999年
2000年
九老アリラン
我らの歪んだ英雄
永遠なる帝国
ビールが恋人よりいい7つの理由
虹鱒
パラダイス・ウィラ
映画賞
92年 青龍映画賞 監督賞、特別賞
93年 大鐘賞 照明賞、編集賞
93年 百想映画祭 監督賞、特別賞
93年 春史映芸賞 優秀演技賞
モントリオール国際映画祭
最優秀製作者賞
ハワイ国際映画祭 グランプリ
シンガポール国際映画祭 批評家賞
フリプール国際映画祭 国際批評家賞
ラン国際映画祭 審査委員賞
이문열(原作者)
• 大韓民国で一番多い固定読者を持っている
代表的小説家。
• 李文烈文学で注目する点は、 私たちが歴史
や宗教、あるいは学問であまり描かれること
がないイデオロギーや信念や理論体系に対
する不器用な信頼を絶えず警戒するという点
である。
感想
• 大人になっても、権力争いから逃げているビョン
テやソクテを忘れることができないほかのクラス
メートにキム先生から突然与えられた民主主義
にとまどいついていけない葛藤が読み取れた。
一度人々の心に君臨した“王”は彼らの中から消
えることはなく、暗い影をおとし続けるのだと思っ
た。
• 学校・田舎という狭い環境も、あのような構造が
根強く出来上がった要因ではないかと思う。
・田舎が李政権を、都会が近代化を進める朴政権
を、環境的にも思想的にも、象徴されているよう
に思った。また、その様な環境に慣れ、腹心の部
下という地位に心地よさを感じるようになっていっ
たビョンテから、人間の欲望や弱さなども、指摘
されているように感じた。
・ソクテの存在でクラス全体の秩序が維持されてき
たことは事実だ。もちろん、それには自由や合理
という大きな代償を支払わなければならなかった。
しかし、なによりその状態に慣らされ、無批判に
なり問題意識を持たなくなり、そしてそんな状態
に簡単に陥ってしまう可能性が高いのも人間で
ある故なのかもしれない。
• 今現在、自分が民主主義に基づいて生活
していると思っている人がどのくらいいるだ
ろうか。少なからずの制約はあるにしても、
誰かの意思によって言動が制限される生
活を今ならありえないと思える。そのように
思える社会こそが民主主義であることもこ
の映画を見て改めて考えさせられた。
• クラスの革命が起こった時に、ビョンテが
「何も知らない」と答えた場面が印象に残っ
た。これはビョンテがソクテの権力、統率力
を認めている部分があったせいだと思う。
ソクテの権力にクラスで唯一対抗し闘った故
にソクテの力を思い知らされていたのだと思
う。また、あまりにもあっけなく反旗を翻した
クラスメート達にも疑問を感じていたからで
はないか。