スライド 1

たつ
りゅう
辰(竜)にまつわる民話
お姫様とドラゴン(スペイン)
むかしむかし、ある国に、とても立派な一
人の王さまがいました。
その王さまには、三人のお姫さまがいます。
上の二人のお姫さまは、おしゃれ好きでわ
がままでしたが、一番下のお姫さまはお父さ
ん思いのやさしい娘です。
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お姫様とドラゴン(スペイン)
ある日の事、王さまは遠い国へ旅をする事
になりました。王さまは、お姫さまたちに尋
ねました。
「おみやげには、何を買ってきて欲しいんだ
ね?」
一番上のお姫さまは、
「あたしには、金の着物を買ってきてちょうだ
い」
二番目のお姫さまは、
「あたしには、銀のがいとうを買ってきてね」
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お姫様とドラゴン(スペイン)
そして、一番下のお姫さまは、
「あたしには、バラのお花を買ってきてくださ
いな」
そこで王さまは遠くの国で用事をすませる
と、お姫さまたちへのおみやげを買う事にし
ました。金の着物と銀のがいとうは、すぐに
買う事が出来ました。ところがバラの花だけ
は、売っている店がどこにもないのです。
「困ったな。バラの花がないと、あのやさしい
姫がガッカリするだろうなあ」
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お姫様とドラゴン(スペイン)
でも、ないものは仕方がありません。王さ
まはあきらめて、帰る事にしました。
帰る途中、森の中を通っていると広い広い
庭がありました。
その庭にはバラのしげみがあって、美しい
バラの花がたくさん咲いていたのです。
「ああ、よかった。姫へのおみやげが見つ
かったぞ」
王さまは大喜びで、バラの花を取るために
馬からおりました。そして王さまが
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お姫様とドラゴン(スペイン)
一番美しいバラの花を見つけて取ったとた
ん、目の前に恐ろしいドラゴンが現れたので
す。
「おい! 誰に許してもらって、そのバラの花
を折ったのだ!」
ドラゴンは、おそろしい顔で王さまをにらみ
つけます。
「わっ、わたしは、旅から帰るところですが、
三人の娘におみやげを買ってやると約束を
してきました。上の二人の娘にやる金の着
物と銀のがいとうは町で買う
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お姫様とドラゴン(スペイン)
事が出来ましたが、一番下の娘に約束した
バラの花だけは、手に入れる事が出来ませ
んでした。それでつい、この美しいバラの花
を、いただこうとしたのです」
王さまが説明すると、ドラゴンは言いました
「金の着物や銀のがいとうではなく、バラの
花が欲しいとは、一番下の娘は心のやさし
い娘だな。・・・よろしい。バラの花を折った事
は許してやるし、そのバラの花もあげよう。
そのかわり、一番下
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お姫様とドラゴン(スペイン)
の娘をここに連れて来るのだ」
「娘を?しかし、それは」
「いいな!もし約束をやぶったら、お前の命
はないぞ」
さて、王さまがお城に帰ると、上の二人の
お姫さまが、さっそくおみやげをねだりました。
「お父さま、あたしの金の着物は、忘れな
かった?」
「あたしの銀のがいとう、ちゃんと買ってきて
くださった?」
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お姫様とドラゴン(スペイン)
王さまは二人に、おみやげを渡しました。
「うわ、すごい。この金の着物は、あたしの着
物の中で一番きれいよ」
「この銀のがいとうは、あたしにとってもよく
似合うわ」
一番下のお姫さまは王さまの様子がなん
となく悲しそうなので、何も言わず黙っていま
した。
すると、王さまが言いました。
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お姫様とドラゴン(スペイン)
「姫、これは、お前に頼まれたバラの花だよ」
「まあ、すてき。こんなきれいなバラのお花、
見た事がありませんわ」
お姫さまは、心から喜びました。それを見
て王さまもニッコリしましたが、すぐにまた悲
しそうな顔をすると自分の部屋に入ってしま
いました。それに気づいた一番下のお姫さま
は、王さまの部屋に行って尋ねました。
「お父さま。どうして、そんなに悲しそ
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うにしていらっしゃるのですか?」
「いいや、何でもないよ」
「いいえ、きっと心配な事が、おありにちがい
ありません。どうか話してください」
そこで王さまは、わけを話しました。
「実は、バラの花がどうしても買えなかった
のだよ。
帰りがけに広い庭に咲いていたきれいな
バラの花を見つけて折ったのだが、そうした
ら急にドラゴンが現れて、お前を
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お姫様とドラゴン(スペイン)
連れて来いと言うのだよ」
「ドラゴンが・・・」
「そうだ、わたしはどうすればいいのだ」
悲しむ王さまに、お姫さまは言いました。
「ご心配なく、お父さま。あたし、ドラゴンのと
ころへ参ります」
「しかし、お前にもしもの事があったら」
「いいえ。あたしに何かがあってもこの国は
大丈夫ですが、国王でいらっしゃる
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お父さまに何かがあっては、この国は大変
な事になりますから」
次の朝、王さまとお姫さまは馬に乗って、ド
ラゴンのいる庭に出かけました。
けれどもそこには、誰の姿もありません。
そこで王さまとお姫さまは庭を通って、立派
なご殿の中に入っていきました。中に入って
も誰もいませんでしたが、食堂のテーブルの
上には二人の為に用意したと思われる、と
てもすばらしいごちそうが並んでいました。
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二人はお腹がペコペコだったので、喜んで
ごちそうになりました。それから庭に出てし
ばらく散歩をしましたが、やはり誰もいませ
ん。
そして夕方になって二人がご殿に戻ると、
食堂のテーブルにはまたすばらしいごちそう
が並んでいました。二人が夕食をすませて
寝室に行くと、ちゃんとべッドの用意も出来
ていました。
あくる朝、目を覚ました二人が食堂へ行く
と、おいしそうな朝食が用意されていました。
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朝食を食べ終えると、王さまは目に涙を浮
かべて言いました。
「姫よ。わたしはもう帰らねばならない。かわ
いそうだが、お前はここに残っておくれ」
「はい、お父さま。心配なさらないでね」
お姫さまは笑顔で王さまを見送りましたが、
でも王さまが行ってしまうと、お姫さまは、
わっと泣き出しました。
これから先、自分がどうなるのかと
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思うと、怖くてたまらなかったのです。
しばらくしてお姫さまは、また庭へ散歩に
行きました。すると突然、あの恐ろしいドラゴ
ンが目の前に現れたのです。お姫さまは
まっ青になって、逃げだそうとしました。でも
ドラゴンが、とてもやさしい声で言ったのです。
「怖がらないでください。ぼくはあなたに、お
嫁さんになってもらいたいと思っているので
す。ぼくのお嫁さんになると、約束してくださ
い」
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お姫様とドラゴン(スペイン)
「いいえ、そんな事は出来ないわ」
お姫さまは、こんな恐ろしいドラゴンのお嫁
さんになる気はありません。けれどもドラゴ
ンと一緒にお昼を食べたり、夕ご飯を食べた
りしているうちに、だんだんとドラゴンの事が
好きになってきました。
それにドラゴンが、何度も何度も、
「お嫁さんになってください。幸せにしますか
ら」と、頼むので、心のやさしいお姫さまはつ
い、
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「はい。お嫁さんになります」
と、言ってしまったのです。
あくる朝、お姫さまが食堂に行くと、そこに
はすでに一人の美しい王子さまがいました。
王子さまはニッコリ微笑むと、お姫さまに言
いました。
「おはよう。ぼくのお嫁さん」
お姫さまは、ビックリして尋ねました。
「あの、あなたはどなたですか?」
「ぼくの声を、忘れたのかい? ぼくは、
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ドラゴンです。ぼくは昨日まで、魔法をかけら
れてドラゴンになっていました。誰かがぼく
のお嫁さんになると約束してくれれば、魔法
がとける様になっていたのです。心やさしい
あなたのおかげで、この通りぼくは元の人間
に戻れました。ありがとう。本当に、ありがと
う」
美しい王子は、お姫さまに心からお礼を言
いました。間もなく二人は立派な結婚式をあ
げて、幸せに暮らしたということです。
おしまい
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お姫様とドラゴン(スペイン)
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