孤独死から考える日本社会 清水良恵 孤独死(孤立死)とは 阪神・淡路大震災後の仮設住宅での独居者の死 「看取る人が誰もいない死」、「亡くなった後に第三者発 見されること」、「社会的関係が絶たれていて、死後、し ばらく発見されなかった死」など解釈には多少の幅があ る。自治体によっても定義は異なる。 なぜ孤独死は問題か、孤独死を考える必要性 今後ますます増大すると考えられる。 予防ができる。 社会的コスト(死者の死後の処理などのコストを負担) 日本社会にとっての「家族」の役割を考える。 孤独死の原因として考えられるもの 家族構成・人口構造の変化 居住形態の変化(マンション等) 経済状況・家族観の変化 セーフティネット力の弱まり・・・自己責任 支援を望まない単身者の増加 高齢者サービスの低標準化 日本の家族 伝統家族 「家」単位で、生産・生活の要所で共同体的扶助協力関 係を維持。当主が家の代表として地域共同体と関わる。 戦後 核家族をモデルとする近代家族。 80年代~家族の崩壊 これまで家族の機能と考えられてきた出産、育児、教育、 生産、消費、娯楽、安寧、充足、介護、死の看取り、社会 参加などが満たされない機能不全。 現在~個人を単位とする家族へ また、企業といった新しい共同体 政府の孤独死ゼロ・プロジェクト 2007年、厚生労働省の全国介護保険・高齢者保健福祉 担当課長会議において、孤立死防止推進事業(孤独死 ゼロ・プロジェクト)として「高齢者等が一人でも安心して 暮らせるコミュニティづくり推進会議」発足。 予算(案)約1億7295万円 推進会議の開催、政府としての啓発活動 「孤独死ゼロ・モデル事業」支援(助成金) 千葉県松戸市常盤平団地 緊急通報体制の連絡網「孤独死110番ネットワーク」 自治会役員による団地内の見回り、民生委員による自 宅訪問などの見守り活動、郵便物の確認による安否確 認 あんしん登録カード 「いきいきサロン」開設 あいさつ推進標語募集、孤独死を考えるシンポジウム開 催などの啓発活動 緊急通報体制 通常時のネットワーク体制 孤独死対策の困難 山梨県八代町 合併による高齢者サービスの低標準化 介護保険対象となる総合介護予防事業に特化する 傾向 千葉県富津市 電話機能付き緊急通報システムの誤報 システム設置件数は対象者の約3割程度 埼玉県新座市 個人情報保護法 埼玉県富士見市 費用負担 高齢者の孤立解消への困難・課題 プライバシーの問題。 行政のあくまで自分でできることは自分で、最低限生き てもらえばいいだろうという考え。 他者との関わりがなくても生きていける。 高齢者に対する想像力が働かない。 老後への準備の大切さ、当事者の自発的な行動 NPOといった第三セクターの役割の可能性 家族がわりのNPO ~NPO法人“きずなの会” 1. 身寄りのない高齢者・障がい者、家族との間が疎遠 になっている高齢者の方の身元保証及び病院・施設へ の入院・入所、賃貸住宅入居の支援。 2. 必要に応じた随時生活支援及び24時間365日の緊急 支援。 3. 死後の事務支援。 4. 葬儀・納骨支援。 5. 実情を考慮して成年後見制度についての相談に対 応。 論点 孤独死を防ぐために・・・ 適切な対策、効果的な対策とは何か。(高齢者自身がで きること/まわりができること、行政の限界とは) 日本社会の家族や人間関係のこれから・・・ 日本はこれからますます自己責任の社会になっていくの だろうか。 日本が個人を単位とする社会へと変化している中、介護 といった従来家族がやるべき役割は誰が担っていくべき なのか。 参考文献 「孤独死ゼロの町づくり」 元木昌彦著 2008年 ダイ ヤモンド社 「無縁社会」 NHK「無縁社会プロジェクト」取材班編著 2010年 文藝春秋 少子化する高齢社会 金子勇 2006年 日本放送出 版協会
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