5章 物質の三態(気体・液体・固体)と気体の法則 出典 入門 化学熱力学、松永義夫、朝倉書房(2005) Wikipedia 復習・内容 1) 化学熱力学の概説 三態(気体、液体、固体) 外界と系(孤立系、閉じた系、開いた系) 熱化学反応(発熱反応、吸熱反応) 熱力学第一法則 エンタルピー 2)気体の様々な法則 アボガドロ、プルースト、ドルトン、ゲーリュサ ック、ボイル、シャルル 3)熱力学第二法則 エントロピー 4)ギブス自由エネルギー 5-1)三態と熱力学第一法則、エンタルピー, 5-1-1)三態 物質の普通の状態は、気体、液体、固体である(物質の三態)。 物質の内部のすべての部分が、同一の物理的性質および化学 的性質を持つ場合、その物質はひとつの相(phase)にあると言 う。気相(gas phase)、液相(liquid phase)、固相(solid phase) があり、蒸発(凝縮)は気相液相、融解(凝固)は固相―液相、 昇華(凝縮)は気相―固相間での変化(相転移)である。 固体中で、原子、分子、イオンは定まった位置を中心に振動、ま たは回転している。温度上昇に伴い、これらの構成粒子の熱運 動は激しくなり、粒子間の引力相互作用(ファンデルワールス相 互作用、クーロン相互作用)が熱運動に勝っている状況では液体、 熱運動が勝ると気体に変化する。 図5.1 固体 液体 気体 5-1-2)孤立系、閉じた系、開いた系 ●外界と系:化学反応では、反応が行われる空間を系(system)、 系の外側の空間を外界(surrounding)と区別する。この方法は、 何も化学反応に限らない。例えば、宇宙の中の地球を系としそれ 以外の空間を外界として何らかのテーマを議論することも可能で ある。 ●孤立系:外界は、とてつもなく大きく包容力に富み、系が出す熱 も、系の膨張も何ら外界の温度、圧に影響を与えないものとする。 もし、物質もエネルギーも系と外界の間でやりとりがないなら、そ の系は孤立系(isolated system)という。 図5.2 孤立系、閉じた系、開いた系、 は物質 外界 孤立系 エネルギー 外界 エネルギー 外界 閉じた系 エネル ギー エネル ギー 開いた系 ●閉じた系:孤立系での化学反応で発熱、吸熱があると、温度、 圧力は一定に保たれない。外界の間で物質のやりとりはない が、エネルギーのやりとるが系を閉じた系(closed system)と いう。この系での化学反応での発熱、吸熱などは系の温度、 圧力を変化させない。 ●開いた系:エネルギーのやりとりのみならず物質のやりとり も外界と行う系を開いた系(open system)という。外界も系の 中に含め、(閉じた系+外界)や(開いた系+外界)を新たな系と 考えると、これらは孤立系である。 5-1-3)熱化学反応、平衡状態、状態量 ●粒子間の引力の形で蓄えられているエネルギーが、化学反応(化学 結合の切断、生成)により熱(反応熱 heat of reaction)として放出(発 熱反応 exothermic reaction)又は吸収(吸熱反応 endothermic reaction)される。25℃、1 atm(現在は100 kPa)での反応熱が熱化学方 程式に用いられ、化合物1molが同一の温度、圧での成分から生じると きの反応熱を生成熱(heat of formation、発熱or吸熱)という。 H2(g) + 1/2 O2(g) = H2O(l) + 285.8 kJ H2(g) + 1/2 O2(g) = H2O(g) + 241.8 kJ ●熱化学方程式は、数学における方程式と同様に左辺、右辺への項 の移動、等式の足し算、引き算が可能である。従って、水の蒸発は吸 熱反応で、蒸発熱(heat of vaporization、吸熱)は44.0 kJである。 H2O(l) = H2O(g) – 44.0 kJ ●熱量の単位 J(ジュール) 1N(ニュートン)の力で物質を1m移動さ せるに必要なエネルギー 1 J = 1 N・m = 1 kg ・m2 ・s-2 1 cal = 4.184 J ●熱:燃焼熱(発熱)、中和熱(酸+塩基・・発熱)、溶解熱(発熱or吸 熱)、融解熱(吸熱)、昇華熱(固→気 吸熱、気→固 発熱) ●系が常に時間的に不変な状態(平衡状態, equilibrium state)の時、一義的に定まった値を持つ物理量を状態量 (quantity of state)と言い、系全体の中で一様、一定である。状 態量として、物質量に比例する示量性の状態量(体積V、質量m、 熱qなど)と、物質量に無関係な示強性の状態量(圧力P,温度T, 密度r)がある。 ●化学反応での状態量Xの変化は DX = SniXi(生成物) SniXi(反応物) (5.1) ここで、D(デルタ)は変化量の記号、S(シグマ)は総和の記号で ある。
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