第7週目: 周波数伝達関数とボード線図 1/16 周波数伝達関数 ボード線図 TUT, System & Control laboratory 今週の授業の目的 2/16 今週の大きな目的 周波数伝達関数,ボード線図について学ぶ.周波数伝達関 数から正弦波入力を与えたときの定常状態での出力を求め ることができる.ボード線図は制御系を設計する際に利用す る.今週の授業内容は,制御系の応答を確認する際や制御 系を設計する際に重要なものである. 周波数伝達関数を学ぶ ボード線図の概念を学ぶ 積分要素のボード線図を学ぶ 微分要素のボード線図を学ぶ 1次遅れ要素のボード線図を学ぶ 2次遅れ要素のボード線図を学ぶ むだ時間要素のボード線図を学ぶ TUT, System & Control laboratory 周波数伝達関数(1) 3/16 伝達関数G(s)で表される安定なシステムに,周波数w0の正弦波入力 u (t ) sin w0t を加えると,十分長い時間がたった後,すなわち,定常状態において 出力は, y (t ) G ( jw0 ) sinw0t G ( jw0 ) となる.このように,出力は入力と同じ周波数w0をもつ正弦波になる. ただし,その振幅は|G(jw0)|倍され,位相は∠G(jw0)だけ遅れる. |G(jw0)|を周波数w0におけるゲイン,∠G(jw0)を位相角と呼ぶ. w0をさまざまな値に変化させたときの入力u(t)と,出力y(t)の伝達関 数G(s) (0<w<∞)を周波数伝達関数,あるいは周波数応答と呼ぶ.こ れは伝達関数G(s)においてs=jwとおいて得られるものである. |G(jw)|をゲイン特性,∠G(jw)を位相特性と呼ぶ. TUT, System & Control laboratory 4/16 周波数伝達関数(2) 例1:周波数1Hzの正弦波入力で,ゲインは0.5,位相角は0degの出力波形 y(t ) 0.5 sin2t u(t ) sin2t 例2:周波数1Hzの正弦波入力で,ゲインは1,位相角は180degの出力波形 u(t ) sin2t 例1 1.5 y(t ) sin2t 例2 位相角 0[deg] 位相角 180[deg] ゲイン:1 1 ゲイン:0.5 1 0.5 0 0 -0.5 -1 -1.5 0.5 1 1.5 u(t) y(t) t 0 0 t 0.5 1 1.5 -1 u(t) y(t) TUT, System & Control laboratory 5/16 周波数伝達関数(3) ここで入力u(t)から出力y(t)を導出しておく.入力u(t),出力y(t)のラプ ラス変換をそれぞれU(s),Y(s)とおく.定常状態を考えると, w0 K1 K2 Y ( s ) G ( s )U ( s ) G ( s ) 2 2 s jw 0 s jw 0 s w0 が得られる.ただし, w0 G ( jw 0 ) K1 s jw0 G ( s ) 2 2 2j s w 0 s jw 0 w0 G ( jw 0 ) K 2 s jw0 G ( s ) 2 2 2j s w 0 s jw 0 である. TUT, System & Control laboratory 6/16 周波数伝達関数(4) G(jw0)とG(-jw0)が,互いに共役な複素数であることに注意すれば, K1 K2 j G ( j w 0 ) G ( jw 0 ) Y (s) s jw0 s jw0 2 s jw0 s jw0 G ( jw 0 ) G ( jw 0 ) 1 G ( jw 0 ) G ( jw 0 ) 2 w js 2 0 2 2 s w0 1 w0 ReG ( jw0 ) s ImG ( jw0 ) 2 2 s w0 となる. TUT, System & Control laboratory 7/16 周波数伝達関数(5) 1 Y ( s) 2 w0 ReG ( jw0 ) s ImG ( jw0 ) 2 s w0 逆ラプラス変換すれば, y (t ) ReG ( jw0 )sin w0t ImG ( jw0 )cos w0t ここで下記の公式を用いると,出力y(t)が得られる. sin cos 2 2 sin tan 1 / ただし,以下の関係を用いる. ReG( jw0 )2 ImG( jw0 )2 1 ImG ( jw0 ) G ( jw0 ) tan ReG ( jw0 ) G ( jw0 ) TUT, System & Control laboratory 8/16 周波数伝達関数(6) 例:1+s s=jwと代入したとき,実部と虚部は,Re[G(jw)]=1,Im[G(jw)]=wとな る.このとき,先の公式から, G ( jw0 ) 1 w 2 G ( jw0 ) tan 1 w の関係を得る. w=0.01のとき G ( jw0 ) 1 0.012 1 G ( jw0 ) tan 1 0.01 0.57 deg w=1のとき w=10のとき G ( j w0 ) 1 1 1.4 G ( jw0 ) 1 102 10 G ( jw0 ) tan 1 1 G ( jw0 ) tan 1 10 45 deg 84.3 deg 定常状態の出力は,このように明らかにできる.また,これらの関 係をグラフで表わしたものをボード線図と呼び,続けて説明する. TUT, System & Control laboratory ボード線図 9/16 周波数伝達関数G(jw)のゲイン特性|G(jw)|と位相特性∠G(jw)を,周 波数wの関数として別々のグラフに図示したものをボード線図という. 横軸に角周波数wを対数目盛でとり,縦軸にゲインの対数量 g(w)=20log10|G(jw)| dBで表わしたものをゲイン曲線,また,別のグ ラフに縦軸に位相角をf(w)=∠G(jw) degとして表わしたものを位相曲 線と呼ぶ.ボード線図は,広い範囲で詳細な特性を表わすことがで きることから,フィードバック制御系の解析や設計において広く用い られている. 積分要素,微分要素,1次遅れ要素,2次遅れ要素,むだ時間要素 のゲイン特性と位相特性の式,ボード線図を説明する.また,次回 予定でボード線図の折線近似,1次遅れ要素,2次遅れ要素のパラ メータによるボード線図の違いや応答の違いを紹介する. TUT, System & Control laboratory 10/16 ボード線図(積分要素) 積分要素G(s)=1/sに対してs=jwとおくことで,周波数伝達関数は, G ( jw ) 1 1 j jw w となる.このとき,ゲイン特性と位相特性は以下のように求まる. g (w ) 20 log 10 G ( jw ) 20 log 10 1 w 20 log 10 w 1/ w 1 tan 90 deg 0 位相[deg] ゲイン[dB] f (w ) G ( jw ) tan 1 40 20 0 -20 -40 -2 10 0 -20dB/dec 10-1 100 101 -45 -90 10-2 -90[deg] 10-1 100 101 角周波数[rad/s] つまり,ゲインはw=1のとき0であり,w が10倍されるとき20dBだけ減少する. 102 通常,ゲイン特性の直線の傾きを表 わすために,[dB/dec]という単位を用 いる.よって,積分要素のゲイン特性 の傾きは-20dB/decである.一方,位 相は全体にわたって-90degである. 102 TUT, System & Control laboratory 11/16 ボード線図(微分要素) 積分要素G(s)=sに対してs=jwとおくことで,周波数伝達関数は, G( jw ) jw となる.このとき,ゲイン特性と位相特性は以下のように求まる. g (w ) 20 log 10 G ( jw ) 20 log 10 w 1/ w 1 tan 90 deg 0 位相[deg] ゲイン[dB] f (w ) G ( jw ) tan 1 40 20 0 -20 -40 -2 10 20dB/dec 10-1 100 101 つまり,ゲインはw=1のとき0であり, 傾きは20dB/decである.また,位相は 全体にわたって90degである. 102 90 90[deg] 45 0 -2 10 10-1 100 101 角周波数[rad/s] 102 TUT, System & Control laboratory 12/16 ボード線図(1次遅れ要素) 1次遅れ要素G(s)=1/(1+Ts)に対する周波数伝達関数は, G ( jw ) 1 1 j wT 1 jwT 1 wT 2 となる.Tを時定数と呼ぶ.このとき,ゲイン特性と位相特性は以下のように求まる. g (w ) 20 log 10 1 20 log 10 1 wT 2 1 wT 2 位相[deg] ゲイン[dB] f (w ) tan 1 wT 0 -10 -20 -30 -40 -2 10 0 T =1 -20dB/dec 10-1 100 101 wT<<1のときは,ゲインは0であり,w に関係なく一定値となる.逆にwT>>1 のときには,g(w)=-20log10(wT)となり, 102 傾きは-20dB/decである.また,位相角 はw0のとき0degとなり, w∞のとき90degである. wT =1のとき-45degとな る. -45 -90 -2 10 10-1 100 101 角周波数[rad/s] 102 TUT, System & Control laboratory 13/16 ボード線図(2次遅れ要素)(1) 2次遅れ要素G(s)=wn2/(s2+2wn+wn2)に対する周波数伝達関数は, G( jw ) w n wn 2 2 w 2 j 2wnw 1 j 2 w / wn 1 w / w 2 n f (w ) tan 1 2 w / wn 2 1 w / wn 2 w / w 2 2 2 n 周波数が増加するにつれて,ゲイン曲 線は0dBの直線から-40dB/decの傾き に,位相曲線は0degから-180degに変 化する. 位相[deg] g (w ) 20 log 10 1 w / wn ゲイン[dB] となる.wnを固有角周波数,を減衰係数と呼ぶ.このとき,ゲイン特性と位相特性 は以下のように求まる. 0 -20 -40 -60 -80 -2 10 0 wn =1, =1 -40dB/dec 10-1 100 101 102 10-1 100 101 角周波数[rad/s] 102 -90 -180 -2 10 TUT, System & Control laboratory 14/16 位相[deg] 減衰係数の変化に対するボード線 図を下記に示す.減衰係数が小さい とき固有角周波数のゲインにピーク が現れる. ゲイン[dB] ボード線図(2次遅れ要素)(2) 40 0 -40 -80 -2 10 0 -40dB/dec 10-1 100 101 =0.01 =0.1 =0.5 =1 =2 102 =0.01 2次遅れ要素の例として,自動車の =0.1 =0.5 -90 ショックアブソーバがある(2回目,3 =1 =2 回目資料参照).分子の係数は異な -180 -2 るがゲイン曲線の形状は同じである 10 10-1 100 101 102 ことに注意する. 角周波数[rad/s] 自動車が走行する道路として,①細かいでこぼこ道と②ゆっくりとしたでこぼこ道 を考える.でこぼこ道から受ける力は外乱f=sinwtと考えることができ,①はwが大 きいことに,②はwが小さいことに対応する.が小さく,f(t)にw=wnの成分が含ま れると,その成分の振動が増幅されるため,乗り心地が悪くなってしまう.そこで, 自動車の振動をやわらげるためには,車体重量に合わせて,バネ,ダンパ係数 を調整して,ゲイン特性に現れるピークを抑える必要がある.方法としては,望ま しいバネ,ダンパ係数を持つアブソーバを使う方法(パッシブ制御)のほか,路面 の状況に合わせて,バネ,ダンパ係数を油圧や空気圧の力によって変化させる 方法(アクティブ制御)などがある. TUT, System & Control laboratory 15/16 ボード線図(むだ時間要素) むだ時間Lのむだ時間要素G(s)=e-sLにする周波数伝達関数は, G( jw ) e jwL cos wL j sin wL となる.このとき,ゲイン特性と位相特性は以下のように求まる. g (w ) 20 log 10 cos wL 2 sin wL 2 0db sin wL wL (180 / ) deg cos w L 位相[deg] ゲイン[dB] f (w ) tan 1 20 10 0 -10 -20 -2 10 0 L =1 10-1 100 101 L=1とした場合のボード線図を示す. ゲインは常に0dBであり,位相はwに 比例して遅れる. 102 -90 -180 -2 10 10-1 100 101 角周波数[rad/s] 102 TUT, System & Control laboratory 16/16 課題 下記のシステムにu(t) =asinwt の入力を加えたときの時間応答y(t) を 求めよ. G( s) 1 1 5s TUT, System & Control laboratory
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