表現の自由と責任 1.「表現の自由」とは 2.マス・メディアにおける「表現の自由」 3.情報収集過程における自由と規制 4.情報の加工・発表過程における自由と規制 1 1.表現の自由とは (1)表現の自由の位置づけ 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、 尊厳と権利ととにおいて平等である」(世界人権宣言, 1948年) →この理念を一定のルールで具現化したのが 民主主義社会 民主主義社会では、 ①主権在民 ②国民にはさまざまな基本的人権を保障 →「表現の自由」 2 (2)日本における「表現の自由」の保障 「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自 由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならな い。通信の秘密は、これを侵してはならない」 (憲法第21条) ・好きな時に好きな場所でおしゃべり ・本やDVDなどを制作し、販売する ・演劇・映画を上映する ・テレビ番組・CMを作る ・ビラ、立て看板、チラシを作る ⇔情報を集め、情報を伝える自由も保障されている。 3 2.マス・メディアにおける「表現の自由」 (1)報道の自由とは 「表現の自由」は、個々の国民のみならず、個人の集 合体である団体や法人も享受することができる。 とりわけ、マス・メディアは国民一人ひとりの意見・思 想の形成・表明に不可欠な情報を提供する。 民主主義の根幹を成す国民一人ひとりの「表現の自 由」を保障するためにマス・メディアの報道は不可欠 な役割を果たしている。つまり、受け手の「知る権利」 にも寄与。 →マス・メディアの表現活動の自由 =「報道の自由」を保障 4 マス・メディアの報道の自由 情報の収集過程 ・取材の自由 情報の加工・発表過程 =報道の自由(狭義) 情報の頒布・流通過程 5 3.情報収集過程における自由と規制 =「取材の自由」 憲法で明文化されていない。 裁判所の判断は、 「取材は報道のための準備行為にすぎないから、憲 法保障の対象にはならない」(1952年) 「報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報 道の自由とともに、報道のための取材の自由も憲法 21条の精神に照らし、十分尊重に値いするものとい わなければならない」(1969年) へと変化。 つまり、「取材の自由」は「国民の知る権利」にとって 不可欠と考えられるようになった。 6 「取材の自由」を保障するために、マス・メディア機関 にはさまざまな便宜が与えられている。 ・公判廷での専用の傍聴席 ・判決文の特別配布 ・発表資料の事前入手 ・法廷でのメモとりの許可 一方、取材活動に対する制約もある。 ・開廷中のテレビ撮影禁止 ・裁判の2~3日前に申し込み ・裁判官の入廷から開廷宣告前までの2分以内 ・撮影位置・撮影対象についても規定あり ・照明機材、録音機材、中継機材は不可 ・少年審判は非公開、傍聴も不許可 7 4.情報の加工・発表過程における自由と規制 この過程が「報道の自由」として最も重視されている。 ←この過程は、国民の「知る権利」と最も深い関わり を持ち、国民の意見・世論形成に影響を及ぼし、 民意を国政などに反映させることができるから。 しかし、「公共の福祉」に照らし、さまざまな規制(自主 規制と法的規制)を受けている。 ①国家の安全を害した場合 ②社会の秩序を乱した場合 ③個人の尊厳を冒した場合 →裁判(刑事裁判:罰金・禁固刑など、民事裁判:損害 賠償・謝罪命令など) 8 名誉毀損 公然と事実を指摘して人の名誉を毀損した場合 →三年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下 の罰金(刑法) →損害賠償(民法) ただし、次の3つの要件を備えていれば名誉毀損とは ならない。 ①公表事実が公共の利害に関するもの(公共的事項) ②公表目的が専ら公益を図るもの(公益性) ③公表事実が真実であるもの(真実性) 報道において問題となるのは③。 9 少年犯罪に関する報道規制(少年法) 本人であることがわかってしまう報道(氏名、年齢、職 業、住居、容貌など)は禁じられている。 ただし、罰則規定はない。 10 民主主義社会におけるマス・コミュニケーションにつ いて考えてみよう。 『チョムスキーとメディア』 “Manufacturing Consent” 参考文献 ブルデュー, P.(監修)、櫻本陽一(訳) (2000) シリーズ社会批 判 メディア批判 藤原書店(Bourdieu, P. (1996) Surla Television: Suivide L’Emprise du Jouralilsme.) チョムスキー, N.、 鈴木主税(訳) (2003) メディア・コントロー ル 集英社新書(Chomsky, N. (1991) Media Control: The Spectacular Achievements of Propaganda. Seven Stories Press.) チョムスキー, N.、 本橋哲也(訳) (2008) メディアとプロパガ ンダ 青土社(Chomsky, N. (2004) Letters from Lexiton: Reflection on Propaganda. Sheridan Square Press, Inc. and the Institute for Media Analysis, Inc.) 日本民間放送連盟(編) (1997) 放送ハンドブック(新版) 東洋 経済新報社 12 山田健太 (2004) 表現の自由と責任 天野勝文・松岡新兒・ 植田康夫(編著) 新現代マスコミ論のポイント 学文社 Pp. 244-258. 13
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