量子光工学分野 - 国立大学法人 東京農工大学

物質科学入門
「光と量子力学」
ー「粒子」と「波動」の融合ー
古典物理の限界
量子力学へのIntroduction

19世紀末~20世紀初頭

ミクロ領域で、古典的な「波動」、「粒子」の考え方
では説明できない現象が発見された。
「光」:波動のはずが粒子の性質をもつ
 「電子」:粒子のはずが波動の性質を持つ


「波動」「粒子」の両方の性質をもつもの
「量子(Quantum)」
「光」:波動から粒子へ
1.
光電効果(Photoelectric Effect)

2.
コンプトン効果(Compton Effect)

3.
金属に紫外線(光)を照射すると電子が放出さ
れる
光が電子によって散乱される
黒体輻射(Black Body Radiation)

熱く熱された物体から、様々な波長の電磁波(
光)が放出される
「電子」:粒子から波動へ
1.
線スペクトル(Line Spectrum)



2.
原子は単一波長の光(単色波)を放出・吸収
単色波の波長に規則性
電子は原子核に落ち込まない
電子線回折(Electron Diffraction)

電子線を結晶に入射すると回折が生じる
「光」:波動から粒子へその1

光電効果

金属に紫外線を照射すると電子が放出される
1887 H. R. Hertz, 1888 W. L. Hallwacks
電子数は光強度に比例
電子の運動エネルギーは光強度と無関係
電子の運動エネルギーは光の振動数が
大きいほど高い
電子放出には光の振動数に限界が存在

「光」はエネルギーを「かたまり」として持っている
アインシュタインの「光量子仮説」
1905 A. Einstein
「光」:波動から粒子へその2

コンプトン効果

X線が自由電子によって散乱される
電子がランダムに瞬間的に散乱される
散乱によるX線の波長変化:

光をエネルギーE=hν、運動量P=E/c=hν/c の粒子
として弾性散乱を考えるとよい
1923 A. H. Compton
「光」:波動から粒子へその3

黒体輻射とプランクの輻射則
物質を加熱すると連続スペクトルの発光
が生じる
スペクトル分布は物質の種類によらない
温度が高いほど強度増加、ピークが短波
長側にシフト(恒星の表面温度と色)
黒体:黒は全ての色の光を
吸収放出する
ボルツマン分布:熱平衡状態
での光の分布

光のエネルギーはhν の整数倍とするとあう
プランクの輻射則
1918 M. Planck
光の「粒子」「波動」2重性
粒子の性質
波動の性質
「電子」:粒子から波動へ
(詳しくは量子力学入門で)

線スペクトル

原子は単一波長の光(単色波)を放出・吸収

系列:ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列…
バルマーの実験式
 ボーアの原子モデルと量子化条件


電子線回折

電子は回折する(デビソン、ガーマー、トムソン)
「光」と同じ関係
「粒子性」と「波動性」の矛盾


「粒子性」と「波動性」は両立できない!
(古典的な意味であるかぎり)
単一粒子干渉
単一の「光子」は干渉するか?

「波」と「粒子」の両立の困難

1光子干渉
 古典波動なら両方のスリットを通過するのに問題はない→干渉
 古典一粒子(不可分)は両方のスリットを通れない→干渉なし
 単一の「光子」は干渉を起こす
古典粒子、古典波動ではない!
ヤング干渉計
マッハ・ツェンダー干渉計
重ね合わせ状態


上のスリットaを通る波動をΨa、下のスリットb
を通る波動をΨbとする
aまたはbを等確率で通る波動
(Ψa+Ψb )/21/2 : 重ね合わせ状態
シュレーディンガーの猫
シュレーディンガー(E. Schrodinger)
量子力学研究の中心人物
 量子力学の奇妙さを説明するため
導入した例え話
 一粒子の重ね合わせ状態:猫状態

古典的確率と量子的確率の違い
結果は同じでも状態の内容は異なる
2つの状態の違い

波動の強度は振幅の2乗
→それぞれの強度測定したとき
 古典的状態


Ψa (強度|Ψa|2)またはΨb (強度|Ψb|2)なので
平均は(|Ψa|2+|Ψb|2)/2
量子的状態
常に(Ψa +Ψb)/21/2なので
 平均は|(Ψa +Ψb)/21/2|2= (|Ψa|2+|Ψb|2)/2+ Ψ*a Ψb + Ψa Ψ*b

Ψ*a Ψb+ Ψa Ψ*b :干渉項
(量子的状態には干渉が起こる)
Ψ*aΨb+ ΨaΨ*bは干渉を表すか?
そんなもんが役に立つ?

量子暗号通信


量子コンピュータ


原理的に盗聴が不可能な通信ができる
現在のコンピュータ(インテルはいってる)で長時
間かかる計算を一瞬でできる
量子テレポーテーション

量子的対象(電子、光子など)の状態をそのまま
別の場所の量子的対象に移動できる
量子暗号通信(BB84プロトコル)

使い捨てパッド(One-time Pad)暗号

送り手(Alice)と受け手(Bob)とで送るデータと同
じ長さのランダムなデータ列(暗号鍵)を共有

送り手は、暗号キーを見ながら、暗号鍵が0なら
そのまま、1ならデータをひっくり返して送る
受け手は、暗号キーを見ながら、暗号鍵が0なら
そのまま、1ならデータをひっくり返して記録
 盗聴者(Charlie)はデータを盗み見しても、どれを
ひっくり返すのか分からない

量子鍵配送




AliceとBobで、暗号鍵が共有できればよい
暗号鍵は完全にランダム(規則性は皆無)
暗号鍵がCharlieに知られなければよい
量子的重ね合わせ状態を利用して、Aliceと
Bobとで暗号鍵を共有する
BB84プロトコルその1

送信手続き(Alice)

1984 C. H. Bennet & G. Brassard
単一光子の偏光を利用
偏光状態として(縦、横)のペア1と(右斜め、左斜め)
のペア2を用いる
 ランダムなデータ列を2個用意

ランダム列1:(縦、横)にするか(右斜め、左斜め)にするか
 ランダム列2:ペア中のどちらの偏光にするか

BB84プロトコルその2

受信手続き(Bob)

ランダムなデータ列を用意


(縦、横)にするか(右斜め、左斜め)を決めて測定
結果記録
BBプロトコルその3

最終処理
Bob:ペア1かペア2を決めるのに用いたランダム
な列の内容を電話でAliceにしらせる
 Alice:Bobからのランダム列と自分のランダム列1
を比較し、一致している列の順番を電話でBobに
しらせる

双方、一致している順番のデータのみを残し、他
をすてる
 残ったものが、共有する暗号鍵

BB84のキーポイント(鍵だけに)

縦偏光、横偏光の光子は、(右斜め、左斜め)
のペア2の測定に対しては猫状態

右斜め偏光、左斜め偏光の光子は、(縦、横)
のペア1の測定に対しては猫状態
猫状態光子測定の結果は完全にランダム


猫状態でない(非猫状態)光子の結果は完全
に一致

非猫状態のみピックアップすればランダムデ
ータの共有ができる(暗号鍵共有)
猫状態以外の量子状態

1光子状態、2光子状態


「粒子性」と「波動性」が相反する領域
量子もつれあい状態
2光子が「量子相関」をもつ状態
 2光子が「量子干渉」を生じる


量子コンピュータ、量子テレポーテーションに応
用できる
量子もつれあい状態

EPR(アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼ
ン)状態
EPRのパラドックス
位置測定
粒子1
Δx=0
(Δp=0)
相互作用
相関
運動量測定
粒子2
Δp=0
(Δx=0)
量子力学(不確定性原理)は間違っている?
正解:測定しない側も量子状態確定⇒量子相関
量子もつれあい状態の生成

光パラメトリック効果
入射光子:
ω0

非線形
光学結晶
ω1, e1,k1
ω2, e2,k2
量子
相関
偏光エンタングル状態
一方の光子の偏光状態を測定すると
もう一方の偏光状態も確定する
2光子干渉
量子相関
量子干渉による、非古典的ディップ
(マンデルディップ)
2光子状態偏光量子相関測定装置