地方自治体における ESCO事業の導入

地方自治体における
ESCO事業の導入
京都大学総合人間学部足立ゼミ
発表の流れ
ESCO事業の説明:なぜESCO事業なのか?
 ESCO事業者側からの指摘
 問題点
 解決策の提示(大阪府の取り組み、それを踏
まえた独自の策)

ESCO事業の説明①:その仕組み
•
•
•
•
ESCO=Energy Service Company
省エネルギーの実現により光熱水費を削減
コンサルティングから工事、管理に至る包括的サービス
それまでの環境を損なうことなく実施可能
顧客の利益
ESCO事業者の利益
光熱水費の削減
光熱水費
顧客の利益
削減額
返
金利
済
分 初期投資
光熱水費
削減量を保証
ESCO事業実施前
ESCO事業実施後
ESCO事業の説明②:契約方式
①ギャランティード・セイビングス
方式
ESCO事業者
パフォーマンス
契約
サービス料の支払い
顧 客
融資
②シェアード・セイビングス方
式
パフォーマンス ESCO事業者
契約
債務返済
サービス料の
支払い
融資
顧 客
金融機関
金融機関
債務返済
シェアード方式では顧客の初期投資はゼロに
なぜESCO事業なのか?
日本の温室効果ガス排出量
140000
136000
地球温暖化問題の存在
しかし
地方自治体は
財政難
排出量(CO2換算・万トン)
地方自治体も積極的に
排出削減に取り組むべき
135000
7.8%増加
13.8%もの
130000
削減が必要
126100
125000
118534
120000
115000
110000
105000
1990年
2006年
削減目標
初期投資ゼロでもCO2削減が可能な
→1990年
ESCO事業が有効 より6%減
京都議定書で
の削減目標
ESCO事業のメリット
省エネルギー、光熱水費削減を実現
→CO2の削減が可能!
※光熱水費の削減額は事業者が保証
 初年度から顧客も利益を得られる
 顧客の初期投資が必要ない

財政難に苦しむ自治体にとって
特にシェアードESCO事業は魅力的
問題点の概観
ESCO事業はそもそも事業者の負担が大きい
 公募というシステム
 シェアード方式のESCO事業
 事業採算性の低い中小規模施設

“事業者が”参入しやすい環境づくりが必要
ESCO事業者側からの指摘
 大阪府「中小規模施設への効率的なESCO事業推進に向けての調
査 」での指摘
①提案書作成の負担大
②資金調達負担、資産保有リスク
③計測検証の後年度長期負担
④過当競争による利益の圧迫
 ヒアリングで得られた指摘
「(民間の事業と比較して)自治体事業は魅力に乏しい」
受注できるかどうかわからない公募の参加に多大な労力がかかる
(自治体事業で多い)シェアード方式では負担が大きい
「今後のESCO事業は民間案件を中心に考えている」
問題点①
中小規模施設への導入
ESCO事業
=
光熱水費削減額より工事費捻出
中小規模施設
延床面積10000㎡以下
年間光熱水費1億円以下
もともと光熱水費が少ない
使えるお金
の差
顧客の利益
ESCO事業者の利益
返顧客の利益
金利
済
中小規模施設の
分 初期投資
光熱水費
削減後の
光熱水費
顧客の利益
ESCO事業者の利益
顧客の利益
返
金利
済
大規模施設の
分 初期投資
光熱水費
削減後の
光熱水費
単純に工事費も少なくなるわけではない
採算性が悪く、事業者にとって魅力が小さい
問題点②
ESCO事業者の大きな負担
地方自治体ESCO事業
省エネ効果の保証
シェアード方式が多いため
資金調達が必要
長期間の計測・管理
が必要
ベースライン修正の難しさ
多大な労力のかかる公募に
参加しても受注できるか不確定
受注のため利益を圧縮
事業者にとって
魅力に乏しい
多大な労力が必要
解決策の提示:大阪府の取り組み①
簡易公募型ESCO事業
その解決のため
公募参加の大きな負担
簡易公募型ESCO事業
提案書をA3用紙1枚程度に簡略化
ただし採算性の改善にはならないので
ESCOに不適な施設への導入促進とはならない
解決策の提示:大阪府の取り組み②
ESCO推進ファンド
ESCO事業者
機器の
メンテナンス等
ESCO機器を
一部サービス料の
買い取り
一部サービス料
受け取り権
ESCO機器を
使用させる
ファンド
顧 客
一部サービス料
資金調達の難しい
中小事業者にとって
非常に魅力的
しかし
ファンドがESCO機器を
買い取り
ESCO事業者の
資金調達が容易に
&
機器保有リスクが解消
そもそも資金調達を
苦としない業者に対しては
アピールに乏しい
解決策の提示:大阪府の取り組み③
その他
◆計測検証の繰上げ終了
省エネ効果の保証
計測検証・ベースラインの
適切な修正が必要
◆複数施設一括公募
複数施設を一括とすることで
規模のメリットにより
採算性向上を図る
一定期間効果が確認されれば
計測検証を繰り上げ終了し
負担の軽減
アメリカでは既に実現
ESCO事業が
成熟すれば十分可能
在阪ESCO事業者の21%が効果を
認める
施設の数だけ手間が
かかることには
変わらないという意見も
解決策の提示:更なる解決策①
想定工事費からの減少分の活用
減少分
減少分の一部
自治体の
想定する
ESCO事業者
工事費
提案の工事費
返 金利
済
分 初期投資
ESCO事業者の
返 金利
済初期投資
分 初期投資
+
返 金利
済 金利分
分 初期投資
返 金利
済
分 初期投資
返 金利
済
分 初期投資
工事費削減額の一部を
サービス料にあてる
顧客の利益
ESCO事業者の利益
顧客の利益
返
済
分
金利
初期投資
光
熱
水
費
削
減
額
}
光熱水費
事業採算性の向上
解決策の提示:更なる解決策②
設備改修一体型ESCO事業
ESCO事業 = いくつもの省エネ手法の組み合わせ
中には効果は大きいが
費用も大きいものも
採算性の悪化
こうした設備のみ自己資金で調達
資金は必要となるが効率的なESCO事業が可能に
実際に京都市はこうした手法を検討中
解決策の提示:更なる解決策③
チューニングの活用 Ⅰ
ESCO事業 = 主に設備導入で省エネを実現
設備の導入には資金が
必要
しかし
設備に頼らずとも
省エネは可能
運用改善(チューニング)により省エネが可能
このノウハウをESCO事業者が提供
それをサービスと捉えESCO事業に組み込む
初期投資が少なくなり採算性が向上
解決策の提示:更なる解決策③
チューニングの活用 Ⅱ
しかしチューニング
でどれだけの省エネ
が可能なのか?
チューニングにより
7年連続前年比5%減の
省エネを実現した
福岡市総合図書館の例
福岡市総合図書館の取り組み
•ブラインドを水平にすることで空調の効率を上げる
•中間期には風除室の室内側の自動ドアを開放したままにし、無駄な開閉をなくす
•照明スイッチにシールを貼り、無駄な点灯をなくす
7年間で18個ものチューニングを実施
チューニングによる省エネも十分可能である
解決策の効果
解決策
問題点
大阪府の解決策
中小規模施設への導入
国の支援強化
自治体事業の魅力のなさ
工事費削減分の活用
地方自治体ESCO事業
保証に伴う多大な労力
が容易に
設備回収一体型事業
不十分な国の支援
チューニングの活用
契約上のリスク管理