JAS有機有機農産物の 導入促進のおすすめ

有機農産物マーケットの
現状と将来像
2011.05.10
㈱自然農法販売協同機構 専務取締役
NPO法人 オーガニック協会 監事
古川久彦菌学研究所 研究員
林 美容健康自然素材研究所 研究員
平成22年度 福島県 オーガニック・コーディネーター
法務博士(専門職) 南埜 幸信
[email protected]
東日本大震災関連
福島原発事故と有機農業


レベル7に評価されたほどの放射性物質の大量
飛散
食品衛生法による出荷停止ではなく、原子力災
害防止特別措置法による出荷停止



ただし食品への放射能残留は食品衛生法の残留基
準を援用
農業者・食品メーカーにとっては初めての経験
有機農業独自の食品中の放射能残留基準は存
在しない。基本的には各国の一般基準による
2
問題は土壌への放射性物質の残留
特にセシウム





ヨウ素131は半減期が8日であることから長期にわたって
の影響が少ない
セシウムは半減期30年と、長期にわたっての影響が懸念
されることから、土壌の残留基準が問題となった
日本には土壌の放射性物質の残留基準が無かった
セシウムはカリウムやアンモニア態窒素との拮抗作用が
あるという特徴がある→土壌残留濃度と植物への吸収度
合いは必ずしも相関関係にあるとはいえない
作物によっても、部位によっても(葉・実・茎・根)セシウム
吸収係数は異なる→作物によって土壌残留基準の設定
3
が必要となる可能性がある
放射性物質をどう浄化するか
有機農業の育土技術に多くのヒントがある



有機農業の基本は育土技術
 生き物の総体としての土の活能力をいかに回復し、高めるかが
育土のポイント
土の偉力を回復させるには
 生物活動を阻害する、過去の化学肥料の残さ(塩基)や、土壌
中の残留農薬を取り除くための技術
土の偉力を高めるには
 堆肥の活用→自然界の有機物を発酵させたもので、
土壌の腐植や土壌生物を増やす
 緑肥の活用→土を育てる能力の高い植物を、輪作・間作・混作
等で積極導入
4
自然界の回復力を活用した土壌の
セシウム除去の代表的な対策とは

客土


深耕



地表に降り注いだセシウムを含んだ表層土を取り除き、他の汚染を受けて
いない土壌と入れ替える方法
土壌下部へのセシウムの下降スピードは1cm/年程度といわれているの
で、物理的に深く反転的に耕し、根の届きにくい下層へ一気に埋め込む
ケイ酸やゼオライトなどの、セシウムを強く吸着して安定化させ、
離しにくくする粘土鉱物を土中に混ぜ込む
ファイトレメディエーション(生物による吸着除去)

ひまわり、ヒユ科の植物、菜花など、セシウムをたくさん吸収してくれる植
物を、輪作・間作・混作・バンカープランツ活用など積極的に取り入れ、そ
れらの植物遺体を、圃場系外に持ち出し、適切に処分する。いわゆる放射
5
性物質クリーニングクロップによる圃場の掃除
各セシウム除去対策の長所と短所

客土


表層土は地球の貴重な資源。植物の幼少期を育て
るには欠かせない生物資源。1cm育てるのに自然界
は100年の年月をかけてきた。これを、汚染の有無だ
けで置き換えるのは、取り返しのつかない損失。加え
て膨大なコストもかかる
深耕

表面から消えるが、土中には眠った状態で残ること
になり、臭いものには蓋をしろ的な一時しのぎにすぎ
ない。激しい耕うんによる農業者への被爆も問題 6
各セシウム除去対策の長所と短所

粘土鉱物投入による吸着固定作戦


単位面積あたりの投入量とその効果についての知見が無く取
り組みにくいが、低いコストで一定の効果が期待できる。また、
表層土は維持される。
ファイトレメディエーション

チェルノブイリやスリーマイル事故後に、実際に行われた方法。
作物としては「ひまわり」が代表。効果については、様々な報告
があるが、95%近く除去できたというレポートもある。福島県の
生産者とは、ひまわりを農業復興のシンボルとし、積極的にひ
まわり導入の取り組みを進めようと相談中。題して「ひまわり復
興作戦(sun・flower operation)」。当然表層土は維持される
7
TPPについて



農業生産法人など規模の大きい農場ほど、中国人研修生
など、外国人労働力に依存する割合が高い実態がある。
→日本の農業現場では外国人労働者がないと成り立たな
くなっている
日本だけ鎖国をして、国際関係が成り立つはずがない。
世界はEUのように国境を越えた経済活動を行う時代に向
かっている
しかし、食糧・エネルギー・水や地下資源は、国の存立の
基本。これらの確保についての安全保障が国家存続の基
本である
8
TPPへの参加に賛成・反対ではなく
TPP時代をどう迎えるかの議論を

日本の農業の将来ビジョンを示す
農業存在の原点から考える
農業の役割とは、自然環境との共生により、持続的
に国土の環境を守りつつ、食糧を永続的に供給し、
国民の健康を守ること
 なぜ国内農業が必要なのか
 日本の農業のあるべき姿とは


ばらまきではなく、国の「志」と「ビジョン」に合致
する農業者に集中して補助金や政策資金を運
9
用すべき ex:EUの農業環境政策など
今なぜ有機農産物なのか
~欧米先進国の志向の背景~

現在の先進国の農業が抱える根本問題
 生産過剰と農地の荒廃


農産物の質の低下


栄養価、安全性の低下、残留農薬、硝酸態窒素の残留、環境ホル
モンによる種の存続の危機 →食べ物と健康との関係・予防医学
農業による水系環境汚染


表土流亡や塩類集積(化学肥料の残留物)による砂漠化が進み、土
壌病害が多発し、農地が破壊されてくのに、農産物が取れすぎて余
り、その品質は低下の一途を辿る。
農業で使用する化学肥料や農薬が、特に地下水や河川湖沼ひいて
は、海洋まで含めて重大な汚染源として問題になっている。このま
ま放置すると、近い将来には、莫大な浄化コストをかけないと、飲み
水の確保が困難になると予想されている
農業後継者不足

農業経営が成り立たない→農業後継者が育たない
価格政策なき経営
農業に将来の夢を託せない。
農業経営に希望がもてない
10
農業は将来の国力を創る

歴史的にみて、国や民族の興亡のうらには、農
業と食べ物の変化がある。




ローマ帝国の興亡 にんにく→香辛料
過放牧や不適切な農地開発による土壌の砂漠化
成人病の若年齢化やがんの多発。医療費の増大と
国家財政の破たん
韓国では学校給食への有機農産物導入を法律
が後押し→10年後の韓国の国力を担うのは今の子供たち。
さらに強い国にするために、子供たちに本物の
11
食べ物をという政策
今なぜ有機農産物なのか
~EUのオーガニック志向の背景~

地下水を守るために、オーガニックへの転換を促進
→農業環境政策が1992年より施行され、環境保全に
貢献する農業ほど、直接払い制度により、補助金が
多く支給される仕組み。
→EUの有機実施面積は全農地の4%。多い国からスイ
ス12%、イタリア9%、ドイツ6%等
12
EU各国は農業環境政策に多額
の予算を配分している
13
EUの環境農業政策が、有機の
驚異的な拡大をもたらしてきた
14
今なぜ有機農産物なのか
~農業による環境汚染事例(日本)~

千葉県の北総台地の地下水が危ない


宮古島の地下水汚染



地下30mの井戸の水が飲めなくなりました
 原因は、硝酸態窒素汚染。紛れも無く農家の方々が畑に使用してき
た化学肥料が原因。
 15年前は飲用適であった。地下水が化学肥料により、急速に汚染
されている実態がある。
沖縄の美しい珊瑚礁で囲まれた宮古島で、今飲み水が危険な状態に
なっている。
 宮古島は、地下に大きな地下水プールがあり、水不足に悩ませられ
た沖縄本島などと違い、昔から水に困ったことがなかった。
 これも農業で使用している化学肥料が原因。隆起珊瑚礁の島なの
で、地下水への浸透が早い。
今こそ農業の本質的な転換をはからなければ、子孫に
飲み水を残せなくなる。化学
有機へ
この危機感を共有しなければならない。
15
今なぜ有機農産物なのか
~アメリカのオーガニック志向の背景~

増大する医療費と国家財政の危機
予防医学という考え方→病を治すのではなく「無くする」
「医者いらず」社会の実現

食べ物と健康 農薬や化学肥料は人体に有害な化学物質


食べ物によって体が作られていくことから、元となる食べ物の質が
健康維持の基本。人間も生き物である以上、より自然に近い食べ
物を食することが、病を無くする基本。
土から見える人間の未来
土から育つのが食べ物である以上、今の土の状態から人間の未来
が予測できる。
・現在の農地の状態
現在の健康問題
栄養過多と偏り
肥満・成人病の低年齢化
固くなり緩衝能力が低下
肩こり・老化の進行
冷えて活性が低下
冷え症・内臓機能低下
微生物等の生物相が貧困化
腸内細菌の貧相化

16
今なぜ有機農産物なのか
~アメリカのオーガニック志向の背景~

アメリカで拡大(大衆化)する有機マーケット
アメリカのオーガニックスーパー「Whole Food」の成功



LOHAS(ロハス)マーケティングの拡大とオバマのグリーンニューディール
政策



スーパーが、有機・健康・環境をキーワードに商品開発および導入を促進。その戦略が圧
倒的な支持を受ける。全米で250店舗規模で、有機食品の品揃えが30%超える(生鮮野
菜では、70%)実績。
リーマンショック以降も、安売りスーパーを尻目に、早々に利益回復。株価は2年前の底値
の約3倍に跳ね上がった。(2010年6月現在)
生活全般での健康・環境へのライフスタイル提案型マーケティングの成功
生産から加工、小売までの一貫した事業戦略を、行政が後押し。ニューヨークのグリーン
アップル計画は、オーガニックをさらに押し上げ。
予防医学から、食べ物の重要性の社会的認知


アメリカ医療財政の破綻と、マクガバンレポート
食生活を中心とするライフスタイルの変革こそが、最も合理的で、経済的な改革方法→元
17
禄時代の日本食が理想的な食事と結論づけられた
今なぜ有機農産物なのか
~アメリカの予防医学研究~

アンドリュー・ワイル博士が中心となる
博士は、ハーバード大学医学部卒業。
現在アリゾナ大学の医学部教授。医学博士
 アメリカの大学で、初めて「代替医学」講座をひらき、文
明社会における自然療法の可能性を追求
 著書「Health and Healing(和名人はなぜ治るのか)」
が、全米のベストセラー(ノンフィクション部門)の1位とな
り、その実践書「ワイル博士のナチュラル・メディスン」とと
もに、医学研究と治療分野での功績にたいするアメリカ
最高の賞といわれる、ノーマン・E・ジンバーク賞が与えら

れている。
18
今なぜ有機農産物なのか
~アメリカの予防医学研究~

予防医学・代替医学の研究
 アリゾナ大学から始まって、今では、
ハーバード大学 コロンビア大学 エール大学など
34校が専門の機関を設置し、それらの機関が母体と
なって、全米各地に、統合医学プログラムをおこなう機関
が生まれつつある。
・ワイル博士を軸として、イギリスの医学専門誌「ランセット」
編集長など、有力な医師や研究者、医療ジャーナリスト
による専門的研究誌「統合医学」の発刊も決まり、日本か
らは帯津三敬病院の帯津良一院長が編集委員に加わる
予定になっている。
19
20
日本ホリスティック医学協会がすすめ
る、自然治癒力を高める養生法とは

その季節にその土地でとれた食べ物
大地の生命場と私たちの身体の生命場は繋がっている。「身土不二」

植物性の食べ物
人類の歯の構成から考えると、動物性15~30%、植物性70~85%が理想の比率

できるだけ自然な食べ物を
できるだけ無農薬・無化学肥料のオーガニックなど、自然に近い食べ物をとるように心
がける

作る人の思いがこもった食べ物
農産物には生産者の思いも反映されるので、消費者の健康を願って栽培された食べ
物のほうが、生命力を高めてくれる

免疫力を高める食べ物
免疫力を高める食材としては、発酵食品、きのこ類、藻類、野菜、緑茶、植物油など
21
量販店へのJAS有機農産物供給
の現状~自然農法販売協同機構の現在~

有機専用コーナー設置型











量販店で単品大量納品型



西友(首都圏で約100店舗常設)
伊勢丹百貨店、クィーンズ伊勢丹(25店舗常設)
静鉄ストア(33店舗常設)
・明治屋(3店舗常設)
マイカル(10店舗常設)
・マックスバリュ西日本(6店舗常設)
ヤオコー(100店舗常設)
北雄ラッキー(札幌中心に約30店舗常設)
東都生協(約30万世帯会員・共同購入)
山陽マルナカ(約8店舗常設)
・いちい(約5店舗常設)
京阪百貨店(5店舗常設)
・まるしめ志賀商店(札幌中心に5店舗)
ローソン100(首都圏630店舗常設)、ナチュラルローソン(首都圏10店舗常設)
イオングループ(イオン・マックスバリュ)(全国納品)
イトーヨーカドー (首都圏中心に10店舗程度納品)
有機・特別栽培共通PB運用コーナー設置型

東急ストア
・京急ストア
・ナチュラルハウス

サミット
・富士シティオ
・サントク
・小田急OX
年商 約13億円
22
国内有機市場ボリュームとユーザー特性
2010~2011 OMR調査報告書より
ユーザーの用語の認知とヘビーユーザー
2010~2011 OMR調査報告書より
家庭における有機食品の購入金額
2010~2011 OMR調査報告書より
殆ど全て有機を購入している、と答えている人
の中では、月10,000円以上家庭で有機食品
を購入している人の比率が6割を超えている
平均月額を推定すると、
殆ど全て有機:
約11,800円
殆ど全て減農薬
約11,400円
一部有機や減農薬 約 7,200円
殆どすべて有機と答えた人は消費者の0.9%
であるから、世帯数(4900万)×0.9%×12ヶ
月で約624億円の市場規模が、ヘビーユー
ザーだけで推定できる。この数字を前提にパ
レート分布のモデルにあてはめて日本の有機
食品の市場規模を推定すると、1300億円~
1400億円と推定できる。
また、有機だけではなく特別栽培や減農薬など、
安全環境配慮型商品の市場規模は約5倍の
6000億円程度はあると考えられ、有機市場に
はその程度のポテンシャルがあると考えること
が可能。
・
有機食品の購入量の変化
2010~2011 OMR調査報告書より
全体平均(週1回以上有機食品を利用する人)
で、9割は最近1年間で有機食品の購入額は変
わっていないと答えており、既存のユーザーの
中だけで需要が急速に拡大する可能性は少な
いと考えられる。従って、これから有機食品の需
要を拡大するには、今まで有機食品をあまり購
入してこなかった消費者を取り込む必要がある。
・
殆ど全て有機を購入している、と答えている人
の中では、19%の人が最近1年間で有機食品
の購入額が増えていると答えている。このお客
様がいちばん伸びているということは、有機食
品の開発がすすむと、さらに有機のマーケット
は深化すると推察される。
有機食品の購入先
2010~2011 OMR調査報告書より
購入先は、スーパーが最も多く、次
いで生協(店舗・宅配)となっている。
ヘビーユーザー層でさえ、その傾
向は変わらない。つまり、有機食品
の販売の主役は、以外にも(?)
スーパーである。
有機米だけは、他の商品と比べ
スーパーの比率が少なく、農家か
ら直接やネット販売会社といった短
い流通経路が多くなる
直売所の有機購入は、大部分が消
費者の理解不足で、実は有機では
ないものと思われる
生産者から直接購入している比率
を金額ベースで推定すると8%程
度となり、100億円程度の市場規
模となる。
有機食品の価格イメージ
2010~2011 OMR調査報告書より
従来の調査の価格について
の質問では、「どの程度の価
格差なら購入しますか」という
聞き方をして、3割高までな
ら」と答える人が多かったが、
この調査では、実際の価格イ
メージを「一般と比べてどの程
度高いか」と聞いた。ユ-
ザーが価格差としてイメージ
しているのは、10~20%程
度である。
殆ど全て有機を購入している、
と答えている人は、「一般のも
のと変わらない」と答える比率
が高いが、これは高級スー
パーや百貨店など、価格帯の
高い売り場で購入している傾
向が推察される。
有機食品の情報源
2010~2011 OMR調査報告書より
店頭での表示・説明が最も多く6割になってい
る。新聞・テレビなどのマスコミは5割に満たな
い。他の商品分野の情報源と比べ、マスコミ、イ
ンターネットが少ないのが特徴的。これは、有機
食品のユーザーが限定的で、発信者であるマス
コミ側が有機食品にニュースバリューを感じて
いないためと考えられる。
・
一方、店頭でも「店頭の表示」と「店員の説明」
では大きな差があり、「有機」についてしっかり
説明できる店員の教育や配置が十分でないこと
が推察される。これは小売業に対する調査で、
店員の教育が実施されていないことからみても
明らかである。
殆ど全て有機を購入している、と答えている人
は「書籍」の比率が高くなっているなど、能動的・
積極的な情報収集傾向がみられる。
有機食品の評価
2010~2011 OMR調査報告書より
現在利用している有機食品について、「総合的
に満足している」と答えた人の比率は、「そう思
う」「まあそう思う」を合わせて72%である。
・
評価の高いものは、「安全である」「美味しい」
「健康に良い」「という評価である。
評価の低いものは、「手にいれやすい」「品ぞろ
えが豊富」という要素である。
「環境に負荷をかけていない」という評価は低い。
つまり、環境面での理解と評価は不十分である。
マスコミなどからの情報不足などともあわせ、環
境性・公共性からのPRが大きな課題である。
日本の有機市場調査の結果から
有機を増やすためには



日本の消費者の志向として、「健康」「安全」「美味しい」といった利己的な要因が
多いアメリカ型が特徴。「環境保全」「エシカル」といったヨーロッパ型の志向を育
てることが必要
「なぜ有機なのか」を多様に発信し続ける
有機を選択することがどのような社会貢献になる?
満足を高めるには情報提供を充実させる必要があり、たくさん買ってもらうために
は品ぞろえや入手のしやすさを改善する必要がある。
多様な「有機商品群」を提供
オーガニックライフスタイル提案型の情報と商品の提供
買いたくてもなかなか買いたいものが手に入らないという状況が、市場の拡大を
阻害している
近くの小売店で選んで買える。
オーガニックワンストップショップや常設コーナーの実現
量販店へのJAS有機農産物供給
における産地の課題

産地の自己管理能力の向上


内部管理・組織管理能力の向上
精度の高い情報の発信と提供力の向上


農家および生産団体と、弊社との関係構築においては、契約観念の確
立の訓練と位置づけている(特に価格・数量について)
産地の金融と資本力をどう向上させるか


農協+銀行という資金調達をどう創出するか?
生産法人やLLPの活用など、生産組織のあり方も検討
→直接払い制度での受け皿の構築という側面からも要検討

生産組織に優秀な経営者をどう確保するか。
社外取締役や農場経営コンサルタントの確保と配置

生産者の経営能力、マネージメント能力の向上
→名プレーヤー、名監督にあらずという事例が多い
夜間や通信制の経営大学の設置。栽培科学の再教育制度の導入
32
有機農業は、育てあうことで、
拡がる 育てあう仕組みの構築がポイント



有機農業を普及するカギは、育てあう仕組みをどう
構築するかにかかっている。

経済合理主義価値体系の経済

生命と環境主義価値体系の経済
生産者から流通から加工から消費者に至る、すべて
の過程で、有機農業および有機農産物の社会的意義
を明確にした、資本を超えた、企業や集団が機能的
な有機拡大アライアンスを多様に構築する。
造り酒屋さんと酒米生産農家との関係つまり、村米
制度を参考に、有機オーダーエントリーベースの取
引の仕組みを構築し、戦略的作付け計画の策定と、
販売機会を共有する。
33
有機コーナーの事例
生産地から売り場が直結
34
有機農産物の
販売拡大のために

「有機」がブランドとして、特別栽培から分離されていない。

有機も特別栽培も、ガイドラインで、同時に世の中に出されたた
めに、今だに同類として売り場に展開されている。

イオンのグリーンアイも、ヨーカドーの顔見え野菜も、東急スト
アの健康菜果も、圧倒的に特別栽培もしくは、イオンに至っては
それ以下のもの(3割減までOK)が大部分

有機と特別栽培は、同じグループだという齟齬から脱却できてい
ない。→ぜひとも有機をという発注にならない
※スーパーでは有機専用コーナー(常に有機のみで品揃え。特別栽培は入
れない)の拡大を促す

有機農産物を購入することが、地球環境に貢献する行動であり、
病を無くする社会創造の一歩であることの認識を浸透・定着させ
るプロモーションの検討
→医学会、栄養学会、体質転換ウェルネスセンター等とのコラボ
※有機メイン販売スーパーの実現

多様な有機食品の開発を急ぎ、圧倒的有機量販スーパーチェーン
を実現したい

アメリカの有名なオーガニックスーパーであるホールフーズをモ
デルに、ホールフーズ・ジャパンを具体化したい。
35
日本の農業の将来像を描くには
まず農業者の自立が基本


生産者一人ひとりが、農業をおこなう企業の経営者とし
て、いわゆる「ひと」「もの」「かね」をどのように集約し、
どのように活用し、どのような商品を世に出していくのか
という経営能力が問われている。
農業企業経営者として、流通や小売企業と、対等な立
場で、合意し、双務契約を遂行する責任能力が問われ
ている。
委託販売
生産者に価格決定権
や交渉権がない。
合意による契約販売
生産者が当事者として、価格決定
に参加。
企業の原点
なぜ企業が存在できるのか

世のため、人のためにお役に立てること

お役に立てた分、利益をいただける

企業価値とは、経営者(生産者)の人格に
よって決まる。なぜなら、その商品は、携
わる人の人格が、味と品質に反映される
からである。
→心がこもった商品は人に感動をもたらす37
企業の存在の原点

1.
2.

1.
2.

1.
思想
企業存続の意義と理由→なぜ存在できるのか
企業設立の高い志→世の中にどう貢献したいのか
ビジョン
企業意思を実現するための具体的目標
社会の変化にあわせた、企業意思の成熟
戦略
ビジョンに実現のための具体的戦略
経営戦略、価格戦略、プロモーション戦略
38
農業の存在意義
安全で美味
しい食べ物
の供給
環境保全に貢献する農林水産業の提案から
健康で豊かな食生活と持続型社会を創造する
国土の環境
を守り、生命
資源を守る
自然との共生
により、食物を
永続的に供給
する
農業は、生命文明の核心

1.
2.
3.
4.
5.
6.
農業でしか実現できない社会貢献こそ、農
業から利益を生み出せる基本原則
生命と健康を支える食べ物を提供する
未来にわたり永続的に食べ物を提供する
水や大気を浄化し、地球環境を保全する
環境や生き物を学ぶ場を提供する
美しく豊かな生活を送るための自然資材
を提供する→自然素材は工業では作れない
美味しさを通じ、人生の喜びを提供する 40
これから社会で何が起こるのか
田坂広志理論

ウェブ革命が、資本主義のすべてを変えていく。


「情報革命」とは、情報技術の革命ではない
「情報革命」とは、情報のあり方の革命
世の中で情報というものが、どのようにして生まれ、伝えられ、
共有され、編集され、活用されるか。そのあり方が根本的に変
わっていく革命のことである。
情報革命の進化は、次いで「市場」「消費者」「企業」「ビ
ジネス」「商品」「サービス」「戦略」「マネジメント」「知識」
「資本」などの資本主義の基本要素を進化させる。
41
これから社会で何が起こるのか
田坂広志理論

ウェブ革命による12の変化(キーワードは一方通行→双方向)
1.社会の隅々で、劇的な「権力の移行」が起こる
2.市場において「生産者」と「消費者」の区別が消えていく
3.消費者が企業を使って「商品開発」を行うようになる
4.消費者が価格を決め、「マーケティング」を行うようになる
5.企業は「販売促進」よりも「購買支援」をしなければならなくなる
6.顧客には「競合商品」や「異業種商品」も紹介しなければならなくなる
7.ビジネスの本質が、「商品の提供」ではなく、「ライフスタイルの提案」になる
8.「良い商品」を創っても、売れない時代が到来する
9.「他社の智恵」や「顧客の智恵」をマネージメントしなければならなくなる
10.知識社会では、「知識」が価値を失っていく
11.「収益」戦略よりも、「収穫」戦略が重要になる
12.「マネタリー経済」と「ボランタリー経済」が融合していく
42
ウェブ革命は「主客融合」の革命
をもたらす (キーワードは双方向)

「情報発信者」と
「情報受信者」

「生産者」と「消費者」

「企業」と「顧客」




これらが一体化し、融
合し、区別が無くなる。
つまり、主客融合が起
きる。
企業と消費者が一体
になって商品開発を行
う、プロシューマー型
開発が進む
企業に替って顧客が
商品開発やマーケティ
ングをおこなってくれる43
ウェブ革命は「感性共有」の革命
をもたらす (キーワードは感性共有)


感性共有とは、多くの人々が感動、感覚や感性
を共有できるようになること
単に文字や文章だけではなく、音声や音響や音
楽、写真や映像や映画など、感覚や感性に直接
働きかける情報を簡単に共有できるようになる。

草の根動画共有サイトYou-Tubeは、感情、感動、感
覚、感性共有サイト。誰もが放送局になれる
44
商品のユビキタス化により、すべて
の商品が情報端末を持つようになる


多くの商品がQRコードな
どで、自身の履歴情報を
持つようになる。
すべての商品が、自分自
身について語り、顧客と
対話するようになる。
具体例
有機野菜を買うと、パッケージのQRコードに携帯電話
をかざすとその有機野菜を栽培した生産者のサイトに
飛ぶ。そして画面にはYou-Tubeなどを利用した生産者
のビデオ映像が出てきて、有機野菜にかける思いを語
る。他のページに飛ぶと、お勧めレシピがあったり、有
機野菜がなぜ体に良いかを語る説明文とナレーション
が流れる。質問を送ると、翌日にはメールで返事がくる
45
ライフスタイルの提案が商品の
販売には不可欠になる


販売代理・販売支援
マーケティング促進

購買代理・購買支援
生活支援・生活提案

ショッピング支援

ライフスタイル提案

最近市場でヒットしている商品の
多くは、いずれもこのライフスタイ
ルの提案に成功した商品
46
㈱自然農法販売協同機構の
売り場用パンフレット
~テーマはライフスタイルの提案~
47
㈱自然農法販売協同機構の
売り場用パンフレット
~テーマはライフスタイルの提案~
48
「良い商品を創れば売れる」とい
う時代ではなくなる

市場で商品同士が戦う時代が終わった
「商品生態系」同士が戦う時代が始まった
ウィンドウズ 対 マックOS →IBM互換パソコンへの組み込み成功
(ソフト・パソコン・周辺機器という商品生態系)
VHS 対 ベータ→映画供給会社との提携成功
(ビデオテープ、映画ソフト、ビデオ、カメラという商品生態系)
イノベーションとは商品生態系の進化という意味になる
有機コシヒカリ→米ぬか→米ぬか石鹸
内からも、外からも自然素材であなたを美しくするライフスタイル
49
ネット革命が市場に様々な「商
品生態系」を創りだす



顧客の特定のニーズに関連した、すべての商品とサービ
スが集まり、「ワンストップ」で提供される場が「ポータル
サイト」
「ポータルサイト」とは、世の中に存在する「商品生態系」
が目に見える形で姿を現している場
「ポータルサイト」が、商品生態系の「進化」や「創発」を促
していく。
 その理由
→顧客の声が集まる「顧客コミュニティ」が生まれるから
顧客の行動が「消費」から「体験」へと進化するから 50
異業種の智恵を束ねる企業が
市場を主導する



商品生態系同士の競争においては、異業種の
企業と提携し、互いの知識や知恵を結集し、より
優れた「商品生態系」を生み出す努力が求めら
れる。
魅力的な「パッケージ商品」や「トータルサービス
」とは、何よりも、その背後に魅力的な「ライフス
タイル」の提案があるもの
異業種が集まってこそ、多面的で深みのある全
体性を持った「顧客像」や「顧客のライフスタイル
像」をもつことができる
51
異業種のナレッジ・マネジメント
をどのようにして行うか?

1.
2.
3.
4.
「コンソーシアム」と「ポータルサイト」の統合戦
略である。
生活者のニーズに応える新たな産業やビジョンを掲げ、異業種を集めて「
コンソーシアム」(異業種連合)を結成する。
次にそのニーズを中心に、各社の商品やサービスが集まる「ポータルサイ
ト」を開設する
コンソーシアムにおいて、各社の知識と智恵を集め、新たな智恵の創発を
促し、魅力的な「パッケージ商品」や「トータルサービス」を開発する。
さらにその商品生態系群を、新たなライフスタイルの提案とともに、ポータ
ルサイトで提供していく
52
オーガニックコンソーシアムの設立

構成員は
有機農業生産者、JA農業協同組合、加工業者、食品産業、ホテル・旅館業、
レストラン、学校給食、化粧品、衣類メーカー、NPO法人等でともにオーガニ
ックに取り組みたいと考えている方。サポーターとして、都道府県や市町村
の行政の方々、オーガニックコーディネーター等

目的は
オーガニックブランドの創発、
ライフスタイル創造型オーガニック商品群の開発と提供

その活動
オーガニックポータルサイトの運営
有機農業の6次産業化の推進(2010年12月に農業6次産業化法案成立)
53
コンソーシアムで
オーガニック宣言
1.
2.
3.
4.
5.
私たちは、美しい自然環境と、きれいな飲み水を守り、子々孫々
に伝えるため、ここにオーガニック立国宣言をします。
私たちは、日本の台所としての役割を強く認識し、オーガニック農
業を基本に、消費者に安心と安全と健康を届けます。
私たちは、未来の主役である子供たちに、オーガニックを基本と
した学校給食と食育を推進し、日本の健康立国・環境立国の主
役となる人材を育てます。
私たちは、オーガニックにより豊かな自然と、生物多様性を守る
ことで、癒しと安らぎの場としての観光産業を伸ばします。
私たちは、オーガニックライフスタイルを創造するための、あらゆ
る自然素材を提供すべく、志を同じくする事業者でベストなチー
54
ムを構成し、その開発につとめ、持続型社会のモデルをつくりま
オーガニックコンソーシアムの将来像
~農業は素材提供産業から、生命文明型ライフスタイル提供産業へ
有機堆肥・液肥
の開発プラント
/天敵IPM/
有機栽培技術研
究
加工メー
カー
衣食住
トータル
に
地域自然・
有機素材に
よる滞在型
エステ
有機を美味
しく楽しく使
うための食
品開発・販
売
オーガニックブラ
ンド共有連携
の有機農場
運営
ダイエット&
ビュー
ティー
量販店/
ホテル・レ
ストラン/
ネット産直
種苗会社の開発
チーム・機能性食品・
美味しさ・栄養価・調理特
性
環境農業教
育(食育)/
オーガニック
大学/学校
給食
総合ウェルネス
センター (農場
付設ホテル事
業として)
農業後継
者・料理
人・家庭
菜園愛好
者・学生
統合医療に
よる体質改
善プログラム
/園芸療法
/癒しと安ら
ぎセラピー
㈱自然農法販売協同機構を核
とする オーガニック・コンソーシアム
有機はちみつ・有機はちみつコスメ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈲松本養蜂総本部

有機野菜ジュース・有機浅漬けの素・ドレッシング等 ・・・・・・・・・・・光食品㈱

国産有機冷凍野菜(北海道と鹿児島の冷凍加工工場)・・・・・・・・・㈱ビオテール

有機豆腐・味噌およびその関連商品を農商工連携(有機餌)・・・・㈱ヤマキ醸造・㈲豆太郎

有機浅漬けおよびその関連商品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈱またの食品

有機ダシおよび調味液等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈱マエカワテイスト

有機柑橘のジュース・ジャム等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈲三皿園

有機干し芋等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈱タツマ

有機牛乳・有機牛肉・有機コロッケ・有機飼料・・・・・・・・・・・・・・・・・日本販売農業協同組合連合会

有機アイスクリーム・有機チーズ・有機卵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈱ワタミファーム

有機豆関係加工品(餡子・和菓子・ようかん・ゼリー)・・・・・・・・・・・・㈱遠藤製餡
オーガニック&ナチュラルコスメ

・国産有機素材を原料としたコスメ商品(米ぬか・ゆず・へちま・よもぎ)・・・・㈱ネオ・ナチュラル
オーガニックコットン

・日本のオーガニックコットンの草分け企業(国産有機綿花・綿実油、有機飼料)・・・・福島県有機推進室
オーガニック産地開発

・有機農業×ビジネスの創造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・㈱オーガニックパートナーズ
オーガニック普及活動・シンクタンク

・オーガニックの普及を目指して(オーガニックマルシェ・オーガニック大学)・・NPO法人オーガニック協会
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
オーガニック事業連合を構築しオーガニックブランドの価
値を創造する →協同組合から事業連合
(オーガニック・コンソーシアム)へ
推進母体組織
の確立
企業アライアン
スの構築
オーガニックブ
ランドの全国発
信
オーガニックブランドのマーク作成と
運用ルールの策定
目的を同じくする企業との多様な
事業・資本提携
オーガニック立国宣言
事業主体の決定と活動原資の確
保および事務局設置
注目戦略の策定
教育コンテンツ(オーガニック大学
設置)と人材確保
施設・設備投資
ホリスティック医学協会/園芸療
法/園芸セラピー研究との連携
行政・マスコミとのタイアップ
ユーザーと一体になった商品開
発と評価システムの構築
自然派エステ施設の確保と人材
確保
加工商品開発着手
ブランド価値創造プロモーション、
キャンペーンの実施
直販事業の充実拡大
販売先との提携・契約
オーダーエントリーの運用
新著のご紹介 初版完売 第2刷出来
「有機農業から未来の食卓へ」
著者 南埜 幸信 出版社 日本文学館
定価600円
+消費税
本屋さんで取り寄せ、も
しくはネット書店で購入
ください。
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