子どもの特性に応じた ルール工夫のてだて 西部地区中央講習会 中・高バスケットボール 茨城大学 加藤敏弘 バスケットボールの起源 バスケットボールはもともと意図的に作られ たスポーツで、ルールは永遠に変化し続け る。 1891年アメリカマサチューセッツ州スプリ ングフィールドYMCAトレーニングスクール J.ネイスミス氏が「ダックオンザロック」をヒン トに考案 最初のルールは13条 女子用のルール 1895年ニューカムカレッジのクララベイア 氏がコートを3つに区切ったルールを考案 1898年ニューヨーク市で女子用統一ルー ル会議開催 イギリスでは1901年マダムオスターバー グ体育大学を卒業した体育教師たちによっ てルールブック発行 1926年ネットボール協会設立 ニューヨーク会議の4か条 ボール保持者から、ボールを奪取してはならない。 ボール保持者は、3秒以上、ボールを保持してはならない。 コートは3つの部分に区画されている。プレーヤーは、この 各区画ラインを越えてはならない。もし犯したときは、反則 である。 防御者は、ボール保持者に対して、ボールを奪取しようと したり、進行を妨げようとして、腕を前に伸ばしてはならな い。腕はまっすぐ垂直に上げるか、真横に伸ばした状態で なければならない。これに違反した時は、バイオレーション の”オーバー・ガーディング(Over-guarding)となる ネットボールの動ける範囲 名称と役割 GS:ゴールシューター ○ ○ GA:ゴールアタック ○ ○ ○ WA:ウィングアタック ○ ○ C:センター ○ ○ ○ WD:ウィングディフェンス ○ ○ GD:ゴールディフェンス ○ ○ ○ GK:ゴールキーパー 12345 ○ ○ 動ける範囲が一人ひとり異なる ネットボールの特徴(1) ボールを持って走ったり、ドリブルすることが禁止されてい るので、パスでボールを繋ぐことが要求される。しかし、パ スする2人の間を相手チームの選手がカットのために通れ ないような間隔でのパスは認められていない。 ボールを持っている相手から90cm(小学生の場合は 120cm)以上、離れてディフェンスしなければならない。相 手が持っているボールを奪うことも、相手の身体に触れる こともできない。 ボールを持っている人は、3秒以内に味方にパスしなけれ ばならない。また、スローインを含めて3つに区切られた コートの1区画を飛ばして次の区画にいるプレーヤーにパ スをしてはいけない。 ネットボールの特徴(2) 身体接触を伴う反則が起きたときは、相手にペナ ルティパスが与えられる。ゴールサークル内の場 合は、その場から直接シュートをすることもできる。 この時、反則を犯したプレーヤーはペナルティパ スを行う選手の手からボールが離れるまで、傍ら にじっと立っていなければならない。 身体接触を伴わない反則が起きたときは、相手に フリーパスが与えられる。ゴールサークル内の場 合でも、直接シュートをすることはできない。 ルール工夫の留意点 目的を明確に 誰のために? どんな状況を打開したいのか? それによってどんな効果を期待するのか? 意外性・独創性 既成概念にとらわれないように 失敗を恐れない もともと子どもはゲームが好き やってみなければわからない やりながら子どもたちと一緒につくろう! 子どもたちは必ず何かを感じてくれる ゲームの魅力 ゲームそのものの魅力を失わせないように チーム力の向上につなげる できるだけシンプルに 話し言葉で理解できるぐらいに 何を制限するか 時間の制限(何秒以内にパス等) 得点の制限(得点毎にポジションチェンジ 等) 空間の制限(コートの大きさ、区分等) 関係の制限(ディフェンスの付き方等) ボール扱いの制限(ドリブルの回数等) 動きの制限(方向、歩数、手つなぎ等) 役割分担(サポート隊、バディ隊等) 何を子どもたちに任せるか 最初から全てを規制してしまうと閉塞感 子どもたちのコモンセンスを磨こう! 目的を見失わないで 試しのゲームをやってみよう ゲームの始め方は 審判は 組み合わせは 必ず記録を残そう 試しのゲームの後は どんな技術が必要か? なにを意識させたらよいのか? 教えることと教えないことを考える 安全面で大切なことは? チームの作戦を大切に ルール工夫の具体例と課題の抽出 コートの区切りとルールの工夫(1) 横2分割 フロントコート(攻撃側) バックコート(守備側) <ルール例> 相手のバックコートでの ディフェンス禁止 <期待する効果> (初)バックコートのオフェ ンスに余裕を持たせる。 (中)ハリーバックの意識 を持たせる。 (上)一度制限区域に入っ てからマークマンを捕まえ に出る意識を持たせる。 コートの区切りとルールの工夫(2) 横3分割 フロントコート(攻撃側) バックコート(守備側) センターコート(中央) <ルール例> センターコートでのドリブ ル禁止 <期待する効果> (初)目立つ子の勢いを止 め、ワンマンプレーを防止 する。 (中)バックパス予防の意 識を持たせる。 (上)ワンパス速攻の意識 を持たせる。 コートの区切りとルールの工夫(3) 横3分割 フロントコート(攻撃側) バックコート(守備側) センターコート(中央) <ルール例> センターコートでのディフェ ンス禁止 <期待する効果> (初)余裕のないガードに 余裕を与える。 (中)ハリーバックの意識 を持たせる。 (上)アウトレットパスの カットを狙わせ、すぐに戻 る意識を持たせる。 コートの区切りとルールの工夫(4) 縦3分割 ミドルレーン(中央) サイドレーン(両サイド) <ルール例> サイドレーンでのドリブル 禁止 <期待する効果> (初)3線速攻の意識を持 たせる。 (中)フォワードポジション からのジャンプシュートの 意識を持たせる。 (上)目立つ子にディフェン スを引きつけて味方にア シストパスする意識を持た せる。 コートの区切りとルールの工夫(5) 縦3横4分割 センターライン ファウルライン <ルール例> 各グリッドに一人づつ配置し、4 隅以外は、ドリブル禁止。相手 も持っているボールを奪取して はいけない。得点毎に横3人が まとまって隣のエリアにロー テーション。 <期待する効果> (初)パスをつなぐ意識を持たせ る。 (中)フォワードの1対1の意識 を持たせる。 (上)背の高い子にパスを繋ぐ 意識を持たせ、ゴール近辺での ピボットの技能を高めさせる。 コートの区切りとルールの工夫(6) 3ポイントライン 制限区域 <ルール例> 赤区域でのボール保持者への ディフェンス禁止。黄区域でのド リブル禁止とボール奪取禁止。 <期待する効果> (初)ゴール近辺でボールを 持ったら誰でも安心してシュー トが打てる。 (中)黄区域(アウトサイド)から ゴール下へのパスの意識を持 たせる。 (上)青区域から簡単に赤区域 に人を入れないディフェンスの 意識を持たせる。ディフェンスリ バウンドの大切さを意識させる。 コートの区切りとルールの工夫(7) 3ポイントライン 制限区域 <ルール例> 赤区域でのビックマンの シュート禁止。リバウンド はOK。 <期待する効果> (初)ビックマンへのブロッ クアウトの意識を持たせる。 (中)ビックマンのオフェン スリバウンドの意識を持た せる。 (上)ビックマンのパスさば きの意識を高めさせる。 コートの区切りとルールの工夫(8) 3ポイントライン 制限区域 <ルール例> ○○さん(あまり得意でない子) が黄区域でボールを持った時 はディフェンス禁止(但し傍らに いること)。 ○○さんからの手渡しパス禁止。 <期待する効果> (初)○○さんのボール接触機 会を増やす。 (中)○○さん以外の人のボー ルをもらう動きの意識を高めさ せる。 (上)○○さんの3ポイント シュートの意識を高めさせ、そ れ以外の人のリバウンド争いの 意識を高める。 組合せ次第 8つの例を組み合わせる。 「ドリブル禁止→1回ならOK→3回までボー ルをついてもよい→ベースライン側へのドラ イブならよい」のように徐々に制限を緩和し ていく。 背の高さや運動能力に合わせて、一人ひと りの課題に応じた制限を設ける。できれば 子どもたちと話し合って決めたい。 ためしのゲームから戦術的課題を ためしのゲームで問題点を抽出 現状認識→原因分析→対応策→必要に応 じてルール変更 ゲームを重ねるにつれ、技能の高まりが現 れ、戦術的課題も変化してくる。 子どもの能力に応じて戦術的課題を明確に し、練習計画を立てさせ、大会運営に発展 させたい。
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