中小ベンチャービジネス論Ⅱ (11月13日)

現代社会と経営
(12月6日:地域の活性化)
長岡技術科学大学
経営情報系教授 阿部俊明
垂直連携(1)
親会社の外注先に対する方針
垂直連携(2)
親事業者がとった行動(1998年以降)
垂直連携(3)
主力納入先が自社に発注する理由
水平連携(1)
事業連携活動に取り組む企業の割合
水平連携(2)
取り組む事業連携活動の内容
水平連携(3)
異業種交流活動としての新製品開発活動の
成功要因
産業集積
集積することのメリット
産業クラスター計画(1)
産業クラスターとは
● 背景
• 1990年代後半から「地域産業の空洞化」に拍車がかかり、これまでの大都市部からの企業誘致による地域の発展が困難
• 米国等においては、大学等の研究機関や中小企業・ベンチャー企業同士の自由な交流によりイノベーションが創出
● 産業クラスターの意義
• 従来型の企業誘致に重点をおいた地域経済振興が限界に達しつつある中で、各地域において経営者や技術者、研究者、資金提供者といった様々なメ
ンバーが人的ネットワークを形成し、その中でメンバーが相互に競争・協調することによって、各地域に競争力のある産業集積(産業クラスター※)を創
出
• 創出された産業クラスターが苗床となって、中堅・中小企業の新事業展開が促進され、また大学発ベンチャーが生み出されることに期待
● 政策的取り組み
• 経済産業省では平成13年度から産業クラスター計画を推進
• 海外でも、ドイツ、イギリス、オーストリアなど多くの国で政策的に産業クラスターの形成が進められている
※「クラスター」とは、本来「ブドウの房」の意味。転じて群や集団を意味する言葉として用いられている。
産業クラスター計画の推進
• 地域の研究開発能力、産業集積の特徴を踏まえ、全国19のプロジェクトで、地域の経済産業局(担当職員約500名)と民間の推進組織が一体となって、
新事業に挑戦する地域の中堅・中小企業約5,800社、220校を超える大学の研究者等と緊密な協力関係を構築
• 産学官のネットワークを形成するとともに、各種支援策を総合的・効果的に投入することにより、世界に通用する新事業が次々と展開する産業クラス
ターの形成を促進
① 地域における産学官のネットワーク形成
経済産業局自らが結節点となり、民間の推進組織と連携して、 企業訪問や研究会・交流会・セミナー等の開催、コーディネータによる産学官・企業間の
交流連携促進などによって、企業、大学、研究機関、自治体、専門商社等の広域的な人的ネットワークを形成
② 地域の特性を活かした技術開発等の推進
- 地域における産学官コンソーシアムによる研究開発(採択件数 90件 [平成15年度当初予算])
- 中堅・中小企業によるリスクの高い実用化技術開発の支援(採択件数 63件 [平成15年度当初予算])
③ 起業家育成施設の整備等インキュベーション機能の強化
- 大学発ベンチャーの起業や中小企業の新事業展開を促進するに当たって重要な大学連携型インキュベータ施設等、起業家
育成施設(インキュベータ施設)の整備
- 起業家育成施設の入居者を支援するインキュベーション・マネジャーを養成
④ 商社等との連携による販路開拓支援
- 商社等とのネットワークを活用して「産業クラスター計画」から生み出された製品の販路開拓を支援
⑤ 資金供給機関との連携
- 産業クラスターサポート金融会議との連携により、技術開発補助金などに対するつなぎ融資制度の創設など
【関連予算】 平成15年度予算額:413億円 平成16年度予算額:490億円
産業クラスター計画(2)
他省庁等との連携
「産業クラスター計画」においては、経済産業省以外の他機関とも積極的に連携することを基本方針としている
● 文部科学省(知的クラスター創成事業)との連携
文部科学省が推進している「知的クラスター創成事業」等との連携を推進
~具体的な連携施策~
- 文部科学省と合同で地域クラスター推進協議会を設置
- 合同成果発表会を各地で開催
- 地域実施機関の連携
このほか、文部科学省の施策の成果を基礎に経済産業省の施策で実用化支援をするなどの取り組みを実施
● 地方自治体等との連携
・地域産業の振興を行うには、都道府県等地方自治体と十分連携を図ることが極めて重要
・経済産業局は「産業クラスター計画」関連の事業を進めるにあたって、地方自治体との連携のもとで活動を進めている
● 金融庁(地域金融機関)との連携 [産業クラスターサポート金融会議]
・平成15年3月に金融庁が「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を発表
・産業クラスター計画については、創業・新事業支援機能等の強化という側面から中小企業金融再生に資するものとして位置付
けられており、平成15年6月までに全国11ブロックで「産業クラスターサポート金融会議」が設置
・同会議の活動成果としては「産業クラスター計画関連補助金つなぎ融資制度」、「産業クラスター計画支援ファンド」や「ビ
ジネスプラン発表会」等の事業が行われている
今後の展開
● 信頼の横のネットワークの濃密化
- 産学官・企業間を繋ぐコーディネータの発掘・育成など、濃密で強固な信頼ネットワークを形成
● 国内外のクラスター同士の連携、クラスター施策の連携強化
- 「知的クラスター創成事業」等と更に連携を強化
- 各地域の産業クラスターと国内外の他の産業クラスターとの交流機会の提供や情報提供
● 国と地方自治体の施策の擦り合わせ
- 各都道府県などが実施する「地域プラットフォーム事業」との連携を一層強化
- 「産業クラスター計画」の手法・ノウハウを全国に普及
全国17プロジェクト
北海経済産業局
◇北海道地域産業クラスター計画
情報・バイオ分野 約880社 19大学
東北経済産業局
◇東北ものづくりコリドー
ものづくり分野 約710社 29大学
沖縄総合事務局経済産業部
◇OKINAWA型産業振興プロジェクト
情報・健康・環境・加工交易分野
約430社 6大学
関東経済産業局
~広域関東圏産業クラスター推進ネットワーク~
◇地域産業活性化プロジェクト
・首都圏西部地域(TAMA)
・中央自動車道沿線地域
・東葛・川口・つくば地域
・三遠南信地域
・首都圏北部地域
・京浜
中国経済産業局
◇次世代中核産業形成プロジェクト
ものづくり・バイオ・IT分野
約390社 29大学
◇循環・環境型社会形成プロジェクト
ものづくり分野 約2140社 83大学
環境分野 約270社 20大学
◇バイオベンチャーの育成
バイオ分野 約420社 2大学
九州経済産業局
◇九州地域環境・リサイクル産業
交流プラザ(K-RIP)
◇情報ベンチャーの育成
IT分野 約930社 7大学
環境分野 約430社 15大学
中部経済産業局
◇東海ものづくり創生プロジェクト
◇九州シリコン・クラスター計画
半導体分野 約330社 14大学
ものづくり分野 約1130社 29大学
近畿経済産業局
◇関西バイオクラスタープロジェクト
バイオ分野 約400社 50大学
四国経済産業局
◇四国テクノブリッジ計画
ものづくり・健康・バイオ分野
約420社 5大学
◇関西フロントランナープロジェクト
ものづくり・情報・エネルギー分野
約1130社 30大学
口環境ビジネスKANSAIプロジェクト
環境分野 約100社 15大学
◇東海バイオものづくり創生プロジェクト
バイオ分野 約50社 46大学
◇北陸ものづくり創生プロジェクト
ものづくり分野 約390社 14大学
クラスターに関する研究(1)
• マーシャル(A Marshall,英)
生産者が集積を行う理由は次ぎの3つ(1920)
*知識のスピルオーバー
*プールされた熟練労働者
*巨大な市場(前方及び後方)
• クルーグマン(P Krugman、米)
*収穫逓増、輸送費、需要の3つからなる数学モデルを提
言。(1991、「空間経済学」参照)
→①生産者は、中間財供給者及び顧客の近くに立地するこ
とを望む
②何らかの資源(労働力等)の移動不可能性が集積力に
反する分散力として働く
クラスターに関する研究(2)
• ポーター(M Porter、米)
クラスターに関する、ダイヤモンドモデルを提唱(「競
争戦略論」、1998)
*4つの要素(要素、需要、戦略・競争、関連産
業・支援産業)
*クラスターに関し、従来の費用の最小化だけで
なく、イノベーションの意義を強調
*集積とは、産業だけでなく大学等の多様な組織
を包含
*クラスターとは、協調だけでなく競争も大事
クラスターに関するポーターのダイヤモンドモデル
企業戦略及び競争環境
・適切な投資・持続的なグレードアップを促すような状況
・地域にある競争企業間の激しい競争
要素(投入資源)条件
・天然資源、人的資源、資本、インフラ
需要条件
・高度で要求水準の厳しい顧客
関連産業・支援産業
・有能な供給業者の存在
・競争力のある関連産業の存在
ネットワークの研究(1)
• ピオリ・セーブル(M.J.Piore & C.F.Sabel)
「大量生産システム」と「柔軟な専門化」の2つ
を分離(「第二の産業分水嶺」、1984)
*「柔軟な専門化」は、競争を奨励し技術革
新力を維持することが課題
*地域コミュニティー型のクラフト的生産は優
れた経済活動の形態
ネットワークに関する研究(2)
• パットナム(R.D. Putnam:米)
*イタリアにおける州の研究を行った。(「哲学する
民主主義」、1993)
*自発的な協力が得られやすいのは、信頼、規範、
ネットワークといった社会資本を蓄積してきた共同
体である
*横型のネットワークが有益な結果を生み出す理
由
①裏切り者には潜在的なコストが高まる
②互酬性の強靭な規範を促進
③情報の流れを良くする
ネットワークに関する研究(3)
• ギボンズ(M Gibbons、英)
モード2の提言(「現代社会と知の創造」、
1994)
*モード1とは、従来の科学の形態(概念、
方法等)。モード2とは、より広い社会的、経済
的コンテクストの中で生み出される。
*モード1では、個人の創造性が発展の原
動力。モード2では創造性は主としてグループ
の現象。
ネットワークに関する研究(4)
• ケニー&フォンブルグ(M Kenney
&U von Burg:米)
*2つの経済(「シリコンバレーは死んだか」、2000)
第1経済(エコノミー1)の構成要素は、既に確立さ
れた企業・大学の研究所。
第2経済(エコノミー2)の構成要素は、企業形成を
奨励し育成する機関や制度(制度的インフラ:起業
家、ベンチャーキャピタル等)
ネットワークに関する研究(5)
• 野中郁次郎
知識は「場」から創発される(「イノベーションと
ベンチャー企業」、2002)
*知識創造的実在であるコミュニティーの構
成単位を「場」と言う
*暗黙知は、本質的に「場」に強く依存
*「場」はSECIプロセスに沿って知識変換を
行うための基盤
地域資源の有効活用
1,差別化のポイント(農林水産型)
2、差別化のポイント(産地技術型)
3、差別化のポイント(観光型)
地域資源の活用手法
地域資源活用の効果(農林水産型)
地域資源活用の効果(産地技術型)