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特許庁 企画調査課 活用企画班 03-3581-1101 (内線)2165
第7時限 演習
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演習事例 進歩性判断演習
進歩性の判断の対象となる発明は、新規性を
有する「請求項に係る発明」である。
本願発
明の認
定
A+B+C
引用発
明の認
定
A+B
本願発
明と引
用発明
との対
比
相違点
無し
新規性
無し(検
討終了)
相違点
有り
進歩性
の検討
へ続く
相違点
の有無
Cがない
Cについ
て検討
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演習事例 進歩性判断演習
(1)進歩性判断の基本的な考え方
①進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を的
確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明
に基づいて当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことの論理づけがで
きるか否かにより行う。
②論理づけは、種々の観点、広範な観点から行うことが可能である。例えば、請求
項に係る発明が、引用発明からの最適材料の選択あるいは設計変更や単なる寄
せ集めに該当するかどうか検討したり、あるいは、引用発明の内容に“動機づけ”
となり得るものがあるかどうかを検討する。また、引用発明と比較した有利な効果
が明細書等の記載から明確に把握される場合には、進歩性の存在を肯定的に推
認するのに役立つ事実として、これを参酌する。
その結果、論理づけができた場合は請求項に係る発明の進歩性は否定され、論
理づけができない場合は進歩性は否定されない。
特許 実用新案 審査基準 特許庁より引用
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演習事例 進歩性判断演習
(2)動機づけとなり得るもの(→必ずしも動機づけができるとは限らない)
○技術分野の関連性
○課題の共通性
○作用、機能の共通性
○引用発明の内容中の示唆
→多くの場合、技術分野が関連してると同時に課題が共通、あるいは、作用・
機能が共通している場合に動機付けが行われることが多い。
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演習事例 進歩性判断演習
①技術分野の関連性
発明の課題解決のために、関連する技術分野の技術手段の適用を試みること
は、当業者の通常の創作能力の発揮である。例えば、関連する技術分野に置換
可能なあるいは付加可能な技術手段があるときは、当業者が請求項に係る発明
に導かれたことの有力な根拠となる。
例1:引用発明の打止解除装置はパチンコゲーム機に関するものであるが、これを、同じ遊技ゲーム機であり、計数
対象がパチンコ玉かメダルかという差異はあるもののその所定数を計数してスロットマシンを停止する打止装置を有
するスロットマシンに転用することは、容易に着想し得るものであると認められる。技術の転用の容易性は、ある技術
分野に属する当業者が技術開発を行うに当たり、技術的観点からみて類似する他の技術分野に属する技術を転用
することを容易に着想することができるか否かの観点から判断されるべきところ、この観点からは、パチンコゲーム機
の技術をスロットマシンの技術に転用することは容易に着想できることと認められる。
特許 実用新案 審査基準 特許庁より引用
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演習事例 進歩性判断演習
例2:引用発明1は段ボール紙印刷機における印刷インク回収装置に関するものであり、引用発明2は印刷インキ
等の高粘性液を供給する装置に関するものであるから、両者が同一の技術分野に属することは明らかである。そ
して、前記の相違点の判断において引用発明2から援用すべきものは、移送ポンプの駆動モータを逆転制御回路
に連設することによって移送ポンプを正転・逆転に切り換えられる吐出・吸引ポンプに構成するという、極めて基礎
的な技術手段にすぎないから、両者の具体的な技術的課題(目的)が同一でないことは、引用発明1に対する引用
発明2の技術手段の適用が、当業者にとってきわめて容易であったことを否定する論拠にはならない。
ポンプ
本願
1台のポンプを
正逆回転させる
ことでインキを
供給・回収
【課題】オーダ変
更の際の貯留
部のインクの迅
速な回収
ポンプ ポンプ
ポンプ
ポンプの1台の
モータを正逆回
転させ、インキ
を供給、漏出防
止(逆転時)
2台のポン
プにより、イ
ンキを供給、
回収
引用発明1
引用発明2
特許 実用新案 審査基準 特許庁より引用
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演習事例 進歩性判断演習
②課題の共通性
課題が共通することは、当業者が引用発明を適用したり結び付けて請求項に
係る発明に導かれたことの有力な根拠となる。
例:引用発明1、2は、ラベルが仮着されている台紙を所定位置に停止させる点で、同一の技術課題を有する。引
用発明1において、その技術的課題を解決するために引用発明2のラベル送り制御手段を適用することは、当業
者ならば容易に想到し得たことである。
引用発明1
ラベルの大きさが
変わっても検出器
の位置を変える必
要がないラベル送
り制御手段
【課題】
ラベルを所定位置
で停止
本願のラベル送
り制御手段以外
は同じ構成(ラベ
ルの大きさは変
わらない)
CPU
引用発明2
本願
CPU
本願のラベル
送り制御手段
(ラベルの大き
さの変更に対
応可。その他
の構成が本願
と異なる)
特許 実用新案 審査基準 特許庁より引用
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演習事例 進歩性判断演習
③作用、機能の共通性
請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明特定事項との間で、作用、機能が共通することや、引用
発明特定事項どうしの作用、機能が共通することは、当業者が引用発明を適用したり結び付けたりして
請求項に係る発明に導かれたことの有力な根拠となる。
例:引用発明1のものと引用発明2のものとは、印刷装置のシリンダ洗浄を布帛を押圧して行うものである点で共通し
、引用発明1のカム機構も引用発明2の膨張部材も布帛をシリンダに接触・離反させる作用のために設けられている
点で異なるところはない。そうすると、引用発明1のカム機構に代えて、押圧手段として引用発明2の膨張部材を転用
することの背景は存在するということができる。
空気により膨張させる膨
張部材。凹版印刷用。
空気により膨張部材を膨
張させて洗浄布帛をブラン
ケットシリンダに接触させ、
洗浄。オフセット印刷用。
本願
押圧部材をカムにより押
圧して洗浄布帛をブラン
ケットシリンダに接触させ、
洗浄。オフセット印刷用。
引用発明2
引用発明1
特許 実用新案 審査基準 特許庁より引用
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演習事例 進歩性判断演習
④引用発明の内容中の示唆
引用発明の内容に請求項に係る発明に対する示唆があれば、当業者が請求項
に係る発明に導かれたことの有力な根拠となる。
例:引用例には、陽イオン性でしかも化学的前処理が不必要な水性電着浴を得るという本願発明と同様の目的に適
する金属イオンとして、電位列中の電位が鉄の電位よりも高いものという条件が挙げられており、具体的に7種の金
属イオンが例示されている。この中には本願発明の特定構成である鉛イオンは記載されていないが、鉛は電位列中
の電位が鉄の電位よりも高いことは周知の事実であるから、鉛イオンを用いることは引用例に示唆されているといえ
る。したがって、鉛イオンを用いることが本願発明の目的を実現する上で不適当である等の事情がない限り、鉛イオ
ンを電着浴に添加しようとすることは、当業者であれば容易に着想できることである。
Fe
Pb
金属イオン電位列
特許 実用新案 審査基準 特許庁より引用
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演習事例 進歩性判断演習
A研究員は、人工衛星の研究をしている。現在研究中のものは、ソーラーパネルとカメラと
を搭載した人工衛星であって、前記ソーラーパネルは宇宙空間で人工衛星の外側に張り
出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能であり、前記カメラはズーム調整
用モーターにより倍率が調整可能である。このような人工衛星をシミュレーションした結果、
パネル角度調整用モーターとズーム調整用モーターとが同時に作動した場合、これら2つ
のモーターの振動によるうなりが発生し、このうなりの周波数にソーラーパネル全体が共振
し、ソーラーパネルが破損する問題があることが判明した。A研究員はこの問題を解決する
ため、ソーラーパネルの中心にダンパーマスを設けたところ、このダンパーマスのダンピン
グ効果によってソーラーパネルの振動を吸収し、ソーラーパネル全体が共振するのを低減
でき、ソーラーパネルの破損を防止できることがわかった。
ダンパーマス
パネル角度調整用モー
ター
ソーラーパネル
ダンパーマス
ソーラーパネル
ズーム調整用モー
ター
カメラレンズ
特許ワークブック 書いてみよう特許明細書出してみよう特許出願
特許庁 独立行政法人 工業所有権情報・研修館発行 2011年 を元に作成
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演習事例 進歩性判断演習
【特許請求の範囲】
パネル角度調整用モーター( 構成要件1)と、
ズーム調整用モーター (構成要件2)と、
ズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラ(構成要件3)と、
宇宙空間で人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が
調整可能なソーラーパネル(構成要件4)と、を搭載した人工衛星であって、
前記両モーターの作動時のうなりに前記ソーラーパネルが共振してソーラーパネ
ルが破損するのを防止する破損防止手段( 構成要件5)を備えた
人工衛星( 構成要件6) 。
特許ワークブック 書いてみよう特許明細書出してみよう特許出願
特許庁 独立行政法人 工業所有権情報・研修館発行 2011年 を元に作成
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演習事例 進歩性判断演習
<先行技術1>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラー
パネル(カメラについての説明はない)(構成要件1、4、6)
<先行技術2>人工衛星に搭載され、ズーム調整用モータにより倍率が調整可能なカメラ(ソーラーパネル
についての説明はない) (構成要件2、3、6)
<先行技術3>風力により振動する部分にダンパーマスを設け、振動を吸収するようにした地上設置用の
ソーラーパネル(構成要件4‘、5)
<先行技術4>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラー
パネルおよびズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラの両方を搭載した人工衛星(パネル角度
調整用モーターとズーム調整用モーターのうなり、またソーラーパネルの共振の説明はない)
(構成要件1、2、3、4、6)
<先行技術5>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラー
パネルおよびズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラの両方を搭載した人工衛星であって、両
方のモーターが同時に作動した場合、これら2つのモーターの振動がうなりを発生することを説明しているも
の(ソーラーパネルの共振の説明はない)(構成要件1、2、3、4、6+うなり)
<先行技術6>人工衛星の外側に張り出し、パネル角度調整用モーターにより角度が調整可能なソーラー
パネルおよびズーム調整用モーターにより倍率が調整可能なカメラの両方を搭載した人工衛星であって、両
方のモータが同時に作動した場合、これら2つのモーターの振動がうなりを発生し、このうなりの周波数に
ソーラーパネルが共振することを説明しているもの(構成要件1、2、3、4、6+うなりによる共振)
特許ワークブック 書いてみよう特許明細書出してみよう特許出願
特許庁 独立行政法人 工業所有権情報・研修館発行 2011年 を元に作成
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演習事例 進歩性判断演習
(1)先行技術が1、2、3であるとき進歩性は?
(2)先行技術が3、4であるとき進歩性は?
(3)先行技術が3、5であるとき進歩性は?
(4)先行技術が3、6であるとき進歩性は?
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演習事例 進歩性判断演習(回答)








(1)先行技術が1、2、3であるとき進歩性は?
→構成要件は1~6全て満たされるが、これらを組み合わせる理由がな
い。
(2)先行技術が3、4であるとき進歩性は?
→構成要件は1~6全て満たされるが、これらを組み合わせる理由がな
い。
(3)先行技術が3、5であるとき進歩性は?
→構成要件は1~6全て満たされるが、これらを組み合わせる理由がな
い。先行技術5からは共振することを防止する課題を導くことができない。
(4)先行技術が3、6であるとき進歩性は?
→構成要件は1~6全て満たされ、これらを組み合わせる理由がある。
共振することは好ましくないことは明らかであり、これを防止するための
手段を採用することは当業者が容易になしうる。
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演習事例 発明は誰のものか
Q:発明者は誰か?
某大学の大学院生であるA君は,B教授の研究室で研
究を進めている。A君は計測技術開発を専門としている。
A君は研究を進め,計測機器に関する発明αを完成させ
た。もっとも,その発明に至るまでには,研究に行き詰った
際,尊敬するB教授からアドバイスをもらい,また,サーク
ル仲間で同じ研究室所属の学生C君に,実験の記録や片
づけ等を手伝ってもらっていた。A君は発明αについて特
許出願をし,特許を取得することができるか。
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演習事例 発明は誰のものか
○発明者とは?
→発明者とは、その発明が解決しようとする課題、すなわち、
発明の着想と、その課題を解決するための具体的な手段、方
法の創作に貢献をした人をいう(復習)
⇒この事例での発明者を決めるためには,上述の基準に誰が
当てはまるかを見てみる必要がある。
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演習事例 発明は誰のものか
①A君
→発明を具体的に完成させており、発明者と言えそう。
②B先生
→アドバイスの内容次第。
③C君
→補助のみなので,発明者には該当しなさそう。
⇒A君の単独の発明 or A君とB先生の共同発明になる。
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演習事例 発明は誰のものか
Q:職務発明
その後A君はX社のエンジニアとなった。X社は計測機器メー
カーであり,A君もその開発に関わっていた。A君は苦心の末,
新たな計測機器に関する発明βを完成させた。
X社には,「職務発明等に係る特許を受ける権利等は,X社が
承継しX社に帰属する」とする職務発明規程が存在している。A
君が単独の発明者であった場合,A君は発明βについて特許
出願をし、特許を取得することができるか。
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演習事例 発明は誰のものか
◎職務発明の要件3つを思い出そう。
①従業員がした発明
②会社の業務範囲に属する発明
③従業員の職務に属する(または属した)発明
◎本件では…?
①発明したのはA君

②軽量機器の開発は軽量機器会社Xの業務範囲

③A君はエンジニアなので機器開発はA君の職務範囲

⇒職務発明の要件を満たす。
⇒職務発明規程により、A君の特許を受ける権利はX社に移転する。
→A君は特許出願し特許を受けることはできない。
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演習事例 発明は誰のものか
Q:冒認
A君はその後個人のエンジニアとして独立して起業し、発明
βについて特許出願した。そのことに気づいたX社は、どのよう
な対応ができるか。
発明βについてA君に特許が付与された後に、X社が気づい
た場合はどうか。
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演習事例 発明は誰のものか
既に見た通り,A君は発明βについて,特許を受ける権利を有していない(既にX
社に職務発明として特許を受ける権利を譲渡してしまっている)。したがって,A君は
発明βについて,特許を受けることはできないはずだが…。
特許を受ける権利を有しているかどうかの確認は難しく,登録されてしまうおそれ
がある。

出願公開のおそれもある。

⇒A君の特許出願についてX社が対応する必要がある。
X社はA君に対して訴訟を提起し,裁判所の判決においてX社が特許を受ける権利
を有していることを確認した上で,特許庁に出願人の名義をA君からX社に変更する
よう申請することができる。
また,既にA君に特許が付与されてしまった後では,X社はA君に対して特許権の
移転を請求することができる。
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演習事例 秘密情報の管理
Q:秘密情報の管理
某大学の大学院生であるA君は,B教授の研究室で研究を進めている。
A君はB教授の研究チームの一員として、X社との共同研究に参画している。
研究職志望のA君は就職活動をする時期を迎えている。運良く最終面接ま
でこぎつけた会社はX社と競合するY社であった。最終面接でA君は、Y社か
らX社と行っている共同研究の詳細について質問をうけた。
A君はどのような対応をとることが望ましいか?
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演習事例 秘密情報の管理
共同研究では、通常、何らかの取り決めがかわされることが多い。
特に組織の性格上、大学は学術的側面を、企業は営利的側面を重視する
傾向があることを理解した上で、研究プロジェクトに参加する必要がある。
大学:学術的側面を重視(論文、学会での研究成果発表)
企業:営利的側面を重視(自社製品開発、販売のための研究活動)
本件では、何らかの取り決めがある場合はそれに従った対応をする
ことが前提である。次のような対応が例として挙げられる。
・共同研究における取り決めを指導教員(B教授)に確認し、就職活動を
行うあたり、事前に打ち合わせを行っておくことが必要。
・また面接員などから詳細が聞かれた場合でも、秘密管理にどれだけ責
任感をもって会社との共同研究に従事しているかを確認されている場合
もあることに留意して、自らの従事内容をあるがまま話すことはさける。
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