第1講 株式会社の業務執行 の監視・監督

経営陣というヒューマン・リソース
機関構造の原点
 明治23年旧商法(ロエスラー草案)
三権分立思想からの発想
*この際、監査役には①経営監督権限と②会計検
査権限を付与
株主総会
取締役
(独任)
?
監査役
でもそれでいいのか… そもそも株式会社って?
産業資本
遊休資本
遊休資本
遊休資本
問題は…
出資者は「素人」!
近代的株式会社の生成の経緯からすると、
出資者は産業資本家ではなく、大衆投資家層。
だからこそ「遊休資本」といわれることに注意。
大勢の集合体が常に機能するか?
刻々変化する経済情勢に対応するためには
迅速な決定が必要。
資金の「信託」
株式会社は商事信託の基本
「預けちゃえ」
株主という
素人集団
経営のプロ
いわゆるアメリカ型
選任
株主総会
経営委任
合議制
取締役「会」
*「監査」のために「経営専門家」を置くのは合理的か?
→ 業務監査の本質論
昭和25年改正の意味
合議体としての取締役会に期待される役割
経営(業務執行)においては、
取締役が相互監視・監督
そのため監査役は…
業務監査権限
会計監査権限
取締役会へ
*監査役の監査が形骸化している
おりから、せめて会計監査だけは…
本音は、やる人がいない!!
「監査」の正体
業務監査
違法性監査
会計監査
妥当性監査
具体的には何をやるの?
◆「突き合わせ」と「判断」
会計監査は基本的に突き合わせ、業務
監査のうち妥当性監査は基本的に判断
(ということは、実は業務執行そのもの)
*適法性監査は?
では誰がやるの?
◆専門家と取締役
会計監査は経理専門家が望ましく、妥当性監
査はむしろ取締役が望ましい
*適法性監査は?
アメリカ型の志向
「監督的業務執行」と「業務執行の実行」
DirectorsとOfficers
分離
Directors
株主総会
Officers
所有
経営
外部取締役
外部取締役
Directors
内部取締役
外部取締役
内部取締役
外部取締役
Officers
Officerを兼務!
ところが実際の日本では…
Officers
×
監
査
内部取締役群
日本型の旧来の平
取締役より偉い代
表取締役「社長」や
「専務」の組織。
「特別取締役」は、
この上層部の追認
であることに注
意!
本当は、機能して
いない。でもあま
りに露骨に無視は
できない。そこで、
権限事項を362条
で確認。
昭和49、56年改正
◆昭和49年改正
・山陽特殊鋼粉飾決算(92億!)
・42年以降の好景気→資本の活発な移動にと
もなうチェックの必要性
A案:監査役に会計監査権限のみを残し、業務監
査権限は社外取締役に委ねる
B案:監査役に業務監査権限をも付与し、監査役
を強化し、しかも一定規模の会社に会計監査人
の会計監査を義務づけ
◆昭和56年改正
・ロッキード事件
*49年改正で一応完成したと考えられていた監
査役改正への疑義
 「社外取締役」の意義
当然、その会社の業務に精通していること
が必要となる。しかし、業務監査(妥当性監
査)=業務執行だから、業務に精通すればす
るほど「内部」者にならないか?
 Independentである必要性?
完全な独立取締役は、内部者に対する牽制
力となり得るか? 逆に牽制力が強い外部取
締役は利益誘導を起こしやすい。
委員会設置会社
名称の変遷:委員会等設置会社(平成14年)
委員会設置会社(平成17年)
現在は「指名委員会等設置会社」
「委員会」の意味
取締役会
委員会
委員会
実質的影響
監視・監督
執行役
 指名委員会
権限:株主総会に提出する取締役の選任・
解任に関する議案の内容決定
取締役会
解任候補
指名委員会
選任候補
◆ 報酬委員会
個々の取締役および執行役の報酬を決定する。
指名委員会や監査委員会とは異なり、「議案の
内容の決定」ではなく、確定的報酬の決定であ
る。その点で、旧商法269条と対照的。
経営陣
株主総会
遮
蔽
◆ そして監査委員会
(内部)取締役
外部取締役
(内部)取締役
外部取締役
Directors
外部取締役
内部取締役
内部取締役
Officers
執行役兼務
① 取締役会が選任する執行役が会社業務を
「執行」する。
★「取締役は委員会設置会社の業務を執行
することができない」(415条)をどう読むか?
★業務執行の「決定」についても、執行役へ
の大幅な委任が可能(416条4項)
取締役会の監督的機関性の強化
*416条4項但し書の意義
取締役会の業務執行(?)機関性の維持
② 各委員会は、取締役三人以上で組織する。
ただし、各委員会につき、その過半数は、社外
取締役であって委員会設置会社の執行役でな
い者でなければならない(400条)。
社外取締役の役割の重視
*しかも、指名委員会・報酬委員会の決定を
取締役会が覆せないことと併せ考えれば、社
外取締役に極めて強い決定力を付与している。
③ 使用人兼務取締役は認め
られない(331条3項)
【考えてみよう】
*使用人兼務執行役は可
なぜ?
**取締役兼務執行役は可
なぜ?
「執行機関と監督機関の兼
任を一切禁ずる二層制(ドイ
ツ型)ではない」(江頭)
執行役
取
締
役
的
監
督
経
営
的
指
揮
命
令
使用人兼務取締役
監査等委員会設置会社
平成26年改正
◆ 監査等委員会設置会社イメージ
外部取締役
内部取締役
外部取締役
Directors
内部取締役
(業務執行取締役)
内部取締役
(業務執行取締役)
Officers
代表取締役
平成26年改正のもう一つの目玉!
「社外取締役を置くことが相当でない理由」の
開示(定時株主総会において)
社外取締役の役割の重視
でも… 正面から導入を強制しなかった。
でも… 「意思決定の迅速化」が例示される。
*特別取締役を思い出せ!