死への恐怖と集団地位が 集団同一視に与える影響

死の顕現性と集団地位が
集団同一視に与える影響
実験実習Ⅱ 同一視班
唐沢かおり先生
ディズニー班
だよ☆
渡辺さん・伊藤さん
秋岡・石川・上原・信太・宮田
嶋・山田
1
研究の目的
恐怖管理理論に基づいて、
死の顕現性および所属集団の地位
を操作したときに、
内集団同一視がどのような影響を
受けるかについて検証する
2
変数
• 独立変数:死の顕現性、集団の地位
• 媒介変数:集団実体性
• 従属変数:顕在的集団同一視、潜在的集団
同一視
これから、
詳しく説明していくよ♪
3
従属
集団同一視
group identification
・ 自分の所属する集団(内集団)に対して、所
属意識を強く持ち、一体感を覚えること
We are Pooh’s!!
4
理論
恐怖管理理論
Terror management theory
・ 集団同一視を説明する理論の1つとして
恐怖管理理論(Greenberg, Pyszczynski, & Solomon, 1986)が挙げられる
・ この理論によると・・・
死への恐怖が高まる(死の顕現性:MS,Mortality Salience)
→自己の存在が脅かされる(存在論的恐怖)
独立
→自己を文化的世界観に適合させようとする
つまり、
死が顕現化すると、自己と内集団の結びつきを強め、
内集団同一視が強まると予測可能
5
どーゆーこと!?
• 死への恐怖が高まる(な~んか不安な気持ち)
• 「ピンク色の服を着てる同一視班の研究がすごく優れ
てるんだって~」「最近、ピンクがきてるよね!」とか耳
にはさむ
• そこに自己を適合させて、安心したい・・・という訳で、
ピンクを強調してみる!
• 更に、同一視班の人たちがつけてる、耳もつけちゃう
ぜ☆
• っていうのを、実演しようとして、ピンクの服を着て来
たけど、面白く無さそうだから、やめました☆
6
従
顕在的同一視と潜在的同一視
・恐怖管理理論に基づいた先行研究で、死の顕現
化と内集団同一視の関係は、顕在的な指標に関
しては確認されている
・顕在的な指標では死の顕現性が意識上でバイア
スを受けることも確認されている
→潜在的指標で検証することで、自己と集団の連
合に関して新たな知見が得られる!
7
独立
集団の地位
・ 恐怖管理理論に基づけば、死の恐怖が高まると、文
化的世界観が自己の存在不安解消に有益であれ
ばあるほど、内集団と自己との結びつきを求めると
予測される。
→文化的世界観の一種として「集団の地位」が考えら
れる
→集団地位の高低は同一視に影響を与えるだろう!
→集団地位を創造性の高低で操作
8
媒介
集団実体性
• 集団実体性・・・
集団を1つのまとまりとして知覚する程度のこと。
先行研究では、集団実体性と集団同一視の間には
正の相関があることが明らかになっている。
→集団を同一視する前提として集団をより強く意識す
ることが必要と予測
→死の顕現性が高まると集団実体性を媒介として同
一視が高まるのではないか
9
仮説
•
死の顕現性が高まり、また、内集団の地位が高いときに同
一視が強まるという予測をもとに仮説検証を行う
「死の顕現性が高まると、顕在的・潜
在的に集団同一視を強める」
・ 仮説1
「東大の地位が高まると、顕在的・潜
在的に集団同一視を 強める」
・ 仮説2
「仮説1、2のプロセスに集団実体性
が媒介している」
・ 仮説3
10
仮説モデル
潜在的な
集団同一視
死の顕現性
集団の地位
顕在的な
集団同一視
集団実体性
11
実験手続き
• 実験参加者
東京大学の学生・大学院生70名
男46名女24名、平均年齢20.96歳(SD:1.16)
– 2010年6月~7月、社会心理学実験室(法文2号館)
– PCを用いた実験室実験
• 2要因被験者間計画
– 死の顕現性(MS条件・統制条件)×集団の地位(高・低)
12
実験の流れ
•
•
•
•
①死の顕現性の操作
②日本語版PANAS測定(感情測定尺度)
③集団の地位操作
④集団同一視測定
– 潜在指標:IAT(自分・東京大学 vs. 自分でない・
早稲田大学)
– 顕在指標:集団同一視尺度
• ⑤操作チェック、媒介変数測定etc.
13
独
•
独立変数の操作:MS操作
死の顕現性操作(野寺・唐沢・沼崎・高林, 2007)
–
MS条件(5件法20項目)
–
–
–
–
死ぬことはとても寂しいことである
死んでしまえば、もう人生の意義を追究できなくなる
死んでしまえば、自分の力を十分にいかすことができなくなる
など
統制条件(5件法20項目)
–
–
–
子供の頃と比較して、味の好みが変化した
魚料理よりも肉料理をよく食べる
週に何度か、自分で料理を作る など
14
独
独立変数の操作:集団の地位
• 所属大学の創造性の高低について教示
– 「前回の実験データにおいて、東京大学の学生
の創造性得点は、早稲田大学の学生の創造性
得点よりも
」という偽の実験結果を表
示
– 低地位条件:低かった
– 高地位条件:高かった
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従
従属変数:集団同一視
• 潜在的同一視・・・IAT
– 自分・自分でない/東大・早大
• 顕在的同一視
– 集団同一視尺度(Karasawa, 1991) 12項目7件法
「あなたの東京大学に対する所属意識は強いほうですか、弱いほうですか?」
「『自分は東大生なんだなあ』と実感することがありますか?」
など
Cronbachのα=.728
→単純加算平均で尺度構成
16
媒
媒介変数:集団実体性
• 集団実体性(Spencer-Rodgers et al. (2007)を
もとに作成)
– 6項目7件法
– Cronbachのα=.657
→単純加算平均で尺度構成
東大生は、集団として団結力がある
東大生は東京大学の一員として、自覚を持っている
東大生は、1つの集団として結果を生み出す能力がある
東大生には、他の大学生には見られない性質がある
東大生同士の結びつきは強い
東大生は、同じような目標を共有している
17
その他の測定変数
• 日本語版PANAS(佐藤・安田、2001)
– ポジティブ感情・ネガティブ感情
– 各8項目5件法
• 活気のある、誇らしい、びくびくした、おびえた
など
→死の顕現性操作がポジティブ・ネガティブ
ムードに影響しているか確認のため
18
操作チェック
•
集団の地位に関する操作チェック(2項目5件法)
「東大生はどの程度創造性が高いと思いますか?」
「早大生はどの程度創造性が高いと思いますか?」
t(68)=1.16, n.s.
•
MS操作がPANASに与える効果
Positive: t(68)=1.29, n.s.
Negative: t(68)=1.46, n.s.
→MS操作はポジティブ・ネガティブムードに影響を与え
ていないことが示された
19
結果:仮説検証
「死の顕現性が高まると、顕在
的・潜在的に集団同一視を強める」
・ 仮説1
「東大の地位が高まると、顕在
的・潜在的に集団同一視を強める」
・ 仮説2
「仮説1、2のプロセスに集団
実体性が媒介している」
・ 仮説3
20
結果:潜在的同一視
MS F(1,68)=3.05(p<.1)
集団地位 F(1,68)=0.116 n.s.
MS×集団地位 F(1,68)=0.023 n.s.
1
0.9
†
潜
在
的
同
一
視
0.8
MS条件
0.7
統制条件
0.6
死の顕現性
のみ
有意傾向
にゃ!
0.5
0.4
0.3
高い
低い
† p<.1
集団地位
21
結果:顕在的同一視
MS F(1,68)=1.994 n.s.
集団地位 F(1,68)=3.531 p<.1
MS×集団地位 F(1,68)=0.284 n.s.
5
4
顕
在
的
同
一
視
集団の地位
のみ
有意傾向
みゃ!
†
3
MS条件
2
統制条件
1
† p<.1
0
高い
低い
集団地位
22
結果:Amos
死の顕現性
(0:control; 1:MS)
潜在的な
.20†
集団同一視
.25*
集団実体性
集団の地位
.20†
.40*
顕在的な
集団同一視
(0:低地位;1:高地位)
GFI =.993
*p<.05
AGFI =.982
†p<.1
RMSEA =.000
23
結果
・仮説1
「死の顕現性が高まると、顕在的・潜在的に集団同一視を強
める」
→潜在的集団同一視について有意傾向
・仮説2
「東大の地位が高まると、顕在的・潜在的に集団同一視を強
める」
→顕在的集団同一視について有意傾向
・仮説3
「仮説1、2のプロセスに集団実体性が媒介している」
→死の顕現性から顕在的な集団同一視について、
集団実体性が 媒介していることが検証された
24
考察1
・ MS操作に関して
死が顕現化すると潜在的な集団同一視が高まるこ
とが検証された
→恐怖管理理論に関して、先行研究で確認された
顕在指標だけでなく、潜在的な指標についても検証
された
→意識上のバイアスの問題がない潜在的な指標を
用いた研究が可能である!
25
考察2
• 顕在的同一視には地位の効果があった
• 潜在的同一視にはMS操作の効果があり、集団実
体性を媒介として地位の効果もあった
• 相関分析を行なったところ、そもそも顕在的同一視
と潜在的同一視に有意な相関が見られなかった(r
=.136,n.s.)
→顕在的同一視と潜在的同一視は別個のものである
→それゆえにMS操作が潜在的同一視に対しても有効
であることが分かったことに意義がある
26
考察3
• 集団地位操作チェックについて
– 集団地位操作そのものは成功した
– しかし操作チェックは失敗した
• 地位操作の目的は創造性に関する情報を利
用して被験者の内面における東大の地位を
操作することだった
→操作チェックでは東大生の創造性そのもの
への信念を尋ねた
→目的と操作チェック項目にズレがあった
27
考察4
• 集団実体性に関して
集団実体性がMS操作から顕在的同一視へ
の影響を媒介していることが検証された
→死が顕現化すると集団を同一視する前段
階として所属集団を強く意識することが示さ
れた!
死の顕現性
(MS操作)
集団実体性
顕在的な
集団同一視
28
考察5
• 今後の課題
–集団実体性に関して…
• 想定する集団を大学ではなく、より小規模で自己と結
び付けやすい集団(例えばサークルなど)に設定す
る。
–集団地位の操作に関して…
• 被験者に操作の意図を見抜かれないよう操作方法を
改善する。
• 集団地位を創造性のような曖昧なものではなく、より
具体的なもの(例えば「就活に強い」など)によって操
作する。
29
ちなみに☆
4
*
3.5
顕
在
的
同
一
視
3
男
女
2.5
2
高い
低い
集団地位
* p<.05
30
ご清聴ありがとうございました
31
引用文献リスト
Greenberg, Pyszczynski, & Solomon (1986). The causes and consequences of a need
for self-esteem: A terror management theory. In R. F. Baumeister (Ed.), Public self
and private self. New York; Tokyo: Springer Verlag. 189-207.
伊藤裕子・相良順子・池田政子・川浦康至 (2003). 主観的幸福感尺度の作成と信頼
性・妥当性の検討. 心理学研究, 74, 276-281.
Karasawa, M. (1991). Toward an assessment of social identity: The structure of group
identification and its effects on in-group evaluations. British Journal of Social
Psychology, 30, 293-307.
工藤恵理子 (2004). 平均点以上効果が示すものは何か:評定対象の獲得容易性の
効果. 社会心理学研究, 19, 195-208.
野寺綾・唐沢かおり・沼崎誠・高林久美子 (2007). 恐怖管理理論に基づく性役割ステ
レオタイプ活性の促進要因の検討. 社会心理学研究, 23, 195-201.
佐藤徳・安田朝子 (2001). 日本語版PANASの作成. 性格心理学研究, 9, 138-139.
Spencer-Rodgers, J., Williams, M. J., Hamilton, D. L., Peng, K., Wang, L. (2007). Culture
and group perception: Dispositional and stereotypic inferences about novel and
national groups. Journal of Personality and Social Psychology, 93, 525-543.
32
集団の地位の操作に用いた図
• 高地位条件
• 低地位条件
単独
単独
2人
2人
早稲田大学
3人
東京大学
3人
早稲田大学
東京大学
4人
4人
5人
5人
0
20
40
60
80
100
0
20
40
60
80
100
33
従属変数:潜在的同一視
• IAT
– 全7ブロック
1「自分」-「自分でない」
2「東大」-「早稲田」
3「自分・東大」-「自分でない・早稲田」(練習試行、20回)
4「自分・東大」-「自分でない・早稲田」(本試行、40回)
5「自分でない」-「自分」
6「自分でない・東大」-「自分・早稲田」(練習試行、20回)
7「自分でない・東大」-「自分・早稲田」(本試行、40回)
– 刺激に用いた語
自分:私は、私の、私に、私を、私のもの
自分でない:彼らは、彼らの、彼らに、彼らを、彼らのもの
東大:とうきょうだいがく、トーダイ、東大生、本郷キャンパス、University of Tokyo
早稲田:わせだだいがく、ワセダ、早大生、西早稲田キャンパス、Waseda University
34
集団実体性(Spencer-Rodgers et al. (2007)をもとに作
成)
1 全体として、東大生はまとまりがある
2 東京大学の存在は、東大生にとって重要である
3 東大生は、集団として団結力がある
4 東大生の性格は、ばらばらである
5 東大生は東京大学の一員として、自覚を持っている
6 東大生の行動は、お互いに似ている
7 東大生の特徴は、世代によって変化している
8 東大生は、1つの集団として結果を生み出す能力がある
9 東大生には、他の大学生には見られない性質がある
10 東大生同士の結びつきは強い
11 東大生は、同じような目標を共有している
12 東大生は、似たような過去のバックグラウンドを持っている
35
その他の測定変数
• 集団評価 (工藤, 2004)
ポジティブ特定語10項目、ネガティブ特性語10項目の7件法
– 肯定的・否定的な成員に対する評価 5項目5件法(肯定的成員のα
係数=.509、否定的成員のα係数=.559)
•
•
•
•
集団における受容感 5項目5件法(α=.588)
集団の創造性(操作チェック) 2項目5件法
早稲田大学との社会的接触 4項目5件法
主観的幸福感(伊藤・相良・池田・川浦, 2003) 12項目5件法
(Cronbachのα=.802)
• デモグラフィック変数
性別、年齢、学年
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