急性心筋梗塞およびその他の虚血性心疾患の診療情報の整理に関する研究 主任研究者:上松瀬勝男 日本大学第二内科教授(駿河台日大病院病院長) 分担研究者:石川欽司 児玉和久 小柳 仁 住吉徹哉 竹下 彰 延吉正清 平盛勝彦 藤原久義 古瀬 彰 山口 徹 山口 洋 山﨑 力 近畿大学第一内科教授 大阪警察病院副院長 東京女子医大循環器外科教授 榊原記念病院副院長 九州大学循環器内科教授 小倉記念病院副院長 岩手医科大学第二内科教授 岐阜大学第二内科教授 JR東京総合病院院長 東邦大学第三内科教授 順天堂大学循環器内科名誉教授、順天堂浦安病院院長 東京大学大学院医学系研究科薬剤疫学講座助教授 日本循環器学会、日本冠疾患学会、日本心臓病学会、 日本冠インターベンション学会、日本心臓血管学会、日本胸部外科学会 共同執筆者: 浅野竜太 川内基裕 金政 健 佐藤和義 杉 薫 鈴木克己 砂山 聡 中川義久 西垣和彦 西田 博 平山篤志 毛利正博 渡辺郁能 榊原記念病院 JR東京総合病院 近畿大学第一内科 駿河台日大病院循環器科 東邦大学第三内科 岩手医科大学第二内科 順天堂大学循環器内科 小倉記念病院 岐阜大学第二内科 東京女子医大循環器外科 大阪警察病院心臓センター 九州大学循環器内科 駿河台日大病院循環器科 外部評価委員:大橋靖雄 北村惣一郎 松崎益徳 矢崎義雄 東京大学大学院医学系研究科 国立循環器病センター 山口大学第二内科 国立国際医療センター 急性心筋梗塞の診療エビデンス集 ーEBMより作成したガイドラインー 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 証拠の水準と科学的根拠の種類 Ia :無作為化比較試験のメタアナリシスによる Ib :少なくとも一つの無作為化試験による IIa:少なくとも一つの良くデザインされた無作為化試験 による IIb:少なくとも一つの他のタイプの準実験的研究による III :比較的研究、相関研究、症例比較研究など良くデザイ ンされた非実験的記述的研究による IV:専門家委員会の報告や意見、あるいは権威者の臨床 試験 本研究班での診断・治療指針のクラス分けの定義 クラスI :手技・治療が有益・有効・有用であることに関して複数の施設 無作為介入臨床試験で証明されている。 クラスII :手技・治療が有益・有効・有用であることに関して一部にデー ター・見解が一致していない場合があるものが多い。 クラスIIa :多施設無作為介入臨床試験の結果が有益・有効・有用を示 すもの。 クラスIIa :無作為介入臨床試験の結果はないが、複数の研究の結果、 手技・治療が有益・有効・有用であることが十分に想定できた るもの。 クラスIIb :多施設無作為介入臨床試験の結果が必ずしも有益・有効・ 有用を示すと確証できないもの。 クラスIII :手技・治療が有益・有効・有用でなく、ときに有害となる可能 性が証明されているか、あるいは有害との見解が広く一致し ている。 急性心筋梗塞の診断・治療の指針 目次 1.発症早期の心筋梗塞診断 2.入院までの初期治療 3.冠動脈造影 4.血栓溶解療法 5.Primary PTCA/STENT 6.緊急の外科的処置(CABG) 7.抗不整脈、不整脈対策 8.急性期の薬物療法 9.IABP,PCPS p 5‐p 9 p 9 ‐ p 14 p 14 ‐ p 18 p 18 ‐ p 20 p 21 ‐ p 22 p 22 ‐ p 24 p 24 ‐ p 29 p 30 ‐ p 46 p 46 ‐ p 50 急性心筋梗塞診断の指針 クラスI 1.一定の指針に準じた臨床検査と12誘導心電図検査を10分 以内に行い, 適応があれば30分未満で血栓溶解療法など の治療が開始できる救急部胸痛患者プロトコール 2.来院時心電図で, ST上昇あるいは新たに出現した左脚ブロッ クを認めない胸痛症例における複数回の12誘導心電図検査 と,来院時, 胸痛出現, 6時間以降, 計2回の迅速測定キット によるトロポニンT定性検査 クラスIIa 1.来院時心電図で, ST上昇あるいは新たに出現した左脚ブ ロックを認めない胸痛症例における12誘導心電図連続モ ニター ,心筋マーカー複数回定量測定による心筋壊死の 検出 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 入院前初期治療の指針 クラスI 1.発症直後の119番通報 2.適応となる場合には除細動による心停止の治療ができ, 虚血性胸部不快感を有する患者を鑑別できるように訓練さ れた救急救命士と高規格救急車を有する救急医療システ ムの利用 クラスIIa 1.心停止患者へのbystanderによる心肺蘇生術の施行 2.医療従事者が患者やその家族に対して,急性心筋梗塞症 の自他覚症状や救急隊への通報や薬剤について教育する こと クラスIIb 1.12誘導心電図電送 2.特殊な状況下(搬送時間が90分を超える場合など)での入院 前の血栓溶解療法 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 救急部における初期の認識と管理の指針 クラスI 1.一定の指針に準じた臨床検査と12誘導心電図記録を患者収 容後10分以内に行い,血栓容解薬の投与または冠動脈造影 が30分以内に開始できるような救急部での急性心筋梗塞症 プロトコール 2.急性の虚血性胸部不快感を訴える患者には全例に酸素補給, 静脈路確保,経時的な心電図監視を行う 3.急性虚血性胸部不快感が疑われる患者で血圧が保たれてい る場合に,ニトログリセリン舌下錠または硝酸薬スプレーの口 腔内噴霧を行う 4.急性虚血性胸部不快感が疑われる患者にアスピリン160~ 325mg(バファリン81R2~4錠)を直ちに投与し,その後無期限に 連日投与する 5.急性虚血性胸部不快感を訴える患者への十分な鎮痛薬の投与 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 血栓溶解療法の指針 Ⅰ 血栓溶解療法の禁忌がない症例において クラスI 1.ST上昇(隣接する2誘導以上において0.1mV以上の上昇)を 有し,治療まで12時間以内の75歳未満の患者 2.脚ブロックのためSTの分析が不明確であるが,急性心筋梗 塞を示唆する病歴のある患者 クラスIIa 1. ST上昇を有する,75歳以上の患者 クラスIIb 1. ST上昇を有し,治療まで12~24時間経過した患者 クラスIII 1. ST上昇を有し,治療まで24時間以上経過した,虚血による 疼痛が消失した患者 2.ST低下のみ 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー Primary PTCA/STENTの指針 クラスI 1. ST上昇または新たに生じたと考えられる左脚ブロックが認 められる急性心筋梗塞患者で(診断 については本論の発症 早期の心筋梗塞診断参照),発症12時間以内あるいは虚血 症状が持続する場合は12時間以降でも,梗塞責任冠動脈 の形成術が可能な場合。ただし,PTCAに熟練した術者が 適切な施設環境(厚生省の定める 施設基準*)において行う 場合とする(このことは,クラスI-2,Iia,IIbでも同様である)。 2.急性ST上昇/Q波梗塞または新たな左脚ブロックを伴う発 症後36時間以内の患者で,心原性 ショックを呈し,ショック 発症後18時間以内に PTCAが実施可能な75歳未満の患者。 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー Primary PTCA/STENTの指針 クラスIIa 1.血栓溶解療法は禁忌だが,再灌流療法の適応が考えられ る患者に,再灌流療法として実施。 クラスIIb 1.ST上昇は認められないが,梗塞責任冠動脈の灌流低下 (TIMI grade 0-2)がみられる急性心筋梗塞患者で,発症12時 間以内にPTCAが 実施可能な場合。 クラスIII この分類は以下に該当する急性心筋梗塞患者に適用される 1.急性心筋梗塞発症時に非責任冠動脈に行う待機的PTCA 2.発症後12時間を超え,心筋虚血所見のない場合 3.厚生省の定める施設基準を満たさない施設で,PTCA経験 の乏しい術者が行うPrimary PTCA/STENT 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 急性期の薬物療法 ・カテコラミン クラスI なし。 クラスIIa 1.心原性ショックで低拍出量があり,血圧が維持 できない(収縮期血圧90mmHg未満)もの。 クラスIIb 1.低拍出量が認められ,その原因が循環血液量 の減少によらないもの。 クラスIII 1.心不全がなく合併症をみない安定した急性心 筋梗塞患者。 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 急性期の薬物療法 ・硝酸薬 クラスI 1.血圧のコントロールや新たな心筋虚血が認められる患者 (梗塞後狭心症)に対して頓用または短時間(24~48時間) で使用する。 2.うっ血性心不全を合併した患者の治療目的で短期間(48時 間以降も)で投与する。 クラスII なし クラスIIb 1.合併症のない急性心筋梗塞患者に対して初期の24~48時 間投与する。 2.広範囲梗塞または合併症のある梗塞患者に対して48時間 以降の継続投与。 クラスIII 1.収縮期血圧90mmHg未満または高度徐脈(50bpm未満) の患者 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー 不整脈治療の指針 クラスI 1.心室細動の非同期型電気ショックによる治療。 2.持続性(30秒以上または血行動態虚脱を起こす)多形性心 室頻拍の非同期型電気ショックによる治療。 3.狭心症,肺うっ血または低血圧(収縮期血圧90mmHg未満) を伴う持続性単形性心室頻拍発作の同期型電気ショック による治療。 4.狭心症,肺うっ血または低血圧(収縮期血圧90mmHg未満) を伴わない持続性単形性心室頻拍に対するリドカインあるいは プロカインアミドの静注。 5.狭心症,肺うっ血または低血圧(収縮期血圧90mmHg未満) を伴わない持続性単形性心室頻拍に対する同期型電気的 除細動(短時間の麻酔が必要)。 急性心筋梗塞の診療エビデンス集ーEBMより作成したガイドラインー
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