ものつくりのための材料の基礎

機械材料の基礎
鹿児島大学工学部機械工学科
設計生産システム講座
材料工学研究室
中村祐三
ものつくり ⇔ 材料
 金属
アルミニウム(1円玉、サッシ)
銅(10円玉、電線)
鋼(車のボディー)
5円玉(銅ー亜鉛)、
50、100、500円玉(銅ーニッケル)
ステンレス鋼(鉄ークロムーニッケル)
 セラミック
アルミナ(耐熱・絶縁部品)
 プラスチック ポリプロピレン(買い物袋)
 複合材料
CFRP(Carbon-fiber-reinforced
plastic、炭素繊維強化プラスチック)
ものつくりの起源

古代社会
 木器、骨、石器、土器
 銅器、青銅器、鉄器(紀元前3000年頃から)
 鉱物
→ 金属製品・道具
火(熱)
加工・成型
古代エジプト
マラカイト 孔雀石。緑色をした準
貴石(銅の酸化物)で医薬品、ア
イシャドウ、装身具として利用さ
れた。
中国の秦代の書物
『呂氏春秋』類別篇(BC283)
「金柔錫柔。合両柔則為剛」
金=銅
木炭で
溶かした
BC4000?
合金化
銅
青銅
(銅-錫
合金)
鉄
隕鉄 隕石に含まれてる鉄
(ニッケルを含む)
鉄とニッケルは自然界で一番安定な元素
ヒッタイト族(BC17~12世紀) 鉄の生産
鉄鉱石+木炭の積み重ね
↓
燃焼(還元雰囲気)
↓
鉄
アラジャホユック出土の鉄剣
製銑
石炭 鉄鉱石 石灰
コークス
焼結機
高炉
現代の製鉄
古代からのものつくりの伝統
経験、発見、学問・技術の融合・体系化
現代のものつくり
学問・技術を基礎とした創造性
電子・原子レベルでのものつくり
理論・分析技術を基にした設計
計算機を利用した設計
環境・社会との調和
創造的な機械設計のためには?
科学・工学の基礎
機械:材料、加工、強度、熱、流れ、制御等
鍋の材料にはどんなものがいいだろう?
金属製
アルミニウム、銅、鉄、
ステンレス
強度がある
変形(加工)しやすい
熱(電気)を通しやすい
セラミック製 土鍋、ガラス
金属よりも硬い。
もろい。
熱(電気)を通しにくい
プラスチック製 不向き
・すぐ加熱したい
料理
・取り扱いは乱
暴でも良い
・リサイクル可
・保温もしたい料理
・取り扱い注意
・リサイクル困難
周期律表
IA
IIA IIIB IVB VB VIB VIIB
VIII
IB IIB IIIA IVA VA VIA VIIA
O
1
2
H
He
1.00797
3
不活性元素
4
Li
Be
6.939
11
9.012
12
金属 遷移金属
非金属
Na Mg
22.99
19
24.31
20
5
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
6
7
8
9
4.0026
10
B
C
N
O
F
Ne
10.811
13
12.011
14
14.007
15
16
16
19
17
20.18
18
Al
Si
P
S
Cl
Ar
26.98
31
28.09
32
30.97
33
32.06
34
35.45
35
39.95
36
K
Ca
Sc
Ti
V
Cr
Mn
Fe
Co
Ni
Cu Zn
Ga
Ge
As
Se
Br
Kr
39.1
37
40.08
38
44.96
39
47.9
40
50.94
41
52
42
54.94
43
55.85
44
58.93
45
58.71
46
63.54
47
69.72
49
72.59
50
74.92
51
78.96
52
79.91
53
83.8
54
Rb
Sr
Y
Zr
Nb Mo
Tc
Ru
Rh
Pd
Ag Cd
In
Sn
Sb
Te
I
Xe
85.47
55
87.62
56
88.91
57
91.22
72
92.91
73
95.94
74
98.91
75
101.1
76
102.9
77
106.4
78
107.9
79
114.8
81
118.7
82
121.7
83
127.6
84
126.9
85
131.3
86
Cs
Ba
La
Hf
Ta
W
Re
Os
Ir
Pt
Tl
Pb
Bi
Po
At
Rn
132.9
87
137.3
88
138.9
89
178.5
180.9
183.8
186.2
190.2
192.2
195.1
197
200.6
204.4
207.2
209
210
210
222
Fr
Ra
Ac
223
226
227
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
Ce
Pr
Nd
Eu Gd Tb
Dy
Ho
Ef
Tm
Yb
Lu
140.1
90
140.9
91
144.2
92
145
93
150.4
94
151.9
95
158.9
97
162.5
98
164.9
99
167.3
100
168.9
101
173
102
175
103
Th
Pa
U
Np
Pu
Am Cm Bk
Cf
Es
Fm Md
No
Lr
232
231
238
237
244
251
254
254
-
Pm Sm
243
65.37
48
112.4
80
Au Hg
157.2
96
247
247
257
256
原子の構造
アルゴン Ar
原子番号Z = 18
原子核:陽子(18個) 正の電荷
中性子(18,19,20個)
軌道電子(18個) 負の電荷
K
L
M
・不活性ガス(室温)
・化学的に安定
↓
・原子の電子構造がもっ
とも安定
金属元素
最外殻の電子が
化学反応を通じて
離れやすい。
電子
カリウム(K)
カリウム陽イオン(K+)
金属結合
金属においては、結晶格子を組む金属陽イオンのまわりを
電子が自由に運動している(自由電子)。
電気、熱
電子
K+
カリウムの結晶構造
電子が運ぶ
イオン結合
K → K+ + eCl + e- → Cl-
K+ + Cl- → KCl
電子は陰イオンに束
縛される。
↓
電気を通しにくい
原子の振動で熱が伝
達される
↓
熱を通しにくい
塩化カリウム(KCl)の結晶構造
応力
(MPa)
銅多結晶の引張試験
弾性変形
伸び
塑性変形
引張強さ
くびれ
破断
結晶の塑性変形と転位(線欠陥)
変形したケイ素(Si)中の転位の増殖と運動
X線を用いた転位の像観察例
電子顕微鏡による転位像
単結晶、多結晶と結晶粒界(面欠陥)
単結晶
加工した銅
350℃で加熱
結晶粒界
多結晶
500℃で加熱
800℃で加熱
金属材料の強化法1
応力
(MPa)
加工強化
加工した銅材
焼きなました銅材
伸び(mm)
結晶粒微細化
による強化
荷重
(kg)
より小さな結晶粒
伸び(mm)
原子レベルでの結晶欠陥(点欠陥)
侵入型不純物
原子
置換型不純物
原子
空孔
金属材料の強化法2
合金化
Al にCu混ぜて合金化
Al素地 + CuAl2析出物
応力
(MPa)
ジュラルミン
純アルミニウム
伸び(mm)
アルミニウム工業材料
合金系
特性
1000番系
(純アルミニウム)
99.0%以上の純アルミ系材料。加工性・耐蝕性・鎔接性に
すぐれているが、強度が低く構造材としては適さない。陽極酸
化皮膜処理後、耐食性の優れた表面光沢が得られる。
装飾品・ネームプレート
反射板・工業用タンク
2000番系
(銅系アルミニウム)
ジュラルミンの名称で知られるアルミ合金もこの合金系に属
し、鋼材に匹敵する強度を持つ。しかし比較的多くのCuを含
むため耐蝕性は劣る。代表的なものにジュラルミン(2017)航
空機材料や超ジュラルミン(2024)がある。
2017…航空機用材料
2014…高強度鍛造材
2011…快削合金として
機械部品
3000番系
(マンガン系)
Mnの添加により純アルミニウムの加工性、耐食性を低下さ
せずに1000番系よりも強度を増した合金。
カラーアルミ・電球
口金・アルミ缶
4000番系
(けい素系)
Siの添加により熱膨張率を抑え、耐摩耗性が改善されてい
る。Si粒子の分散により陽極酸化皮膜が灰色を呈する。
鍛造用ピストン材料
ビル外装パネル
5000番系
(マグネシウム系)
6000番系
(マグネシウム
・けい素系)
7000番系
耐蝕性がよく、強度も比較的すぐれている。
強度・耐蝕性ともにすぐれており代表的な構造材である。
6063番は押出し加工性にすぐれておりアルミサッシ材として
使用されている。
アルミ合金のなかで最も強度がすぐれている。
用途
5005…車輌用内装材建材
5083…船舶・車輌の溶接
構造材
建築用サッシ、機械
自動車部品・船舶
車輌構造組立材
航空機、車輌
スキーストック
炭素鋼(Fe-C合金)の用途
硬さ
低炭素鋼(0.05~0.15wt%C)
軟鋼(0.15~0.3wt%C)
炭素濃度
中炭素鋼(0.3~0.5wt%C)
高炭素鋼(0.55~1.5wt%C)
金属材料の強化法3
1030℃に加熱
(炭素原子を固溶
したオーステナイト相)
ゆっくり冷却した
Fe-0.8wt%C合金
(炭素鋼)
鋼の焼入れ
水の中に焼き入れ
マルテンサイト(硬くてもろい)
200℃焼き戻し
パーライト組織
白い層: 純鉄(フェライト相)
黒い層: セメンタイト(Fe3C)
600℃焼き戻し(硬くてねばい)
鋳鉄の製法と組織
鋳鉄製品は、3%程度の炭素
および2%程度の珪素を含有す
る溶融状態の鉄を、砂などを用
いて作られた鋳型中に流し込み、
凝固させて製造される。
ねずみ鋳鉄は外力が作用した
場合、偏平な黒鉛の縁の部分に
応力が集中し、この部分から破
壊が起こりやすく、強度が低いと
いう弱点がある。
球状黒鉛鋳鉄は、この点を改
良するために溶鉄中にMgなど
の元素を添加して、凝固時に生
成する黒鉛相の形を球形にした
ものである。
ねずみ鋳鉄
球状黒鉛鋳鉄
セラミック材料の起源
BC24000年
動物の脂肪と骨を500~800℃で焼いて、
動物や人間の像、板、ボールを作った
(チェコスロバキア)
BC9000年
穀物や食料を保存するための土器
(トルコのアナトリア平原,チャタル=ヒュユク遺跡土器)
BC8000年
ガラス質のセラミックが陶器焼成中に形成
(古代エジプト)
BC4000~5000年 下水配管
(インダス、メソポタミアの遺跡)
BC1500年
ガラス製品
セラミック材料
セラミック(ceramic)
Burned stuff,
Burned earth
ギリシャ語Keramos
(=potter, or pottery)
サンスクリット語
To burn
無機の非金属材料
(金属と非金属元素の化合物=イオン/共有結合)
酸化物: アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、
シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)
炭化物: タングステンカーバイド(WC)、炭化ケイ素(SiC)
窒化物: 窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(Si3N4)
グラファイト(C)、ダイヤモンド(C)、シリコン、
ガラス製品
セラミック材料の特徴
・硬くてもろい
・金属より軽い
・加工しにくい
・融点が高い
・耐摩耗性・耐食性が良い
・電気、熱を通しにくい
・非磁性体
先端セラミック材料開発
・硬くてねばい材料の開発
組織制御
複合材料化
高温構造材料
・母地が金属で表面を
セラミックでコーティング
・超伝導セラミック
・磁性を有するセラミック
・センサー、電子デバイス
・光ファイバー
高分子材料
エチレン CH2 = CH2 →
[ CH2 – CH2]n ポリエチレン
共有結合
主鎖
引張荷重
引張荷重
プラスチックの種類
熱可塑性プラスチック
熱可塑性プラスチックとは、加熱すると解けて液体になり、常温では固
体になる性質をもったプラスチックのことです。
(ABS樹脂・塩化ビニール・ポリプロピレン・ナイロン・ジェラコンなど)
熱硬化性プラスチック
熱硬化性プラスチックとは、加熱すると硬化し、一度固まってしまうと再
び加熱しても軟化溶融しない性質をもったプラスチックのことです。
(メラニン樹脂・ポリエステル樹脂・エポキシ樹脂など)
プラスチックの特徴
・成形が比較的簡単で効率的に製品を造ることができる。
・たわみやすい。
・電気、熱を通しにくい。
・融点が低い。
・安価である。
・耐水、耐蝕性が優れている。
・軽くて丈夫である。
・色が自由に着けられる。
プラスチック材料と用途
樹 脂 名
低密度ポリエチレン
ポリエチレン
包装材(袋、ラップフィルム、食品容器)農業用フィルム
高密度ポリエチレン
90~110
包装材(フィルム、袋)、雑貨(バケツ、洗面器など)、灯油缶、コンテナー、パイプ
EVA樹脂
70~90
建築土木用シート、サンダル、農業用フィルム
100~120
浴用製品、シール容器、荷造ひも、ザル、篭、コンテナ、食器、自動車部品
一般用ポリスチレン
70~90
OA・TVのハウジング、CDケース、食品容器
発泡ポリスチレン
70~90
梱包材、魚箱、食品用トレー、畳の芯
AS樹脂
80~100
食卓用品、使い捨てライター、電気製品(扇風機の羽、ジューサー)
ABS樹脂
70~100
旅行用トランク、家具部品、パソコンハウジング、自動車部品
ポリスチレン
(スチロール樹脂)
熱
硬
化
性
主 な 用 途
70~90
ポリプロピレン
熱
可
塑
性
耐熱温度(℃)
塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)
60~80(130)
水道管、農業用フィルム、ラップフィルム、波板、ホース、サッシ等の建材
塩化ビニリデン樹脂(ポリ塩化ビニリデン)
(140)
ラップフィルム、ハム、ソーセージケーシング、人口芝
メタクリル樹脂
70~90
自動車ランプレンズ、食卓用器、風防ガラス、照明板、水槽プレート、コンタクトレンズ
メタクリルスチレン(MS)樹脂
70~90
レンズ、照明カバー、包装材(トレー、蓋材等)
ポリメチルペンテン
160~170
電子レンジ用食器、トレー、食品包装用フィルム、アニマルケージ
ポリアミド(ナイロン)
80~140
戸車、ファスナー、歯車、レトルト用包材、自動車部品
ポリカーボネイト
120~130
食器、弁当箱、ほ乳びん、自動車部品、光ディスク、CD、ドライヤー、建材
アセタール樹脂(ポリアセタール)
120
ポリエチレンテレフタレート(PET)
60~150
ファスナー、自動車部品
PETボトル、写真用フィルム、カセットテープ、VTRテープ、たまごパック、サラダボール
ふっ素樹脂
260
フライパン内面コーティング、絶縁材料、軸受、ガスケット、各種パッキン、フィルター
フェノール樹脂
150
プリント配線基板、アイロンハンドル、配電盤ブレーカー、鍋、やかんの取っ手・つまみ・
合板接着剤
メラミン樹脂
110~120
食卓用品、化粧板、合板接着剤、塗料
ユリア樹脂
90
ボタン、キャップ、電気製品、(配線器具)、合板接着剤
不飽和ポリエステル樹脂
150
浴槽、波板、クーリングタワー、漁船、ボタン、ヘルメット、釣竿、塗料、浄化槽
エポキシ樹脂
130
電気製品(IC封止材、プリント配線基板)、自動車(タンク類)、塗料、接着剤
ポリウレタン
90~130
自動車部品、(シートクッション材)クッション、マットレス、断熱材
循環再生型社会を目指したものつくり
循環型社会形成推進基本法
第一条 この法律は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)
の基本理念にのっとり、循環型社会の形成について、基本原
則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務
を明らかにするとともに、循環型社会形成推進基本計画の策
定その他循環型社会の形成に関する施策の基本となる事項を
定めることにより、循環型社会の形成に関する施策を総合的か
つ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化
的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(原材料、製品等が廃棄物等となることの抑制)
第五条 原材循環再生型社会を目指したものつくり料、製品等については、これが循環
資源となった場合におけるその循環的な利用又は処分に伴う環境への負荷ができる限り
低減される必要があることにかんがみ、原材 料にあっては効率的に利用されること、製
品にあってはなるべく長期間使用されること等により、廃棄物等となることができるだけ抑
制されなければならない。
(循環資源の循環的な利用及び処分)
第六条 循環資源については、その処分の量を減らすことにより環境への負荷を低減す
る必要があることにかんがみ、できる限り循環的な利用が行われなければならない。
2 循環資源の循環的な利用及び処分に当たっては、環境の保全上の支障が生じないよ
うに適正に行われなければならない。
(循環資源の循環的な利用及び処分の基本原則)
第七条 循環資源の循環的な利用及び処分に当たっては、技術的及び経済的に可能な
範囲で、かつ、次に定めるところによることが環境への負荷の低減にとって必要であるこ
とが最 大限に考慮されることによって、これらが行われなければならない。この場合にお
いて、次に定めるところによらないことが環境への負荷の低減にとって有効であると認め
られるとき はこれによらないことが考慮されなければならない
アルミニウム
・軽い、・耐食性が良い、・加工性が良い
・融点が低い(660℃)
持続的な
ライフサイクル
省資源・省エネ
製品 → リサイクル → 溶解
↑
↓
成型 ← 加工(板等) ←地金