1.認知症を理解する

認知症サポーター養成講座
1.認知症を理解する
①認知症とはどういうものか?
•認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が
死んでしまったり、働きが悪くなったために様々な
障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態
(およそ6カ月以上継続)を指す。
•認知症を引き起こす病気
●アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、
レビー小体病‥等
●脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化
②認知症の症状
中核症状と周辺症状
脳の細胞が死ぬ。
中核症状
記憶障害
見当識
障害
実行機能
障害
理解・判
断力障害
その他
環境・
心理状
態
性格・
素質
周辺症状・随伴症状
不安・焦
燥
徘徊
興奮・暴力
鬱状態
不潔行為
幻覚・妄
想
せん妄
症状1 記憶障害
・新しい事を記憶出来なくなる。いずれは覚えていた記憶も失
われていく。
症状2 見当識障害
・日付、時間、季節、場所、の感覚が障害される。
症状3 理解・判断力の障害
症状4 実行機能障害
・計画を立てたり、按配する事が出来なくなくなる。
症状5 感情表現の変化
・状況の予測が困難となり、思いがけない感情の反応を示す。
●元気がなくなり、引っ込み思案になることがある
・物忘れなど認知機能の低下を自覚。
・出来なくなることで自信を失い、意欲・気力の減退
を生ずる。
●身の回りのことに支障が起ってくる
・排泄の失敗を例に
①トイレの
場所が解
らなくなる
②衣類の
着脱に手
間取って汚
してしまう
③切迫する
までに尿
意・便意を
感じなくなる
④尿意・
便意を
全く感じ
なくなる
●周辺の人が疲弊する精神症状
しまい忘れ
(物忘れという中核症状)
ものとられ妄想
認知症の方は自分が忘
れるわけなどないという
考えと、忘れたというこ
とを受け入れられない
ため、盗まれたという考
えに到る。
・なくし物が出てくればおさまるので、本人に見つけてもらうよう一緒に探し
てみる。
・妄想がオーバーだったり執拗だったりする時は、認知症をよく理解してい
る専門医に相談することが重要。
●行動障害への理解
・徘徊を例に
・図書館で過ごすのが
日課のAさん。
ある冬の日、いつもより
2時間遅く出掛けたた
め、暗くなった帰り路、
道に迷い夜遅く疲れ果
てた姿で自宅に戻って
きた。
・Cさんは、夕方になる
と、遠くの郷里に帰ると
いって度々家を出て行
こうとするが、ある日、
介護者が目を離した隙
に出て行き、行方不明
になり、翌日、思いがけ
ない場所で保護された。
・Dさんは、妻と買い物
の途中、行方不明に
なった。2日後に遠く離
れた町で保護された。
・Eさんは、家の中でも
外でも、じっとしていな
いで歩き続ける。人や
物を押しのけ、突き飛
ばしてときかく歩く。
見当識障害が原因。
日中明るいうちに帰れる
よう工夫すれば一人で
活動できる。
脳の活性が徐々に下
がってくる夕方に、場所
や時間の見当識障害が
深まる。
・昼寝などで夕方の意識
をはっきりさせる。
認知症が進行して常に
誰かが見ていないとなら
ない状態。介護者への
支援が必要。
・「徘徊」の原因を想像すれば対応策も自然に出てくる。
●早期診断、早期治療が大事なわけ
□早い時期に受診することのメリット
・アルツハイマー型では、薬で進行を遅らせることが出来る。
・病気が理解できる時点で受診し、理解を深めれば生活上
の障害を軽減することも可能となる。
・障害の軽いうちに障害が重くなった時の後見人を自分で
決めておく(成年後見制度の利用)。
□初期は専門の医療機関の受診が不可欠。
●認知症の治療
□アルツハイマー型は薬で中核症状の進行を
遅らせることが出来る。
□脳血管性認知症は進行を止められることも
ある。
□精神症状には原因や状況に応じた療法を。
●認知症の経過と専門家との関係
認知症の経過
精神機能
の障害
身体機能
の低下
寝たきり
□軽症のうちから専門家との信頼関係を築く
かかりつけ医・ケアマネジャー等に相談を。
□発症のリスクを少なくする。
・生活習慣(食事・運動)に気を配ること。
・高血圧・高脂血症・肥満などへの対策。
・運動をはじめとする生活習慣病対策が重要。
□脳の活性化を図る。
・何事も楽しく行うことが重要。
・本人が嫌がるのに強要することはストレス増や自信喪失
につながり、逆効果の場合も少なくない。
□「認知症の本人に自覚がない」は大きな間違い
・認知症の症状に最初に気づくのは本人。
・何もわからなくなるのではなく、不安で心配で苦しんでいる。
□「私は忘れていない!」に隠された悲しみ
・「私は忘れてなんかいない!!」という主張には、私が認知症
だなんて!!というやり場のない怒りや悲しみや不安から、自
分を守るための自衛反応。
□こころのバリアフリーを
・こころのバリアフリー社会をつくる。
□かかわる人の心構え
・認知症という病気のことを理解したうえで、相手の立場を
自分に置き換え支援する。
第1
ステップ
第2
ステップ
とまどい
否定
混乱・怒り・
拒絶
◆異常な言動
にとまどい、否
定しようとする。
◆他の家族に
すら打ち明けら
れずに悩む。
◆認知症への理
解の不十分さか
らどう対応してよ
いかわからず混
乱し、些細なこと
に腹を立てたり
叱ったりする。
◆精神的・身体
的に疲労困憊、
拒絶感・絶望感
に陥りやすいもっ
ともつらい時期。
第3
ステップ
割り切り
第4
ステップ
受容
◆怒ったり、イラ
イラしても何もメ
リットはないと思
いはじめ、割り
切るようになる
時期。
◆認知症に対す
る理解が深まっ
て、認知症の人
の心理を介護者
自身が考えなくて
もわかるまでにな
る。
◆症状は同じで
も介護者にとっ
ても「問題」とし
ては軽くなる。
◆認知症である
家族のあるがま
まを受け入れら
れるようになる時
期。
2.認知症サポーターとは
• 認知症サポーターは「なにか」特別なこと
をやる人ではない。
• 認知症を理解した認知症の人への「応援
者」。
• 誰でもなる可能性の病気。他人事として
無関心でいるのではなく、「自分たちの問
題である」という認識を持つことも大切。