海外のプロジェクトマネージャーに求められる条件

グローバル人材育成セミナー
コンサルティングエンジニア
は何を目指すべきか
平成24年3月22日
東京建設コンサルタント
国際事業部 古田口正志
コンサルティングエンジニアとは何か
エンジニアリング
とは
コンサルティング
とは
コンサルティング
エンジニアとは
国際コンサルティングエン
ジニアリング連盟(FIDIC)
の定義
工期内に決めら
れたコストと品質
でものを作ること
助言、指導、
手配
ものづくり
サービス
の提供
職業上の地位(依頼者の正当な利益の
ためのみに行動する)
独立性(建設、製造、および販売業者に
対して、完全に独立した立場を維持 )
資格(業務を果たすのに必要な知識と経
験を持つこと )
コンサルティングエンジニアは何を目指すべきか
目標:プロジェクトマネージャー(リーダー)になること
1. プロジェクトとは
何らかの目的の達成を目指して、一定期間に行われる事業・活動のこと
2. プロジェクトマネジメントとは
期限内に、予算金額内で、期待レベルの技術の成果のもと、割り当てられた
資源(人、物など)を有効活用して、顧客が満足する状態で完了すること
3. プロジェクトマネージャー(リーダー)とは
プロジェクトを成功に導くために、「必要なことすべて」を行う こと
プロジェクトマネージャー(リーダー)に求められるスキル
技
+
術




コミュニケーションスキル
組織化スキル
予算化スキル
時間管理




問題解決
交渉力と影響力
リーダーシップ
人材育成、チームワーク
プロジェクトマネージャーの役割と重要性
今プロジェクトマネジーの役割が注目されている
海外のエンジニアリングサービス業務について
課題
対応
個人プレーから
チームプレーへ
集団の統制
専門家集団、多様
な技術の調整
技術のマネジ
メント
多様なリスク(工期、予算、
事故、テロ、為替・・等)
総合的なリスク
管理・安全管理
国際的な業務執行
形態の採用
グローバルスタン
ダードの習熟
第3者からの多
様な要求
クレーム処理
コミュニケーション
評価
企業の
リスク管理
マネジメントの
重要性
プロジェクトマ
ネージャーの
育成
建設系コンサルタントの業務範囲
対象:
社会資本整備と自然保護に関する事業全般
国内
事業の上流側
調査
海外(開発途上国)
調査
計画・解析
プロジェクト
発掘・形成
計画・解析
設計
設計
調達
施工監理
施工監理補助
維持管理計画
一つの業務規模
が小さい
事業の下流側
一つの業務規模が大きい
海外コンサルティングエンジニアの活動範囲
事業の
上流側
プロジェクトの流れ
コンサルティングサービスの内容
プロジェクト発掘
現地調査実施、現地政府との協議、基本構想
企画・計画
プロジェクト形成、TOR作成、融資機関への要
請、事前調査参加、等
F/S調査、基本設計
詳細設計・入札
書類作成
プロジェクト(工事)監理
事業の
下流側
維持管理
JICA等との業務契約、調査チーム現地派遣、
調査、解析、計画立案、設計、評価、等
JICA等との業務契約、調査チーム現地派遣、
設計、環境影響評価、ワークショップ開催、入
札書類作成、等
現地政府との業務契約、チームの投入、施工監
理業務、クライアント及び資金ドナーへの説明
維持・補修フォローアップ
業務契約の違いと事業執行上の特徴
特 徴
建設コンサルタント
調査、設計、
施行管理業務
コントラクター
建設工事、
物品調達
発注者
受注者
建設コンサ
ルタント
委託契約
日本国内の
発注者
コントラクター
請負契約
無償資金
O
D
A
請負契約
日本国
(JICA)
国際援助機関
非
O
D
A
事業実施国
の予算又は
民間資金に
よる事業
特 徴
コントラクター 請負契約
委託契約
開発調査
言語: 日本語による
コミュニケーション
基準: 国内約款、仕様書
リスク: ローリスク
事業管理:2者構造方式
情報伝達:口頭が多い
作業体制:個人単位
円借款
建設コンサ
委託契約
ルタント
プロジェクト
実施国
(被援助国)
多言語コミュ
ニケーション
グローバル
スタンダード
委託契約
委託契約
プロジェクト
実施国政府
または
民間会社
請負契約
建設コンサ
ルタント
コントラクター
設計・施工
一体型
多様なリスク
3者構造方式
レターによる
チーム単位
海外コンサルティングエンジニアの果たす役割
事業の
上流側
業務
形態
コンサル
タントの
役割
プロジェ
クト発掘
企画・
計画
JICA等
関連協会
からの助成、 役務提供
自己資金
契約
・現地調査
・報告書作成
・事業提案
(TOR作成)
・現地調査
・事業の妥当性
・事業のS/W
調査
M/P
F/S
JICA等
業務委託
契約
状況判断
企画力
交渉力
被援助国
業務委託
契約
・技術的健全性
・経済的実現
可能性
・財務的妥当性
・環境的持続性
・事業計画
・対象物の具体
的な形と数量
・工事の仕様
・環境的持続性
・補償対象物
・事業実施計画
・工事調達準備
・チーム統制管理
・技術検討結果の
総合判断
・説明責任
・事業企画と展開
工事調達
手続き
アドバイス
交渉
準備・手配
JICAが
主導する
プロジェクト
マネージャー
の役割
ポイント
設計
B/D
D/D
工事
監理
維持
管理
被援助国
業務委託
契約
事業の
下流側
・入札評価
・設計変更
・工事進捗管理
・品質管理
・工事支払管理
・事業説明
・チーム統制管理
・全体工程管理
・発注者へのアドバイス
・業者との折衝・交渉
・説明責任、事業展開
プロジェクトマネージャーに求められる条件
海外プロジェクト(工事)監理の場合
長期プロジェクト
技 技術能力 ・・・技術的課題の解決、工程管理、品質・数量管理
術 管理能力 ・・・ 予算管理、契約管理、労務管理、等
力 語学力 ・・・・・・・コミュニケーション、交渉、レポートやレター作成
人 現地適応性 ・気候、文化、風習、法制度等に馴染む
現地の人との付き合い方、人の使い方
間
力 体力・気力 ・・食事、スポーツ、レクリエーション
をとおした健康管理及び精神修養
困難の遭遇
開発途上国で仕事をする上での「心構え」
“5つのあ”: あせらず、あわてず、あてにせず、あきらめず 、あなどらず
プロジェクトマネージャーに成るためのプロセス
経験する内容
経験年数
国内の計画や設計業務に習熟し、経験を積む
3~5年
獲得する能力
専門分野の技術
2年
語学力、コミュニ
ケーション能力
2年
現地適応力、語学
力(聞く、話す)
アサイメントをもらい海外業務に参加する、チーム
ワークによる業務実施に慣れる、新たな技術を習得
する、カウンターパートとの連携作業を経験する
7~10
年
技術の応用力、協
調性、語学力(読
む、書く)
サブチームリーダーになり、リーダーを補佐する、
積極的に相手側政府の幹部クラスと交わり人脈を
広げる
3年
指導力、チーム統
制力、公的文書作
成能力、人脈
(海外留学等による自己スキルアップを図る)
海外の現場業務を理解する(OJT等の活用)、
社外研修等による国際業務の理解力アップ、
資格をとる(技術士、語学の資格など)
プロジェクトマネージャー(リーダー)
建設コンサルタントを取り巻く昨今の環境
我が国の公共工事は今大きな変革期にある
バブル崩壊後、公共事業は縮小し続け、1970年代の水準にまで
低下した → 活力の低下 ; 「コンクリートから人へ」政策転換
・
・
・
・
少子高齢化社会→人口減 → 建設マーケットの縮小
社会資本ストックの増大 → 維持管理・更新費の負担増加
異常気象等による激甚な自然災害の発生 → 被害の増大
事業の地方化、行政の技術者不足 → 事業実施能力の低下
○建設生産システムの改革
政
品確法の制定、入札契約制度改革、等
府 ○新成長戦略:
の
・インフラ整備や維持管理への民間資金の活用(PPP/PFI)
・官民連携によるインフラの海外展開
対
PPP/PFI促進、ODAの拡充、
応
国際的な発注契約方式の国内への導入など
建変
設化
コに
ン適
サ応
ル出
タ
ン来
トる
建設コンサルタントの海外展開と日本国内の国際化を考える
建設事業執行における国内・海外の違い(1)
項目
国 内
海 外
建設業法の理念
相互信頼を契約の基盤(信義
に従い誠実に・・)
契約主義
事業執行の構造
甲(発注者)と乙(受注者)
の2者構造
発注者、受注者及び第三
者の3者構造
契約約款
公共工事標準請負契約約款 FIDIC契約約款、等
(契約変更や紛争の解決方法 (契約書にリスク分担を予め
についてのプロセス明記なし) 最大限明確化)
不具合に対する処理 受注者は発注者に対してク
(工事業者の場合)
レームを出すことを避ける
自分が不利にならないよ
う絶えずクレームを出す
コンサルタント
の立場
発注者のお手伝い役
発注者の業務代行者
(独立した技術者が生まれにく 承認者、証明者
い)
紛争解決に関わる決定者
コンサルタント
の地位
計画屋、設計屋など(俗称で
呼ばれることが多い)
プロフェッショナル・エンジ
ニア ジ・エンジニア
建設コンサルタントの海外展開と日本国内の国際化を考える
建設事業執行における国内・海外の違い(2)
国内型:二者構造方式
国際型:三者構造方式
建設
コンサルタント
発注者
設計・役務
契約
設計・施工監
理役務契約
建設契約
発注者
建設契約
信
義
則
施工監理・
役務契約
契約に基づく
工事遂行理念
CMR
監修・
監理
受注者
施工監理
受注者
既存の建設事業の枠組み
監
修
・
監
理
専門技術者
The Engineer
契約紛争委員会(DB)
新たな建設事業の枠組み
建設コンサルタントの海外展開と日本国内の国際化を考える
専門技術者(The Engineer)となる人材
■ The Engineer として要求される能力
純技術能力 + 建設マネジメント能力
(法務・契約管理、スケジュール管理、品質管理、コスト管理、交渉力)
■ The Engineer として経験能力
国内の公共プロジェクトの経験(国内契約約款の知識)
+ FIDIC契約約款に基づく国際プロジェクトの経験
The Engineer の候補
建設コンサルタントやゼネコン出身のプロジェクトマネージャー、土木学会の特別上
級技術者、など (国際プロジェクトでは建設コンサルタントが“The Engineer
“となることが多い)
建設コンサルタントの海外展開と日本国内の国際化を考える
わが国のコンサルティング・エンジニアのマ
ネジメント能力(海外を除く)
 プロジェクトマネジメントの基本的技術に関する知識・
経験が著しく欠如している
 現状では、第三者構造の専門技術者になることはかな
り難しい。そこで、早急に人材育成・教育を進める必要
がある。
 早急に身につけるべきマネジメント技術
○
○
○
○
○
法制度および契約(グローバルスタンダード)に関する知識
施工に関する知識
スケジュール管理技術
財政・経済およびコスト管理技術
交渉力、語学力
建設コンサルタントの海外展開と日本国内の国際化を考える
我が国の建設関連企業に何が不足しているか
国際市場で必要な技術力
1.プロジェクトの設計・施工技術
日本企業
の強み
+
2.プロジェクト創造・企画力
日本企業の弱点
3.プロジェクト・ファイナンス技術
産業構造・システム
の改革
技術者の意識改革
4.プロジェクト・マネジメント技術
プロジェクトの管理・運営技術
私が体験したプロジェクトマネジメント
インドネシア国スマトラ、地方都市の洪水対策事業施工監理
プロジェクト概要
河川改修:約40km、放水路建設:延長4km、橋梁架け替え:15橋(1橋の平均ス
パン42m)、分流堰2箇所、農業用取水堰1箇所、樋門・樋管10箇所程度
工期:3.5年(当初)→ 6年(工期延長)、 工費:約95億円(円借款)
施工監理体制
工事工区:7
日本、台湾、オランダ、インドネシアの混成チーム
エンジニア数12人(平均)、事務所スタッフ約20人
自然環境の保全と川の利用に配
慮した川づくり
放水路掘削における軟弱な砂層
への対策
コントラクターは全てイン
ドネシア企業
本川から放水路へ洪水を分流さ
せるための施設
私が体験したプロジェクトマネジメント
遭遇した問題
・土地収用の遅れによる工事中断
・反対住民やスクオッターへの対応(住民デモ、NGOの暗躍・工事妨害など)
・発注機関の組織変更に伴う混乱と工事の遅れ
・地元コントラクターの技術力・経営能力不足への対応
・補償工事(水道、ガス、鉄道、漁港、等)における関係機関との調整が難航した
・施工中の洪水の発生とその対応
・JBIC対応(日本の緊縮財政政策による円借款縮小の動き)
川沿いに張り付いたスクオッター
対策に頭を痛めた
最後まで用地買収に反対し続け
た住民の土地
住民へのプロジェクトの説明お
よび防災啓発
コンサルタント クライアントのサポートと管理、住民への説明責任、事業の透明性、円借
款事業における日本の納税者への説明責任
のへの期待